・「中国との暫定合意、再延長に向けて交渉中」「教会は武力による自衛権を認めている」とバチカン国務長官

ピエトロ・パロリン枢機卿がイタリアのニュースチャンネルTg2に登場Cardinal Secretary of State Pietro Parolin appears on Italian news channel Tg2 

*対中関係には多くの困難、道のりは長い

 長官は、まず、間もなく再延長の期限を迎える中国との暫定合意について、「誰かと交渉するときは、常に相手の善意を認めることから始めなければなりません。そうでないと、交渉は意味をなさない」と前置きしたうえ、「中国のすべての司教が教皇と交わりをもち、完全に『中国人』で、完全に『カトリック』であることを保証することを目的とした暫定合意が、更新されると確信している」と述べた。

 その一方で長官は、バチカンの交渉団が北京に戻ったが、「多くの困難があり、長い道のりがある」ことを認め、「”悪天候”の中で撒かれた”種”が芽吹くのを目にするための旅を続けるには、忍耐が必要です」と必ずしも楽観していない考えを付け加えた。

*キリル総主教と教皇の会見実現の努力続ける

 ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、子供を含む犠牲者が増え続けている。教皇フランシスコは侵攻を中止させるため、かねてから、プーチン大統領に強い影響力をもつロシア正教のキリル総主教との会談実現を望まれ、9月13日からカザフスタンで開かれる世界宗教者会議の場で総主教と会うことを強く希望されていたが、総主教は先々週になって、同会議を欠席を表明した。

 これについて、長官は「(総主教が教皇の会見呼びかけに応えることを)私は信じています」としつつ、それを効果的なものに津するために、「十分に準備する必要がある」と述べた。そして、バチカンとロシア正教モスクワ総主教庁との対話は、「政府当局と強く結びついているロシア正教会の伝統にもかかわらず、継続している。(その伝統は)対話を無効にするものではありません」と、改憲実現の努力を続けることを確認した。

 

*教皇のウクライナ訪問は

 その文脈の中で教皇のウクライナ訪問も以前から言われているが、長官は、教皇のウクライナ訪問の希望は変わっていない、とし、「教皇がかねてから言われているように、状況が適切で、訪問が、教皇の”現場写真”の機会になるのではなく、和平実現に貢献できるタイミングで、訪問することを決意されているのです」と述べた。そしてこの和平は、永続的な平和を求めることを目的とし、侵略する側、侵略を受けている側の両方に向けられたものであり、「公正」かつ「完全」な平和、「すべての人を満足させ、将来の紛争を避けるためにあらゆる側面を考慮に入れた平和」でなければならない、と指摘した。

 

*攻撃を受けた者に自衛する権利がある

 長官はまた、世界の主要国の間で軍拡競争が起きていることを非難するとともに、「攻撃を受けた者に自衛する権利がある」ことを再確認。「『カトリック教会のカテキズム』は武力による自衛の権利を認めており、侵略者を止めることは義務でもある」とするとともに、「自衛権の行使は、条件を満たす必要があり、その場合、現代の兵器の破壊力を考慮に入れなければなりません」と強調した。

 さらに、軍拡競争が起きていることに教皇が重大な懸念を抱いておられる理由を説明し、世界各国の軍事費は2021年だけでも総額約2ドルに達していることを挙げ、軍拡競争は愚かな行為であり、「すべての人がすべての人に対してリスクとエスカレートし、他のことに役立てるべき世界の資源が、そのために奪われているからです」と述べた。

 

*社会の世俗化の中でも、カトリック教徒が”撤退”すべきでない

 9月25日に予定される総選挙で最高潮に達するイタリアの政治危機に関連して、長官は、「宗教を私的な領域に追いやる社会の傾向」を指摘。「時にはカトリック教徒も、そのような領域に追いやられる可能性がある」と警告するとともに、「現在の世俗化の傾向の中にあっても、カトリック教徒の”市民生活からの撤退”は認められません。キリスト教の社会的、歴史的側面からみても、これを受け入れることができません」と言明。

 「政治におけるカトリック教徒の存在は重要であり、その貢献は重要です。教皇の教えに触発されて、特定の側面に焦点を当てることなく、例えば人生の問題に完全なビジョンを持ち、当事者としてこれを表現することを期待したい」とした。

*ヨハネ・パウロ1世は真の改革者

 最後に、4日に列福されるヨハネ・パウロ1世教皇について、「最も貧しい人々に近く、信仰と福音の本質に焦点を当てた司牧者」と評した長官は、「ヨハネ・パウロ1世は率直、謙虚で、保守的であるどころか、第二バチカン公会議の改革の真の、一貫した推進者でした」とし、今でも根強い「毒殺説」を、「真実ではありません」と否定。「彼の死は、自然死でした。それは議論の余地がありません」と述べた。

 そして、「社会教説を基礎に置いた移住・移民問題、感染症の大感染、戦争などの問題に関する教会の対応に、ヨハネ・パウロ1世教皇は、依然として影響を与えている」と指摘。「私たちは、この困難な世界に平和をもたらすのに役立つあらゆることを支援します」という教皇の言葉を引用した。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年9月4日