(2019.11.28 カトリック・あい)バチカン広報が発表したところによると、教皇フランシスコが27日、国務省の金融情報局(AIF)の局長に、イタリア銀行(イタリアの中央銀行)役員のカルメロ・バルバガッロ氏を任命した。レーネ・ブルハルト局長が先週辞任したのに伴うもの。
人事発表後、 バルバガッロ新局長はVatican Newsに「任命されたことを光栄に思います。AIF長官の道徳的および職業的責任の重さを認識しています。そして、教皇が私に寄せてくださった信頼に感謝します」と述べたうえで、「私はイタリア銀行で40年にわたって、欧州の銀行システムの管理・監督体制の中で、イタリアの銀行・金融部門の検査、監督業務を担当してきました」と述べ、その経験を生かして、AIFを、バチカンの金融業務の公正さと透明性を推進する機関として機能させることを誓った。
現在バチカンでは、財政金融に関係するスキャンダルが起きている。イタリアの有力週刊誌が先月スクープしたところによると、バチカンの国務省が、世界の教会から集められ教皇の慈善事業支援にあてられる「聖ペトロ使徒座への献金」から、2億ドルを引き出し、ロンドンの高級住宅街チェルシーにある有名デパート・ハロッズ所有の倉庫群の一部を高級マンションへの転用目的で購入し、さらにバチカンの「宗教事業協会」(通称「バチカン銀行」)に残りを購入するために1億5,000万ドルの融資を求めた、という。
バチカン銀行は、金融取引に関して新しく定められた規則に従って、バチカンの司法当局にこの件を報告した、司法当局が捜査を始めており、その一環として先月、バチカン市国の憲兵隊が、国務省の関係部署の職員5人のバチカン内への立ち入りを禁じるなどに事態に発展しているが、治安責任者で教皇の個人警備担当を務める人物も調査に関連する文書漏洩で辞任しており、ブルハルトAIF局長の辞任は、これらに関する責任をとったものと取りざたされている。
教皇フランシスコは26日のタイ、日本訪問から帰国途上の機中会見で、この問題を記者から聞かれ、「汚職の疑いのある5人のバチカン職員は、バチカンの司法担当者によって速やかに取り調べを受けることになる」とし、ブルハルト局長の辞任については「私は彼から話を聞きました。犯罪行為を抑えられなかったのは金融情報局だったようです」と説明していた。
バチカンは以前から、バチカン銀行が犯罪組織の資金洗浄に絡んだ不透明な行為をしていると警戒視されており、国際的な監視・調査組織「FATF=金融活動作業部会」の監視対象にもされている。AIFは、国際的な金融取引の透明化、説明責任に関するルールに従う姿勢を明確にする目的でバチカンが設置したものだ。また、欧米の関係機関が中心となって作られ金融犯罪情報収集・分析で国際協力を進めているエグモント・グループも、来年初めにバチカンに関する報告書を発表する予定で調査・分析を進めている。