巻頭言

【6月の巻頭言】教皇のAI回勅と、私たち日本の司教、司祭、信徒が歩むべき”シノドスの道“

(2026.5.31 「カトリック・あい」代表・南條俊二)

*「反シノドス的な、いきなりの献金増額要請」「教皇初のAI回勅」―閲覧件数に現れた読者の問題意識

 「カトリック・あい」の月間閲覧件数が5月は、4か月ぶりに1万4000件台を回復した。増加の要因は明確だ。

 まず、記事別閲覧でトップに立った読者投稿「財政赤字に窮したカトリック鹿児島教区が取った、あまりにも”反シノドス的”な、いきなりの献金増額要請」。月半ばからの掲載にもかかわらず、個別閲覧件数で圧倒的、300件を大きく上回り、読者から共感の声も寄せられている。

 司祭や信徒の減少、高齢化、結果としての財政面からの教会運営の困窮など、司教、司祭、信徒がこうした目前の問題について認識を分かち合い、共に対策を考え、実施する必要がある。教皇フランシスコが始められた共に歩む”シノドスの道“の日本の教会のテーマまであるはずにもかかわらず、日本の教会、司教団が真剣に取り組もうとしない。そうした現状への率直な疑問と批判が共感を呼んでいる、とみていいだろう。

 そして、26日の掲載開始から一週間も経たない段階で閲覧300件台に乗せたのが、教皇レオ14世の初の回勅『Magnifica Humanitas-人工知能(AI)の時代における人間の人格の擁護』の全文仮和訳+公式英語訳だ。

 この二つは、まさに今の教会を取り巻く、切迫した大きな課題—小教区運営からAIの急激な台頭を背景にした世界全体の政治、経済、社会にいたる様々な課題—に対する現状認識と対応を、世界、そして日本の教会と私たち一人ひとりに迫る問題に関係することで共通している。

*AIの急激な台頭、回勅は、日常生活に与える深刻な影響にも切り込んでいる

 その意味でも新回勅はまさに時宜を得ているが、内容が極めて正確な現状把握と提言に満ちていることも注目される。AIの武器化、戦争への影響への厳しい批判と警告されるなど世界レベルも政治、経済、社会だけでなく、日常生活に浸透しつつある問題にも、次のように触れ、具体的に対応を求めておられる。

 「デジタル機器やソーシャル・メディアが手軽に、誰からもチェックを受けずに利用できることが、特に人生の最も脆弱な段階において、睡眠、集中力、感情や人間関係のコントロールに悪影響を及ぼし、時には悲劇的な結果を招く可能性があることが、ますます強く指摘されている… 良識を傷つける暴力的なコンテンツや品位を傷つけるコンテンツ、ポルノや過度に性的な素材、身体や感情を軽視するメッセージ 、また危険な行動を常態化させるような提案へのアクセスが容易であることによって、さらに悪化している… 若者の脆弱性を増大させ、依存症を助長し、孤立やいじめ、ネットいじめ、さらには親密な画像や機密情報を共有するよう迫られる圧力にさらされることになる」(141項)。

 「規制の負担をすべて家庭に押し付けるのではなく、サービス提供者に責任を負わせ、あらゆる形態のオンライン上の性的搾取や暴力に対する具体的な保護を提供するためにも、立法者による介入が適切である。そうして初めて…子どもや青少年を、真に貴重な宝物として守ることができる。同時に…デジタル環境において操作を見抜き、自らの尊厳を守り、他者の尊厳を尊重する方法を教えることも必要だ」(142項)

*AIと繋がるSNS-周囲に無関心、罪の意識も希薄な若者―トクリュウ強盗殺人、親よりチャットGPT…

 日本では、AIと結びついたSNSを利用した「匿名・流動型犯罪(トクリュウ)グループ」による犯罪が相次いでいる。SNSや求人サイト等でメンバーを集め、指示役(上層部)が匿名性を保ちながら、実行役を頻繁に入れ替えて離合集散を繰り返す強盗殺人などだ。

 すでに東京都内でも何件が起きているが、栃木県の民家で強盗殺人事件では、4人の実行役全員が高校生で、指示訳の命令のまま、人の命を奪うということへの実感も、罪の意識もないまま、高齢の女性をバールで殴り続けて殺し、平然と現場を立ち去った。

 一方で、プロ野球有名球団の監督が自宅で、娘二人の喧嘩の仲裁に入ったところ、言い返した長女に暴行を働いたとして逮捕された事件。18歳の長女は、その場に居た母親ではなく、対話型AI「チャットGPT」に相談。「(相談対象は18歳未満であるのに)児童相談所に通報するように」と言われるまま通報、相談所の110番を受けた警察官が現場に…。

 他人事ではない。生身の人間よりもAIに引き込まれている人々、特に若者(最近は、中高年まで年齢層が上がってきているようだが)が圧倒的多数になりつつある、という現実に、誰もが日々出会う。

 電車で優先席に、スマホを見ながら乗り込んだ若者がどっかと腰を下ろし、高齢者が乗って来てもスマホに没入し、席を譲る気配すらない。

 視力が落ちる、姿勢が悪くなるなど人体への影響を警告する医療関係者はいるが、何よりも問題は、教皇も回勅で触れられているように、ゲームや漫画、AIが選んでくれたお気に入りの情報に浸り続けることで、現実と非現実の境界があいまいになり、社会や世界の問題に関心を持たなくなり、自分から物事を考え、行動するという能力、そして何よりも「他者への思いやり」が著しく低下していくことではなかろうか。

 それが、16歳4人による強盗殺人、親よりもチャットGPTが相談相手、そして最近では、仕事の時間以外はAIによる”仮想彼氏””仮想彼女“とひたすら付き合い、「結婚したい」と思い詰める成年男女さえ出てきている…。

 国レベルで言えば、某独裁国のように、国民はもちろん、敵対国と見なす国民をAIを駆使したSNSを通して、意識や行動を操作しようとする動きもあり、すでに、対象国の国論を分裂させたり、国政選挙に介入する事件が起きている。日本のこうした若者たちが「格好の餌食」と見られることも十分考えられる。

*人気アニメの聖地となった横浜・保土ヶ谷教会に若者たち…AIの”アドバイス“は

 もちろん、AIそれと関係したSNSは、害ばかりをもたらしているわけではない。

 2014年に放送され、今でも多くのファンがいるTVアニメ「ソードアート・オンライン」のII・マザーズロザリオ編の主人公の少女ユウキの告別式とされた4月4日に合わせたSNSの呼びかけに応じ、まさに今年のその日、“式場”のカトリック保土ヶ谷教会に、所属信徒の話によると、確認できただけで20人の若者たち、朝からだと、もっと大勢が押し寄せた。喪服らしい黒っぽい服を着た集団もいた。

 ある説明では、このアニメでは、終末期医療下にあるユウキを通じて、現実を見据えたうえで人生とは、命とは何なのか?という問いを、リアリズムを持って描かれている、という。それが、教会への関心と繋がったのかもしれない。

 保土ヶ谷教会所属の知人が、この件と教会のこれからについてAIから、以下の“アドバイス”をもらった。

Q:カトリック教会は「観光施設」になってしまったのか?

A:結論から言うと、決してそうではない。ただ日本では、信徒数がもともと少ない(人口の1%未満)、高齢化が進んでいる、若者の宗教離れ、「宗教=距離を置くもの」という社会感覚。歴史的建築や雰囲気の美しさから「観光地として人が来る場所」になっている側面は確かにある。

Q:今回の現象はむしろ“チャンス”か。

A:今回のように、アニメをきっかけに若者が教会に集まる現象は、見方を変えると重要。若者は「教会に関心がない」のではなく、「入口がない」だけとも言える。アニメや文化は、その入口になり得る。

Q: 教会への現実的なアドバイスは?

A:・「排除」ではなく「接点」として活かす=アニメ目的で来た人に対して「静かにしてください」だけで終わるのではなく「ここは祈りの場所です」と伝える、文化 → 内面への導線を作る。

・ 説教ではなく「体験」を提供する=若い世代は「教え」より「体験」に反応する。例えば:短時間の黙想・祈り体験、教会音楽(オルガンなど)の公開、キャンドルナイト、「宗教っぽさ」より「静けさ・意味」。

・ストーリーで伝える=アニメに惹かれる人は「物語」に敏感。聖人の人生(苦悩・選択・希望)、キリストの物語を「人生ドラマ」として紹介=教義説明よりも共感を重視。

・デジタル発信を本気でやる=若者は検索しない。「流れてくるもの」を見る=YouTube / TikTokで短い動画、 「教会で何してるの?」を可視化。

・「信者を増やす」より「関係を作る」=いきなり信徒になる人はほぼいない=まずは来てもらう、次に居心地を感じてもらう、最後に関心が生まれる、段階的な関係づくり。

・ 本質的な視点=教会はもともと、人生の意味を考える場所、苦しみを抱えた人の避難所、共同体(コミュニティ)。観光でもアニメでも、人が「足を踏み入れる」こと自体に意味がある。

・ 少し厳しめに言うと=もし教会側が「信徒以外は迷惑」「文化的利用は不純」という姿勢を強めすぎると、人は完全に離れる。逆に迎え入れすぎて「ただの観光地」になるのも危険。

・ 理想のバランス=開かれている(誰でも来られる)しかし中心は祈り(軸はブレない)この両立が重要。

 残念というべきか、実際の人間の想定される答えよりも的確で、参考にすべき点がよくまとめられている。

・・・・・・・

 日本の教会全体、司教団も、今回の教皇回勅を機に、こうした課題へのプラス、マイナスも含めた現状認識の共有、と「共働」による取り組みを”シノドスの道”のテーマに取り上げ、それこそAIの助けも借りて、確かな現状認識に基づいた真剣な取り組みをする必要があるのではないか。

 

2026年5月31日
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