・コロナ後の世界の安全保障に軍縮は欠かせない」パロリン国務長官、バチカン主催のシンポジウムで

File photo of the test of a nuclear weaponFile photo of the test of a nuclear weapon 

(2021.3.23 Vatican News  Devin Watkins)     核の増強を続けているのは中国、北朝鮮

 バチカンの人間開発省と新型コロナウイルス対策委員会がロンドン大学東洋アフリカ研究学院と共催した「コロナ禍でも欠かすことのできない軍縮への努力」と題するウエブ・シンポジウムを23日開催から、人間開発省のYouTubeチャンネル「VaticanIHD」(www.youtube.com/VaticanIHD)を通じて動画配信された。

 シンポジウムは、教皇フランシスコが先に発出した回勅「Fratelli Tutti(兄弟の皆さん)」の呼び掛けに応え、カトリック始め諸宗教の代表者と国際政治・軍縮の専門家が一堂に会し、現在世界各地で続いている紛争の背景にある武器の生産と拡散、軍備拡張を抑える方策について考察し、国連事務総長や教皇フランシスコはじめ国際社会の和平努力を支援することを狙いに開かれた。

 シンポジウムの冒頭、主催者を代表して、ピーター・タークソン人間開発省長官・枢機卿があいさつし、世界で続いている新型コロナウイルスの大感染や飢餓など世界が直面する危機を乗り越えるため、人的、物的資源を集中するよう、世界の指導者たちに強く要請、「現在の人の健康と経済の世界的な危機克服には、各国政府の協力して対処する必要があり、そのための各国が軍縮によって、危機克服に資金を振り向ける必要があります」と訴えた。

 続いて基調講演に入り、最初の講演者となったピエトロ・パロリン国務長官・枢機卿が「世界の総合安全保障」をテーマに取り上げ、現在の新型コロナウイルスの世界的な大感染は、地球上の全ての人が互いに関係し合っていることを、私たちに改めて自覚させた、とし、「今、世界には総合的な安全保障体制の確立が求められており、その実現に最善の道を早急に検討する必要がある」と言明。

 そして、教皇フランシスコが先日のイラク訪問の際に訴えられたように、「世界は軍拡競争、金銭という偶像の崇拝、そして消費主義を、超越し、統合的な安全保障を追求しなければなりません… それは『憎しみの道具』を『平和の道具』に変えること、武器の増強を拒否し、公益の促進と貧困の緩和を受け入れることを意味します」と述べ、「国家は財政を武器に使うのではなく、安全保障を促進するのにより適した『健康、社会的平等、貧困撲滅』への投資に再配分すべきです」と訴えた。

 国務長官はさらに、「世界で起きている紛争を直ちに停止するように」との教皇の訴えを繰り返し、「自衛の権利は、『集団的防衛』(注:特定の敵対国や脅威に対して複数の国家が共同で防衛にあたり、相互の平和と独立と地域的に安全保障を図ること)と『統合的安全保障』の一要素と見なされるべきです… これはまた、連帯、正義、統合的な人間開発、基本的人権の尊重、被造物への配慮が、安全保障と切っても切れない関係にあることを意味するのです」と強調した。

 最後に、教皇が繰り返されている「私たちは、これまでと同じように、危機から抜け出すことは決してない」という言葉を引用し、「競争」を「協力」に変え、個人の尊厳を最優先し、生命を増進させることによって、軍縮の道を追求するよう世界の国々に求めて、講演を締めくくった。

 続いて講演したロンドン大学東洋アフリカ研究学院のダン・プレッシュ国際・外交研究センター所長は、「世界が軍事費に使っている2兆ドルの半分を他の目的に配分することで、国民の税金を減らし、世界の医療活動の資金を増やし、二酸化炭素の排出量を減らることができます… そして、非常の多くの戦争の要因を取り除くことができるでしょう」と訴えた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年3月24日