「バチカンは中国の‶地下教会〟を見捨てようとしている」との批判に報道官が反論(CRUX)

 ( 2018.1.29 Crux Managing Editor Charles Collins )

 中国に関する問題について、教皇フランシスコはバチカンの担当者と常に連絡をとっており、他の教会関係者が正反対のことを話しているのは、‶驚き”だ-バチカンの広報事務局が29日、そうした内容の声明を出した。

 この声明は、前日28日に前香港司教の陳日君・枢機卿がフェイスブックで公開した内容を受けたものだ。その中で枢機卿は、バチカンの外交官が中国を訪問し、教皇に忠誠を誓った(中国政府が公認していない)「地下教会」の二人の司教に対して、中国政府公認の「愛国カトリック協会」所属の司教二人を認める代わりとして、辞任するように求めた、とし、枢機卿は「バチカンは中国のカトリック教会を‶見捨て〟ようとしている」と強く批判している。

 陳枢機卿はさる1月12日に教皇とこの問題について話し合い、教皇は彼に、自分はミンツェンティ・ヨージェフ枢機卿のような悲劇を繰り返さない、と約束した、という。ミンツェンティ師 は第二次 世界大戦後の1945年10月から約28年間、ハンガリーの首都 大司教を務め、共産主義政権下で教会の自由の一貫した主張、逮捕・投獄を経験した末に、ブダペストの米国大使館に保護を求め、1975年にオーストリアのウィーンで亡くなった。

 また陳枢機卿は、香港出身で前福音宣教省局長の韓大輝・大司教ギリシャ大使も、教皇にこの問題について話し、教皇は「このことを聴いて驚き、良く調べる、と約束した」と述べた、としている。

 これらに対して、バチカンのグレッグ・バーク広報事務局長は30日に声明を出し、「中国問題については、教皇は協力者とくに国務省の協力者と常に連絡をとっており、きちんと報告を受けている。教皇が特別に関心を持っておられる中国のカトリック教会の状況、バチカンと中国の対話の進展状況について、詳細に報告を受けている。教会の内部の人々がそれと正反対のことを語り、当惑と議論を巻き起こすのは、驚きであり、残念なことだ」と批判した。

 陳枢機卿は2002年から2009年まで香港司教を務めた。以前英国の植民地だった香港は、中国に返還される際、信教の自由を保障することで中英が合意していた。だが、枢機卿は、こうした中国の共産主義政権との合意に疑問を抱き、(同政権下で)「私たちの兄弟司教たちが(現在の中国で)強いられている苦役と屈辱を自分が(1990年代に中国で)直接経験した」ことに基づいて発言している。

 そして枢機卿は、バチカンの外交政策を担当する国務省に特別に批判的な態度をとってきた。昨年10月のCRUXとのインタビューでも「現在の国務長官、ピエトロ・パロリンは中国に‶毒された考え〟を持ち、カトリックの信仰よりも外交に関心がある」と批判した。

 中国人民共和国は1951年にバチカンとの外交関係を断ち、1957年に自国内のカトリック信徒を支配下に置く「中国愛国カトリック協会(愛国協会)」を設立している。それ以後、現在に至るまで、中国では、教皇の権威を否定する愛国協会と教皇の権威を認める‶地下教会〟が併存している。

  この間、2007年に当時のベネディクト16世教皇が大きな一歩を踏み出す書簡を著し、バチカンと中国の完全な和解は「一晩で実現することはできない」が、「カトリック教会にとって、地下にとどまるのは正常な状態とは言えない」「中国には唯一つのカトリック教会がある」として、信仰告白における一致を促し、愛国協会に一定の正当性を与え、カトリック教徒が協会に加わることを認めていた。

 だが、陳枢機卿は自分でフェイスブックで、バチカンが愛国教会の司教たちを認めれば、「強化された分派教会にに祝福を与えることになり、すでに自分の意志で正当なカトリック教会から離れた者、彼らに同調しようとする者から‶負い目〟を取り去ることになる」と警告している。

 

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2018年2月1日