
(2025.2.28 Vatican News)
バチカン報道官室の28日夜(日本時間3月1日未明)の発表によると、教皇フランシスコの呼吸状態が急激に悪化し、孤立した気管支痙攣を起こされた。教皇はただちに非侵襲的機械換気(気管内チューブを使わず、マスクや鼻カニューレなどを使用する非侵襲的な換気療法)が開始され、これが効果を上げている。
報道官室の発表文は以下の通り。
「教皇は、午前中は呼吸器理学療法と礼拝堂での祈りを交互に行っていたが、午後になって、孤立した気管支痙攣の症状が現れた。これにより嘔吐の症状が現れ、その際に一部を吸い込んでしまい、呼吸状態が急激に悪化した。
教皇はただちに気管支吸引(気道確保)を受け、非侵襲的機械的換気が行われ、酸素レベルが改善した。教皇は常に意識を保ち、治療に協力している。そのため、予後は依然として楽観視できない状況である。午前中には聖体拝領を受けられた」。
教皇は2月14日に呼吸器感染症のためローマのジェメリ病院に入院され、両側肺炎の治療を受けておられる。
28日の気管支痙攣の単独発作後の病状を評価するには、約24~48時間が必要だという。また、非侵襲的機械換気により、ガス交換値(呼吸状態や酸素化の能力を評価する指標)は発作前のレベルに回復したと報告されている。
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(解説)教皇フランシスコは、回復への道で隆起にぶつかった
ローマ – 教皇フランシスコは、全体的な臨床状態のわずかな改善の数日間にもかかわらず、28日、医師が彼の呼吸器疾患の悪化につながった「気管支痙攣」として説明した症状に苦しまれた。
2月28日夜の教皇に関する医療速報で、バチカン報道官室は、教皇がローマのジェメリ病院の10階にある彼の病室の隣にある礼拝堂で、午前中に呼吸理学療法と祈りを交互に過ごされた後、「気管支痙攣」に苦まれた、と説明した。
「気管支痙攣」という医学用語は、気管支を裏打ちする筋肉、つまり気管と肺をつなぐチューブが収縮して狭くなり、体が受け取る酸素の量が制限される状態を示すものだ。バチカン報道官室によると、痙攣の結果、教皇が「吸入による嘔吐と呼吸器疾患の突然の悪化の事態」を経験された、という。
Cruxが取材した医師によると、これは、教皇が胃の内容物、唾液、食物、またはその組み合わせを彼の気道に吸い込んだことを意味し、医療チームはすぐに「気管支吸引」、つまり彼が吸い込んだ内容物を気道から吸引し、NIV(非侵襲的換気)の使用を開始した。これは通常の酸素マスクの使用と、気管にチューブを挿入する完全な人工呼吸器の使用との中間の措置で、酸素マスクを鼻と口にしっかりと密閉して空気の漏れがないようにし、患者が自分で適切に吸入するには弱すぎる場合に、吸入に役立つ圧力を誘導するものだ。
報道室の28日夜の声明では、教皇はNIV治療に対して「良好な反応」を示しておられる。また、教皇が「常に警戒し、用意されていた」と述べ、治療に協力してくださったとした。また医師団は、この最新の危機を考慮すると、教皇の全体的な安全は「守られている」と述べたものの、Cruxの取材に応じた医師によると、胃の内容物が教皇の呼吸器系に入ったことによる痙攣は深刻であり、通常はすべてを吸引することはできず、気道に微生物が侵入し、「腹筋内肺炎」と呼ばれる別の形態の肺炎を発症するリスクにさらされる可能性がある、と警戒している。
医師たちはCruxに、「今後数日間、教皇の体温が通常に戻るかどうかを見定めることが重要になる」と語ったが、それは教皇が腹筋性肺炎を発症したことを示す可能性があるからだ。また、教皇が回復する可能性はあるが、呼吸器系の問題が悪化し続けると、「多臓器不全」となるリスクもある、という。教皇の呼吸器系の危機は、28日までの数日間の若干の改善の後にやってきたが、医師は一貫した危険脱出が見られないことから、全体的な予後はまだ不明、との見方を取っている。
報道室は28日夜、教皇の入院が続いているため、灰の水曜日のミサと四旬節の始まりの行列は、アンジェロ・デ・ドナティス枢機卿が主導すると発表した。また、教皇の土曜日の聖年一般謁見は、中止されたが、日曜日の正午の祈りの説教については、まだ何も発表されていないが、先週は、ご自身が準備されたテキストを公開する形をとっている。
教皇の快癒を祈るミサ、ロザリオ、その他の祈りは世界中で続けられており、28日の夜も、教皇の親友であり、教理省長官のアルゼンチンのフェルナンデス枢機卿が、聖ペトロ広場でロザリオの祈りを主宰した。
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(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=注釈は「カトリック・あい」)