・「年長者は神の賜物」ーバチカンが、コロナ後の高齢者を展望する文書発出

An elderly person gazes upon a sunsetAn elderly person gazes upon a sunset 

*新型コロナウイルスと高齢者

 そして、コロナ大感染の第一波での死者が「社会の中で最も脆弱な人」を保護するはずの高齢者施設で目立ち、家庭における家族よりも死亡率が高かったイタリアの例を挙げ、「コロナ禍で起きたことは、”贖罪のやぎ”を見つけ出す一方で感染の連鎖を防いだ功労者を讃えるによって、このような高齢者介護の問題を解決してしまうことを不可能にした」とし、「今、私たちに求められているのは、社会全体で高齢者をケアする新たなビジョン、新たなモデルの策定、実施です」と強調した。

*2050年に世界の60歳以上の人口が20億人に

  またこの文書は、統計学的、社会学的な視点から、男女の平均余命がともに伸びており、人口動態の変化が「文化的、人類学的、そして経済的な課題」をもたらしている、と指摘している。世界保健機関(WHO)の予測によると、世界の60歳以上の人口が20億人、つまり、5人に1人が高齢者になり、「高齢者を”歓迎する場”にすることが、世界の諸都市の義務となる、と言明している。

*高齢者であることは神からの贈り物です

 私たちの社会では、高齢を「不幸な年代」とする考え方が一般的になっており、「介護、医療面でのケアの必要と費用が必要な年齢に人」としてのみ理解されることが、しばしばある。だが、本当は 「年長者であることは、神からの贈り物であり、莫大な資源であり、注意深く保護されるべきもの」であり、現在のコロナ感染が、私たち全員に、年を取ることでもたらされる豊かさは大切にされ、守られるべき宝だ、という認識が強まったことは、否定できない」としている。

*社会の最も弱い構成員のための新たなモデル

 このよう視点から、生命アカデミーは、社会の最も脆弱な構成員のための新たなモデルを提示している。

 まず、そのようなモデルの実施は「老いがもたらす弱さに不適切な精神的ショックをあたえることなく、相手の自宅と適切な外部サービスでの継続的な介護の体制を確立するため、さまざまなレベルでの組織的介入をすることを意味する」と前置きし、 「高齢者介護施設は、社会生活と健康生活の”連続体”に作り直すこと、施設での加療、軽度の要介護、重度の要介護など、それぞれの人の状態に応じた施設におけるケアと自宅におけるケアを統合的にされるようなサービスの提供できるようにすることが、現代の介護モデルの要だ」としている。

*世代間の出会い

 また文書は、「人道主義の新たな活力」を社会集団にもたらすことのできる「出会い」の必要性を強調している。「教皇フランシスコは、若者たちに『祖父母の近くにとどまるように』と繰り返し求めておられます。高齢者は命の終わりにではなく、永遠の神秘に近づいていきます。それを理解するには、神に近づき、神との関係を築かねばなりません。高齢者の霊性、キリストと親密になる必要を満たすように助け、信仰を分かち合うことは、教会の慈善事業です」と述べ、また、若者が自己の”ルーツ”を再発見することができるのは、高齢者のおかげであり、高齢者が夢を見る能力を再発見できるのは、若者のおかげなのです」としている。

*教導職としての脆さ

 さらに、「私たちは、脆さを抱えた高齢者を『教導職、つまり真の教え』として理解せねばならない。高齢であることについても、この精神的な枠組みの中で理解されねばなりません」と強調し、「体が衰弱し、精神的な活力、記憶、精神が薄れるにつれて、人の神への依存は、それに応じてますます明らかになっていく」としている。

*文化の分岐点

 そして最後に、文書は、「市民社会全体、教会と、異なった宗教的伝統、文化、学校、ボランティア、娯楽、もの作り、古典的、現代的な社会コミュニケーションの世界」に訴え、 「高齢者が自分が知っている家にとどまり、いずれにせよ病院というより家のように見える身近な環境にとどまることができる」ような、新たな目標を持った具体策を提示し、支援する責任を感じる」ように、関係者に求めている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2021年2月10日