「神学理論が分かっていない」保守派の前教理省長官が教皇批判(Tablet)

(2017.9.20  Tablet  Christopher Lamb , Christa Pongratz-Lippitt)

  6月に教理省長官を解任されたゲルハルト・ミュラー枢機卿が、教皇フランシスコには神学的な厳格さが欠けていると批判、バチカンでの業務への復帰の用意があることを示唆した。

 この発言は、15日にドイツのマンハイムで行われた自身の著作 ‘The Pope – Mission and Task’ を出版記念会での講演の中でなされたもので、枢機卿は、15世紀から16世紀初頭にかけて生きたイエズス会出身のドイツのベラーマイン枢機卿が、時の教皇に対して「私は神学の何たるかを理解していません」と告白したことを引き合いに出し、「ベラーマイン枢機卿はバチカンの要職から三度解任された」とし、(それにならって)自分もバチカンに戻る可能性があると考えている、と述べたうえ、大歓迎で迎え入れられるという期待を語った。

 現在69歳の枢機卿はバチカンの要職の事実上の定年である75歳まで、まだ6年の‶余裕〟がある。レーゲンスブルグの司教に任命される前にミュンヘン大学で教義学の講座を担当していた神学の権威であり、前の教皇ベネディクト16世によって2012年に教理省長官に任命された。もとは解放の神学の支持者でペルーの貧民街で夏を過ごしたこともあったが、教皇フランシスコが昨年3月に出した使徒的勧告「(家庭における)愛の喜び」に対する解釈で、教皇と対立した。具体的には、勧告が「離婚して再婚したカトリック教徒に聖体拝領を認める道を開いた」ことに、司教たちの間に公に異議を唱える動きが出、その‶リーダー〟の一人だったミュラー枢機卿は、勧告の内容に統一的な解釈が必要、と主張している。

 枢機卿はマンハイムでの講演で、「ヨーロッパでは、神学者たちが『信仰』とか『慈しみ』というような用語を使用する場合には、正確な協議資料を速やかに用意する。我々が慣れ親しんだやり方が、ラテン・アメリカには存在しない。彼らは我々よりも直感的だ」と語り、神学に対するラテン・アメリカの教会の受け止め方を批判することで、アルゼンチン出身の教皇とラ米出身の彼の神学顧問を‶薄いベール〟をかけながら批判した。

  そして、「彼らは、それが全体の一部だと考えずに資料をみる。我々はこのようなやり方に対して何がしかの敬意を払い、受け入れねばならない。だが、私はそれでもなお、文書を教えることに関しては、明確な神学的な準備がされることを望みたい」と述べ、「神学は現在の教皇の下で 不当な扱いを受けており、国務長官がバチカンにおける最重要のポストになっている」と非難、彼が長官を務めていた教理省が本来は国務省よりも高い地位にあるとの考えをほのめかした。さらに、「今や外交と権力が優先されている。それは修正すべき誤った戦略的動きだ」「教会が権力を求める時にはいつも誤った方向に行ってしまう。イエス・キリストへの信心が中心に置かれるべきであり、教皇は『救済の奉仕者』であるべきだ」と強調した。

 この出版記念会では、枢機卿の講演の後、プロテスタントの学者の司会で長時間の討論があり、前教皇ベネディクト16世の下で長く私設秘書を務め、現在は教皇フランシスコの公邸管理部長を務めているゲオルグ・ガンズワイン大司教も参加した。

 ミュラー枢機卿はまた、講演の中で、自分は今後もローマに留まり、司牧と学術研究の仕事を続けると述べ、そのかたわら、定期的にドイツに帰ることを考えているということだ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

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2017年9月21日