・教理省、教皇と第二バチカン公会議の正当性を拒否した元駐米大使のヴィガノ大司教に破門判決

(2024.7.5  バチカン放送)

 バチカンの教理省が5日、元駐米大使のカルロ・マリア・ヴィガノ大司教に対して、教皇と第二バチカン公会議の教えの正当性と権威を拒否する主張を繰り返している、として、破門の判決を下し、本人に伝えた。

 ヴィガノ大司教は、「シズマ」(教会の分裂)を招く態度をとっていると告発され、教理省はその教会法上の裁判の判決を下す会議を4日に開いた。会議では、大司教の公的な主張が「教皇を承認し従うこと、教会のメンバーとの交わり、第二バチカン公会議の教えの正当性と権威を拒否する」ものであり、「シズマに相当する罪と認められた」と結論した。。

 大司教は、ここ数年、教皇と第二バチカン公会議の正当性を認めない主張を繰り返していた。破門制裁を受けた者は、感謝の祭儀やその他の秘跡の執行、秘跡の受領、準秘跡を授けること、他の典礼祭儀の挙行、これらの祭儀への積極的参加、教会の職務、任務等の執行、統治行為などが禁止される。破門は、悔い改めへと招くもので、”薬”としての処罰であり、その人が再び交わりへと戻ることを常に待つもの、とされている。(編集「カトリック・あい」)
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 長年バチカンで働いてきたヴィガノ大司教は、2018年8月にダブリンで開かれ世界家族会議で初めて世界的な”悪名”を馳せた。

 この月に大司教は、教皇フランシスコのアイルランド訪問の最終日に合わせて、同国で多くの聖職者が性的虐待問題を起こし、教会に対する不信感が高まっていたのを背景に、11ページの「証言」を発表。未成年者への性的虐待と成人神学生への性的嫌がらせで告発された元枢機卿のセオドア・マカリックの犯罪を、教皇が隠蔽したと非難し、「教皇は、マカリックに対する告発を知りながら、本人の聖職や旅行に対する制限を緩和した」と主張。教皇の引責辞任を求めた。また、バチカン内に”同性愛文化”が広がっている、 とも主張した。

 それ以来、大司教は、教皇フランシスコの「教義上の異端や権力の乱用」を問う公開書簡を一貫して発表し続け、また、第2バチカン公会議が決定した教会改革や典礼改革の多くを拒否し、その決定を受けた伝統的なラテン語ミサを制限する教皇の決定を批判した。

 駐米大使に任命される前、ヴィガノ大司教はバチカン市国の次官として勤務していた際に、同市国の過剰支出や管理不行き届きを暴露しようとしてローマで波紋を呼び、内部告発者としての評判を得たが、一方で、多くのバチカン内部関係者から、「一緒に仕事をするのが難しい、気難しい性格」の持ち主と見られていた。

 大司教は教理省から6月20日に出頭を求められた直後、「現時点ではカトリック教会において法的身分を有しておらず、同会の聖職者は、教会において適法に使徒職を果たすことが出来ない」と教理省が判断する、伝統主義の聖ピオ十世会(SSPX)の会員になった、との噂があったが、SSPXは、「大司教の発言は、本会の創設者が破門にされた行為を超えている」として大司教と距離を置く立場を表明している。

 SSPXは6月24日の声明で、教皇フランシスコが教皇に選出された際に「同意の欠陥」があった、と述べた大司教の声明について、「大司教によれば、ベルゴリオ枢機卿は教皇職を実際とは異なるものとみなし、完全に同意することなく教皇職を受け入れたが、この誤りにより、彼の受け入れは無効となった。したがって、フランシスコの教皇職は”仮の地位”となるだろう」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年7月6日