(2020.10.22 カトリック・あい)
「すべてうまくいくでしょう」-今月で期限を迎えるバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意について、バチカンはさらに二年延長することを中国側に提示しているが、交渉責任者のパロリン国務長官は21日、ローマ市内の教皇庁立聖アントニオ大学での行事に参加した際、記者団に対して、暫定合意の今後について楽観的な見通しを示した。
中国国内では、合意交渉の窓口である国務院(日本の政府に相当)の国務省ではなく、中国共産党統一戦線工作部が諸宗教の活動などの監督・規制を専管しており、2年前の暫定合意以降、カトリックを含む宗教諸宗派の”中国化”の名のもとに、あらゆる宗教活動の統制が急速に強化され、教会の十字架やキリスト像などの撤去、服従を拒否する教会や司教、司祭への迫害などが激しくなっていると伝えられている。また新疆ウイグル自治区、チベット自治区などではイスラム教徒や仏教徒が激しい弾圧を受け、国際社会からの非難も高まっている。
そうした中で、バチカンが中国との関係を深めることが、こうした中国の行為を是認することに繋がる可能性を含めて、国務長官がこうした疑問に直接答えることはなかった。
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国務長官の記者団に対する発言は、バチカン放送英語版が日本時間22日に伝えたもので、長官は、「すべてうまくいくでしょう… 我々は、合意がいつ期限切れになるのか知る為に、明日まで待たねばなりません」と述べつつ、恐らく延長される、との見通しを確認した。
また、暫定合意の内容は、引き続き、秘匿することを確認したうえで、「内容の多くは既に知られているので、”ある程度の秘匿”ということになります」とし、暫定合意の更新はすでに何日か前に決定されている、とも述べた。
新型コロナウイルスの世界的大感染によって、人の移動が規制された影響はあったが、中国との交渉は継続して行われた、とし、暫定合意から2年間の成果について、「満足している、と言っていいでしょう」と語り、合意の今後について「合意内容の実効性が向上することを希望しています」とした。
そのうえで、「当然ながら、この合意では解決されない他の多くの問題も残っています。私たちは、この合意が中国国内の問題全てを解決できるとは考えていません」と強調。中国が抱える問題として、「すべての宗教、そしてカトリック教会に関する規制がかけられていること」を指摘した。
また、この合意が将来、中国との外交関係の再樹立につながる可能性についての、記者団の質問には、「今のところは、外交関係についての話は中国側としていません。教会の問題に限っています」と答えた。
さらに、長官は、この合意がすべての問題、困難を解決していないことを繰り返し指摘しつつ、対話を通しての希望も述べ、「この合意は外交関係に関するものでも、外交関係の確立を展望するものでもないからです。合意は、教会の状況に関するもの、とくに司教の任命という特定の問題に限ったものです」と繰り返し、次のように語った。
「目的とするところは、教会の一致です。中国におけるすべての司教が教皇と交わりを結ぶようになった、という結果も出ています。教皇が認めていない司教は、もういません。このことは、私には素晴らしい前進だと思えます。これからの課題は、一歩一歩、中国における教会の正常化の条件を作っていくことです」。