
バチカンを揺るがす今年最大のニュースの一つが2日に報じられた。教皇が、現在EWTNニュースの社長兼最高執行責任者(COO)を務めるマリア・モンセラート・アルバラド氏を、広報省の長官に任命したのだ。
アルバラド氏は、2018年から長官を務めていたイタリア人の男性一般信徒、パオロ・ルッフィーニ氏の後任となる。メキシコ出身だが、2008年に米国市民権を取得した。EWTNに勤務する前は、米国を代表する宗教的自由の法律機関であるベケット・ファンドで働いていた。
EWTNとベケット・ファンドの両方が保守的な団体であることから、アルバラド氏の任命については多くの議論がなされているが、バチカンの広報部門に影響を及ぼす可能性について、はほとんど関心を持たれていない。
筆者は2001年に広報省設立前のバチカン放送局に勤務し、2017年、ルッフィーニ長官の任命直前に退職した。広報省は2015年に設立され、それまでバチカンの情報通信全般を統括していた社会通信評議会に取って代わった。評議会とは異なり、広報省は”実権”を持っている。
教皇フランシスコによる改革が行われるまで、バチカンのメディアは中央集権化されていなかった。L’Osservatore Romanoはバチカンの日刊紙であり、Vatican Radioはイエズス会が運営する組織だった。バチカン出版局(Libreria Editrice Vaticana)は教皇声明を発行するだけでなく、実際に他の神学書も出版する、といった具合だ。
これらはバチカンの政府機関ではなく、彼らが発信するものは「公式」声明ではなかったが、世界のメディアがそうは捉えず、教皇やバチカンの意見を代弁するものと受け取られるケースもしばしばあった。例えばL’Osservatore Romano紙がある映画を酷評したところ、英米のメディアが「教皇が映画製作者を非難」と報じることもあったが、重要なのは、これが聖座とバチカン市国が実質的に独立した主権国家である、という認識を強めた点だ。
バチカンにはもともと新聞があり、ラジオ局があり、出版社があった。L’Osservatore Romanoは教皇領の末期に創刊された。つまり、新た生まれた国、イタリアによって教皇領が併合される以前から存在していたのである。バチカン報道局はこれらとは別組織であり、バチカンの国家機構の「公式の代弁者」としての役割を果たしていた。
しかし、これらの様々な機関は、印刷メディアが衰退し、ラジオ放送がポッドキャストを含む他のメディアに取って代わられつつあるという、世界的な急速な変化によって打撃を受けていた。
バチカンの多くの人々にとってさらに重要なのは、広報機関、とりわけ数十の言語で放送を行い、数百人の職員を擁するVatican Radioの運営費が非常に高額だったことだ。広報省が設立された経緯は、全体として「単なる経費削減策に過ぎない」という見方があった。事実、同省の傘下に入れられてから、職員はしばしば不当な扱いを受けており、特にイタリア語以外の部署の者たちは、ジャーナリストとしての仕事が、イタリア語の公式プレスリリースを扱う翻訳者へと変質させられていることに気づかされた。
ルッフィーニ長官はバチカンのメディア部門で非常に不人気だった。前任者のダリオ・エドアルド・ヴィガノ司教も同様だった。両者ともスキャンダルを抱えていた。
ヴィガノ司教は、教皇の座を退いたベネディクト16世の発言を恣意的に引用し、その恣意的な引用を隠すために写真を改ざんしたことが発覚し、窮地に立たされ、最終的に辞任した。
ルフィーニ氏は、不名誉な芸術家兼司祭であり元イエズス会士であるマルコ・ルプニク神父による複数の被害者への連続虐待疑惑が明るみに出た後も、ルプニクの画像を自身の省が使い続けたこと、そしてフランシスコ教皇がルプニクに対する事件の再調査を命じた後もそれを続け、激しい批判と厳しい監視にさらされた。
筆者や編集長クリストファー・アルティエリを含む多くの職員は、スキャンダルが表面化する前から辞職。多くの広報部門が、劣悪な労働環境に直面している、と報じられている。アルティエリは著書『レオ14世:新教皇とカトリック改革』で、「教皇レオ14世は経費削減の道を見出さねばならない。士気が低下した職員を奮起させる必要がある」とし、さらに「彼は、教会の精神で考え、自身のメッセージの焦点を理解する(広報部門の)リーダーを見極める必要がある…広報機関を支える日常業務に従事する一般職員の中に広大でかけがえのない宝があることを認識し、新技術の活用に長けているだけでなく、その論理を理解している人物だ」と述べだ。そして、「教皇は、そうしたリーダーを登用し、職員たちに必要な資源を確保した上で、彼らの邪魔をしないようにせねばならない」と忠言している。
また、旧来の「分散型システム」には多くの利点があり、それらは新しいシステムにおいても回復・適応させることが可能である点にも言及しておくべきだ。ウォルター・カスパー枢機卿はこのことをよく理解しており、2001年から2010年までキリスト教一致推進評議会の議長を務めていた際、その駆け引きを巧みにこなしていた。
現在のバチカンの広報体制では、すべてが報道局から発信されているように見える。広報省はバチカンの様々な報道機関の独立性を損なってはいるが、アルバラド新長官はこの問題を確かに理解しているはずだ。EWTNニュースは、紙媒体、ラジオ・テレビ局、ポッドキャスト、その他のメディアを包含している。これらを多方面で統合しつつも、各メディアは独自の特色を保ち続けている。バチカン管轄のメディアにおける現在の不和を考慮すれば、彼女が経費削減ではなくジャーナリズムに根差したビジョンを提示すれば、その新たなリーダーシップはすぐに受け入れられるだろう。
彼女は、前任者2人が自ら招いたスキャンダルを避ける必要がある。『レオ14世:新教皇とカトリック改革』の中で、アルティエリ氏は、アルバラド新長官が新たな役割を正しく果たす必要がある理由を指摘している。「もし人々が、教皇自身の広報機関が真実を伝えること――少なくとも、歪曲して伝えたりしないこと――を信頼できなければ、教皇だけでなく、あらゆる聖職者、ひいてはあらゆるキリスト教徒を信頼することさえ難しくなるだろう」。