・「ウクライナの平和回復を祈る」-バチカン・ウクライナ外交関係樹立30周年記念ミサに60か国以上の代表が参加

 これに対し、ロシア政府のペスコフ報道官は、現地メディアに対し、「我々には、アメリカの人々、フランス、そして教皇と話す用意があるが、ウクライナは交渉継続を拒否していることを頭に入れておかねばならない」と述べている。

 一方、パロリン国務長官は記者団に、「ロシア政府のスポークスマンは『自分たちは教皇との対話を含めて、対話の道を開いている』と言っているが、これまでのところ、この言葉が何を意味しているか、どのような展開を考えているのか、判然としない」としたうえで、「今は、様子を見、検討している段階。(ロシア側の対応は)今出されたばかりで… 今後何がなされるべきか、熟慮している」、さらに「(関係当事者の会談は)電話会談をするにしても、時期尚早」だが、「バチカンは、できることは何でもする。それがわずかな可能性であっても、活用する」と強調した。

 国務長官が9月にニューヨークでの国連総会出席の機会に、ラブロフ外相と会い、その後、ロシア側から会話は「生産的」で、ウクライナ戦争の「理由を説明する機会になった」との”評価”がされている。

 教皇フランシスコ始め、パロリン国務長官などバチカン高官は、これまで口をそろえて、ウクライナを侵略し続けるロシアを非難し、(キリル総主教などが主張する)信仰は決して、暴力を正当化しない、と言明してきたが、ラブロフ外相がパロリン長官と会ったことは、バチカンの和平実現への介入にロシアが前向きであることを示唆したもの、との見方もある。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は先に、ウクライナ東部地域の占領地を引き渡すというロシア側の条件を拒否し、プーチン大統領との交渉は終了した、と言明している。バリで開催中の G20 サミットにリモートで参加したゼレンスキー大統領は、最近奪還したヘルソン市で、ロシア兵士たちが占領中に約 400件に上る 戦争犯罪を行ったと非難。ロシア側は、プーチン大統領が欠席している。

 先週、教皇フランシスコはバチカンでウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の首長であるスビアトスラフ・シェフチュク大司教と会談し、大司教は、ウクライナの最新の現状について説明するとともに、教皇がウクライナのために祈り、和平実現に努め、捕虜開放の実現に力を尽くしてくれたことを感謝した。この場で、ロシアとの会談について話し合われたか不明だが、バチカンが、和平実現へ、両当事者の会談を含め、あらゆる可能性を模索しているのは確かだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年11月16日