改・バチカン憲兵隊がロンドンでの巨額不動産取引疑惑でイタリア人仲介者逮捕

Headquarters of the Vatican Gendarmeria Corps. Headquarters of the Vatican Gendarmeria Corps.  

(2020.6.6 Vatican News)

 バチカン憲兵隊は5日、バチカンが関係するロンドンでの巨額不動産取引疑惑事件で、取引に関与したイタリア人仲介者を逮捕した。バチカンの警察当局が、外部の一般市民を逮捕するのは極めて異例であり、事件の深刻さをうかがわせる。

 バチカン広報局が同日発表した声明によると、逮捕されたのはGianluigi Torzi。 「バチカン国務省の何人かの職員が関係する企業のネットワークがからんだ、バロンドン・スローン・アベニューの(「カトリック・あい」注:2億ドルに上ると言われる)不動産のバチカンによる購入に関与した(注:不正な利益を上げた)ため、バチカン司法当局が逮捕状を発行した」としている。

 また、Torziの具体的な逮捕容疑は「強要、横領、悪質な詐欺、マネーロンダリングの罪(最長12年の懲役刑に該当)」で、憲兵隊の兵舎に収容された。

(「カトリック・あい」解説)

 この疑惑事件に関しては、昨年夏にバチカンの宗教事業協会(通称”バチカン銀行”)と監査役室から出された告発で表面化し、教皇フランシスコが徹底した捜査による疑惑の解明を求めたのを受けて、バチカン憲兵隊が昨年10月、国務省総務局および金融情報室の捜索を実施しするなど、捜査に本腰を入れていたが、今回の逮捕は、そうした疑惑の全容解明の流れの中にある。

 さらに大きな視野でみると、教皇が注力されているバチカン財政改革とも関わる動きともいえる。

 バチカンは、聖職者による未成年者性的虐待問題の世界的な長期化を背景に、欧米などで信徒離れが加速、献金収入が減少し、損害賠償負担で破産する教会も出、さらに追い打ちをかけるように新型ウイルスの世界的大感染が発生、献金収入減少に拍車をかけ、バチカン美術館の長期閉館などによるの”観光収入”激減などで、財政赤字が拡大しており、抜本改革によるバチカン財政の立て直しが焦眉の急となっている。

 だが、バチカン財務改革の星と期待された初代財務事務局長官のペル枢機卿が未成年性的虐待容疑でオーストラリアで裁判にかけられ、事実上機能不全に。昨年11月になって、バチカンとの”しがらみ”のないイエズス会士が新長官に就任、改革への本格的な取り組みが再開されている。疑惑の解明、不祥事再発の防止、対外信用の回復、そして、バチカンの資産の公正で効率的な運用は、改革の要でもあり、今後の進展が注目される。

 (翻訳・解説「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2020年6月7日