Basilica Santa Maria in Trastevere (Viacheslav Lopatin)
(2024.10.4 Vatican News Antonella Palermo )
教皇フランシスコは1日付けで、ローマ教区内の地区割りを見直し、教区とその周辺環境をよりよく調和させるための「真の美」と題する自発教令に署名した。
内容は、より深い教会の交わりを促進するため、ローマ教区内の地区割りを見直し、中央の5つの地区と周辺の地区を統合してローマを「すべての人のための大きな家」にするものだ。
この教令で教皇は、来年の「希望の巡礼の聖年」が近づくにつれ、ローマ教区の司牧的役割を再評価することが「必要かつ緊急」になってきたと今回の教令の理由を説明。「教皇は、この再編は現代の文化的変化と、市の中心部とその周辺地域の間によりダイナミックな関係を築く必要性によるもの」と説明。
実施に数か月を要する今回の作業の背後にある意図は、「教会の交わりの精神をさらに強化すること」と強調された。
*「区割り再編」は、中心部と周辺地域の分断を解消するもの
教令は、「ローマの市街地の無秩序な拡大が市の中心部と周辺地域の間に徐々に分断を生み出してきたこと」を指摘することから始まった。
その中で教皇は、「歴史的なローマの中心市街地は、ますます孤立し、ローマは、神聖さのすべてを生き生きと表現する場所というよりも、単なる観光地になる恐れがある」と指摘。「主に通勤者、観光客、商人が住む住宅の流出が起こっており、司牧活動は減少しているが、いくつかの良い面もは残っている」と述べる一方で、「周辺地域は、地方自治体から無視されることが多く、十分なサービスを受けられていない、と見做されるところがある一方で、「コミュニティの中心地として機能する教区に、しっかりとした存立基盤を見出している例もある」と指摘。
「この可能性は、あまりにも長い間眠っていたが、今こそ再考し、神の民のために役立てねばなりません」と述べ、教令に掲げたビジョンには次のように続けられている。「このビジョンでは、もはや孤立した中心部と断片化された周辺部はなく、壁ではなく、橋を求めるダイナミックな視点がある」とし、中心地区の境界を撤廃することは「開放を意味します」と明言した。
そして、地区の再編・統合の目的は、「特に市内の重要な地域で、司教協議会による協力と目的の統一を促進すること」にあり、「歴史的な中心部と周辺部に対する社会的、教会的な認識の間に時間とともに生じた『二極的な緊張』を克服することも目指したい」とこの教令は抱負を述べている 。
*信徒の必要性に合わせて司牧のリズムを調整
この自発教令は、福音の喜びに概説されている教会の社会教説の4つの原則に触発されたもので、教皇が先のルクセンブルク・ベルギー歴訪など、さまざまな場で述べてきた「司牧者たちが、現代の変化にミサ聖祭と司牧的集まりの調整も必要なことを認識せねば、不毛な結果を招く恐れがある」との警告を繰り返した。 さらに教皇は教令で、「特定の地区の神の民のリズムを考慮し、家族の生活に、もっと合うようにスケジュールを調整する重要性」を強調。「中央地区と他の地区を統合することは、これらの地域がローマの豊かなキリスト教の遺産を共有することを確実にすることを意味する。この再編・統合によって、歴史的な場で会議、祝賀会、セクターの集会を開くことができるようになり、ローマ・カトリックの存在の深い根源が前面に出てくることになるでしょう」と述べた。
*数を超えて:霊的体験の深さ
教皇フランシスコがかねてから述べている「時間は空間よりも大きい」という指摘は、「来年2025年の聖年の準備は巡礼者の数だけに焦点を当てるのではなく、歴史、美、そして一体感をより深く育むことに焦点を当てるべきであることを意味している。
教皇は、「聖年の扉は、世界中の巡礼者を迎える機会となる以前に、ローマ人自身の巡礼の目的地であるべきです」と強く訴え、聖フィリップ・ネリの道をたどる「マリアの冠」や「七つの教会の散歩道」、地下墓地への訪問、11月のヴェラーノ墓地、無原罪懐胎の祭日のためのスペイン広場、クリスマスのサンタ・マリア・マッジョーレ教会の聖なるゆりかご、聖週間の四旬節の教会、聖なる階段、サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ、そして5月と10月に発見される多くのマリアの象徴など、巡礼の例を挙げた。
*「弱者に気を遣えばうほど、私たちは、もっと美しくなる」
教皇はまた、美の概念についても考察され、「美が世界を救うのは、教会が美を救うことができる場合のみ」と主張され、「偽りの進歩」の名の下に、美をイデオロギー的に操作したり、消費財に貶めたりすることに対して警告された。
そして、母性の比喩に戻り、「ローマの歴史的中心部だけでなく、ローマの街全体が教会の母性的なケアの現れ」とされたうえで、「弱さは、私たちが注意を払う必要があるもう 1 つの美の表現… 弱い人々をケアすればするほど、私たちは、もっと美しくなります」とされ、真の福音主義精神でローマを、特に歴史的中心部で恵まれない人々のニーズに応える街にしてくれた多くのボランティアや労働者に感謝。最も弱い人々への奉仕に献身するさまざまな組織や同胞団を称え、教区に対して、彼らの努力を「認識し、拡大し、支援する」よう奨励された。
*教会における「領地」は交わりに対する罪
最後に、教皇は教会内の分裂の問題に触れ、「教区の統一を強化する代わりに、対立を助長するような”サブカルチャー”への所属を増やすことは意味がありません… 教会に”領土分割”を起こす”領地”があってはなりません」と訴えられた。
「教区を孤立した小宇宙に縮小したり、教会共同体が別々のサブカルチャーとして行動することを許したりすることは、私の見解では、教会の交わりに対する罪です。教区の統一を促進するのではなく、違いを強調することにエネルギーを費やす教会運動にも当てはまること」とされ、「ローマは、ローマ人であろうとなかろうと、すべての人が『くつろぎ』を感じ、巡礼者として歓迎される『一つの大きな家』なのです」であると強調された。
さらに、教会の「シノドスのダイナミズム」が教区内で受け入れられ、育まれ、団結の精神が促進され、『分離と対立の壁』を築く選良主義と利己主義の衝動を拒否し、”橋”を開放して教会の交わりを強化し、すべての人が個人的にも集団的にもキリストと彼の教会のみに属するように」促された。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)