・バチカン図書館で、日本での宣教の歴史まとめた論文集発表会

(2024.1.28 バチカン放送)
 バチカン図書館で24日、日本における福音宣教の歴史、宣教師や殉教者の研究をまとめた論文集の発表会が開かれた。イタリア・ルッカで開催された日本の福音宣教史めぐる会議の記録・論文集を紹介 2024年1月24日 バチカン図書館

 論文集は、昨年年5月にイタリア中部トスカーナ州・ルッカで開催された国際会議の成果をまとめ、記録したもの。ルッカ教区は、2023年、地元出身で、日本で殉教した宣教師、福者アンジェロ・オルスッチ神父(1573-1622)の殉教から400年と、生誕から450年を記念し、「Thesaurum Fidei(信仰の宝)、日本の殉教宣教者と潜伏キリシタン、300年のキリストへの英雄的忠実」と題した、日本におけるキリスト教宣教の歴史を振り返るプロジェクトを立ち上げた。

 福者アンジェロ・オルスッチ神父は、トスカーナ・ルッカの貴族の家系に生まれ、若くしてドミニコ会に入会。宣教師を志し、メキシコ、フィリピンで活動後、1618年8月にキリシタン弾圧の日本に渡り、布教活動を始めて間もなく長崎で捕らえられ、大村の牢に入れられた。1622年9月10日、他の司祭、修道士、信者たちと共に長崎・西坂の丘で殉教。1867年、教皇ピオ9世が日本205福者殉教者(江戸時代初期の日本における205人の殉教者)の一人として列福された。

 ルッカ教区の企画では、殉教400年および生誕450年を迎えた福者オルスッチ神父の生涯・霊性と共に、主にキリスト教伝来から禁教時代にかけての日本のキリスト教史・福音宣教史を、展覧会と国際会議という2つのイベントを通して回顧した。

 展覧会は、昨年5月にルッカ市内の聖クリストフォロ教会、国立図書館、国立文書館、ルッカ教区歴史資料館の4カ所で開かれ、日本の宣教殉教者、潜伏キリシタンの様子を伝える貴重な史料の紹介や、日本のキリスト教史をわかりやすくまとめたパネル展示などがされた。

 同じ月に開かれた国際会議は、「日本での福音宣教の始まり」「日本における宣教師と殉教者」「福者アンジェロ・オルスッチ」「欧州に伝えられた日本の殉教者」「潜伏キリシタン」などをテーマに、イタリアはもとより、日本やアメリカなどからの研究者が参加し、2日間にわたり発表された。

このルッカで始められた企画事業「Thesaurum Fidei」は、現在ローマに会場を移して続けられ、展覧会は、1月18日まで、ローマの教皇庁立ウルバニアン大学で開催。さらに、2月19日から教皇庁立グレゴリアン大学でも開かれる予定だ。

 24日のルッカでの国際会議の内容を記録した論文集の発表会には、バチカン図書館のサローネ・システィーノで行われ、出席した千葉明・駐バチカン日本国特命全権大使は挨拶で「プロジェクトThesaurum Fideiが焦点を当てる時代は、痛ましいと同時に、心をとらえる時代。特に地理的・文化的にかけ離れた二国間の関係の歴史の開始となったという意味で重要な時期です。現在その関係は、正義と平和と対話の名のもとに、友情と協力によって強く結ばれるに至っています」と語った。

 続いて、バチカン図書館前図書館長チェーザレ・パシーニ師、福音宣教省歴史文書館館長フラヴィオ・ベッルウオミニ師、パヴィア大学のオリンピア・ニリオ教授らによって、ルッカでの国際会議の成果であるこの論文集を紹介し、日本の潜伏キリシタンとその殉教の歴史、厳しい迫害の様子、キリストに倣う者として苦しみと死をも完全に受け入れる人々の強い信仰の態度などを改めて振り返った。

(編集「カトリック・あい」)

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2024年1月29日