・9月の「カトリックあい」月間閲覧件数は、前月より日数が少ないことや、読者の皆様に強い関心を引くニュースか少なかったためでしょうか、前月より若干減って約1万7600件となりました。
個別記事では、トップが「来年の聖年に向けて聖地巡礼などを全免償とするとバチカン発表」約160件で、「イタリアの司祭が妻と子のために司祭返上」約140件、「カトリック東京教区が『子供と女性の権利擁護委員会』担当司祭更迭」約120件がこれに次いでいます。月間閲覧60件以上の記事12本をテーマ別にみると、聖職者の性的虐待関連、シノドス関連がそれぞれ4本と、高い関心が続いているのが読み取れます。
・「Synod on Synodality」をテーマとする世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会の第二会期の会合が10月2日から始まります。
バチカンのシノドス事務局が7月に発表した準備要綱で、シノドス総会第2会期に取り上げるべき課題として多くのスペースを割いているのは、「女性の活躍の促進」と「透明性と説明責任」です。
「基礎編」で「教会生活のあらゆる領域における女性の役割」について、女性のカリスマと召命を「さらに十分に認める必要」を強調し、女性の助祭叙階などを念頭に、具体的な方策の検討に踏み込むことを求めています。
「本編」で「重要かつ緊急」を要する課題として7項にわたって触れられているのは、「透明性」と「説明責任」ですシノダル(共働的)な教会に求められる文化として『透明性と説明責任を実践する』を挙げ、 「現在、教会内における透明性と説明責任の要求は、財政上のスキャンダル、とどまることのない性的虐待、その他の未成年者や弱者への虐待などによる信頼性の喪失の結果として起きている」と現状分析、具体的な取り組みの検討を提起しています。
・「カトリックあい」の9月の月間閲覧状況で、読者の関心が高いのは「シノドス」と「聖職者の性的虐待」と申し上げましたが、討議要綱もまさに、この二つをつなぐものとして、「透明性」と「説明責任」を重要テーマとして挙げているのです。
第二会期直前の9月27日、ベルギー訪問中の教皇フランシスコは、同国の政治、経済、市民社会など各界代表、外交団、そして司教団などを前にしたあいさつで、聖職者による性的虐待問題を取り上げ、「カトリック教会は、キリスト教徒としての謙虚さをもって児童性的虐待の『恥』と向き合い、二度とこのようなことが起こらないようあらゆる努力をしなければならない…。今日、私たちはこの問題と向き合い、赦しを請い、虐待の恥、未成年者への虐待の恥を解決せねばなりません」と、教会関係者以外の政府や民間のリーダーたちを前にした異例の訴えをされました。
さらに29日のローマへの帰国途上の機中会見で、教皇は「虐待の被害者の声に耳を傾けることは義務です… 私たちには虐待を受けた人々の声に耳を傾け、彼らをケアする責任があります。被害者の中には、心理療法が必要な人もいる」とし、「被害者のケアだけでなく、加害者も処罰されなければならない」と強調。さらに、「司祭が告発され有罪判決を受けた後、司教の中には教区や子供たちから離れた図書館で働く任務を与える者もいます」と批判、「このような行為は改めねばならない。教会の恥は『隠蔽すること』です。私たちは隠蔽してはならない」と強い言葉で”隠蔽体質”を糾弾しています。
この発言の裏には、児童のみならず未成年、成人の男女に対する聖職者の性的虐待と高位聖職者などによる隠ぺいが、教会全体の信頼を大きく損ない、教会離れを加速する要因になっている、しかも対策が目立った効果を上げていないこと、透明性が確保されず、説明責任も十分に果たされていないことへの、強い危機意識りがあるように思われます。
・日本の教会はどうでしょう。
教皇フランシスコは2021年10月に”シノドスの道”の歩みを始めるにあたり、この歩みについて、「世界の教会のあらゆるレベルで行われる、互いに耳を傾け合う、大きな動き、として考えています…シノドス(共働性)という言葉には、私たちが理解すべき全てのものが含まれている。それは『共に歩く』ということです」(同年9月18日の講話)と語られました。日本の教会の”共に歩く”は、いまだにこの教皇の思いとはかけ離れた状態です。現状を見る限り、「共に歩く」ことも、聖霊の助けを借りて、全ての信者の声に「耳を傾け」、「識別」し、「具体的な行動」に生かしていく努力を、日本の司教団が十分にしているとは、残念ですが、とても思えません。末端から声を挙げようにも、それを受け止める体制すら無きに等しい状態ではないでしょうか。
そうした中で、聖職者による性的虐待も、欧米に比べれば件数は多くありませんが、司教や司祭の皆さんに、説明責任を果たし、被害者に謝罪し、教会に戻れるようケアをするという努力は皆無と言っていい状態です。加害者司祭は無論のこと、教区や修道会の責任者も被害者と誠実に向き合おうとせず、長崎、仙台では裁判所が和解勧告をし、教区が損害賠償金を払ったことになっていますが、司教も司祭も、教会への復帰の支援、温かく迎える対応どころか、教会関係者が被害者に心無い非難の声をかけ、さらに心の傷を深くさせ、教会に足を踏み入れることもできないケースもあると聞きます。
東京地裁でも、繰り返し神言会の司祭から繰り返し性的虐待を受けた女性がこの修道会を相手に損害賠償の訴えを起こして公判中(第五回口頭弁論が10月17日午後3時から東京地裁第615法廷で開かれる予定)ですが、被告側の修道会は謝罪や和解の努力をすることなく、あくまで訴えそのものを拒否する姿勢で、第4回口頭弁論から弁護士を3人に増やしています。
教皇フランシスコが2021年10月に始められた”シノドスの道“の大きな”山場“とも言うべきシノドス総会第二会期の会合が約1か月にわたって開かれる間に、「聖霊の導き」のもとに、どこまで踏み込んだ議論をし、来年前半までに出される10のテーマの研究会最終報告にどうつなげ、具体的な取り組みに踏み出せるのか。そして日本の代表たちが、どのように対応するのか。「カトリックあい」は、東京地裁での裁判の行方なども併せて、強い関心をもってフォローしていきます。
(「カトリックあい」代表・南條俊二)