・ガザ停戦合意ー聖地の司教団、歓迎するも「長い和平プロセスの第一歩」と楽観戒め

Christmas celebrations at the Church of the Nativity, in BethlehemChristmas celebrations at the Church of the Nativity, in Bethlehem 
(2025.1.17 カトリック・あい)

  ガザ地区の停戦合意が15日発表されたのを受け、聖地のカトリック司教団は16日、声明を発表し、これを歓迎するとともに、15か月にわたる戦争による「計り知れない苦しみ」に終止符を打つことを期待する述べた。ただし、これは「長いプロセス」の第一歩に過ぎない、と手放しの楽観を戒めている。

 実際、19日からの停戦履行期間に入るのを前に、ガザ地区では16日もイスラエル軍による激しい攻撃が続き、現地のメディアは合意が発表された後に77人が死亡した、と伝えており、ハマスは声明で「イスラエル軍の攻撃は解放される予定の人質の安全を脅かしている」などとけん制した。

 一方、17日には、イスラエル政府が、パレスチナ自治区ガザでの停戦合意について話し合う治安閣議を開き、全体閣議で停戦合意を承認する見通し。イスラエル首相府は声明で、承認されれば「計画に従って19日に人質解放が実施される」とする見解を示した。

 聖地のカトリック司教団は16日の声明で、エルサレム、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、キプロスを管轄するすべてのカトリック司教、司教区大司教、総大司教で構成される司教会議は、「戦争の終結は紛争の終結を意味するものではない」と強調。必要なのは紛争の核心にある「根深い問題」に対処するための「長期にわたるプロセス」であるとし、国際社会に対して「戦後の明確かつ公正な政治ビジョンを打ち立てる」よう呼びかけている。

 また、司教団は「巡礼者の聖地への帰還を切に待ち望む」とも述べている。キリスト教の巡礼者は通常、パレスチナとイスラエルの聖地に一年中集まるが、2023年10月の戦争勃発以来、彼らはほぼ完全に姿を消した。観光業に依存する地元経済にとって悲惨な影響をもたらしている。

 声明で司教団は「希望の巡礼者」をテーマとする2025年の聖年にも言及。「失望させない希望に捧げられた聖年」の始まりにおいて、停戦合意は「神の誠実さを思い起こさせる兆し」であると期待を示した。

*声明の全文以下の通り。

 

“How beautiful upon the mountains are the feet of the messenger who announces peace, who brings good news,” (Is. 52,7)

Declaration of the Catholic Ordinaries on the Ceasefire in Gaza

The Catholic Ordinaries of the Holy Land welcome the announcement of the ceasefire in Gaza, which aims to end the hostilities in Gaza, return the Israeli hostages and release the Palestinian prisoners. We hope that this ceasefire will mark an important end to the violence that has caused immeasurable suffering. It is a necessary step to halt the destruction and meet the urgent humanitarian needs of countless families affected by the conflict.

However, we are aware that the end of the war does not mean the end of the conflict. It is therefore necessary to seriously and credibly address the deep-rooted issues that have been at the root of this conflict for far too long. Genuine and lasting peace can only be achieved through a just solution that addresses the origin of this long-standing struggle. This requires a long process, a willingness to acknowledge each other’s suffering and a focused education in trust that leads to overcoming fear of the other and the justification of violence as a political tool.

We pray that this ceasefire will bring a sense of serenity and relief to all. May this moment of calm allow all to find solace, rebuild their lives and regain hope for the future.

We sincerely hope that this ceasefire marks the beginning of a new path towards reconciliation, justice and sustainable peace. May this be the first step on a path that promotes healing and unity among all the people of the Holy Land.

We eagerly await the return of pilgrims to the Holy Places in the Holy Land. The Holy Places are meant to be places of prayer and peace, and we long for the day when pilgrims can visit them again in safety and spiritual joy.

Despite the pain we have suffered, we continue to look to the future with unwavering hope. May this ceasefire inspire new efforts for dialog, mutual understanding and lasting peace for all. At the beginning of the Jubilee Year dedicated to hope that does not disappoint, we read in this event a sign that reminds us of God’s faithfulness.

Finally, we call on political leaders and the international community to develop a clear and just political vision for the post-war period. A future built on dignity, security and freedom for all peoples is a prerequisite for true and lasting peace. We urge all parties to implement the immediate steps and negotiate the future steps of the agreement in good faith.

May the Lord bless this land with peace and lead us all on the path of reconciliation and healing.

2025年1月17日

・キリスト降誕の地ベツレヘムでは、飾りもなく、疲れと不安に彩られたクリスマス(LaCroix)

 毎年、クリスマスが近づくと、エルサレムの教会は信者たちに、喜びと希望をもって主の誕生を迎えるよう呼びかける。しかし、その誕生の地、ベツレヘムでは、経済的に息が詰まり、先行きが不透明な状況の中で、将来への不安が人々の心に重くのしかかっている。(写真はベツレヘムのキリスト降誕広場、クリスマスの飾りつけは皆無だ=CC BY-SA 4.0/adriatikus)

Manger Square and the Mosque of Omar in Bethlehem, West Bank (CC BY-SA 4.0/adriatikus)

 今年のベツレヘムには、イルミネーションも飾りもない。代わりに、ヨルダン川西岸地区唯一の大学であるベツレヘム大学に、ガザ地区で命を落とした子供たちを追悼して、パレスチナの伝統色で彩られ、木製の天使とたくさんの名前が付けられたクリスマスツリーが飾られているだけだ。

 「クリスマス? どんなクリスマス?」と、キリスト生誕の地に漂う重苦しい雰囲気を反映した人工のツリーを見つめながら、同大学の芸術学部長を務めるパレスチナ人キリスト教徒のハナディ・ユナン教授は言った。「喜ぶことなど不可能だわ」。

 この私立カトリック大学には、キリスト教徒とイスラム教徒の学生約3600人が学んでいるが、クリスマスに向けた準備は、パレスチナ人の悲しみと不安を反映した簡素なものとなっている。大学の共同ホールには、学生たちに毎週の質問に答えるよう促す「自由表現テーブル」が置かれている。12日は、「あなたは何を待っていますか?」という質問が書かれていた。 これに対する答えは様々だ。「戦争の終結」、「別の国籍」、「平和な場所を見つけること」、「結婚式、母親、叔母、祖母になること」、「お金」など。 パレスチナの若者たちが直面

する恐怖や課題を端的に表す骸骨の絵もあった。

 「学生生活における通常のストレスは、軍事占領下での生活の重みによってさらに増幅され、その上に、頻繁な移動制限が加わっています」と、イエズス会士でソーシャルワーカーでもある米人のギャレット・ガンドラック神父は説明する。神父は「オアシス」と呼ばれるコミュニティスペースを管理している。「人々は疲れ果てています」。

 ベツレヘムの馬小屋が置かれた広場には、昨年同様、クリスマスのイルミネーションやクリスマスツリー、お祭り市場などは設けられない。 待降節の初め、エルサレムの教会の長老や指導者たちは、キリスト教徒たちに「キリストの到来と誕生を祝うために、キリスト教徒の『希望』を象徴するものを公に示そう」と呼びかけた。

 昨年、彼らの装飾を控えるよう求める呼びかけは、一部の人々によって「クリスマスの取り消し」と解釈された。「『闇の中に輝く光』についての私たちの証しは弱められてしまった」と、教会指導者たちは共同声明で嘆いた。今年は、ガザ地区でのクリスマス停戦を呼びかけながら、「戦争を認識すること」と「希望を育むこと」の微妙なバランスを取ることに努めている。困難にもかかわらず、クリスマスには「喜び」と「希望」という、本来のメッセージを伝えねばならない、という信念を、彼らは持ち続けている。

 だが、人口3万人のベツレヘムには、経済的な絶望感が蔓延している。観光業に大きく依存していたこの町は、現在は観光収入は皆無であり、働いて収入を得ようにも、住民の就労許可は昨年10月7日の攻撃を受けてイスラエル政府によって取り消されたままだ。「学費を払えなくなった学生もいて、授業も半分しか出ていない。パートタイムの仕事もほとんどない」と、過去5年間に学術水準が低下しているのを目の当たりにしてきたハナディ教授は嘆く。

 町には、貧困の兆候がますます顕著になっている。「最も困窮している人々を支援するための予算を3倍に増やしました」と、匿名希望の宗教団体関係者は語る。「12月のとある日曜日、9家族が食料を求めてやって来ました。こんなことは初めてでした。その日の終わりには、食料庫は空っぽになっていました」。

 ジョージ(仮名)は、11月に兄が米国に移住するのを見送り、今度はスペインへの移住の準備をしている。「ここには将来がない。チャンス

もない。八方ふさがりです」と言う。昨年10月のテロ事件が起こったとき、ユースホステルを開業する予定だった。「ただ、戦争前の生活に戻ってほしいだけなのに」と深くため息をついた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2024年12月22日

・ノートルダム大聖堂、 大規模火災から再建後の初ミサー「フランスの教会の再生のしるし」と教皇

Official ceremony marks reopening of Notre-Dame CathedralOfficial ceremony marks reopening of Notre-Dame Cathedral  (ANSA)

 

2024年12月9日

・「イスラエルのガザ地区攻撃は”ジェノサイド(大量虐殺)”」と国際人権団体が糾弾

(2024.12.5 カトリック・あい)

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは5日、イスラエルによるガザ地区への攻撃について、住民への聞き取りや、衛星画像の分析などに基づいた報告書を発表。「イスラエルの行為はジェノサイド、集団殺害にあたると信じるのに十分な証拠がある」と言明した。証拠として広範囲に影響を及ぼす兵器を人口密集地で繰り返し使用したことや、十分な人道支援物資の搬入を継続的に拒否したことなどを挙げている。

 また、発表にあたって出された声明で、アムネスティは「ジェノサイドはいますぐに止めねばならない」と、一刻も早い停戦を求め、イスラエルに兵器を供給している国についても、「ジェノサイドを防ぐ義務に違反し、共犯者となるリスクを認識すべきだ」と警告した。

 イスラエル外務省は声明で、「虚偽に基づく、すべて間違った報告書だ。我が国は完全に国際法を順守している」などと強く反発しているが、パレスチナの現地メディアは5日の報道で、ガザ地区でイスラエル軍による攻撃が続き、各地への攻撃で少なくとも12人が死亡ているとし、地元の保健当局は累計死者数は4万4580人に達し、住民の犠牲が増え続けている、としている。

2024年12月6日

・「ガザには支援に入れず…エルサレムは不気味なほど静寂。だが支援者の意識は高い」ー国際カリタスのダットン事務局長

A woman holds a candle at a prayer vigil for peaceA woman holds a candle at a prayer vigil for peace  (ANSA)

 

 

問: エルサレムとイスラエルにも行かれたのですね。現地の状況はいかがでしたか?

ダットン:エルサレムそのものは、私が受けた印象では不気味なほど静かでした。以前はイスラエル人とパレスチナ人が行き交い、多数の観光客で溢れかえっているはずの夕方の6時に、まさにその中心地にいたのですが、誰もいなかった。聖墳墓教会に行き、イエスの墓の所に15分ほどいましたが、誰も入って来ませんでした。以前なら、入るために何時間も並ばねばならかなった。今は空っぽで、静かで、エルサレムの人たちは世界の他の地域から隔絶されたように感じ、孤立している。紛争は続いており、多くの人々は戻って来ていない。経済は崩壊し、観光客も皆無です。 

 そして、ヨルダン川西岸地区の一部やガザ地区の状況は、まさに非人道、残虐そのものです。私が現地に滞在している間、ガザのカトリック教会の主任司祭、ガブリエル神父と、そこで働くソーシャルワーカーの一人と話をしました。彼らが日々、活動を続けているのは信じがたいことです。彼らは、自分たちの家族の世話もする必要がありますが、人々への奉仕とケアに対する信じられないほどの意識があり、できることは何でもしようとしている。しかし、現時点ではそれも、非常に難しい。ガザ地区に支援物資などを持ち込むことは、ほぼ不可能です。

 それでも、熱心に活動しているチームがあります。カリタス・エルサレムとカトリック救援サービスのチームです。しかし、彼らの努力にもかかわらず、私が現地入りする前の1か月間に、米軍とイスラエル軍の協力で、トラック6台分の物資ををガザ地区に運び入れたにとどまっている。2023年10月7日に攻撃が始まる前には、毎日500台のトラックが物資を運んでいたのに、この1か月間は6台分しか運び入れることができず、被災者住民が夜寝れて、食事を作ることができるようにするのが精いっぱいです。

 

問: このような状況下でクリスマスはどのように祝われるのでしょうか?

ダットン:正直なところ、私には分かりません。私が現場で感じたことのひとつに、特にヨルダン川西岸地区のキリスト教徒のパレスチナ人が、自分たちの土地で生活を維持し、希望を持ち続けるという強い必要性と渇望を持っていることが挙げられます。そして、彼らが聖書の物語から自分たちの信仰に大きな力を得ていました。彼らにとって素晴らしいことのひとつは、もちろん、「自分たちのいるところがキリストの誕生、そして死と復活に至るすべてことが起こった場所だ」ということです。

 私が現地にいたある日、彼らに「あなたに驚きがあるのか」と問いかけられた。ある教会の建物に入ると、そこは10人のらい病人が介護されていました。彼らの家のすぐ近くにありました。

 カリタスにはベツレヘム、キリストが生まれた場所に、最大のチームのひとつがある。彼らは、物語そのものと希望の福音が物理的に近いという事実から、非常に大きな力を得ていると思います。そして、彼らはそのことを話し続けています。

 希望について言えば、アンマンでピザバラ枢機卿(エルサレムのラテン総大司教)にお会いしたことは、大きな収穫でした。彼は、ヨルダンを訪問中で、「今、希望を持つことがどれほど難しいか」について話しました。彼やレバノン・カリタスの代表であるミシェル・アブード神父との会話で、私たちは、「アラビア語やフランス語には『希望』を表す言葉が2つあるが、英語には1つしかない」という話をしました。フランス語にはespéranceespoirがある。espéranceという言葉には、「神聖なものや、彼らが今感じている苦難よりも大きなものとのつながり」という意味がある。これは、彼らが力強さと未来への希望を維持していく上で、非常に重要な意味を持っているのです。

問: 私たちは「希望の巡礼者」というモットーを掲げ、間もなく聖年を迎えようとしています。

ダットン:私たちは「希望」という言葉を、表面的な意味で使わないよう注意せねばならないと思います。希望とは、「自分たちの内奥にある、本当に私たちを力づける何か」を発見するための旅です。ですから、「希望」という感覚を持つことは、非常に重要です。

問: このような状況下で、カリタスはどのような対応、活動をしていますか?

ダットン:カリタスは、昨年のテロ事件が起こるずっと前から、そして事件後も活動を続けています。言うまでもなく、ガザ地区やヨルダン川西岸地区の状況は非常に厳しい状況です。物を移動させることさえほぼ不可能です。支援トラックがガザ地区に入ることがいかに難しいかについて先ほど申し上げましたが、ガザ地区への物資搬入はほぼゼロの状態です。

 にもかかわらず、私たちの医療チームは、人々を助けようと、今も活動を続けています。当然ながら、医療品の不足は大きな懸念事項ですが、活動を続け、物資や現金などの支援を得ようともしています。物資が手に入らなければ、現金も使いにくいのですが。

 私たちは、ガザ地区、エルサレム、ヨルダン川西岸地区など、パレスチナ全体で、緊急対応活動を通じて、攻撃以来の13か月間に160万人以上の人々に支援を届けてきた。これには、健康、食糧支援、寝具や鍋、調理器具、食事など基本的な設備の提供、精神衛生や心理面のサポート、避難所、衛生キットや水の供給などが含まれます。私たちのチームを通じて、できる限りのことをしているのです。

 しかし、今は、人道支援を続けることが非常に困難になっており、国際人道法の下、世界の国々、関係者は、人々がひどい苦しみを味わい続けないように、真剣に圧力をかける必要があります。

問: 教皇フランシスコは、人道支援を保証するよう、人質を解放するよう呼びかけておられます。

ダットン:その通りですが、絶対に停戦を実現する必要があります。この戦争は、すべての人々を傷つけ、イスラエルの経済を疲弊させています。苦しんでいるのはパレスチナ人だけではありません。この戦争は、次世代の戦士を生み出すことになる、世代を超えた心理的混乱を生み出しています。私たちは、さらなる死につながるだけの武器供給を止めなければなりません。今日、イスラエルに武器を供給している人々は、停戦を遠ざけているだけなのです。

イスラエルの人質や双方で拘束されている人々についても言及しなければならない。なぜなら、パレスチナ人の多くもまた恣意的に拘束されているからだ。だから、人質は絶対に解放されなければならない。また、国際法や国際法規範を尊重しなければならない。私たちは国際刑事裁判所を持っているし、国際人道法では人々は援助を受ける権利があるとしている。

しかし、援助を提供しようとする私たちにとっては、それはほとんど不可能であり、また安全とは程遠い。今年、スタッフ2名が命を落とし、その家族の多くも犠牲となった。私が現地を訪れた前の週には、2名の医師が負傷し、家族全員とともに病院に入院していた。教会への直撃弾により、12名ほどが殺害されたばかりだった。人道支援をしようとしている人々が、この戦争の標的となっているのだ。

問: レバノンではイスラエルとヒズボラの間で停戦が成立しました。 国際カリタスの活動にとって、これは何を意味するのでしょうか?

ダットン:レバノンの同僚たちと連絡を取り合っています。彼らの希望と、教皇フランシスコの希望を私も共有しています。それは、この停戦が、何らかの形で中東の平和に向けた動きのきっかけになるかもしれない、という希望です 。

 でも、まず最初に言っておかねばならないのは、停戦は極めて不安定な状態にあるということです。停戦後もレバノン南部では攻撃があり、人々が殺されています。停戦がいつまで続くのか、疑問に思わざるを得ません。停戦が継続し、攻撃してきた人々が一歩退くことを心から願っていますが、笛を吹けば、戦いが瞬間的に終わるほど、事態は簡単でないのも事実です。

 また、これがそのままガザ地区の平和に直結するとは思えません。私たちは今、シリアで攻撃が開始されたのを目撃しています。このタイミングが偶然の一致であるとはどうしても思えないのです。アレッポへの攻撃が始まったのは、まさに停戦が発表されたその日でした。シリアは14年間にわたって戦争に苦しみ、さらに最近では地震にも見舞われました。人々はアレッポやハマから安全な場所へ逃れようとしています。

 私は今年1月に現地を訪れましたが、経済制裁によって、人々は文字通り瓦礫の間に住むことしかできず、国の経済は完全に疲弊しています。私は8年前に歩いた同じ道を1月に歩きました。その道は、可能な限り清潔に保たれてはいますが、瓦礫が脇に積み上げられ、その周りを掃くことしかできていない。シリアはここ数年、経済制裁で人々が非人道的な状態に置かれており、さらに今、このような攻撃を受けることになっている。中東をはるかに超えた規模の権力が、今、力を誇示し、地位と覇権を争っているのです。「象が戦えば、草が苦しむ」のです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2024年12月6日

・欧州安保協力機構・閣僚理事会にバチカンのギャラガー外務局長が出席、加盟国間の信頼崩壊、分裂に強い懸念表明

Archbishop Paul Richard Gallagher in MaltaArchbishop Paul Richard Gallagher in Malta  (ANSA)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年12月6日

・「来臨されるイエスに目を向け、希望を失うな」-フランシスコ会の聖地管区長がベツレヘムで待降節の始まりのミサ

Bethlehem, West BankBethlehem, West Bank 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年12月3日

・エルサレムの教会指導者たち、苦難の中でも、キリストの誕生をしっかりと祝うよう呼びかけ

(2024.11.29 Vatican News   Lisa Zengarini)

 ガザ地区で戦争の被害に苦しむ人々との連帯を示すため、昨年のクリスマスにイルミネーションや装飾を一般公開しないという決定に続き、エルサレムの教会の総主教や指導者たちは、現在も続く戦争のさなかではあるが、「キリスト教の希望を公に示す」ことでキリストの誕生をしっかりと記念しよう、と呼びかけている。

 ・・・・・・

 ガザ地区での停戦の兆しが見られないままクリスマスが近づく中、エルサレムの教会の総主教や司教たちは、キリスト教の希望を表現しながらも、現在も続く戦争下でガザ地区の住民が耐えている苦難を尊重する形で祝うよう、それぞれのコミュニティに呼びかけている。

 2023年、エルサレムの教会指導者たちは、新たに勃発したハマスとイスラエルの間の戦争で苦しむ多くの人々と連帯する手段として、聖地に住むキリスト教徒に公共の場でのクリスマス装飾やイルミネーションの使用を控えるよう求める共同決定を下した。

 だが、この発表により多くの人々が聖地でのクリスマス祝賀会が中止されたと誤解し、その結果「闇から浮かび上がる光のクリスマス・メッセージの独特な証しが弱められた」と述べ、信者たちに「キリストの誕生を完全に記念する」よう呼びかけ、「キリスト教の希望を公に示す」ように、そして「この地域で数百万人が今も耐え続けている厳しい苦難に配慮したやり方」でそうするよう促した。声明文には、「祝祭には、彼らを絶えず祈りの中で支え、親切や慈善の行いをもって手を差し伸べ、キリストが私たち一人一人を迎え入れてくださったように彼らを迎え入れることが確実に含まれていなければならない」と書かれている。

 このようにして、エルサレムのキリスト教各派の指導者たちは「私たちは、天使たちが同じように暗い時代であったこの地域で羊飼いたちに、『キリストの誕生』という喜ばしい知らせを告げたクリスマス物語そのものを再現することになるだろう。そして、彼らと全世界に神聖な希望と平和のメッセージを届けるのだ」と言明した。

 

*パレスチナ自治政府のアッバス議長、ベツレヘムのクリスマス・イブミサに出席

 一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は今週行われた聖地管理者のフランシスコ・パットン神父と副管理者のイブラヒム・ファルタス神父との会談で、「パレスチナの人々の苦難を考慮し、聖地におけるクリスマスの祝いは宗教儀式に限定すべきだ」と述べた。議長は慣例に従い、12月24日にベツレヘムの聖カタリナ教会で行われるクリスマスイブのミサへの正式招待を受けた。会談で、議長は、パレスチナのキリスト教徒にクリスマスの挨拶を述べ、平和への希望を繰り返し述べた。

* エルサレム・ラテン総大司教、ピッツァバラ枢機卿は英国を訪問

 また、エルサレムのラテン総大司教であるピエールバティスタ・ピッツァバラ枢機卿は、イングランドおよびウェールズにおけるエルサレムの聖墳墓騎士団の設立70周年を祝うために、1週間の英国訪問のためロンドンを訪れた。12月1日には、司教協議会議長のビンセント・ニコルズ枢機卿が司式するウェストミンスター大聖堂での待降節第1主日の厳粛なミサで説教を行い、その後スコットランドのエディンバラへと向かう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年11月30日

・米国で公開中の映画『コンクラーベ』ーカトリック教徒の間で論争を巻き起こしている

ラルフ・ファインズ主演『コンクラーベ』公式予告編のスクリーンショット。(写真:YouTube/フォーカス・フィーチャーズ)

(2024.11.4 La Croix   Paul Carpenter)

 A screenshot from the Official Trailer for 'Conclave,' starring Ralph Fiennes. (Photo: YouTube/Focuインターセックス(性分化疾患=身体的性 が一般的に定められた男性・女性の中間もしくはどちらとも一致しない状態)の人は教皇になれるのか? 10月25日に『コンクラーベ』が米国で公開されて以来(フランスでは12月4日に公開予定)、このありそうもない疑問が大西洋を越えて議論に火をつけている。

 前作『西部戦線異状なし』が2022年のアカデミー賞にノミネートされたドイツの映画監督エドワード・ベルガーが監督した『コンクラーベ』は、ロバート・ハリスの2016年の同名小説を原作としている。ラルフ・ファインズ演じる枢機卿団の長、トーマス・ローレンスが、ローマ教皇の死後の重責に立ち向かう姿を描く。

 ローレンス枢機卿は、権力闘争、詐欺未遂、カトリック教会内のイデオロギー分裂に直面する。ここまでのストーリーは、バチカンを舞台にしたハリウッド映画としては標準的なものだ。賛否両論を巻き起こしたのは結末だ。

 アフガニスタンでの任務から帰還した南米出身の枢機卿が、大演説で大喝采を浴び、教皇に選出される。だが就任後、ローレンスは新教皇が男性と女性の両方の生理的特徴を持つインターセックスであることを知る。

*カトリック教会内外で物議を醸す結末

米国のマスコミの反応は素早かった。保守系メディア『The Daily Wireー』のベン・シャピロ代表は、公開前から数百万人のフォロワーに映画のボイコットを呼びかけた。

National Catholic Reporter 』誌とイエズス会の『 America』誌は、映画の美的センスを賞賛し、世界代表司教会議(シノドス)総会がシノダリティ(共働性)について結論を出したばかりであることを考えると、「聖職に就く女性についてのこの映画の探求はタイムリーだ」と評価している。

 しかし、この映画の結末を「無礼な挑発」と見る者もいる。ワシントンの聖ヨハネ・パウロ2世神学校の校長であるカーター・グリフィン神父は、Catholic News Agencyとのインタビューの中で、この映画の結末がいかに司祭職に対する誤解を反映しているかを説明した。一方、『Daily Beast』紙は、Redditのようなフォーラムが、「この映画を見ることは道徳的か?」という質問に特化している、と述べている。

*よくできた超大作だが、一流の批評家からは鼻であしらわれている

こうした様々な反応にもかかわらず、『National Catholic Register』紙は、この映画の「美的利点」に異論は唱えず、映画の内容と最後の展開に議論を集中させている。批評家のレビューを集約したRotten Tomatoesのスコアは93/100で、一般メディアもその質についてはほぼ同意している。『 Rolling Stone and 』や『Vulture』のような文化系雑誌は、その繊細さと攻撃的な要素を称賛している。

しかし、『Cineaste』『 Film Comment』『Little White Lies 』といった著名な映画雑誌は、批評の掲載を避けた。米国文化の基調を作る傾向のある他の出版物では、この映画について技術的な妙技は認めているが、過度に「機械的」あるいは「退屈」である、とさえ批判し、『New Yorker 』のリチャード・ブロディは特に酷評している。『New York Times』のマノーラ・ダーギスは、終盤のどんでん返しの根拠のなさを嘆き、現在の大統領選挙との類似性を指摘し、特に不正や詐欺の告発に関して、選挙プロセスの正当性に疑問を投げかけている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2024年11月5日

・カトリックで史上二人目の米副大統領候補は、信者の分裂を加速する(La Croix)

Republican presidential candidate Donald Trump applauds alongside his vice-presidential pick, J.D. Vance on the first day of the 2024 Republican National Convention in Milwaukee, Wisconsin July 15, 2024. (Photo: Youtube/RNC 2024)
Republican presidential candidate Donald Trump applauds alongside his vice-presidential pick, J.D.

(2024.7.19 La Croix   Malo Tresca)

   J.D. ヴァンス氏が、17日の米国の共和党全国大会で副大統領候補に選ばれた。トランプ候補を推す共和党陣営が大統領選挙に勝利すれば、2019年に成人として洗礼を受けたオハイオ州の上院議員は、米国史上2人目のカトリック教徒の副大統領となる。

 ​​「キリスト教徒、夫、父親、オハイオ州の上院議員」-ソーシャルネットワークXでの短い自己紹介で、J.D. ヴァンスは、主に信仰というレンズを通して、自身の歩みの最も顕著な側面を明らかにした。

 共和党全国大会でドナルド・トランプの副大統領候補に正式に指名された39歳のヴァンスは、11月の大統領選挙で自身の陣営が勝利すれば、バラク・オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンに次ぐ、米国史上2人目のカトリック教徒の副大統領となる可能性がある。

 宗教は現在、彼の人生の中心を占めているが、彼の精神的な旅は曲がりくねった道をたどっており、彼はそれをアメリカの報道機関に公に語ってきた。

 質素な家庭に生まれ、麻薬密売に悩まされていたアパラチア山脈の貧しい白人コミュニティで育ち、子供時代と十代の頃は福音派の教会に通っていた。「私はかなり混沌とした絶望的な世界に住んでいましたが、信仰が『誰かが私のことを見守ってくれている』という信念を与えてくれました」と、2016年にユタ州を拠点とする宗教メディアのDeseret Newsとのインタビューで語った。

 そして、「教会に行くと、それまで見たことのない本当に良いことがたくさん分かりました。さまざまな人種や階級の人々が一緒に礼拝しているのを体験しました。仲間から自分がすべきことに関して特定の道徳的期待があることを知りました」と述べた。

 20代前半、名門イェール大学での学生時代は、神から一定の距離を置くことで特徴づけられた。 「私は自分を『無神論者』と呼んでいました」。それにもかかわらず、宗教的信念が自身を高めているように思えるカトリック教徒やモルモン教徒と会ったことを思い起した。

 2015年、彼は再び宗教的な儀式に出席し始め、4年後にカトリック教会で洗礼を受けることを希望し、長い間彼を教会から遠ざけていた(聖職者たちによる)虐待問題にこだわらないことに決めた。「私にとって最も大切な人々をよく見ると、皆、カトリック教徒でした」と2019年の受洗当時、 The American Conservative紙とのインタビューで語り、カトリックの「知的」魅力を強調した。

 「キリスト教の信仰の希望は、物質世界の短期的な征服に根ざしているのではなく、それが真実であり、長期的には、さまざまな試行錯誤を経て、物事はうまくいく、という事実に根ざしています」と、元軍人で、米国の産業が衰退した地域で育った経験について書いたベストセラー “Hillbilly Elegy”の著者であるヴァンスは語った。

 

 彼の信仰はどの程度彼の政治活動に影響を与えているのだろうか?

 「彼自身がよく言っているように、彼の献身は教会の社会教義、特に経済問題に関するレオ13世の回勅『Rerum Novarum新しき事柄について―資本と労働の権利と義務)』によって動機づけられている」とトゥーロン大学(ヴァール)のアメリカ文明の専門家、マリー・ゲイトは説明した。「ヴァンスが『権利を奪われた米国の労働者を助ける』と主張するのは、カトリックの名においてなのです」。

 ゲイトによると、元シリコンバレーのベンチャー・キャピタリストであるヴァンスは「リベラルなコンセンサスから離れることで保守主義を再定義しようとしている、多くのカトリック教徒を含む”ポスト・リベラル”な知識人」に属するという。

 ヴァンスは、バイデン現大統領の2020年大統領選勝利に反対する連邦議会の反乱分子を支援したことで米国政治の舞台で物議を醸したことがあり、2023年1月にオハイオ州上院議員となって以来、カトリック信者の間では違った見方をされてきた。移民問題や気候変動懐疑論についての強硬姿勢は、教皇フランシスコの姿勢とは相容れないようだ。

 性道徳の問題で極端に二極化した米国で、レイプや近親相姦を例外とせず中絶を禁止する彼の確固たる立場は、カトリック信者の分裂を招いている。今年4月11日の有力調査機関、Pew Research Centerの調査によると、信者の10人中6人強(61%)が中絶合法化を支持しているが、ヴァンスが7月初旬にトランプが主張する中絶薬の取得を容易にすることへの支持を表明して、保守派信者から反発を招いている。

  「ヴァンスには原則がない。少なくとも”売り物”にならない(主張をする)原則はない。そして”提示価格”は低い」とマサチューセッツ州カトリック行動連盟のC.J.ドイル事務局長は皮肉った。

 「それにもかかわらず、ヴァンスは、保守化の傾向を強める若い米国の聖職者の間で、かなりの人気がある。彼らはこの最新の論争を無視しているようだ」とゲイトは指摘し、彼が副大統領候補に指名されたことで、「米国のカトリック司教たちの極右派を喜ばせている」と確信をもって語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.
2024年7月20日

・「米国は、政治的な怒鳴り合い、他者に耳を傾ける余裕も失っている…尊厳と対話を促そう」ー米国の司教団代表、トランプ襲撃事件で

(2024.7.19 カトリック・あい)

 13日の米ペンシルベニア州での集会でトランプ前米大統領の銃撃事件を受けたことについて、バチカンは広報局が声明で、民主主義を傷つけ、苦しみと死をもたらす暴力に対し憂慮するとともに、犠牲者のため、そして米国の平和のために、米国司教団と共に、暴力の論理が勝ることがないように祈る、と述べた。声明した。

 また米国カトリック司教協議会会長のティモシー・ブロリオ大司教は16日、バチカン・メディアのインタビューに答え、トランプ前米大統領の暗殺未遂事件を、ぞっとする「行動への呼びかけ」と定義し、米国民は「それぞれの人間としての尊厳を尊重しつつ、常に敬意をもって意見の相違を表明すべきだ」と強調した。

 そして、この事件の背景にある米国の政治・社会状況について、「政治的議論が怒鳴り合いばかりで、他者に耳を傾ける余裕がないところまで来てしまっている」と述べたうえで、17日に始まる米国の聖体大会が「私たちにとって、対話と和解を促進する大きな機会になるでしょう… キリストの中に私たちは行動規範を見出すことができ、その促進に努めれば努めるほど、私たちの社会はより良いものになるでしょう。私たちだけで、すべてを行うことはできませんが、その基盤を造り、尊厳と対話の促進のために、責任ある人々を促すことはできます」と語った。

(以上、「バチカン放送」ニュースをもとに、「カトリック・あい」が編集)

 

2024年7月19日

・ガザ地区のカトリック学校が攻撃を受け、避難民ら多数が死傷

攻撃を受けたガザ地区のセイクリッド・ファミリー・スクール 2024年7月7日攻撃を受けたガザ地区のセイクリッド・ファミリー・スクール 2024年7月7日  (AFP or licensors)

(2024.7.8 バチカン放送)

 パレスチナ・ガザ地区のカトリック系の学校、セイクリッド・ファミリー・スクール(聖家族学校)が7日、イスラエル軍の攻撃を受け、多くの死傷者を出した。

 学校を管轄するラテン典礼小教区「聖家族小教区」の主任司祭ロマネッリ神父は「学校は二度の攻撃を受け、何人かの死者と、多くの負傷者がいる模様です」と深い悲しみを表明。

   ラテン典礼エルサレム総大司教区は声明で「イスラエル軍がガザの聖家族学校に対して行ったと思われる急襲のニュースを深い懸念をもって注視している」とし、「民間人を標的にすること、民間人が戦闘現場外に留まることを十分に保証できない攻撃行為」を強く非難した。

  同総大司教区によると、セイクリッド・ファミリー・スクールは、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が始まって以来、何百人もの民間人の避難所となってきた。ロマネッリ神父は「校内の避難者の数は、最初は1000人近かったが、その後追い出され、また700人ほど行き場を失った人々が戻ってきたりと、常に変化しており、今回の攻撃を受けた時に、何人の避難者がいたか、把握するのは難しい」と説明している。

(編集「カトリック・あい」)

 

2024年7月9日

・露軍に捕らわれた司祭2人を含む民間人10人解放ーゼレンスキー大統領が、教皇とバチカンの努力に謝意

Fathers Ivan Levytskyi e Bohdan HeletaFathers Ivan Levytskyi e Bohdan Heleta 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年6月29日

・教皇のローマ郊外の小教区訪問は、イタリアの教会の外国出身司祭への依存の高まりを象徴している(Crux)

(2024.6.8 Crux Staff)

ローマ発 – 教皇フランシスコ6日、ローマ北西端にある小教区を突然訪問された。訪問は、教皇が2025年の聖年に向けて呼びかけておられる「祈りの学校」の一環だが、聖ブリジット小教区には現在、教会の建物がなく、ガレージでミサが行われており、「祈りの学校」も、集合住宅の中庭で開かれた。

 興味深い”脚注”は、教皇の訪問が、今日のイタリアにおけるカトリック信者の人口動態を正しく捉えたものだったことだ。 集まった教区民はほぼ完全に白人で、民族的にはイタリア人だったが、旬司祭と叙任司祭は、どちらも聖霊修道会の宣教師で、コンゴ人とカメルーン人。

 主任司祭のガイ・レアンドレ・ナカヴォア・ロンデ神父は、2005年に今後からイタリアに入国、その段階でイタリア語を一言も話さなかった。司祭に叙階された時、派遣希望地としてガボン、メキシコ、インド洋のレユニオン島を挙げたが、上長はイタリアでの宣教を命じ、以来、聖ブリジット小教区の司祭を務めている。

 助任司祭のフランシス・チャンチョ神父は、カメルーン出身の40歳で、2017年に叙階され、北イタリアのトリノで宣教活動を始め、昨年、聖ブリジット小教区に移った。

 二人は、イタリアのカトリック教会における、国外出身の聖職者への依存度が高まりを象徴している。かつてイタリアは、世界の他の地域への宣教師の大”輸出国”だっがが、イタリア司教協議会の資料によると、今や海外で奉仕するイタリア人一人につき、イタリアで奉仕する外国生まれの司祭は5人に上る。昨年現在で、イタリアには1476人の外国出身の教区司祭がおり、うち790人が司牧活動に従事し、686人が学生。さらに、小教区の主任司祭や助任司祭など教区の任務も兼任する修道会司祭が1336人。外国人司祭の合計は、教区司祭、修道会司祭を合わせて2812人で、イタリアの教会の全カトリック司祭のほぼ10%を占めている。

 イタリアの司祭の総数は1990年から昨年までに約2割減ったが、外国人司祭の数は同じ期間に10倍に急増している。外国出身の教区司祭790人の地域別内訳は、407人がアフリカ、134人が東欧、164人がアジア、85人がラテンアメリカを主体とする南北アメリカだ。

 イタリアの教区と他国の教区との間の司祭任命に関する協定を監督する同国司教協議会のジュゼッペ・ピッツォーリ神父は、協定では外国出身の司祭のイタリアでの奉仕期間は9年とされており、満了した時点で母国に帰ることになっている。

 だが、「協定を守るよりも”違反”することに重きが置かれることもあります… イタリアで9年間過ごした後、何人かの外国人司祭は母国に戻るのに苦労しています。イタリアの司教でさえ、彼らが去るのを望まない。なぜなら、彼らは9年の間にイタリアの教会にうまく適応し、重要な役割と責任を負うようになっているからです」と語った。司教協議会がデータを作成して以来これまでに、他国出身の教区司祭398人がイタリア国内の教区に転籍している、という。

 司祭不足は欧米よりも発展途上国で深刻になる傾向があることを考えると、このイタリアの教会の自国出身司祭の不足は、必ずしも欧米共通の問題というわけではないかも知れない。例えば、欧州全体では、カトリック教徒1700人につき1人の司祭がいるが、アフリカでは、5700人に1人だ。

 そうしたことを考え合わせ、”北”の裕福な国々の教会が、”南”の貧しい教会の聖職者を”搾取”し、”南”の国々でもっと聖職者が必要とされているのに、”北”の国々の”不足を穴埋め”するために、聖職者を”南”から”北”に流出させているのではないか、という見方も出ている。

 実際、バチカン福音宣教省の長官を1985年から2001年まで務めたスロベニア出身のヨゼフ・トムコ枢機卿は、発展途上国からイタリアに司祭を”輸入”する傾向が強まっていることを批判し、「これほど多くの教区司祭をもってすれば、(アジア、アフリカなどの)宣教地域にもっと多くの新しい小教区が作られるはずだ!」と述べていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年6月9日

・米ワシントン大司教区で、前年の3倍近い16人が司祭叙階へ

Priestly ordination in St. Peter’s Basilica, April 25, 2021.

(2024.6.8  カトリック・あい)

 米カトリックメディアCNAが7日報じたところによると、米国のカトリック・ワシントン首都圏教区で、6月15日に、16人が司祭叙階されることになった。

 同教区での司祭叙階は昨年は6人、一昨年は10人、2021年はわずか1人だったのに比べて、驚異的とも言える増加だ。

 今回の司祭叙階者には、軍務経験者が数人、元救急救命医と元.警察官が1人づついる、という点でも画期的と言えるようだ。

 ワシントン大司教区は、同地域の総人口約300万人の2割強、65万人がカトリック教徒。小教区は139、学校は93。教区長はウィルトンD.グレゴリー枢機卿。

 

2024年6月8日