・米国務長官、信教の自由を侵す中国に強い態度をとるようバチカンに促す(Crux)

(2020.9.21 Crux 

   米国のポンペオ国務長官が、このほど発行された米国の宗教雑誌First Thingsに掲載された記事の中で、「中国国内の司教任命に関するバチカンと中国の暫定合意はカトリック信徒たちを困惑させている」と批判、バチカンに対して、中国による基本的人権を守るよう強く主張することを、バチカンに求めた。

 記事の中で国務長官は「聖座には、人権侵害、特に中国政府のような全体主義政権が犯した人権侵害に、世界の注意を向ける能力と義務があります」とし、20世紀において、「道徳的に証しする力」によって中東欧全域で共産主義を終結させ、中南米と東アジアの両方で「独裁的で権威主義的」な政治体制を改めさせるうえで、大きな役割を果たした”カトリック教会の実績”に言及した。

 そして、「今日、中国共産党に関しても、同じ道徳的に証しする力が行使されるべきだ」と述べ、第二バチカン公会議とヨハネ・パウロ二世、ベネディクト16世、フランシスコの歴代の教皇が皆、宗教の自由を「人としての権利の第一にくるもの」とする立場を堅持してきた、としたうえで、「すべての信仰共同体を党の意思と全体主義的なプログラムに屈従させようとする、中国共産党の容赦ない圧力に直面している今、教会が宗教の自由と連帯について世界に教えていることを、今こそ、バチカンによって力強く、粘り強く伝えるべきだ」と訴えた。

 国務長官は、中国政府・共産党が新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対して行っている不妊手術や妊娠中絶の強制、”再教育キャンプ”への拘留など、数々の虐待について具体的に言及。さらに、カトリックの司祭や信徒の恣意的な拘留や自宅軟禁、キリスト教会の閉鎖などの迫害行為について強く批判した。

 2018年秋になされた中国国内の司教任命に関する暫定合意の内容は「公開されたことは一度もない」が、教皇は中国政府が指名した候補者の中から最終的に叙階すべき司教を決定することができる、とされている。バチカンは、この合意が中国のカトリック教徒の状況を改善することを期待していたが、国務長官は合意から二年経った今、「この暫定合意が、共産党の迫害からカトリック教徒を守らず、共産党によるキリスト教徒、チベット仏教徒、法輪功学習者、その他の宗教を信じる人たちの恐るべき扱いに沈黙していることが明らかになった」と指摘。

 さらに、この暫定合意は「教皇への忠誠心が不明確なまま(注:中国政府・共産党の管理・統制下にある)司祭と司教を正当化する一方で、これまで教皇に忠誠を誓ってきたカトリック教徒を当惑させている」と述べ、多くの信徒はなおも、政府・共産党が認めた礼拝所を避けているが、それは「他の宗教の信者たちが、攻撃的な無神論の姿勢を強める政府・党当局によって苦しめられているのと同じ苦痛を味わわされる」のを恐れているから、とした。

 今月末に期限を迎える暫定合意について、バチカンと中国の責任者はともに、更新の見通しを示しているが、国務長官はこの時期、月末にバチカンとイタリアを訪問予定で、イタリアの通信社AGIによると、ローマには9月30日に滞在し、その間に教皇とイタリア政府当局者と会見する。

  国務長官はFirst Thingsの記事で、中国政府が6月末に香港に導入した国家安全維持法で、「テロ行為」「転覆を意図した行為」「外国勢力による内政干渉」と一方的に定義する行為を禁止したことに、香港市民が抗議の声を上げていること、同法導入後、著名なカトリック教徒と民主主義を守ろうとする指導者たちが逮捕されたことに言及。

 「私は彼らをよく知っており、その信条と誠実さを証明できる… 米国を含む多くの国が、中国政府・共産党の『人権侵害の加速』に『強い嫌悪』を示している、とし、「歴史が教えるのは、全体主義の体制は暗黒と沈黙の中でのみ、生き残り、彼らの犯罪と残忍さは、気づかれず、語られることがない、ということだ」と警告した。

 中国共産党がカトリック教会と他の信仰共同体を従属させようと必死になれば、「人権を軽視する政権は大胆な行為に出るだろう… そして、今日の独裁者よりも神に敬意を払う勇気ある宗教者たちにとって、暴政に抵抗するために払わねばならない犠牲は高いものとなるだろう」と予想し、「私は祈ります。中国共産党との交渉において、聖座と、一人一人の命に力を与える神のひらめきを信じる人々が、聖ヨハネの福音書にあるイエスの言葉ー真実はあなた方を自由にするーを心に留めることができますように」と記事を締めくくっている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2020年9月22日

・世界60か国、300以上の人権団体が国連に中国の人権侵害への対処要求-バチカンはいつまで”沈黙”?

 中国政府・共産党による香港、新疆ウイグル自治区、チベット自治区などでの信教の自由を含む人権侵害が激しさを増していると伝えられる中で、世界60か国以上の民間人権団体が9日、共同声明を発表。国連に、中国政府の人権侵害を扱う独立の国際的な仕組みを早急に構築する必要を訴え、国連のアントニオ・グチエレス事務総長とミシェル・バチェレ人権高等弁務官に対し、中国による広範な人権侵害に対処する責任を負うように要請した。

 中国政府・共産党の国内外での人権侵害の動きは、6月末の香港に対する国家安全維持法の導入以来、さらに激しさを増し、国際社会からの批判の動きが高まっており、今回の世界の人権団体を網羅する声明の発表に至ったわけだが、そうした中で際立っているのは、本来なら、信教の自由を核とする人権の擁護の先頭に立つべきバチカンが沈黙を続けていることだ。

 中国政府・共産党と事を構えることが、中国国内に6000万人いるとされるカトリック信徒の安全を脅かすことになる、さらに言えば、今月下旬に迫った中国国内の司教任命に関するバチカン・中国暫定合意の期限を前に、現在進められていると言われる延長交渉に影響を与えたくない、という思惑が、沈黙の背景にある、と言われる。だが、中国国内では、カトリックだけでなく、ほぼ同数いるとされるプロテスタント各派、あるいは仏教など多宗派の信徒たちも、政府・共産党への服従を強制され、それを拒む信徒に苛酷な迫害がなされていると、繰り返し現地から伝えられている。既に、信徒の安全は強く脅かされているのだ。

 現在の沈黙は、バチカンがナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺を知りながら、信徒たちを守ることを理由に、沈黙を続け、結果的にその恐るべき蛮行を黙認した、と国際社会から糾弾され、謝罪の追い込まれたという過去を連想する関係者も少なくない。現在の国際社会の動きの中で、今後のバチカンの振る舞い、特に”暫定合意”にどう対処するのか、期限が迫る中で、対応が注目される。

 

 共同声明に参加したのは、Human Rights Watch, Freedom House, International Service for Human Rightsなど320団体。7月に国連の独立人権問題専門家チームが中国当局による深刻な人権侵害の実態について、異例の報告を発表し、国連総会に対して「中国政府に基本的人権を守るようにさせる決定的な措置」を提言したのを受ける形で、声明が出された。

 声明では、香港から新疆ウイグル、チベットなど中国全土にまたがる中国当局による人権侵害の動きに早急に対処する必要を訴え、さらに、そうした国内の人権侵害にとどまらず、海外にも、人権活動家を狙った工作、人権運動の監視、報道検閲など人権無視の動きを拡大させ、国際的な人権侵害が深刻化している現実を指摘。

 また、「国連のメカニズムを使って救済を求めようとする中国の活動家を迫害し、世界中の国々で起きている深刻な人権侵害と国際犯罪の実態を精査する動きを妨げるすることで、国連人権理事会の権限を捻じ曲げている… 自国についての人権記録を国連が検討することを”圧倒的な干渉”をもって拒否している」と中国の姿勢を強く批判している。

 声明に参加した International Service for Human Rightsのホームページによると、.同団体のアジア担当のサラ・ブルックス氏は「中国の人権軽視はもはや、自国民のみにとどまらなくなっています。 国際的な基準を書き換えようとする独裁者たちを支援し、国際的な人権擁護の取り組みをかつてなく困難にしている」と警告し、「今回の共同声明は、世界中の組織が連合し、自分たちの共同体社会のために立ち上がる、初めての取り組みです」と強調した。

  また Chinese Human Rights Defendersのレニー・シア氏は「中国当局は、人権擁護家たちを、国連の人権活動と協力したことへの報復として拷問、失踪の強制、投獄、弁護士資格のはく奪などで迫害しています。国連組織はもはや、このようなひどい扱いを忍耐する場合ではありません」と訴え、 Amnesty International中国チームの責任者、ジョシュア・ローゼンツバイク氏は、「中国当局が国の内外で人権を踏みにじることに、国際社会はもはや我慢できません… 思い切った行動をしなければ、事態は悪化するだけです。国連加盟国が協力し、中国政府・共産党が犯している人権侵害を公式に監視し、効果的な対応をすることが急務です」と、呼びかけている。

 

2020年9月11日

・オロリッシュEU司教協議会委員長、”新型コロナ後”の欧州と教会を語る(CRUX)

(2020.9.4 Crux  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

Cardinal predicts Church, Europe will be ‘weaker’ after pandemic

     オロリッシュ枢機卿 (Credit: Felix Kindermann/courtesy COMECE via CNS.)

*このままでは、カトリック教会も欧州も”新型コロナ後”に弱体化する

 ローマ発ー欧州連合の司教協議会委員長に今春就任したジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルグ教区長)は、バチカンの機関紙L’Osservatore Romanoとのインタビューで、新型コロナウイルスの大感染の影響について述べ、「大感染の結果、カトリック教会も欧州も、ともに弱体化するでしょう」と警告。

 さらに、「欧州は、アフリカの資源を搾取することで、豊かになった。それゆえ、西欧諸国はアフリカに借りを負っており、新型コロナ感染で苦闘している彼らを助けねばなりません」と強調した。

 このインタビューで、枢機卿は、新型コロナ大感染の結果、公的ミサが何か月も中止になり、オンライン・ミサで代替され、教会が閉鎖され、教理の学習が中断され、そのほかの秘跡も制限されるなど、教会と信徒たちは多くの損失を受けた、とし、大感染が終息した後、「教会に行く人の数は減るでしょう」と述べた。

 自分の国、ルクセンブルグにおいても、「カトリックを実践する人の数は減るでしょう。なぜなら、ミサに来ない人たち、”文化”として教会に来ていた人たち、左右両派の”文化的カトリック信徒”は、もう教会に来なるからです」と指摘。

 そして、「そういう人たちは、人生はとても快適なものだと思っていました。教会に行かなくても十分に満たされた生活ができる。初聖体、児童の教理学習なども、確実に参加者が減るでしょう… でも、それをとがめだてするつもりはありません。世俗主義の急速な拡大は、新型コロナ大感染よりずっと以前から、そのような傾向が起きてきたことを示しているからです」。

 

*新型コロナ大感染がもたらした危機をチャンスに、新たな福音宣教の形を

 新型コロナの大感染が起きなかったら、こうした事態になるのが10年遅れたかもしれないが、多少の遅いか早いかはあっても、結果は同じこと。「カトリック教会が信徒の減少に直面している以上、司祭も信徒も教会をもっとよくするために働かねばなりません… そうしないと、キリスト教信仰の文化は、長続きできず、単なる”文化的カトリック主義”になってしまいます」警告。新型コロナ大感染は、見方を変えれば、「素晴らしいチャンス。危機の本質を理解し、新たな福音宣教の形を作る為に、行動する必要がある」と訴えた。

 さらに、まず、行動と慈善活動を通して、そして言葉を通して、欧州における福音宣教を刷新する必要がある、と強調し、教会は「真に質素で、経済的にも貧しい、もっとキリスト的な存在にならねばならない。欧州において私たちは、もはや今の生活を続けられないような”消費者主義”に浸りきっているからです」と述べ、「欧州に住む私たちは、自分を窒息させるようになっている… 深く進む福音宣教が求められています。私たちは変わらねばなりません。根底から変わるように、と呼びかけておられるキリストの声を聴かねばなりません」と、欧州の司教、司祭、信徒たちに求めた。

 枢機卿は、新型コロナ大感染の結果、「西欧-米国と欧州-が、これまでよりも弱体化する一方で、新型コロナによって加速された現象が、西欧以外の国々や地域を成長させるでしょう」と予想し、「私たちはそれを現実として受け入れる必要がある。私たちの心にある『欧州中心主義』を捨て、謙虚な心で、人類の未来のために他の地域の国々と協力し、より大きな正義を得ることを学ばねばなりません」と欧州の人々皆に呼び掛けた。

 また、新型コロナ大感染に対する欧州のこれまでの対応について、「私が一番がっかりしたのは、欧州連合諸国の最初の反応ー加盟国が”国家主義的反応”を示し、まるで、連帯組織としての、欧州連合が存在しないかのように、振る舞ったことでした」と指摘。

 4月になっても、欧州の指導者たちが新型コロナで大打撃を受けている国々に対する救済計画について議論を続けているのを見て、「大感染は、欧州連合の終焉の合図になるのではないか」と不安になった。だが、その後、欧州の指導者たちが共通の対応チームを作り、新たな危機に直面した時に、同じことを繰り返すことは決してしない、と自身に言い聞かせていることから、希望を持てるようになった、とも述べた。

 

*欧州は、アフリカから富を得てきた、今はそれを返す時

 また、地理的にも、政治・経済的にも欧州と密接な関係を持つアフリカへの大感染の影響について、「多くの感染者、死者が出ていることもさることながら、アフリカ経済への打撃が深刻」とし、「アフリカの人々は、以前よりも一層、貧しくなっています。貧困救済へ連帯行動をとるために、現在の危機を利用する必要があります… 私たち欧州は現在、豊かであり、アフリカの豊富な資源からから利益を得てきた… だから、私たちは兄弟姉妹として、彼らが新たな経済的均衡を見出すように、欧州に難民を送り出さずに生活できるように助けねばならないのです」と欧州のアフリカに対する義務を強調した。

 枢機卿はこれまで、人々に対する最低所得補償制度の導入や、新型コロナ大感染で打撃を受けた貧困国に対する債務放棄などの提案を支持してきたが、欧州人として、「第二次大戦後に米国が欧州に対して実施した復興援助に倣って、何かしなければなりません… 小規模な支援では十分ではない。アフリカのために広範な開発計画を策定すること」を提唱する一方、「その実施は、大戦後の欧州に対するものよりも困難。それは、欧州は戦後、民主主義の政治制度を回復し、復興援助が生かされる体制があったが、現在のアフリカの国々には、それが生かされない政治制度があるからです」と問題点も指摘した。

 そして、そうした困難を克服するためにも、「カトリック教会だけでなく、アフリカの諸教会、諸宗派が、それぞれの役割を担い、アフリカの人々の生活向上に一致して働くことができれば、素晴らしいことです」と期待を述べ、「神は、アフリカと欧州を同じように愛しておられます。欧州を優先することがないのは、明白です… 欧州優先と考えるのは、”欧州中心主義”であり、キリスト教的な視点から、正しいことではない」とした。

*諸教会、諸宗派と連帯して、”共通善”を追求するように

 欧州のこれからについて、「過去の幾多の困難に打ち勝ってきたように、新型コロナ危機も克服できる、と信じています… 現在の大感染が始まった当初は、新たな世界の秩序が保たれないのではないか、と危惧しましたが、今は、欧州がその秩序を守れるだろうと、見るようになりました」と述べ、「キリスト教の諸教会には、連帯を推進するために他宗教の人々と共に働く特別の責任があります。他の人々と分かち合うために、持っている富を少しばかり犠牲にすることも含めて」と強調した。

 また、教会が大感染後の世界で福音宣教と連帯を進める際、政治に関わったり、一方的な見方をとったりする誘惑に陥らないように気を付ける必要がある、とし、「そのようなことは、私たちの仕事ではない。でも、欧州連合が重要だという事を確認することは、私たちがすべきことです… なぜなら、欧州連合抜きには、最貧国や、イタリア、フランス、スペインのように大感染で強い打撃を受けている国が、今よりももっと貧しくなり、北の地域の国々のように富める国が輸出の原動力になりえないから。私たちは皆、欧州連合を必要としているのです」と訴えた。

 最後に枢機卿は、「私は、”親欧州”ではなく、”共通善”を指向しています。共通善は、欧州よりも大きい」と述べ、「この世界には、キリスト教徒でなくても、より大きな連帯を理解し、それを求める数多くの男女がいる、と思います。ですから、私たちは、より大きな連帯を追求せねばなりません。それは、経済的にも、政治的にも可能なことです」と語った。

(オロリッシュ枢機卿(62歳)はルクセンブルク生まれ。イエズス会に入会後、1985年に来日。上智大学で外国語学部ドイツ語学科長、カトリックセンター長、ヨーロッパ研究所所長、学生総務担当副学長などを務め、日本には訳者を含め多くの知己を持つ。2011年に教皇ベネディクト16世からルクセンブルク大司教に、さらに昨年9月に教皇フランシスコから枢機卿に任命され、欧州のカトリック教会の指導的な立場にある)

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

2020年9月5日

・正教会総主教「”環境経済”への転換は必然」-9月1日「被造物を大切にする世界祈願日」に

 

Ecumenical Patriarch Bartholomew I - file photoEcumenical Patriarch Bartholomew I – file photo 

 全世界のキリスト教諸教会が参加する「被造物を大切にする世界祈願日」の9月1日、ギリシャ正教会のバーソロミュー・コンスタンチノープル総主教が声明を発表し、環境保護への決意を新たにするよう、正教会はじめキリスト教諸教会の全信徒に訴えた。

 この世界祈願日は、バーソロミュー総主教の前任者、ディミトリオス総主教が提唱し、他の正教会が倣い、さらに、教皇フランシスコが2015年に、カトリック教会もこの祈願日に加わることを発表していた。

 声明で、総主教は「地球の自然環境が、人類史上、かつてない脅威にさらされていることは、共通した認識になっています」とし、現代の進歩が大きな利益をもたらす一方で、それを誤って使うことで破壊的な事態をもたらしうる、と指摘した。

 さらに、「共通善、自然環境を守ることは、この地球に住む全ての人の共通の責任」であり、多くの人や共同体が環境を守ろうとしている中で、国家や経済活動体が環境のための決定を守れないでいる、と述べ、「これらを守るための決定的な行動がさらに遅れ、実りの無い議論や相談が続くことに、いつまで『自然』が耐えられるでしょうか」と訴えた。

 

*生態学的危機に対する人間の責任

 また、現在の新型コロナウイルス世界的大感染の危機に対処するための、社会・経済活動の抑制がもたらしている環境汚染の減少は、「現代の生態学的危機が人為的に起こされてきたこと」を実証している、とし、だからこそ、「”環境経済(環境保護を優先する経済)”への方向転換」が求められており、「地球環境への生態学的影響を考慮せずに経済的な決定をすることはもはや考えられない」と強調した。

 

*環境保護の先導者

 さらに、総主教は、環境保護の分野での、コンスタンティノープル総主教区のここ数十年にわたる取り組みに言及し、この取り組みは「教会の自己認識の延長」であり、単なる「新しい現象に対する反応」ではない、と述べ、「正教会のもつ生態学的な懸念は、教会の本質の一部。教会の活動はまさに”応用生態学”であり、被造物を大切にすることは神を賛美する行為。被造物を破壊することは創造された方を攻撃する行為です」とした。

*信仰はキリスト教徒による証しを力づける

 声明の最後に総主教は、環境に配慮する正教会の伝統は、「自然を人間が支配する」という考えに基づく現代文化の側面に対する防御手段を提供する、とし、「環境の危機にどう対処するかという深刻な課題に直面する中で、キリストへの信仰は、現在の文化のもつ諸問題を知るだけでなく、現代文明の可能性と展望を知る助けとなります」と語り、正教会の若い信徒たちに、「誠実なキリスト教徒、現代人として生きることの重要性を認識するように… 人間の永遠の定めを信じることが、この世で私たちが証しする力を強くするのです」と呼び掛けた。

 そして、「すべての被造物のために、全てをお創りになった全知全能の主の栄光へ、キリストに倣う行いにおいて実り多い、神に祝福された(正教会の)新たな年となるように」と,声明を締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年9月1日

・イタリア司教団が「新ミサ典書」を教皇に奉呈・「主の祈り」「栄光の賛歌」を修正

(2020.9.1 カトリック・あい)

 イタリアの司教団が多年にわたって策定を進めてきた新しいイタリア語ミサ典書が完成し、8月28日、教皇フランシスコに奉呈した。

 バチカンの公式発表では、教皇が直接、イタリアの司教団から奉呈を受けたことだけで、新ミサ典書の内容は明らかにされていないが、複数のカトリック系のメディアが1日までに伝えたところによると、注目されるのは、以前から、日本語を含む各国語の訳の欠陥が指摘され、教皇ご自身も各国語の翻訳を改めるよう示唆されていた、カトリック教会で最も重要な祈り、「主の祈り」に修正が加えられたことだ。

 その箇所は、現在は、イタリア語で「e non ci indurre in tentazione 」(英語では「lead us not into temptation」、日本語ではPope gets first copy of Italian Missal translation「わたしたちを誘惑におちいらせず」)とされているが、これを「 non abbandonarci alla tentazion」(英語「do not abandon us to temptation」、日本語試訳「誘惑に陥ろうとする私たちを見放さず」)に改める。

 また、「栄光の賛歌」についても、現行の「[pace in terra agli uomini di buona volontà」(英語では「peace on earth to those people of good will」日本語では「地には善意の人に平和あれ」)を、「pace in terra agli uomini, amati dal Signore」(英語で「“peace on earth peace to those people, loved by God」、日本語試訳「地には主に愛された人に平和」)に改める。

 イタリア司教協議会のクラウディオ・マニアゴ会長は、これらの語句の修正について「それらの言葉の持つ重要性について理解が不足していたことを意味します」と説明している。

 新ミサ典書は、今後数週間のうちに国内の全教区、小教区に配布され、来年の復活節から使用が義務付けられるが、各教会では新ミサ典書を入手次第、司祭の判断で使用を開始してよい、という。

 教皇ご自身が通常のミサでお使いになるのはイタリア語のミサ典書であり、その改定は、世界の教会のミサ典書改定を促すものとなりそうだ。

 

 Pope Francis looks through the new edition of the Roman Missal in Italian Aug. 28, 2020, during a meeting with officials of the Italian bishops’ conference in the library of the Apostolic Palace at the Vatican. (Credit: CNS photo/Vatican Media.)

 教皇フランシスコは2017年12月に、イタリアのテレビ放送TV2000のインタビューで、「主の祈り」にある「non ci indurre in tentazione」 (英語公式訳はこの直訳の「lead us not into temptation」 、日本語公式訳は「わたしたちを誘惑におちいらせず」)は「もっとよい表現」にすべきだ、との考えを明らかにしている。

 教皇はこのインタビューで、「この翻訳の言葉はよくありません」とされ、その理由を「人々を誘惑に❝lead”(導く、おちいらせる)のは神ではなく、サタンであるからです」とし、「この表現は変えるべきです」と語った。

 そして「(誘惑に)陥るのは私。私を誘惑に陥らせるのは彼(神)ではありません。父親は自分の子供にそのようなことをしない。すぐさま立ち直るように助けてくれます」と述べ、さらに「私たちを誘惑に導くのはサタン。それがサタンの役回りなのです」と強調しされた。

 この箇所をどのように改めるべきかについては、より正確に、こうした神学的な見方に従って、「don’t let me fall into temptation」とするのが適当、とし、フランスの司教団がこのほど主の祈りを見直し、英訳にするとこれまで「“Do not submit us to temptation」としていたのを「Do not let us into temptation」と改めたのを妥当との判断を示した。

 現在の主の祈りの言葉は、ギリシャ語訳をラテン語に翻訳したものをもとにしており、ギリシャ訳のもとは、イエスが実際に語られていたアラム語(ヘブライ語の古語)から来ている。教皇庁立グレゴリアン大学のマッシモ・グリリ教授は「ギリシャ語のこの箇所は『eisenenkês』で、文字通り訳すと『don’t take us inside』となると言い、そのように訳し直すべきだ、としている。

 教皇フランシスコはこのほど、教会法の部分改正を実施、各国語の典礼文の表現について、バチカンから現地の司教団に権限の比重を移す決定をしたが、従来のようなラテン語訳からの文字通りの翻訳を続けるか、それともギリシャ語やアラム語の原本を重視すべきかの議論は続いている。

 なお、このような教皇フランシスコの意向を受けて、日本の司教団が、「主の祈り」などの訳語を見直す作業に入っているかどうかは、明らかでない。

 

2020年9月1日

・「修道会の3分の1で虐待、被害者は1412人以上ードイツ修道会会長協議会が性的虐待の調査結果

(2020.8.28 カトリック・あい)

 

  ドイツのカトリック系通信社 KNAが26日報じたところによると、同国の392のカトリックの男女修道会を対象とした調査で、ここ数十年の間に少なくとも654人の修道士が性的虐待で訴えられていることが明らかになった。

 調査結果では、性的虐待の被害者は、児童、青少年、成年の被後見人など少なくとも1412人に上っており、うち約8割は男性で、残り2割が女性で占められている。

 この結果について、ドイツ修道会長協議会の会長であるシスター・カタリナ・クルイトマンは「これ以外にも報告されない被害者が存在します」としたうえで、「被害者たちは、性的虐待を聖職者から受けたのに加えて、彼らの属する修道会の指導者や修道士の心無い対応によって、さらに傷を深くしている」と指摘。「このことを深く悲しみ、改めて私たちの過ちを認めます」と、被害者、その家族など関係者に謝罪した。

 調査は、昨年、同国の392の修道会全てを対象にし、各修道会の総長、会長、あるいは管区長にアンケートを送付し、回答を求める方式で実施、全修道会の4分の3の当たる291の修道会から回答を得た。

 回答した修道会のうち、100の修道会は、様々な形の虐待で訴えられた、とし、修道会当たりの訴えの件数は、大半が10件未満だったが、中には100件を超える修道会もあった。虐待の訴えがあったのは回答した77の男子修道会のうち53、214の女子修道会のうち47。虐待で訴えられた聖職者の8割がすでに亡くなっている、という。また、虐待したと訴えられたのは修道士654人のほかに、58人の職員がいた。

 シスター・クルイトマンは、今回調査について「修道会における性的虐待についての調査のさらなる一歩」とする一方、「修道会会長協議会には、この問題の調査・研究を進めるための予算も人員も不足しており、我が国の司教協議会の性的虐待被害調査に匹敵する内容には至らなかった」とも述べた。

 一昨年に公表されたドイツ司教協議会の性的虐待調査では、全27教区で3万8000件を超える事案について分析し、1946年から2014年までの間に、性的虐待の被害者は3600人以上に上り、虐待を訴えられた聖職者は1670人に達している、などの結果を出している。

 被害が認定された人々への補償について、修道会は、司教協議会の規定に倣うとしているものの、実施には財政支援が必要、ともしている。司教協議会の基準では虐待1件当たりの補償額は、5000(約60万円)ユーロから最高5万ユーロ(約600万円)とされている。

・・・・・・・

 ドイツの聖職者性的被害者の団体「Eckiger Tisch」は、今回の調査結果と修道会の対応に対して批判的だ。

 広報担当のマチアス・カッシュ氏「大半の修道会は、性的虐待に対して責任をとることを、長い間ずっと拒否してきました… そして、自分たちの暴力と性的虐待の過去をどのように調べたいのか、調べるべきなのか、について話をする十分な時間がある、と、いまだに考えているのです」と語り、「各修道会の全ての記録は厳重に保管され、児童性的虐待の疑いが持たれた場合、検察当局に開示できるようにすべきです… どのような状況でも、修道会が”貧しい”ことを理由に、被害者に対する適切な補償を拒むことはできない」と注文を付けている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年8月28日

・新型コロナ危機対処へ、バチカンと世界教会協議会が連帯呼びかける共同文書発表

"Serving a Wounded World in Interreligious Solidarity" - cover design conceptualised by Sister Judith Zoebelein, FSE, of the Pontifical Council for Interreligious Dialogue
“Serving a Wounded World in Interreligious Solidarity” – cover design conceptualised by Sister Judith Zoebelein, FSE, of the Pontifical Council for Interreligious Dialogue

 この文書の特徴は、「父と子と聖霊の三位一体である神への信仰に宗教間連帯」の根拠を置いていることで、「すべての人間は家族、父の計画によって神に創造され」 「私たちの信頼と希望はイエス・キリストにあり」「私たち全員が聖霊の働きによってつながっている」。そしてこれは、普遍的な連帯の基盤となる「他者に奉仕するというキリストの模範」に倣い、「祈りを通して神に、奉仕と連帯を通して私たちの隣人たちに向かわせる聖霊の力」によって励まされる、としている。

 さらに文書は、「信仰と善意をもつすべての人々と共に、傷ついた世界で互いに奉仕する私たちを導く」ことが、キリスト教各派共通の原則であり、具体的には、「謙虚さと繊細さ、他者への敬意、同情、対話、悔い改め、感謝と寛大さ、そして愛」がある、と述べている。

 

 そして、「キリスト教徒が隣人に奉仕し、寄り添う」ための提案として、「苦難の証人となる方法を考えること」「霊性の共通の形を通して連帯を育てること」「若い人々の理想主義と活力を励まし、支援すること」、そして「宗教間連帯のための取り組みを再構築すること」を示している。

 この共同文書を発表した際の声明で、バチカンPCID議長のミゲル・アンヘル・アユソ・ギグソット枢機卿は「新型コロナウイルスの世界的大感染は、私たちの世界のもつ傷と脆弱性を明らかにし、私たちが、全人類家族への思いを持って、他の宗教的な伝統を持つ人々、そして善意の人々と連帯して対応せねばならないことを、知らしめました」と指摘。

  WCCの暫定事務総長、ヨアン・ソーカ博士は「新型ウイルスの大感染による危機の中で、人類家族は、互いを守り、私たちの共同体を治癒するための前例のない要請を、共に受けています」と述べ、「宗教間対話は、キリスト教徒としての私たち自身の信仰と存在についての信念を明確する助けとなるだけでなく、他の人々が持っているであろう様々な課題、そして創造的な解決策への理解に、私たちの心を開きます」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年8月28日

・ラテンアメリカで、聖職者性的虐待問題で2000人のバーチャル会議開催

(2020.8.3 Crux  Inés San Martín)

Latin Americans press fight against clerical sexual abuse

A screen-caption of the abuse prevention seminar organized via Zoom by the center for child protection of Mexico´s Catholic University (CEPROME) and the Vatican Safeguarding Taskforce, on July 31, 2020. (Credit: CEPROME.)

  アルゼンチン・ロサリオ発–新型コロナウイルスの世界的な大感染が続く中で、カトリック教会では公開ミサの中止など様々な影響を受けているが、ラテンアメリカでは、聖職者による性的虐待防止のための取り組みなど、いくつかの教会活動は続けられている。

 7月31日には、メキシコのカトリック大学児童保護センター(CEPROME)とバチカンの安全防護タスクホースが共催し、ラテンアメリカ司教協議会の後援を受けた、聖職者による性的虐待への対応についての”バーチャル会議”が開かれ、Zoom やFacebookを使って”が約2000人の男女信徒、司祭、司教、修道士が参加して、率直な意見交換が行われた。

 会議は、先月バチカンが発行した、聖職者による性的虐待の訴えに対する対応に関する指針についての「学際的考察」もテーマとなり、まず、4人のパネリストによる基調講演から始まった。

*イエスの「真理はあなた方を自由にする」という言葉を信じているのか?

 バチカンの聖職者による性的虐待を専門に扱っているドイツ人イエズス会士のハンス・ゾルナー神父は講演で、「私たちは教会の中で、しばしばヨハネ福音書8章32節にあるイエスの言葉ー真理はあなたがたを自由にするーを本当に信じていないようです」と指摘。

 「そうだとしたら、最も傷つきやすい人たちーイエスが側に来なさいと言われた人たちーが犯罪で受けた痛みと苦しみを認識するようになった時、人々がなぜ恐怖に陥るのかを、どのように説明するのですか?」と問いかけた。

 また、教会に対して、過ちを犯したことを認め、法を行う勇気をもつよう求めるとともに、ほぼ全員が性的虐待問題の関係者であるこの会議の参加者に対して、教会に欠けているものを補ってくれる外部の専門家の協力を得ることを強く勧めた。

*口だけで「信頼して」と言っても信頼回復は無理ー虐待被害者を案内役に「有言実行」

 そして、「教会は多くのところで、人々の信頼を失っている。信用と信頼は、『私を信頼してください』と言うだけでは取り戻せない。信頼回復は『有言実行』でしかできません」と強調した。

 この意見には他の3人のパネリストも同感し、バチカンの安全保護タスクフォースのメンバー、マルタの一般信徒、アンドリュー・アゾパルディ氏も「虐待防止の各種組織・団体は、虐待被害者によって案内される必要があります。なぜなら、彼らの積極的な関与が、教会を安全な場所にするためのカギだからです」と述べ、「この世界で、教会は良い場を持っていますが、性的虐待に断固とした姿勢を見せなければ、信頼を回復することは絶対にできない」と強調した。

*多くの性的虐待被害者は、信仰を失い、教会に「正義」を期待していない

 チリの女性信徒、リア・ホセフィナ・マルチネス・ベルナル氏は、同国の司教協議会が2011年に作った「性的虐待防止・虐待被害者対策全国会議」のメンバーで、悪名高いフェルナンド・カラディマ元神父の被害者3人が設立した非政府組織Fundacion para la Confianzaのメンバーとして活動しているが、彼女も虐待被害者の役割を強調し、性的虐待に対処する”cornerstone act”が、これまでの”沈黙”を破り、虐待被害を明るみ出したことを説明。

 「多くの被害者が、虐待されたことで信仰を失い、教会が自分たちに正義を示してくれるという期待も持っていません。でも、ほとんどの人には、国の法律か教会法で訴えを起こす動機があります。『自分たちに起きたことを、二度と繰り返してはならない』という気持ちです」と述べ、教会にとって重要なのは、加害者側の動機を解明するだけでなく、性的虐待を起こさせた環境を啓明することだ、と強調した。

 また、「熱狂的愛国主義と聖職者主義の共存は、健全な環境ー自己批判ができ、危険を伴わずに異議を唱えることができる環境-を作るのに何の助けにもなりません」と語り、「『神のご意志』という名の下に、(教会の当局者たちは)信徒たちを欺きました… 神聖な場所で、彼らは若者の信頼を裏切りました。十字架を背景にして、名乗り出た被害者を信用せず、あるいは『適切な措置を取る』と約束しながら、何もしなかったのです」と批判。

*教会は「隠ぺい」せず、真実を明らかにすべきだ

 さらに「教会は、実際に何が起きたのか、何がそのようなことを許したのかについて、隠ぺいするのでなく、真実を明らかにするようにすべきです。黙り込むのではなく、発言する自由をもち、被害者のことを忘れるのではなく、いつも頭に入れ、無難に済ますのではなく、正義を行う必要があります」と訴えた。

 そして、「では、私たち一般信徒の役目はなんでしょうか?召集を受けるまで、待っているのですか?それとも、目を覚まし、意見を述べ、”群れ”として行動するのをやめ、問題に関わろうとしますか? たとえ、そうした努力が、教会の官僚組織の壁にぶつかり、『これが今の教会の現実なのだ』と感じ、無駄と思われるかもしれないとしても」と問いかけた。

 メキシコ大学の受け入れセンターの責任者であるダニエル・ポルティーヨ神父は、聖職者による性的虐待問題でメディアが果たした役割を高く評価し、「新聞各紙の一面に性的虐待の問題が掲載されたことで、教会が、神が私たちに求められておられることをしていなかったこと、私たちがキリスト教徒としてすべきことをしなかったこと、福音とは正反対のことがなされるのを許してきたこと、が明るみに出されました」と語った。

*変革には、「真実」を語る”預言者”が必要

 そして「このような不祥事について、教会の信徒として、私たちは、被害者の痛みと、私たちの教会のメンバーたちの犯罪に思いをいたすだけでなく、自分たち自身が次世代の信徒たちにもっと良い場をつくるように強く求められていることを認識する必要があります… そのためには預言者が必要です。でも『預言』は『未来を語ること』ではない。『真実を話すこと』です」と述べた。

 さらに、「率直に言って、信徒としての私たちに『素晴らしい物語』が待っているかどうかは、分かりません… もしもある日、教会内部の怠慢と免責が過去の歴史の一部となるとしても、それでも、とても重要なのは、私たちを聖霊に導いていただくこと、教会を曇らせている性的言虐待の風潮が消え去るように、私たちの努力を傾けること。そうすれば、それが教会の未来となるでしょう」と強調した。

 

2020年8月4日

・ニカラグアで大聖堂が襲撃、歴史的な十字架像が焼かれる

ニカラグア首都マナグアのカテドラル 襲撃による火災で炭化した十字架像 2020年8月1日ニカラグア首都マナグアの「無原罪の聖母大聖堂」で、襲撃で焼かれ炭化した十字架像 2020年8月1日  (AFP or licensors)

 中米ニカラグアの首都マナグアの「無原罪の聖母大聖堂」が7月31日、襲撃され、400年の歴史を持つキリストの十字架像が焼損するなど大きな被害を受けた。

 教皇フランシスコは2日正午のお告げの祈りの中で、同国の人々の深い悲しみをともにされた。

 襲撃を目撃した人の話では、覆面の男が大聖堂の「キリストの御血礼拝堂」に向かって火炎瓶を投げつけ、大聖堂内に火災が発生、人々の信心の拠り所であるキリストの十字架像が焼かれるなど、深刻な被害を受けた。

 マナグア大司教のレオポルド・ホセ・ブレネス枢機卿は、大聖堂に対するこの攻撃を「テロ行為」として厳しく非難、2日を「祈りと沈黙」の日とし「挑発や憎しみの誘惑に陥らず、心の平和を育む」ための祈りを教区の信徒たちに呼び掛け、これに応じた信徒たちが、教区のすべての教会や礼拝堂で、またソーシャル・ネットワークを通して、十字架の前で祈りを捧げ、ロザリオの祈りや、断食が行われた。

 また、ラテンアメリカ司教会議のサイトで、ブレネス枢機卿は、ニカラグアの教会のこの祈りと沈黙の日は、「聖体におけるイエスの真の現存に対する侮辱と、尊重の欠如、冒涜への償いの行為」である、と述べている。

 同枢機卿は、この非道な行為は、司祭、修道者、信徒、そしてすべての善意の人々を傷つけた、と語る一方、この襲撃の犯人を赦すよう、信者らに願っている。

 ニカラグアは狭義の中央アメリカで最も広い国土を持つが、1936年から1979年まで続いたソモサ一家の独裁政治と、その後のニカラグア革命に始まる内戦で、経済発展が立ち遅れ、国民所得や識字率などが中央アメリカでも低い水準にあり、正常も安定していない。

 こうした中で、最近では、国内の教会で、聖体への冒涜や、聖具の窃盗、彫像や教会家具の破壊などの行為が相次ぎ、暴力と威嚇的な雰囲気が高まっていた。

教皇、ニカラグアのブレネス枢機卿にメッセージ

 (2020.8.3 バチカン放送)

 教皇フランシスコは、ニカラグアのマナグア大司教、レオポルド・ホセ・ブレネス枢機卿に連帯のメッセージをおくられた。

 このメッセージは、マナグアのカテドラルが、7月31日、聖堂内に投げられた火炎瓶によって火事となり、4世紀の歴史を持つ古い十字架像が焼け焦げるなど、深刻な被害を受けたことに対し、教皇の寄り添いと祈りを伝えるもの。

 ブレネス枢機卿に宛て、教皇は、「親愛なる兄弟、この野蛮な破壊行為のために、あなたと悲しみを共にしています。わたしはあなたとあなたの民に寄り添いたいと思います。すべての皆さんのためにお祈りしています」と記された。

 教皇の手書きのメッセージは、「祈りと沈黙の日」となった2日)、ミサの中でブレネス枢機卿によって読み上げられた。

 同枢機卿は、住まいからビデオを通して中継したミサの説教で、カテドラルを襲った「卑劣な」「テロ行為」に言及すると共に、教皇の連帯に感謝を表明。教皇の寄り添いは「わたしたちを信仰のうちに強め、前に進むための勇気を与えてくれるもの」と話した。

 一方で、マナグア大司教区のフェイスブックには、世界各地からの連帯のメッセージや、この「祈りと沈黙の日」を過ごすために信者たちが自宅の一角に作った、十字架を据えた小さな家庭祭壇の写真が数多くあげられた。

(編集「カトリック・あい」)

2020年8月4日

・「中国は信用できない、暫定合意再考を」米国の信教の自由担当特使がバチカンに警告(Crux)

( 2020.7.29 Crux  MANAGING EDITOR Charles Collins

U.S. ambassador for religious liberty warns Vatican: China can’t be trusted

Sam Brownback, U.S. ambassador-at-large for international religious freedom, speaks during a news conference at the State Department in Washington June 10, 2020. (Credit: Andrew Harnik, Pool via Reuters via CNS.)

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意が9月下旬に更新期限を迎えるのを前に、中国政府の支援を受けたハッカーがバチカンと香港の教会関係組織を標的にしたサイバー攻撃を仕掛けたとニューヨークタイムス(https://www.nytimes.com/2020/07/28/us/politics/china-vatican-hack.html)(https://www.nytimes.com/aponline/2020/07/29/world/asia/ap-vatican-china-hacking.htmlなどで報じられている。

 これについて、米国のサム・ブラウンバック「国際信教の自由」担当特使が26日、Cruxとのインタビューに応じ、「バチカンがこのことをよく見て、彼ら(注:中国政府・共産党)が(注:暫定合意の見直しについて)交渉しようとしている中身が何なのかを知るように、心から希望する」と警告した。

 特使は「仮に私がバチカンの高官で、これが交渉の相手で、私と交渉するやり方だ、と分かれば、私をスパイしている人々をどうしたら信頼して交渉を続けられるかについて、立ち止まってじっくり考えるのを余儀なくされるだろう」と、交渉を中断して、期限延長の是非も含めて暫定合意そのものについて再考の期間を持つよう、暗にバチカンに求めた。

 ブラウンバック氏は共和党きっての保守派で、2002年にカトリックに改宗。カンザス州知事、連邦下院議員、上院議員を経て、2017年にトランプ大統領から「国際信教の自由」担当大使に指名された。中国や北朝鮮の人権侵害、宗教弾圧についてはかねてから強く批判しており、中国政府は入国禁止で”報復”しているが、これについて「信教の自由の侵害と戦う私にとっての”名誉ある勲章”として受け取ることにする」と述べた。

 中国での宗教に対する迫害は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人イスラム教徒の扱いに対する国際的な批判が強まって以来、情報が外部に漏れるのが従来以上に厳しく監視されるようになっているが、現在、推定で100万人を超えるウイグル人が強制収容所に収容されているとされ、イスラム教の信仰と文化を捨て、共産党に忠誠を誓うよう強制されている、と言われる。

 さらに、ウイグル族の人々に(注:人口を減らすための)厳格な産児制限を課しているとして非難されており、米国の「国際信教の自由委員会」が、このような中国当局の行為は「国際法上の『genocide(大量虐殺)』に相当する可能性がある」として、国連と米政府に調査を要求している。

 これについて、特使は「genocideという用語を使う判断は国務省がするものだが、用語はともかく、我々米国政府は、中国における信教の自由と人権の著しい侵害に対して、断固とした姿勢で臨んでおり、これからもそうした姿勢を続ける… 米国政府は、新疆ウイグル自治区における人権侵害に対して、世界のどの国よりも厳しい措置をとってきたが、このような中国の行為は、この地域に留まらない。中国は、こうした政策と体制を世界中で進める意図を持っている」と言明。

 「宗教的迫害の対象は、ウイグル人イスラム教徒にとどまらず、キリスト教徒、仏教徒、法輪功の信徒などに広がり、多くの信徒を苦しめている… あらゆる宗教に対する”全面攻撃”を仕掛けている、と言っていい」と強く批判した。

 また、香港には、英国からの返還の時点で一国二制度で市民の自由が保障されたにもかかわらず、中国政府は先月末、「香港国家安全維持法」を導入し、中国本土からの直轄規制を強行したが、これについて特使は「宗教に対する重大な脅威。返還の際の英国との取り決めに対する違反行為だ」と中国・共産党と強く非難。「今の中国は、冷戦時代のソ連が書いた演劇の脚本どおりに動いている… 支配を追求し、国民を支配し、支配を海外にまで及ぼそうとしているのです」と

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2020年7月31日