この後、教皇は、カナダ総督として初の先住民出身者のメアリー・サイモン氏の随行を受けて空港に向かい、イヌイットの伝統的な太鼓と踊りの送別を受けた後、ローマへの特別機に乗り込まれた。
(2022.7.29 Vatican News Christopher Wells)
イカルイトでの集会で、教皇はイヌイットの若者たちに、「自分たちの文化を大切にし、美しいイヌクティトゥット語を大切にして、いつも光に向かって前進を続け、”チームの一員”になるように」と励まされるとともに、「皆さんの先祖から伝えられた福音を受け入れ、イエス・キリストのイヌイットの顔に出会うことができるよう」希望された。
イヌイットの若者と年長者との集まり、それに先立つ寄宿学校の生徒だったイヌイットの人たちとの会見は、いずれもイカルイトにある 4 つの小学校の 1 つ、ナカスク小学校で開かれた。
教皇は同小学校の校庭で、地元の指導者たちに迎えられ、伝統的なイヌイットの歌、踊り、音楽の歓迎を受けた後、イヌイットの若者や年長者の人々に対して講話をされた。
*寄宿学校でのカトリック教会の恥ずべき行為を改めて謝罪
講話の中で、教皇はまず、国の先住民に対する文化、風俗習慣などを含む民族同化政策に協力して、寄宿学校で先住民の子弟たちを虐待した”少なくない”カトリック教会関係者の悪について、深い悲しみを示されるとともに、先住民の人たちに改めて赦しを請われた。
「(同化政策によって、子弟が強制的に寄宿学校に収容し)家族をバラバラにした、という行為は、『父と母を敬え』という戒めを守る信徒たちにとって、子供たちにとってありえない行為であり、苦痛以上のものでした」、そして、「親と子の絆を断ち切り、家族の親しい関係を傷つけ、小さな子供たちを傷つけたり、憤らせる行為は、なんと邪悪な行為でしょう」と、教会の代表者として強い反省を述べられた。
*癒しと和解の旅
教皇は、今回のカナダ訪問を振り返り、先住民の人々と多くの出会いをしたことの意義を強調され、「私たちは、創造主の助けを得て、過去に起きたことに光を当て、暗い過去を乗り越えることできるように、この地で共に癒しと和解の旅を共にしています」と語られた。
*「長兄」である教皇からの三つの助言
そして、「特に若者たちは、年長の人たちの助けを得て、この地球のために、自分たちの仲間たちのために、自分たちの歴史のために、他者をどのように世話するか、世話することをどのように他者に教えるか、学ぶように求められています」と指摘。若者たちに、「過去を受け入れ、情熱を持って歩み、年長者の助言に耳を傾けることを恐れないように」と呼びかけられ、「長兄」としての立場から、三つの助言をされた。
一つ目は、「上に向かって歩き続けること」、「偉大なことを熱心に追い求めること」。そして「自分たちが現在の世界が抱える課題の答えだ」という自覚を持つこと。 「未来はあなたがたの手の中にある。決して希望を失わず、戦い、全力を尽くす。そうすれば後悔することはありません」と教皇は励まされた。
二つ目は「他者に光をもたらし、世界の闇を取り除くために働くこと」によって「光に出会うように」促され、そのためには、「識別力ー光と闇を見分ける力、そして正しいものを選ぶ自由をもつことが必要です」と説かれた。
そして三つ目の助言は、チームワークによって力を発揮できるホッケー選手の例を上げ、「チームの一員になること」の必要性を指摘された。そして、 「チームワークとは『大きな目標を達成することは、一人ではできない』ことを確信すること。共に活動し、忍耐を持って練習し、複雑なプレーに挑戦する必要があります」と述べられた。
*「イエス・キリストのイヌイットの顔」に出会うこと
最後に、教皇は若者たちに、「このようなことすべてを、自分たちの文化の中で、美しいイヌクティトゥット語で行うように」と促され、「私の希望と祈りは、あなたがたが、イエス・キリストのイヌイットの顔に出会うことです」と強調された。
そして、心からの祝福の後、カナダでの公式のあいさつ、講話の締めくくりに、イヌクティトゥット語でひとこと、「Qujannamiik!(ありがとう!)」と呼びかけられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)