・「アヤ・ソフィア」をイスラム寺院に戻すトルコ大統領決定に正教会からも批判の声(VaticanNews)

(2020.7.11 Vatican News  Nathan Morley)

 イスタンブールのユネスコ世界遺産、「アヤ・ソフィア」寺院は、西暦537年にキリスト教の大聖堂として建てられたが、約900年後の1453年にオスマン帝国がこの地を征服、イスラム教のモスクに変えられた。だが、その約500年後の1934年にトルコ共和国の創設者、ケマル・アタチュルクによって、この二つのいずれの宗教にも属さない博物館として、全ての人に開放され、世界中から年間350万人以上が訪れていた。

 だが、その寺院を、トルコのエルドアン大統領が10日、大統領令を出し、イスラム教のモスクとした、と発表した。同国の最高裁判所が、アタチュルクの判断は違法であるとして、博物館として位置づけを取り消す判決を下したのを受けたものとしている。

 今回のトルコ大統領の決定について、東方正教会のリーダーである コンスタンディヌーポリ総主教、ヴァルソロメオス1世は11日、声明を出し、大統領決定に遺憾の意を示すとともに、「アヤ・ソフィアは現在の所有者だけでなく、全人類に属しています…トルコの人々は、この素晴らしい記念碑の普遍性を輝かせる大きな責任と名誉を担っている」とトルコの人々に呼び掛けた。

 総主教はさらに、アヤ・ソフィアは「キリスト教とイスラム教の間の出会い、対話、連帯と相互理解の象徴的な場所として深い意味を持つ」と強調し、今回のモスクとする決定は、「世界中の何百万人ものキリスト教徒をイスラム教に反発させることになりかねない」と警告した。

 また、ロシア正教会のキリル総主教は、「これまで何百万のキリスト教徒が、懸念を表明していたが、それが聞き入れられなかった」と遺憾の意を示し、「アヤ・ソフィアをモスクに変えることは、キリスト教への脅威となる」と述べた。

 世界遺産の登録を行うユネスコ(国連教育科学文化機関)のアズレ事務局長も声明を発表し、トルコ政府の決定に強い遺憾の意を示し、「アヤ・ソフィアは何世紀にもわたり、ヨーロッパとアジアが交差してきたこの地域の歴史を伝える名建築だ。博物館という位置づけは、その普遍的な価値を反映している」と強調。トルコ政府に対し、「世界遺産としての卓越した普遍的価値に変更を加えないことを保証する」ように求めた。

 ギリシャの ミツォタキス首相は「モスクへの変更は、アヤ・ソフィアの信仰一致の性格に対する侮辱… 世界に不可欠な歴史文化遺産として認めているすべての人を怒らせる決定だ」と批判。この決定はトルコとギリシャの関係だけでなく、欧州連合、ユネスコ、世界社会全体との関係にも影響を与える」と警告した。

 欧州連合(EU)のボレル外務・安全保障政策上級代表も、ブリュッセルの記者団と会見し、今回のエルドアン大統領の決定に深い遺憾の意を表明した。

 こうした世界の各方面からの批判の声に対して、当のエルドアン大統領は、「トルコは、アヤ・ソフィアをモスクに戻すために、主権を行使した… これに対する批判は、すべて、我々の独立に対する批判だ」と反論している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年7月12日

・フランス、来年末までに20人の新司教任命が必要-指導体制刷新の好機(LaCroix)

Pope Francis set to further re-shape French hierarchy

2019年11月6日、フランスのルルドでの司教総会のミサに集まった司教たち(写真:GUILLAUME POLI / CIRIC)

(2020.7.9 かとりっく・あい)

 フランスのカトリック教会で今起きている事態は、規模がはるかに小さいが、似たような”境遇”にある日本の教会にとっても、学ぶところが少なくないようだ。以下にLaCroixの記事を翻訳して転載する。

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(2020. 7.6  LaCroix France Christophe Henning and Anne-Laure Juif)

*フランスで司教不在の教区が4つ、来年末までに15人が司教定年、さらに…

 フランスのカトリック教会では、現在、司教のいない教区が4つあり、来年末までに、さらに15人の司教が定年を迎える。

 フランス西部のバイユー・リジューの教区長、ジャン・クロード・ブーランジェ司教は3月1日に75歳の司教定年を迎え、教皇フランシスコに辞表を提出した。そして、そのわずか3か月月後、教皇は辞表を受理した。そして、教区の顧問団は、教皇が後任司教を選ぶまでの間、教区長を代行する教区管理者を選んだ。

 フランスでは、さらに15人の司教が来年末までに定年を迎え、教皇は後任の司教を任命する必要に迫られることになる。また、定年に達しなくでも、健康上の理由から早期退任を希望する可能性のある司教もいる。

 例えば、新型コロナウイルスに感染したミシェル・サンティエ司教(パリ郊外のクレティユ教区長)は「もはや、教区の信徒たちを導くのに必要なエネルギーがありません」と語っている。

 

*駐仏バチカン大使の不祥事で後任司教任命に障害

 現在、フランスには、司教が空席の教区が4つある。フランスのカトリック教会で最も重要で、精神的なリーダーとも言われるリヨン大司教区の大司教任命は差し迫った課題だ。ナント、サン・クロード、そして先に述べたバイユー・リジューの各教区も司教任命が求められている。

 つまり、フランスのカトリック教会の高位聖職者は大幅な入れ替えの時期を迎えており、司教としての資質が備わった人材をみつける大変な努力が求められているのだ。

 フランスでは昨年11月以降、新たな司教の任命はない。後任司教を見つけるのは容易ではなく、手続きには時間がかかる。 新規の司教任命が延び延びになっている主な理由は、間違いなく、前バチカン大使のルイジ・ベンチュラ大司教を巡る問題だ。大司教は2009年からフランス駐在大使を務めていたが、複数の性的暴行の訴えを受け、昨年9月にローマに戻された。(「カトリック・あい」注:バチカン大使は、駐在先の国の司教を教皇が任命する際、候補者を教皇に推薦する実質的な権限を持つ。このため、推薦作業に空白が生じてしまったのだ。)

 教皇は今年に入って1月にセレスティーノ・ミリオーレ大司教を後任の大使に任命、3月5日に着任したこの熟練のイタリア人外交官は、司教人事について作業を急いでいる。運悪く、新型コロナウイルスの大感染の中での着任となったが、新大使は「関係者たちと連絡に支障はない」と語り、司教候補選定の作業が進んでいることを強調している。

*20人もの司教候補をどうやって見つけるか?

 だが、新大使は、現在空席の4教区の司教、さらに来年末まで定年を迎える15人の司教、そして辞意をもらしている少なくとも一人の司教、あわせて20人もの新司教をどこで見つけるのだろうか?

 カトリック教会では伝統的に、司祭自らが司教に立候補することはない。司教任命に当たって、バチカンはまず、最初に現役の司教たちの意見を聞くー「教区あるいは修道会に、司教としての責任を果たすことのできる司祭がいるか?」。

 「最良の人材」の中から適任を選ぶのを諦めることを考えねばならない司教の困惑は、容易に想像できる。

 次の候補選定作業は、現地駐在のバチカン大使が、対象と考えられる司祭を呼んで話を聞くことだ。だがそれで、作業が終わるわけではない。司教候補に選ばれた”幸運の持ち主”は、推薦をいつでも断ることができる。そうしたことは、一般に考えられているよりも、もっと頻繁に起きている。

 バチカン司教省長官のマルク・ウエレット枢機卿は、全世界のカトリック教会で、10人のうち3人の割合で、司教となることを断る司祭が出ている、と指摘している。負担が重すぎる、あるいはリスクが高すぎるー司教になることは、(注:司祭になることとは)まったく別の召命だ。こうしたことからも、適任の司教候補を見つけるのに何か月もかかるのは、無理の名ことだと言えるだろう。

 信徒数からみて最重要のいくつかの教区は通常、すでに司教になっている人で充足されている。それは一種の「司教の椅子取りゲーム」のようなものだ。だが、このことは、それよりも小さい教区から霊的指導者を奪うことにつながる。この結果、いくつもの司教の空席を埋めるために、司祭たちをリクルートする必要が出てくる。そのような事情もあって、最近、教皇が任命した補佐司教たちの中に、ある種の”予備軍”が生まれるようになってきたー彼らは若く、教区のリーダーとなる経験を積んでいる。

 

*”司教若返りの波”がフランスの教会の再活性化に

 確かに、フランスで新たに司教に任命される必要のある20人は、全世界に約5700人の司教がいることを考えれば、それほどの数ではないかも知れない。だが、前向きに考えれば、”牧者”の新しい波”は、フランスのカトリック教会の指導部に活力を取り戻させ、変貌させることを期待できるのだ。

 フランシスコが2013年に教皇に就任して以来、フランスの99の教区のうち47の教区で司教を任命している。次の任命があれば、現教皇任命の司教がフランスの全司教の過半数を上回るー教皇フランシスコの環境回勅 Laudato sì の司教の世代が形作られることになるのだ。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2020年7月9日

・南部アフリカ司教団とナイジェリアの大司教が「女性、子供への性暴力とも戦おう」と呼び掛け

(2020.6.28 カトリック・あい)

 新型コロナウイルスの世界的大感染は保健・医療体制が不十分な地域の多いアフリカも襲っているが、南部アフリカ・カトリック司教協議会(SACBC=南アフリカ、ボツワナ、スワジランドの三国司教団で構成)のSACBC正義と平和協議会が26日、声明を出し、新型ウイルス大感染が始まって以来、女性差別を背景にした暴行・殺人が急増している、とし、このような悪化を食い止める努力を各国政府、民間企業、一般市民に訴えた。バチカンの準公式ニュース・メディアAgenzia Fidesが26日付けヨハネスブルグ発で伝えたもの。

 声明で南部アフリカの司教団は、政府、民間企業、市民団体が新型ウイルスと戦いにおいて、厳正な物理的、社会的な感染防止措置とともに、資金を一つに集めることができれば、「女性差別をもとにした暴行・殺人との戦いにおいて、新型ウイルスに対するのと同様の積極的かつ広範な取り組みが可能になる」と強調している。

 また声明は、「教会もその取り組みに参加せねばならず、女性と子供たちに対する男性による暴力に、神が”ノー”と言われているのだ、という明確なメッセージを徹底するよう、すべての小教区に求めた」とした。

 「神は私たちの存在の全てー心、頭、そして体ーを創造されました。虐待に遭っている体は、キリストに愛されている体です。貴重な体です。私たちが女性差別をもとにした暴力を振るうのを、神は深く悲しまれます。私たちは、暴力的でなくなることを信じています」としたうえで、カトリック教会がすべきこととして「信徒に自分がすることについて責任をもたせる必要があります。悪事を行おうとする者が、(注:そうしないために)必要な助けを得るように導かねばなりません。また、私たちは被害者を治癒するために努めねばなりません」と述べた。

 また司教、司祭、信徒としてなすべきことは「人々を教育し、女性ば別をもとにした暴力を振るわせないようにすることです」とし、「教会としての私たちには、(注:女性や子供たちへの暴力の事実に対して)否定し、黙り、抵抗し、応える用意をしなかったことで、現在の事態を招いた責任があります」と反省した。

 南アフリカでは、新型コロナウイルスの大感染が始まる前から、家庭内暴力が非常に多く発生していたが、都市封鎖がされた最初の週に、警察当局は女性差別に基づく暴力行為について8万7000件を上回る報告を受けた。少なくとも21人の女性と子供が殺害され、うち5人は6月一か月で殺されている。

 南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領は17日の会見で、これまでに新型ウイルスに9万7000人以上が感染し、死者は1930人に達している、とし、そうした中で女性差別に基づく暴力行為の多発を「二つ目の”大感染”」と呼んだ。「私たちは国として、1つではなく2つの破壊的な感染の真っただ中にいます。二つの性質と原因は非常に異なりますが、私たちが互いに世話をしあうなら、この二つは克服できるのです」と訴えた。

 さらに、「この夜、南アフリカの女性と少女たちの前で、この国で猛威を振るっている新型ウイルスと別の大感染、つまり男性による女性と子供たちへの暴力と殺害について話しをするのは、とても辛いことです。男性として、夫として、そして父親として、私は私たちの国の女性と子供たちに対して繰り広げられる酷い行為に戦慄を覚えます…」

 「新型ウイルスの大感染で心身ともに弱っている今、理解しがたいような残忍な暴力が、女性や子供たちに対して解き放たれてしまっているのです。強姦犯や殺人者が私たちの周りを歩いています。彼らは、私たちの共同体社会の中にいます。彼らは、私たちの父親、私たちの兄弟、私たちの息子、そして私たちの友人-人間の命の神聖さに全く考慮を払わない、乱暴な男たちです」と糾弾した。

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 また、有力カトリック・ニュースメディアのLa Croixが25日付けナイジェリア発で伝えたところによると、同国の首都アブジャのイグナチウス・アヤウ・カイガマ大司教がFidesに、新型コロナウイルス大感染の中で、ナイジェリアで強姦なの凶悪犯罪が増えており、こうした社会的状況を「レイプ文化」と呼んで強く批判。

 「レイプは悲惨な罪の行為であるだけでなく、極めて野蛮な犯罪的な行為でもある… 私たちはそのような凶悪犯罪の加害者が法の裁きの前に立たされるのを希望します」と訴えた。

 ナイジェリアの警察当局によると、新型ウイルス感染拡大防止のための都市封鎖が実施されて以来これまでの5か月間に717件の強姦事件を捜査した。そして、特に酷い二つの強姦事件のあと、女性たちがで、犯人逮捕、処罰など速やかな対応を当局に迫る街頭デモを行った。一件は、22歳の女子大学生が、キャンパス閉鎖のため出かけた教会で強姦されたうえに殺害された事件、もう一つは、覆面をした4人の男が、自宅にいた少女を集団で強姦した事件だ。

 女性に対する性的暴行に抗議する  Women Against Rape group in Nigeriaは議会に対する請願の中で「これらの情勢に対する残虐行為はたまたま起きたのではなく、ナイジェリアの不健全な文化的慣行の集大成」と批判した。また、Women at Risk International Foundationのラゴス支部婦女暴行危機管理センターのアニタ・ダシルバ・イブル博士は「強姦はナイジェリアの伝染病です」と米国のテレビ・ネットワークCNNの取材に語った。

 ナイジェリアの36州の知事は、女性と子供に対する強姦、女性差別に基づく暴力について「緊急事態宣言」を出した。

 国連は、ナイジェリアの少女の4人に1人が性的暴力の被害者であると試算しているが、司法当局、警察当局の不備のため数字が低くとどまっている可能性があり、実際には、これよりも高い確率で被害が起きている、と現地の関係者は見ている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

2020年6月28日

・全米司教協議会が青少年性的虐待被害と対応に関する年次報告書ー日本の司教団も見習って…

US Bishops issue annual child and youth protection reportUS Bishops issue annual child and youth protection report  (©soupstock – stock.adobe.com)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年6月27日

・フランスの教会、今年は93教区のうち6割が司祭叙階ゼロに(La Croix)

(2020.6.23 LaCroix  Xavier Le Normand)

    フランスのカトリック教会は今年、2019年よりも1人多い126人が司祭に叙階される。

 だが、全国に93ある教区別にみると、6割に相当する57教区で司祭叙階ゼロとなる見通しだ。フランス司教協議会(CEF)が22日に新聞発表したところによると、トゥール、ライムス、ポワチエなどの歴史的に重要とされる大司教区で、今年1人の司祭叙階もない。

 叙階式は先週実施、あるいは新型ウイルス感染防止のため9月に延期した一部の教区を除き、大半の教区が今月27日から28日にかけて予定。司祭叙階が予定されている126人のうち教区司祭は83人、うち8人はフレジュス-トゥーロン教区、6人はパリ大司教区、それぞれ5人がアヴィニョン教区とヴェルサイユ大司教区だ。

 さらに、修道会や信仰共同体所属で教区で奉仕する司祭が17人、修道会司祭が21人。イエズス会の司祭叙階はゼロ。また、CEF発表では他に5人が「トリエント典礼」による司祭叙階がされ、3人はInstitute of the Good Shepherd、2人はPriestly Fraternity of St. Peter所属。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 注:「トリエント典礼」は「伝統的ラテン典礼」などとも言われ、ラテン語のみで行われる。1960年代の第二バチカン公会議まで1500年間にわたって続けられていたが、同公会議を機に各国語の典礼が主流となった。だが、「公会議以前の典礼」復活に強い願望を持っていた前教皇ベネディクト16世が「ローマ典礼の例外的な形」として、トリエント典礼の使用を認めていた。

 

2020年6月25日

・「協議進展へ祈ろう」米欧の司教団が米露の新戦略兵器削減条約交渉を前に共同声明

Pope Francis in Hiroshima, Meeting for Peace, 24 November 2019昨年11月、広島での平和の集いに参加された教皇フランシスコ  (Vatican Media)

 

2020年6月20日

・ポーランドで虐待の訴えを隠しバチカンに通告された司教が、大司教を批判(Crux)

(2020.6.17  SPECIAL TO CRUX  Paulina Guzik

 ポーランド司教協議会の児童保護の責任者を務めるヴォイチェフ・ポラック大司教(グニェズノ大司教管区長)が先月、バチカンに対して、児童性的虐待を隠蔽した疑いのある同国の司教を調査するよう要請したが、この司教が、同国の司教たち宛てに、ポラック大司教を非難、攻撃する手紙をばらまき、聖ヨハネ・パウロ二世を生んだ教会の信用を失墜させる、さらなる騒動を巻き起こしている。

 大司教によるバチカンへの調査要請は、子供時代にポーランドの司祭から性的に虐待され、その事実が管轄の司教によって隠蔽されたとする兄弟二人が、それを告発するドキュメンタリー映画を作成、インターネットを通じて放映したのを受けたものだったが、その映画の”主役”が、問題のエドワルド・ヤニアック司教(ポーランド中央部のカリシュ教区長)。司教は、その中で、教区司祭に息子が性的虐待を受けたと訴えに来た家族を、執務室から追い出し、バチカンの担当部署への報告もしなかった。

 ヤニアック司教が、司教たちに出した手紙には問題が二つある。一つは、手紙の宛先にポラック大司教と、彼の支持者と見なされた司教たちが入っていなかったこと、その内容がメディアに漏洩し、しかも事実誤認が多く含まれていたことだ。

 ポーランドの日刊紙Gazeta Wyborczaは、6月15日付けで、漏洩した手紙の内容を伝えたが、それによれば、司教はポーラックを、案件をバチカンに報告することで、「大きな混乱」を引き起こし、「教会のイメージを傷つけた」と決めつけ、映画が公開される前に、制作者と会っていたと非難。「彼らが教会の敵であり、どんな動機でその映画を作ったのか、言うまでもない」と述べた。

 また、ポーランド司教協議会が国内の性的虐待被害者を支援するために設立した聖ヨゼフ基金を、高位聖職者の思惑で作られたもの、とし、「当時の司教たちは基金の設立に反対だった」と述べるとともに、「司教たちが基金構想に反対した秘密投票の後で、その結果が”賛成多数”に変更されたが、そのような経験は24年の司教生活で初めてだった」とも書いている。

 さらに、ヤニアック司教は、司教協議会におけるポラック大司教の児童保護の責任者選出も「大司教の体面を傷つけないために、強制されたものだった」とした。

 この手紙がマスコミで公けにされた15日、ポーランド司教協議会のアルツル・ミジンスキ事務局長は、その内容について、「聖ヨゼフ基金の創設は、2019年の司教協議会総会で大多数の司教によって承認されたもの」で、ヤニアック司教の指摘は正しくないと言明した。

 また、ポラック大司教は16日に発表した声明で「司祭は虐待の事例について信頼できる情報を受け取った場合、教会当局に通知する義務がある」と改めて強調し、自分は司教団の児童保護責任者として、映画で明らかにされた事実について、「沈黙したり、棚上げしたままでいることはできなかった」と述べた。 大司教が責任者を務める児童保護室も、「大司教は、この映画の制作者である兄弟には会っていないが、映画に登場する聖職者による性的虐待被害者とは電話で話をし、被害者の1人には今も必要な治療代を基金から支出している」と説明した。

 ヤニアック司教を巡るこうした問題は、聖職者による性的虐待への対応で信用を落としているポーランドの教会に、さらなる打撃となるものだ。

 「ポーランドの教会は下り坂だ。ポーランド駐在の教皇大使が、このような騒動を起こしているヤニアック司教に何の処分もしようとしないのは、驚きだ」とす」と同国のカトリック専門誌Więźのジビグニュー・ノソウスキ編集長は首をかしげる。編集長は、教会での性的虐待の被害者の支援組織Zranieni wKościele(教会の傷)の共同設立者でもある。彼らの活動を、ヤニアック司教は例の手紙の中で批判し、教区にポスターを置くことで信者を「スキャンダル化」した、としていた。

 また、ヤニアック司教の上司で、問題の事件のバチカンへの報告のための調査をしたスタニスラウ・ガデキ大司教がそのような司教の行為を容認していることにも、編集長は首を傾げつつ、同大司教が現在、ポーランド司教協議会の会長を務めていることから、教会組織の尊厳を取り戻す今後の努力に期待をかけている。

 このドキュメンタリー映画に出演したポーランドのカトリック作家でジャーナリストのトマス・テリコウスキ氏は、「ヤニアック司教の手紙が、性的虐待をはたらいた司祭を描いて2018年に大ヒットした劇場映画「Kler」よりも多くの信徒を教会から離れさせるだろう」と懸念している。

 「なぜだか分かりますか?ドキュメンタリーの方が(注:役者が演じる)映画よりも、はるかに醜悪な現実を知ることになるからです」とFacebookに投稿した。彼は、ヤニアック司教の手紙からは「俺は黙っていないぞ、というマフィアのような脅しが感じられる」とし、司教たちに実際に脅しをかけるような情報があることを示唆している。

 ヤニアックは司教たちへの手紙を出す前、三位一体の主日に自分の教区の全小教区あてに手紙を出していたが、彼はそこで、「特に、私を批判するメディア・キャンペーンがされている今、聖霊の目に見えない力によって、私が聖化されるように、祈ってくれるように」と司祭、信徒たちに求めていた。

 時を同じくして、ヤニアックは、人気の高い保守的なラジオ局で長年、ディレクターを務めているタデウシュ・リュージク神父から援護射撃を受けた。6月5日のカリシュ市の聖ヨゼフ教会でのミサで、神父は「私たちの父、ヤニアック司教のために祈りましょう」と参加者たちに呼びかけた。「ポーランドを愛するなら、教会を害さず、憎しみで攻撃しないように。何が起ころうと、司教を攻撃するのは正しくない… 責めたり、言葉で殺すようなことはしてはいけない。言葉を投げつけることで、あなた方は殺人者になるのです」と。

 ノソウスキ編集長は、”ヤニアック事件”は「ポーランドの教会にとって転機となる可能性がある」とも述べている。ポーランドの教会は、東西冷戦構造の崩壊後も共産党政権下にあった時の思考形態から抜け出せず、外部からの攻撃から自己を守ること優先する傾向を持ち続けてきたが、「ポラック大司教の、この事件への対応は、ポーランドの教会の『司教が同僚の司教の汚れた洗濯物について、決して、公にコメントしない』という”沈黙の時代”を終わらせる象徴的なものとなったのです」と強調。

 だが、その一方で「そうした時代は、象徴的な意味で終わったのだ、ということを私は強調したい。なぜなら、実際は… ポラック大司教はまだ孤独であるように思われるからです」と、今後の展望に慎重な見方も崩していない。

 そうした現状からも、「ポーランドの教会は、信頼回復へ迅速な対応が必要だ」と日刊紙RzeczpospolitaのTomasz Krzyżak記者は語る。そして、「バチカンが現在のポーランドの教会の動きに反応せず、迅速に対応しなければ、ヤニアックのような、心の変化さえ考慮することのない司教たちのメンタリティに何の変化も起きないことが、明確になってしまう」と懸念を示している。彼は今、ポーランドの別の教区、ラドム教区で起きている教会での権力の乱用について報道している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2020年6月18日

・20日は国連「世界難民の日」-UNHCRはシリア難民支援呼びかけ、日本でも各種の行事

Syrian refugees in Lebanon.Syrian refugees in Lebanon.  (ANSA)

(2020.6.18 カトリック・あい)

 新型コロナウイルスの世界的大感染とそれに伴う世界経済の急激な悪化で、世界の多くの人々の生活に深刻な影響が出ているが、最も大きな打撃を受けているのは世界に2500万人以上という難民の人々だろう。

 国連では2000年の総会決議をもとに、毎年6月20日を 「世界難民の日」(World Refugee Day)とし、世界の人々が難民問題に目を向け、支援に参加する契機になるような行事を世界中で展開する。

*スカイツリーや都庁、NTTドコモビルなど全国で「国連ブルー」ライトアップ

 日本でも20日に合わせて、国連高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所を中心に、 難民支援協会、在日難民との共生ネットワーク RAFIQ、シャンティ国際ボランティア会、ワールドビジョン・ジャパン、JIM-NET 日本イラク医療支援ネットワークなどが様々な行事を予定。日本各地で難民支援に取り組む学生団体がひとつになり、全国から支援の輪をつなぐYouthxUNHCR for Refugeesなども企画されている。

 UNHCR駐日事務所では、難民支援の輪を広げるための啓発イベントとして、北海道から九州まで全国25か所のランドマークを「国連ブルー」でライトアップし、日本から世界に‟連帯”のメッセージを発信する催しを、各地の自治体や企業・団体の協力を得て実施する。⇒https://www.unhcr.org/jp/wrd2020

 関東では、水戸芸術館タワー(茨城・水戸)、富士山レーダードーム館(山梨・富士吉田、21日も点灯)、東京都庁第一本庁舎(東京・新宿)、隅田川橋梁(東京・墨田)、東京スカイツリー(東京・墨田)、NTTドコモ代々木ビル(東京・渋谷)、東京ドーム外周部ケヤキ(東京・文京)、文京シビックセンター(東京・文京)が予定されている。

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 この時期に合わせて、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、特に深刻な状況に追い込まれているシリア難民への関心と支援を次のように訴えている。

(2020.6.17 Vatican News Robin Gomes)

*中東5カ国に550万人超すシリア難民が直撃

  国連難民機関(UNHCR)によると、新型コロナウイルスの大感染による世界経済の急激な落ち込みで、中東では550万人を超えるシリア難民が絶望的な状況に追い込まれ、緊急の人道援助をがこれまで以上に必要になっている。

 UNHCRのAndrej Mahecic報道官が16日、インターネットを通じて会見し、「生存するための食料、医薬品など基本的な物資を欠く、脆弱なシリア難民が激増している。難民を受け入れているシリア周辺国の地域社会も困難な状況に追い込まれている」と緊急の支援を国際社会に訴えた。

 報道官によると、難民たちの多くは収入の道を断たれ、家賃を払って住まいを確保していた家族は借金を重ねるなど困窮。 「児童労働、女性差別による暴力、若年結婚、その他の形態の搾取のリスクを含めて、事態が深刻化している」という。

 新型コロナウイルスの世界的感染が始まって以来、UNHCRでは、これまで財政援助をしていなかったエジプト、イラク、ヨルダン、レバノン、トルコの5か国に、緊急の財政支援をしている。中東ではこの 5カ国だけで550万人を超えるシリア難民が暮らしており、この難民の規模は世界最大だ。

 この地域のシリア難民10人のうち9人は、難民キャンプではなく町や村の、主に低所得者地域に住んでおり、新型ウイルスの大感染の結果、生活のための収入を得る道を断たれ、家賃の支払いが出来なくなるなど窮地に追い込まれている。大感染が起きる前でさえも、5か国のシリア難民の大半は貧困以下の水準にあり、今や多くが生存の危機に瀕している。

*全世界では2590万人の難民

 UNHCRによれば、世界中で現在、少なくとも7080万人が住んでいた場所からの避難を余儀なくされており、そのうち2590万人が難民、4130万人が国内避難民、350万人が亡命希望者だ。そして約2秒ごとに、紛争あるいは迫害のために、強制的に避難させられている、という。

*教皇フランシスコも、世界の教会の「世界移民・難民の日」に向けてメッセージ

 カトリック教会では、 9月の最後の日曜日を「世界移民・難民の日」としている。教皇フランシスコはこの日に向けたメッセージで、教皇は、紛争、貧困、気候変動によって国内で追放された何百万人もの男性、女性、子供たちが、新型コロナウイルスの世界的大感染の影響を受け、動揺、放棄、疎外、そして拒絶に苦しんでいるとし、彼らを受け入れ、守り、励まし、心を一つにするよう訴えている。

(編集・翻訳「カトリック・あい」)

 

2020年6月18日

・ドイツ司教協議会の新会長-既婚司祭と女性司祭叙階に前向き(Crux)

(2020.6.16  Crux  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

 ローマ発=ドイツ司教協議会の新会長に今年3月に就任したゲオルク・ベッツィング司教(リンブルグ教区)は、世界のカトリック教会で賛否のある既婚司祭と女性の司祭叙階について肯定的な見方を示すとともに、聖職者による性的虐待問題の根本原因について前教皇ベネディクト16世が昨年公表した長文のエッセイに批判的な立場を明らかにした。

 イタリアの有力紙La Repubblicに掲載された司教とのインタビュー記事で語ったもの。

*女性司祭叙階の拒否は、もはや多くの信徒に支持されない

 まず司教は、同紙の「女性の司祭叙階についての議論が消えたように見えるのはなぜか」との問いに対して、カトリック教会の最近の歴史の中で、「様々な教皇が『司祭職への女性の登用の問題は教会でな決められない』と説明し、強調してきました。そして、教皇フランシスコも例外ではない」としたうえで、「カトリック教会においては、 cum Petro et sub Petro(ペトロと共に、ペトロの下に)の教導権(注:カトリック教会において権威をもって信徒たちを教え導く権能。教導権を持っているのはペトロの後継者であるローマ司教と結ばれた司教たち、とされている)が決定的なもの。女性の司祭叙階の問題が、教会自身によって提起された問題だからです」と語り、教会が女性の司祭叙階を拒否する理由は、大部分の信徒にとって「もはや受け入れられないもの、となっています」と言明した。

 そして、ドイツにおける二年間にわたる司教と信徒代表たちとの”協働的”協議が進んでおり、女性問題についての決意と司祭職の役割も含めた協議の結論を、今後、バチカンに通知することになる、と述べ、「司教の協議によって表明されるものが必ず、明確にされ、バチカンの担当部署の答えではなく、司教の協議の結果の答えが出ることを信じています。そう確信しています… これが、教皇フランシスと共に、力を得た新しさ、なのです」と強調した。

*前会長・マルクス枢機卿は教会改革に積極的だったが…

 ベツィングは、今年3月に、長年その座にあり、教皇フランシスコの顧問格でもあった”重量級”のラインハルト・マルクス枢機卿に代わって、ドイツ司教協議会の会長に就任した。

 ドイツのカトリック教会では、2018年9月に、過去60年にわたる聖職者による性的虐待に関する何千もの案件を詳細にまとめた報告書が発表されたのを受けて、信頼回復に努めることに全力を挙げ、その一環として、2019年11月から二年にわたる協議を、強力な権限を持つ全独カトリック信徒の中央委員会と司教団が進めている。協議の主要テーマとして、聖職者の性的虐待の危機への抜本的対応、教会における女性の役割、神権、性的道徳などが話し合われている。

 前任者のマルクス枢機卿は、これらの重要テーマについて、全体として進歩的な取り組みをし、2016年に教皇フランシスコが発出した使徒的勧告「(家庭における)愛の喜び」の内容をさらに前向きに解釈し、配偶者の一方がカトリックの洗礼を受けていない夫婦のあり方を支持し、同性愛者の交際に対しても寛容な姿勢を明確にしていた。聖職者の独身制の問題も積極的に取り上げ、この問題の扱いが聖職者の性的虐待の危機に影響を与える可能性がある、と指摘。2018年の大晦日ミサでの説教で「2019年はドイツ教会にとって、多方面で前進への圧力を受ける『動揺と対立』の年となるでしょう」述べ、「新しい思考が必要 」と訴えていた。

 枢機卿が「ドイツ司教協議会の会長に再選されることは望まない」とし、後進に道を譲ることを表明したことは、多くの人を驚かせ、彼の首尾一貫した進歩的姿勢が”後部座席”に座ることを余儀なくさせたのではないか、との観測も出た。

 

*新会長も路線継承、既婚司祭を支持

 だが、ベッツィングのインタビューを見る限り、新会長がマルクス枢機卿よりも挑戦的でない、ということはないようだ。

 ドイツにおけるカトリック教会の改革の必要性に関連して、新会長は、司教たちが”協働的なやり方”を始めたは、「自分自身に問いかけ、今、神が私たちに言わねばならぬこと、教会がどのようにしたら人々に、命の奉仕に近づくことができるか、を追求したいからです」としたうえで、「他の国々でも、多くの課題への緊急な取り組みが求められています。私たちの諸問題への省察の結果をバチカンに持って行きます。ドイツが”はぐれ者”にならないように注意しながら、こう主張しますー『特別のドイツ式のやり方はありません。なぜなら、私たちは、バチカンにとって教会の一つ、普遍教会の一部であると理解しているからです。一方が他方を前提とし、その逆もしかりです』と」。

 昨年のアマゾン地域シノドス(代表司教会議)で議論となった「適正と判断された既婚男性の叙階」について、ベツィング会長は、これは決して「司祭の独身制の廃止」の問題ではなく、「(注:司祭は独身でなければならない、という)行き過ぎた単純化」をどうするか、という問題、とした。

 そして、「教皇フランシスコは、司祭の独身制に忠実であり続ける、と明言されています。それには多くの正当な理由があります」と述べ、アマゾン地域シノドスを受けた使徒的勧告「Querida Amazonia」で教皇が「司祭の信徒たちへの奉仕は、彼らの生活の形よりも重要でなければならない」としていることを指摘した。

 ベツィング会長は、司祭の独身制を「神を完全に中心に置いた」生き方として、勧告の内容に同意を表明する一方で、「仮に、既婚の司祭がいたとしても、教会にとって害があるとは、私には思われません… しかし、既婚の司祭だけで、独身制を選ぶ司祭がいないとしたら、それは教会にとって、大きな損失になる」とも語り、既婚が独身かを選ぶのは、司祭本人の判断であり、そうしたことが認められた場合、「その結果を見て行く必要があるでしょう」と述べた。

*前教皇が性的虐待に関するエッセイで被害者に言及無しは「深刻な過ちだ」

 聖職者の未成年性的虐待問題について昨年2月に全世界司教協議会会長会議が開かれた後、前教皇のベネディクト16世が執筆した長文のエッセイが問題になったが、これについて質問されたベッツィング会長は、このエッセイが性的虐待の被害者たちに言及しなかったのは「深刻な過ち」と批判した。

 また、マンハイム、ハイデルベルク、ギーセンの諸大学が、ドイツにおける聖職者による性的虐待に関する報告を一昨年に発表したが、そこでは、「教会がずっと以前から性的虐待で警告レベルにあったことが指摘」されており、ベネディクト16世がエッセイに書いたこの問題に関する広範な分析は、的外れだった、とも指摘。

 「その時点での展望には、現在知られているような内容が考慮に入れられなかったようだ。そのことは正当化の理由にはならない。考慮に入れられねばなりません」とする一方、ヨハネ・パウロ二世、ベネディクト16世、フランシスコの歴代の教皇は「私たちは最優先すべきことは、虐待被害者を癒すこと、私たちの全神経を彼らに向けること」だとはっきりと教えている、とし、「性的虐待の被害者に会った教皇全員が、そのことを非常にはっきりと示しました」と強調した。

 ベツィング会長はまた、教会における「聖職者主義」の問題についても語り、ドイツでは「何十年にもわたって、司祭と平信徒の間には良い関係を続けてきました… ”協働の道”は司教団と信徒の代表によって決定され、良い協力関係があります」と述べ、議論は「論争になることが避けられないが、常に互いに大きな敬意を払いながらなされています」と語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2020年6月17日

・新型ウイルス感染下の児童保護の在り方はー国際ウエブ・セミナーに70か国、500人参加

 

A child at Indira Gandhi International AirportA child at Indira Gandhi International Airport 

*子供たちと新型ウイルス

 そして、ウエブ・セミナー参加者たちに、脆弱な状況にある子供への継続的なケアと保護の提供、安全計画の作成、子供の保護への政府の関与、安全と保護の専門家の協力を訴え、起きている問題を文書化し、記録し、子どもたちの生活のあらゆる場面に存在する保護要因を基礎に置いて対応を進めることを提案した。

*性的虐待被害者の助けを借りる

 また、児童保護コンサルタントのバーバラ・ソープ氏は、聖職者に虐待された子供たちの問題に長年取り組んできた立場から語った。

 彼女は、心理療法を受けている被害者の手紙を紹介し、「彼の精神的な状況は、新型ウイルスで完全封鎖の状態に置かれた私たちが体験していることに、極めて近い。だから、私たちは被害者たちの体験の一端を垣間見ることができます。でも、私たちと違って、彼らは被害体験について沈黙させられ、隔離された形で心身の傷に対処せねばならなかった」としたうえで、「彼らは、私たちが新型ウイルスで完全封鎖されたことによる後遺症への対処を助けてくれる『知恵』をを持っています」とし、児童保護の専門家たちに、今回の完全封鎖をこれまでの努力の妨げと考えず、被害者たちの心を開き、「彼らの声に耳を傾け、その物語を大切にし、癒しの道への信頼を新たにする」チャンスを見つけるきっかけにするよう促した。

 

*アフリカでのイエズス会の活動

 イエズス会のアフリカ・マダガスカル協議会(JCAM)の児童保護担当世話人のベアトリス・ムンビ氏は、アフリカでの新型コロナウイルスの大感染の最中でのイエズス会の安全と保護についての対応を説明した。

 ムンビ氏は、「JCAMの児童の安全確保と保護の重点対象は、新型ウイルス感染発生以前の『小教区』や『学校』から、『家庭』に移っている」と述べ、「(注:新型コロナウイルス感染拡大の中で)基本的なニーズを提供することができなくなった家庭で、家庭内虐待・暴力がひどくなっている」と指摘。JCAMの目下の努力目標は、「家庭内虐待のリスクを下げる基本的なニーズに応えることにある」と語った。

 そして、学校閉鎖に代わる教育プログラムの提供要請に応じる形で、ザンビア在住のイエズス会士たちは、ラジオで教育番組を流している。新型ウイルスの大感染についても、子供たち向けの番組を作成している、と具体的な活動について説明した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2020年5月30日