
問:教皇レオ14世が10日、枢機卿たちとの初の面談で、「レオ」という名前を選んだいくつかの理由について説明され、特にレオ13世に言及されました。レオ13世は、「レオ」の名を冠した最後の教皇であり、19世紀後半の偉大な社会改革者でした。教皇がレオ13世の時代と私たちの時代とのつながりについて語ったことについてお話しください。
答: 教皇レオ13世は1878年から1903年まで在位された、20世紀最初の教皇です。彼が生きた時代は社会が大きく変化した時代であり、教会は当時の差し迫った社会問題の多くに対する答えを必要としていました。教皇レオ14世は、特に彼の偉大な、カトリック教会の社会教説のもととなった1891年の回勅『Rerum novarum)』に言及され、なぜ「レオ」を選んだのか語っておられます。
新教皇は、13世が、社会が大きく変化する時代に生きていたこと、その変化は、教会や教会の教義だけでなく、人間の尊厳そのものへの挑戦であったことを、認識されている。教皇が「レオ』を名乗られたのは、教皇レオ13世がちょうど新たな時代への移行の時代に生きたように、私たちも、そうした時代に生きていることを理解しておられることを意味しています。レオ13世は、社会主義と自由放任の自由資本主義という二つの危険の間に、カトリックの道、カトリックの解釈を織り込もうとしたのです。
実際、教皇レオ14世は、「今日の人類への挑戦と人間の尊厳への挑戦、特に人工知能の問題のために、教会がこれらの非常に深刻な問題に取り組む新しい時代を示すために、この名前をつけた」と語っておられます。
問:教皇はまた、新たな産業革命についても語られていますが、レオ13世は第一次産業革命がもたらした課題に取り組まれました。それについて少し説明していただけますか。
答:教皇レオ13世の時代には、大規模な都市化が進んでいました。人々は欧州と北米の農村から都市に移り住み、それによって劣悪な生活環境、劣悪な労働条件に遭遇しました。彼らは企業経営者たちによって労働組合の結成を妨げられ、既存のシステムを転覆させようとする新しい政治イデオロギーに惹かれました。
そうした中で、レオ13世は労働者の権利を強化しようとされました。労働者の仕事への尊厳と人間の尊厳、特に家族という重要な社会的単位における人間の尊厳を強化することを望まれたのです。
教皇レオ14世は今日、新たな転換期を見ておられます。その転換期とは、AI(人工知能)の台頭、ロボット工学の台頭がもたらすものであり、今後10年、20年、もしかしたらそれよりも早く、労働の尊厳、特にレオ13世が直面された”ブルーカラー”、つまり工場労働者ではなく、”ホワイトカラー”、つまりオフィスワーカー、コンピュータ・プログラマー、それを教える人の労働に対する挑戦が起きる。新教皇は、レオ13世同様、人類のこの重要な転換期を確実にする最前線に立ちたいと願っておられます。
教会は、過去二千年以上にわたって、このような根本的な転換期を通して常に人類に寄り添ってきました。教会は、人々が正義において、仕事の尊厳において、そして人間としての尊厳を保つために、自分たちの立場や生活を維持するのを助けることができる、真の、そして決定的な対応力を持っているのです。
問: あなたがおっしゃったことの中から2つ取り上げたい。ひとつは、労働者の尊厳だけでなく、仕事の尊厳についても言及され。また、レオ13世は労働者の苦境に対処されようとしたが、今は”ブルーカラー”の労働者よりも、”ホワイトカラー”の労働者が増えている。一方で、私たちはまた、モノづくりの仕事、発展途上国の人々によって先進国向けの製品を生産するような仕事で、人々が搾取されている世界の多くの地域を目の当たりにしています。そして、この2つのテーマは故教皇フランシスコにとっても非常に重要なものでした。レオ14世はそれを認識されていると思うが。
答:レオ14世は南米で司教を務めた経験から、搾取される労働者の問題に非常に敏感だと思います。世界各国の安価な労働力や、時には不幸にも奴隷労働に依存している世界的な経済システムの状況を知っておられます。ですから、レオ13世が第一次産業革命において声なき人々の代弁者であったように、レオ14世は、そのような人々の代弁者となるでしょう。レオ14世は13世の伝統を引き継ぎ、この世界におけるさまざまな不当な形態の搾取によって脅かされている人々の代弁者となるでしょう。その意味で、彼は故フランシスコの取り組みを受け継いでいくことにもなります。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)