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・ミャンマーの司教団、3月26日を「ミャンマーと世界の平和のための祈りと断食の日」とするよう呼びかけ

(2026.3.14 Vatican News Deborah Castellano Lubov)
ミャンマーのカトリック司教協議会(CBCM)が、「神の子供たち」への書簡で、3月26日を「ミャンマーと世界の平和のために祈りと断食の日」とし、同国のすべての信者たちがこれを守るよう呼びかけている。
長期の内戦に苦しむ全信者に宛てた書簡で、CBCM会長のボー枢機卿と、事務局長のナウ・エイ司教は、「カトリック教会にとって、聖なる四旬節は、悔い改め、心の回心、そして神との親密な関係のために一層の努力を払う時期であり、カトリック信徒が祈り、断食、そして慈善活動に召される時期です」と前置き。
特に中東とミャンマーの平和のために特別な祈りが必要であることを改めて強調し、信者たちに対して、「神が、世界とミャンマーに平和をお与えになり、相互理解と一致による進展があるよう祈るように」と呼びかけている。
また、アッシジの聖フランシスコの平和の祈りを思い起こすよう促し、「イエス・キリストの苦しみと一つになるため、回心と一致に自らの苦しみを捧げるための断食」をし、「貧しい人々や苦しむ人々を助け、寄付を行う慈善活動」をするよう求めている。
ボー枢機卿とソー・ナウ・エイ司教は、既に平和のための祈りを捧げている信者たちに心からの感謝を述べるとともに、「教皇レオ14世も、平和は日常生活における愛、思いやり、相互理解の実践によって築かれるものだ、と指摘しておられます」と述べている。
・日本の司教団の担当司教が2月26日になって、3月6日「性虐待被害者のための祈りと償いの日」メッセージを中央協議会HPに掲載
(2026.2.26 カトリック・あい)
カトリック中央協議会が26日のホームページで、3月6日「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に向けたメッセージを、司教団の「子どもと女性の権利擁護部門」担当の森山信三司教名で掲載した(メッセージの日付は、なぜか2月1日になっている。メッセージは、昨年までは司教団の代表である司教協議会会長名で出していた。担当司教名にしたのは、司教団全体の取り組みを個別司教の判断に任せたからなのだろうか。
担当司教の部門名は、バチカンの教理省に置かれた担当委員会が「minor(未成年・弱者を意味する)保護委員会」という名称になっているが、日本の司教団はいまだに「子どもと女性の権利…」としたままだ。それ以外の「成年弱者」の性的虐待被害者は対象にしていない、と思われても仕方あるまい。また、2月26日になって掲載された「祈りと償いの日」ページには、各教区のこの日に合わせたミサや講演会などの行事は全く掲載されていない。
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(2026.2.26 中央協議会)
2026年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって
日本の教会では、教皇フランシスコの意向に従って「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を四旬節・第二金曜日を祈りと償いの日と定め、2026 年にあっては、来る 3 月 6 日がこの日にあたります。
四旬節は償いと回心の時ですが、この日を教会全体として、罪を償い、特に性被害に遭った方々のために祈り、またその方々の尊厳が回復されるように尽くす決意をするのです。
最も弱い立場にある人々を守ることがイエスの生き方であるにもかかわらず、教会の指導的立場にある聖職者が過ちを犯し、被害者の方々を深く傷つけました。日本カトリック司教団として、そのことを真摯に受け止め、被害を受けた方々に心より謝罪いたします。
と同時に被害を受けた方々の傷を少しでもいやすために、教会内外のいわゆる外部専門家の方々とも協力し、ふさわしく対応していきたいと思います。
「信頼が失われることで最も苦しめられるのは、もっとも弱い立場の人、保護を必要とする人です。教会が信頼を得ていれば、透明性、説明責任、評価の実践はその信頼の堅固さに寄与します。このことは未成年者や社会的弱者の保護においてとりわけ重要です。」とシノドス(「カトリック・あい」注:一昨年秋の世界代表司教会議通常総会)の最終文書は述べています(97項)。
教会内には、被害を受けた方々の保護とケア、事例への説明責任と透明性の確保など、信頼を得るためには不十分な点が見受けられます。
今後もともに、いのちの尊厳を守り抜くための努力を怠らない教会、被害を受けた方々と歩みをともにする教会、あらゆる虐待や暴力を見過ごすことなく、すべての人が安心安全のうちに歩める教会、への変革を確固たるものにしていきたいと思います。
2026年2月1日 日本カトリック司教団 子どもと女性の権利擁護部門 担当司教 森山信三
*子どもと女性の権利擁護部門 について
聖職者による子どもへの性虐待問題を重く受け止めた日本の司教団は、2002年6月21日、〈子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ〉を発表し、2003年2月にカトリック中央協議会に「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を設置しました。2025年6月17日より実施された「2025年度定例司教総会」にて、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」は「子どもと女性の権利擁護部門」となりました。
【委員会 名称】日本カトリック司教協議会 子どもと女性の権利擁護(けんりようご)部門
【事務局 名称】宗教法人カトリック中央協議会 子どもと女性の権利擁護(けんりようご)部門
【英文名称】The Catholic Bishops’ Conference of Japan Section for the Protection of the Rights of Children and Women
【主な役割】日本のカトリック教会における性虐待、性暴力に対する啓発活動を推進しています。また教会が被害を受けてしまった方の苦しみを受け止め、各教区がその方の立場に立って誠心誠意、責任をもって対応できるように促すことも大事な役割の一つです。
【デスク担当司教】担当司教 森山 信三(大分教区司教)
【デスクの主な活動】
小冊子・マニュアル関係
2006 『セクシュアル・ハラスメントに気づくことから あらゆる暴力にNO!という教会を目指して』
2009 『教会が子どもの権利を守るために 性的暴力への対応の手引き』
2013 『聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』
2017 『聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』(刑法改正による)改訂
2021 『未成年者と弱い立場におかれた成人の保護のためのガイドライン』
啓発活動、研修、視察など
2015 カトリック正義と平和協議会東京大会(ニコラバレ/四ツ谷)にて分科会開催
2016 全国教区担当者の集い(日本カトリック会館)司祭向け研修(名古屋教区)
2017 札幌教区(北一条教会)にて講演会開催
2017 司祭向け研修(札幌教区、名古屋教区、福岡教区)
2017 全国教区担当者、対応委員会向けのフォローアップセミナー(日本カトリック会館)
2018 司祭向け研修(新潟教区、大分教区、京都教区)
2018 長崎教会管区担当者の集い(福岡大名町教会)
2018 日本における加害司祭回復プログラムのための視察(フィリピン)
2019 司祭向け研修(新潟教区、鹿児島教区、大分教区)
2019 カトリック神学院(合同研修)にて実施
2019 大阪管区教区担当者の集い(岡山教会)
2020 全国教区担当者のつどい(オンライン)
2021 全国教区担当者のつどい(オンライン)開催
2021 カトリック正義と平和協議会大阪大会(オンライン)にて分科会開催
2022 司祭向け研修(大阪教区)
2024 管区別 教区担当者のつどい(東京、大阪、福岡)
2024 司祭、司牧者向け研修(新潟教区、仙台教区など)
2025 全国会議(大濠会館 福岡教区)
2025 司祭、司牧者向け研修(大阪高松教区、名古屋教区、淳心会、新潟教区、京都教区など)
【その他】
2022年度第1回臨時司教総会(2022年7月開催)において「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン運用促進部門(以降、部門)」が設置され、カトリック教会としての体制づくり、聖職者による性虐待、性暴力の関連事項は、部門に移管されました。
ウェブサイト、ロゴマーク等の説明についてはこちらのページをご覧ください。
・ 2026年キリスト教一致祈祷週間(1月18日~25日)―日本では東京など6教区で18日などに共同礼拝や祈祷会
・「平和が遠く感じられる今、言葉だけでなく、行動で証明しなければならない」ミャンマーのボー枢機卿が降誕節メッセージ

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
・タイ・カンボジア紛争再燃の中で待降節を迎えた人々は…

・「欧州やアジアとの連携が日本における自立外交の鍵」-言論NPO 世論調査結果から:松田邦紀・前駐ウクライナ大使
(2025.12.9 言論 NPO)
米国は信頼できない。しかし、核を考えると他に選択肢はない。この二つの問いに現在、日本が置かれた難しい状況が表れていると思う。
これは、私がこれまで付き合ってきたウクライナ、ヨーロッパのいくつもの国も同様で、多くの国が現在、この矛盾に直面している。
日本国民は、トランプ大統領の関税の一方的な引き上げなどの行動に6割を超える人が反対している。この意識が同盟国である米国への信頼の揺らぎや米国に過度に依存する日本外交の在り方への疑問にまで広がっている。これは今後の日本外交の在り方を考えた場合、軽視できない国民の意識だと考える。
日本外交はこれから米国とどのように向き合うべきかでは、「米国は同盟国であり、今後も協力していくべき」は20.9%にとどまり、「米国との関係は今後も大事だが、過度に依存しないように外交上の自立を模索すべき」が、60%にまで拡大している。
ただ、「米国とはむしろ一定の距離を置いてアジアや世界の様々な国との関係も多角的に構築する」は6.9%と、国民は米国との関係まで否定しているわけではない。
今回の世論調査で示された日本の民意は、日本と米国との関係はこれからも大事だが、米国の行動をただ受け入れるのではなく、米国ともしっかりと話をしなくてはならないということ、そして、米国に頼れない部分は日本が自前で行うか、それ以外の他の国との関係を強化して、それを補っていく。そういう行動を今の日本国民は求めているということである。
今回の世論調査結果は、日本外交の今後に対する問題提起だ
私は、米国に付いていくということと、米国以外の国とも仲良くすることは、本来、両立は可能だと考えている。
ヨーロッパの場合はEUという枠組みがある。この不安定な世界の局面で、これまで以上に、EUの自立的な発展を強化し、その上で米国に主張することはしっかり説明する、それをEUが目指すことは可能だが、日本の場合はそういう枠組みがアジアにあるわけではないため、他に友達もなく、日米関係だけの話を続けていくと上下のシンプルな関係になりやすい。
この状況への根本的な問いかけが、日本の中で始まっているのだと思う。
私が、この世界の状況を日本の立場になって考えると、米国との関係を大事にするだけではなく、日本はEUやNATOの国にもアジアに関心を持ってもらい、また韓国などアジアの国とも連携を深めることで、米国一辺倒ではない日本外交の在り方を模索する余地が広がるように考える。
そして、米国の核抑止にこれからも頼らざるを得ないのであれば、通常兵器でこれまでやっていないことに取り組むと同時に、米国の核抑止への信頼を高めるために、日米間の議論は今後、さらに増やしていく必要もあると考える。
今回の世論調査は、日本外交の今後について問題を提起したのは、私が見ても間違いがないと思う。
・「トランプ政権発足後、日本国民の2割以上が米国を信頼しなくなった」ー米国と日米関係に関する言論NPOの世論調査結果
(2025.12.9言論NPO)
言論NPOはこのほど、日本の課題 外交と安全保障 世論調査・有識者アンケートを実施した。結果は次の通り。
【トランプ政権の行動をどう見るか】
世界各国に高関税を一方的に迫ったり、国際機関への拠出金を大幅に削減することを進めるなど、自国利益を第一に考えるトランプ政権の行動に「反対している」という日本国民は60.5%と6割を超えています。「支持している」は13.1%と1割程度に過ぎず、日本国民のトランプ政権に対する否定的な見方が浮き彫りとなっています。
【特に支持できないトランプ政権の行動】
トランプ政権の行動に「反対している」という人にその理由を尋ねたところ、「各国に高関税を一方的に迫り、実行したこと」が79.5%で突出しています。
【米国が再び国際協調主義に戻ることはあるのか】
米国が再び国際協調主義に戻ることはあるのか、という点については、「もう絶対に戻ってくることはない」との見方は6.3%に過ぎず、「国内の経済問題が深刻化し、次期大統領選挙で米国第一主義は修正を余儀なくされる」との見方が36.7%で最も多くなっています。ただ、「戻ってくるが、それには一世代を超えるほどの時間がかかる」との見方も22.1%ありました。
【トランプ大統領の行動で世界はどう変わるのか】
今後の世界を予想してもらったところ、「トランプ大統領の極端な行動はいずれ落ちつき、戦後続いてきた多国間主義に基づく国際協調の国際秩序はなんとか修復される」という見方が24.7%で最も多くなっています。ただ、「多極化」(24%)、「米国を軸とした新秩序」(13.4%)、「分断」(11.8%)の三つを合計すると、半数近くの日本国民は世界の変容を予想していることになります。
【米国の社会・政治体制に対する理解】
現在の米国政治・社会を「権威主義(独裁)」であると見ている日本国民は52.5%と半数を超えています。なお、選択肢は違いますが、2024年の日中共同世論調査では中国を「全体主義(一党独裁)」と見ている日本国民は15.3%でした。
「民主主義」との見方は11.9%、「国際協調主義」は1.6%に過ぎませんでした。
【ドルの基軸通貨としての地位は維持されるか】
トランプ大統領は、今後も世界の基軸通貨としてのドルの地位を維持していくことへの強い意欲を示していますが、日本国民でドルの地位がこれまで通り維持されると見ている人は21%でした。「将来対立する通貨が育った段階でドル体制は崩壊していく」との見方は6.7%でしたが、「当面は大丈夫だが、ドルへの信認は低下する」は37.9%となり、合計すると4割以上の日本国民はドルの地位は低下すると考えています。
【米国を同盟国として信頼しているか】
米国を同盟国として「信頼している」という日本国民は、19.7%と2割に満たず、さらに21.1%が「これまでは信頼していたが、今は信頼していない」と答えています。
日本国民の2割以上が、トランプ政権発足後に米国を信頼しなくなったことになります。また、「どちらともいえない」「わからない」と信頼できるかどうかを判断できていない日本国民も46.5%と半数近くいます。
【日本はこれからも米国の核抑止力に頼るべきか】
「日本はこれからも米国の核抑止力に頼るべきだ」と考えている日本国民は、51.1%と半数を超えています。
【日本外交はこれから米国とどのように向き合うべきか】
今後の日本の対米外交については、「米国との関係は今後も大事にしていくが、過度に米国に依存しないように外交上の自立も模索すべき」との回答が60%で突出しています。
【日本は国際協力や国際秩序を維持するために努力すべきか】
日本国民の68.6%と7割は、多国間主義に基づく国際協力やルールに基づく国際秩序を維持していくために、日本は今後これまで以上に努力していくべきだと考えています。
【米中対立が激化する中での日本の立ち位置は】
米中対立が激化する中で、日本は米中のどちらかにつくのではなく、「世界の協力発展のために努力すべき」と考えている日本国民は65.8%と7割近くに上っています。「米国との関係を重視すべき」という回答は18.5%でした。
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・バチカン総合人間開発省長官、バングラデシュ訪問でロヒンギャ難民の危機打開を訴え
(2025.11.5 Crux Stephan Uttom Rozario)
ダッカ発 – バングラデッシュを訪問中のバチカン総合人間開発省のミカエル・チェルニー長官が4日、首都ダッカで記者会見し、ミャンマーと国境を接する同国最大の難民キャンプ、コックスバザールでミャンマー政府・軍の弾圧に苦しむイスラム少数民族ロヒンギアの人々と面談したことを明らかにした。
難民キャンプにいるロヒンギャ族の人々の大半は、2017年8月以降にミャンマーから流入した。ミャンマー・ラカイン州で反乱軍の攻撃が相次いだことを受け、国軍が掃討作戦を開始したのが主因。ロヒンギャの人々はイスラム教徒であり、仏教徒が多数を占めるミャンマーで以前から、市民権の剥奪など差別を受けてきた。そして、2021年2月の軍事クーデターで民主政権が崩壊、軍事政権となったことで、虐待はさらにつようまった。
コックスバザールの難民キャンプの人口密度は驚異的で、1平方マイルあたり約10万3600人。バングラデシュ全体の平均人口密度の40倍以上に相当し、世界でも最も人口密度の高い地域になっている。難民たちは広さが10平方メートルにも満たない粗末な小屋に、多い場合は12人もが住まわされている。
チェルニー長官は11月1日から4日にかけてバングラデシュを訪問し、ナラヤンガンジの国内移住者とコックスバザールのロヒンギャ難民と面談した。
その結果について、長官は「二つのキャンプの状況は極めて厳しい。住民は無国籍で、職も無く、何年も、キャンプに押し込められるという、耐え難い状況の中で暮らし続けることを余儀なくされている」と枢機卿は記者会見で述べ、世界の国々や国際機関が「ロヒンギャ問題の解決策を提供できていないのは、本当に遺憾なことです」と語った。
だが、解決の可能性はあり、そのための対話の重要性を強調、「関係当局の対話を維持しなければならない。決して扉を閉ざしてはなりません。意見交換は、解決策の発見に寄与する」とし、ロヒンギア問題への世界的な注目度の低下、援助資金の減少が続いている現状を打開するために、ロヒンギャ難民との連帯を強めるよう、世界各国、国際機関の関係者に訴え、特に「キリスト教系を含む全ての組織が、真のニーズに応え、苦しむ人々への支援を継続しなければなりません」と強調した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
・来年の総会に向けてアジア司教協議会連盟が司教たち参加の「FABCのシノダリティ(共働性)に関するセミナー」開く

・「青年の祝祭」—日本の若者たち40人も2025聖年のローマ巡礼
・「平和を紡ぐ旅 -希望を携えて-」ー戦後80年、日本司教団メッセージ
「平和を紡ぐ旅 -希望を携えて-」 戦後80年司教団メッセージ
平和を望むすべての皆様、若者の皆様へ
はじめに
今年、私たちは戦後80年を迎えました。この節目の年にあたり、改めて命を奪われた人々、さまざまな形で尊厳を侵害された人々、また破壊された自然環境を心に留め、祈りを捧げます。人の生涯と同じほどの年月を経て、私たちは今、人間の尊厳を大切にするのだ、という思いを、平和を実現しようという願いを、どのように次の世代へと受け渡していくのでしょうか。25年に一度カトリック教会で祝われる聖年を迎えた今年、平和な世界を造る希望をもって皆様と、とくに若者の皆様と、ともに歩みを進めていきたい、と願っています。
戦後80年を経て
2024年10月に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。「核兵器は極めて非人道的な殺りく兵器であり人類とは共存させてはならない、速やかに廃絶しなければならない」。受賞に際し行った演説で代表委員の田中熙巳氏が語った言葉は世界の人々の心に届き、核廃絶について考えるきっかけとなったことでしょう。その言葉には、80年にわたって語り続けてこられた重みがありました。
あの戦争を経験した多くの人が、日本でも、世界でも、80年の間その経験を語り伝え、平和のために行動してこられたのです。
80年が経過した今、実際に戦争を経験した人は非常に少なくなってきています。だからこそ、私たちは歴史的事実に誠実に向き合い、学び、記憶にとどめ、次世代に伝え、平和のために生かしていかなければなりません。
教皇フランシスコは2019年広島にて次のように言われました。「思い出し、共に歩み、守る。この三つは倫理的命令です。これらは、まさにここ広島において、よりいっそう強く、より普遍的な意味をもちます。この三つには、平和となる道を切り開く力があります。ですから、現在と将来の世代に、ここで起きた出来事の記憶を失わせてはなりません」。
この意味で、若者の皆様が広島や長崎、そして沖縄に、巡礼や平和学習の旅をなさるのは、とても大切な、意義のあることです。
私たちはアジア・太平洋戦争以前から、日清・日露戦争や植民地支配を含むさまざまな行為によって、日本が近隣諸国に対し多大な苦しみを与えてきたことを忘れてはなりません。80年前、戦争終結に至る歴史の流れの中で、カトリック教会が平和の実現に求められる役割を十分に果たせなかった側面があります。明治以降、日本国が天皇を中心とした国家体制を整える中で、カトリック教会は忠君愛国の姿勢を示そうと苦心しました。その過程で、正戦論を用いて日本の戦争を正当化し、支持する立場を取ったのです。こうした過去を真摯に受け止め、回心し、次世代を担う人々とともに平和への歩みを進めていきたいと思います。
世界の今
多くの市民による80年間の平和を目指す取り組みに並行して、国際連合とその加盟国は歩みを続けてきました。しかし平和を希求する国連憲章その他さまざまな規範は、都合よく解釈され、また無視されることによって、世界は今、非道な戦争を目の当たりにしています。ウクライナとロシア、パレスチナとイスラエルをはじめとする中東、またミャンマーやアフリカ諸国でも、日々、多くの人が殺され、目を覆いたくなる惨状が続いています。
戦争は、人道的介入、予防、防衛などを建前にし、正義の名のもとに行われます。しかしそれらは自らを正当化するための拡大解釈であって、その結果多くの民間人が被害に遭い、環境が破壊され、さまざまなリスクが拡大するのです(回勅『兄弟の皆さん』258参照)。
さらに、実際に戦闘行為を行っている国以外にも、戦争にならないように、また戦争になったときのためにと、軍備を強化する国が増えています。日本も同じで、日本国憲法9条により従来「できない」とされてきた集団的自衛権の行使容認、他国領土を攻撃できる長射程ミサイルの配備や武器輸出の解禁、自衛隊基地の新設、防衛費の大幅増など、国是としてきた平和主義がかすんでいます。
沖縄島をはじめ南西諸島においては、「防衛」の名のもと、次々とミサイル部隊が配備されています。80年前の沖縄戦では、9万4千人余りの一般住民を含む、20万を超える人の命が奪われました。沖縄の人々は、その恐ろしい戦争の記憶、そして戦後の米軍基地に関連するさまざまな暴力事件に苦しみながらも、あくまで非暴力による平和アピールを続けています。戦争を二度と繰り返さないように、性暴力を含む基地由来の被害が二度と起こらないように、そう叫び続けているにもかかわらず、今また、ミサイル基地等が目の前に作られているのです。沖縄の年配の方々の間には、「戦争の準備をしている」「戦争前と同じ歩みをしている」、そうした声が聞かれます。
戦争そのものの恐ろしさ、罪深さは、多くの人にとって明らかですが、戦争へと人々を導いた日常における思想や価値観の植えつけが、知らぬ間に世論を戦争に向けて突き進むものへと変えていくことを、80年前の経験から学ばねばなりません。今の日本は、果たして平和への道を進んでいるのでしょうか。
核兵器の廃絶に向けて
教皇フランシスコは2019年広島で「確信をもって、改めて申し上げます。戦争のために原子力を使用することは、現代においては、これまで以上に犯罪とされます。人類とその尊厳に反するだけでなく、私たちの共通の家の未来におけるあらゆる可能性に反する犯罪です。原子力の戦争目的の使用は、倫理に反します。核兵器の所有は、それ自体が倫理に反しています」と言われました。
日本被団協のノーベル平和賞受賞は、世界が核兵器使用の脅威の中で「核抑止」から抜け出し、核兵器廃絶に向かうための大きな一歩です。
核兵器は、爆発時だけでなく、その後の長い時間にわたる健康被害や社会的差別、そして環境破壊を引き起こすことを、被爆国に生きる私たちは経験してきました。日本の司教団は戦後50年にあたって、強い決意のうちに宣言しました。
「核兵器の破壊的な力を体験した私たちには、その貴重な証人として、核兵器の廃絶を訴え続けていかなければならない責任があります」(「平和への決意 戦後五十年にあたって」)。
核兵器廃絶に向けた取り組みは、広島・長崎と米国の司教たちとのパートナーシップによるネットワークなどにおいて広がりを見せています。今回の受賞が、核兵器のない世界に向けた希望の灯となるように祈るとともに、世界と日本政府がこの「時のしるし」を深く心に留め、一刻も早く核兵器禁止条約の署名・批准に向けて行動することを強く求めます。
真の平和とは
聖書が語る「平和(シャローム)」は、もともと「欠けたところのない状態」という意味をもつことばです。その意味で、平和は、単に戦争や争いがない状態なのではなく、この世界が神の前に欠けるところのない状態、すなわち神がきわめてよいものとして造られたこの世界のすべてが、それぞれ尊重され、調和のうちにある状態のことだといえるでしょう。ですから、平和のために働こうとする時、私たち自身の神との関係、人々との関係、自然環境との関係を振り返り、神の前に望ましい関係であろうと回心し、対話することなしには前に進めません。平和とは、核兵器や武力の均衡によってもたらされるものではないのです。
希望を共にして歩む
今年、カトリック教会は聖年を祝っています。これは、旧約聖書のレビ記(25章10節参照)にある「ヨベルの年」にちなんだ行事です。レビ記によるとこの年は、畑を休ませ、貧困などの理由により売却を余儀なくされた土地が返却され、雇い人となった同胞が解放され、負債が免除されたりする解放の年で、50年に一度巡ってきます。カトリック教会では、25年に一度聖年を実施し、神の前にすべての人が尊い存在であることを再確認し、権利を侵害されているならばその状態を解消し、搾取されているならばそれを返済し、負債から解放されるよう働きかけています。まさに、欠けてしまった状態から、本来の状態に戻す、平和を実現するための年といえるでしょう。
前教皇フランシスコは、今年の聖年のテーマを「希望の巡礼者」とし、「聖年が、すべての人にとって、希望を取り戻す機会となりますように」と招いています。
また、新教皇レオ十四世は最初の祝福の際、「あなたがたに平和があるように……。この平和のあいさつが皆さんの心に入りますように。皆さんの家庭に、どこにいたとしてもすべての人に、すべての民族に、すべての地に届きますように。あなたがたに平和があるように」と呼びかけられました。
平和を望むすべての皆様、若者の皆様、この80年の間、幾世代にもわたって受け継がれてきた平和への歩みを自らのものとし、希望を携え、平和を紡ぐ旅をともに歩み続けてまいりましょう。
2025年6月17日 日本カトリック司教団
・「 主は、ミャンマーの傷ついた大地に落ちるすべての涙を見ておられる」ーボー枢機卿、復活徹夜ミサで

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
*カリタスジャパン「ミャンマー地震救援」募金は⇒郵便振替:00170‐5‐95979 加入者名:宗教法人カトリック中央協議会 カリタスジャパン(記入欄に「ミャンマー地震」と明記)☎03-5632-4439
・大地震のミャンマーで国軍が反政府勢力支配地域空爆、カトリック教会をまた破壊

チン州はミャンマで唯一、カトリック教徒が多数を占める州だが、国軍による空爆で2月にも、教皇フランシスコによって認可されたミナダ教区の大聖堂となる予定だった「イエスの聖心教会」が破壊されるなど、2021年以来、国軍の爆撃で同州では少なくとも67の教会を含む107の宗教施設が破壊されている。