・「バチカンが、アフガン難民のための”人道回廊”開設へと交渉」と伊紙(CRUX)

(2021.8.24 Crux  Rome Bureau Chief  Inés San Martín)

 ローマ–イタリアの日刊紙IlTempoが報じたところによると、バチカンが、アフガニスタンから何千人もの人々が国外に脱出できるように”人道回廊”を開く交渉を、トルコのエルドアン大統領を仲介役にしてタリバンと行っている。

 同紙によると「交渉のチャンネルは、バチカン、東方典礼カトリック教会、エルドアン大統領の三者が関与して開設が試みられ、専用のチャンネルが開かれた。ただし、バチカンからは今のところ、否定も肯定もしていない」という。

 バチカンはイスラム教世界のほとんどの国と良好な関係を持っているが、国民の99%がイスラム教徒のアフガニスタンとは外交関係を持っていない。そうした中で、教皇は15日の聖母被昇天の正午の祈りで、米軍のアフガン撤退を契機にしたタリバンの攻勢の中で対話による国民の安全確保に言及していた。

 IlTempoの記事は、イタリアやバチカンの外交の舞台裏に詳しいジャーナリスト、ルイージ・ビシニャーニによる投稿の形で掲載されたもので、イタリアの政府、議会関係者から得た情報を基にしており、「バチカンはEU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)などよりも、タリバンとの”人道的廊”解説に関する交渉に優れており、バチカンの国務省と東方教会省が、エルドアン大統領を仲介者に、タリバンとの交渉のチャンネルを開くことができた」としている。

 世界のカトリック信徒による社会奉仕組織Community of Sant’Egidio(本部ローマ)は先週初め、イタリアのプロテスタント教会、福音教会連盟とともに、アフガニスタンを脱出する必要のある人々を支援する”人道回廊”の開設を求める声明を発表。

 「アフガニスタンの何千人もの男性、女性、子供たちは、民主主義、表現の自由、研究の価値を信じただけで命の危険にさらされている」と訴え、これまで6年以上にわたる、レバノンからの難民のためのイタリア政府による”人道回廊”開設に協力してきた実績をもとに、「アフガニスタン難民のために、政府、地方自治体、そして市民団体などと協力する用意が出来ている」と積極協力の姿勢を強調している。

(翻訳/編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年8月25日