(2025,2,27 La Croix Camille Dalmas=I.Media)
教皇フランシスコは、2月14日から入院されているジェメリ病院からでも、カトリック教会とバチカンを率い続けている。しかし、教皇としての将来に対する不確実性が、バチカンでの現在の仕事のペースに重くのしかかっているのは確かだ。
これまで約2週間、教皇はバチカン市国外のローマ・ジェメリ病院に入院し、重度の呼吸器感染症の治療を受けている。カトリック教会にとって衝撃的な出来事だが、バチカン市国で働く4800人の職員の業務にはほとんど影響がない。「ほとんどの職員にとっては、何も変わっていないようなものです。私たちの業務は教皇に依存しているわけではありませんから」と、ある職員は断言した。
毎日、バチカンの公式の告示には教皇の最新の決定事項が掲載され続けている。「多くの予定は事前に計画されていたものですが、教皇が病院からでも責任を果たし続けていることは明白です」とバチカン関係者は説明した。 医師団から「絶対安静」を指示され、弱っておられるとはいえ、教皇は権力の座を明け渡していない。最近では、病院内で面会を受け付け、秘書たちの助けを受けながら、ほぼ毎日、「軽作業」をしておられる。
病院の10階にある教皇の居室に入る者は、衛生保護具を着用しなければならない。2月19日には、教皇はイタリアのメローニ首相と短時間面会され、皆を驚かせた。病気で弱ってはおられるものの、彼は「君主」であり続けていると、執刀医は、そのような面会が適切かどうかを問う記者団に念を押した。
教会法の観点から見ると、教皇の入院はバチカンの統治に影響を与えない。死去あるいは辞任するまで、自らの使命によって与えられた「完全な」権限を保持している。「たとえ健康状態がどうであれ、教皇は、入院中も教皇であり続けます」と教会法の弁護士は説明する。教皇が肉体的にも精神的にも統治できなくなったとしても、教会法は”グレーゾーン”に位置することになる。教皇は理論上、正式に自身の退位を決めることのできる唯一の存在だからだ。
*教皇は依然として統治できる
バチカン報道室は、今も教皇の病状を「危機的」と表現しているが、現時点ではそのような事態には至っていないようだ。2月24日には、バチカン・ナンバーツーの国務長官、パロリン枢機卿とナンバースリーの総務局長、パラ大司教という最高幹部たちと会見された。「国務省は現在、教皇がバチカンとコミュニケーションを取るための唯一の手段です」と、ある職員は指摘した。
現在の体制では、教皇は数週間入院したままでも統治を続けることができると、ある情報筋は断言した。教皇の承認が必要な主要案件を除いては、通常通りの業務が継続され、これまでも何度も行ってきたように、四旬節や聖週間を含むミサの司式を他の司祭に委任することができる。
しかし、現在の不確実な情勢下では、新たなプロジェクトの立ち上げや、例えばニカイア公会議の記念行事として検討されていたトルコへの訪問など、旅行の計画を立てることは「不可能」だ。バチカン職員は、「それらはすべて、フランシスコ教皇、または後継者に引き継がれるまで待たなければなりません」と述べた。このような状況下で、一部では「偽りのリズム」や「静寂と緊張が同居するバチカン宮殿の雰囲気」について語られている。
教会の統治に関する長引く不確実性は、最終的には問題を引き起こす可能性がある。
2001年から2005年にかけて、バチカンは、ますます弱り、苦しみと限界を世間にさらすようになったヨハネ・パウロ2世のもとで機能し続けた。当時、バチカンの国務省はフランシスコ教皇のもとよりも大きな権力を握っていた。さらに、ポーランド人教皇の側近、特に個人秘書のスタニスワフ・ジヴィシが徐々に教会の運営を主導するようになっていった。
バチカン市国の職員は、「すべては彼らを通して行われていた」と振り返る。「その状況はベネディクト16世を深く動揺させ、彼の退任の主な理由となりました。しかし、今日の状況は異なります。たとえ病気を患っていても、フランシスコ教皇は依然としてしっかりと舵取りをしておられます」と付け加えた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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