さらに、基金からの収入の長期的な傾向は明らかに下降している。Repubblicaの分析によると、募金は2015年から2019年にかけて全体で23%減少しており、さらに減少する見込みだ。この減少は、ロンドンの高級百貨店ハロッズの元倉庫の4億ドル(約610億円)の買収が中止され、イタリアのアンジェロ・ベッチウ枢機卿を含む9桁の詐欺罪で有罪判決を受けたなどの金融スキャンダルに関連している可能性がある。教皇基金は、現教皇の人気に関する”国民投票”と見なされることもあるため、教皇フランシスコをめぐるさまざまな論争も影響している可能性がある。
聖ペトロ使徒座献金が、富裕国の信者減少を主因に減り続けている
しかし、もっと根本的な点として、ほとんどの評論家は、聖ペトロ使徒座献金など教皇基金の収入の大半が裕福な国々から来ていることが、減少の主因だと考えている。裕福な国々では、カトリック教徒の人口が減り続けており、したがってカトリック教徒の献金も何十年も減少を続けている。
労働力の高齢化と年金債務の増大という将来にわたる問題を考えると、バチカン財政の収入の減少は、バチカンの財務関係者にとって特に心配なことだ。また、世界中から持ち込まれる仕事と複雑さが急速に増加している中で、歳出コストの上昇と収入の減少は、最終的にバチカンは職員を削減するか、職員給与を削減するか、あるいはその両方を余儀なくされる可能性がある、と懸念されている。
バチカンの財務評議会が承認したとされる財務諸表は、教皇庁に関するもので、バチカン市国政府(バチカン美術館からの収入など、物理的な領土の管理に責任を持つ)とバチカン銀行(IOR)の両方が除外されている。IORは2023年に3320万ドル(約50億8000万円)の収入をあげ、59億ドル(約9000億円)の顧客からの預かり資産を持っているが、今後数年間、市国またはIORからの収入がバチカンの広範な赤字を相殺するのに十分である可能性は低い、と考えられており、現時点では損失がどのように維持されるかは不明だ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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