・ロシアの苛烈な攻撃の中でウクライナの人々はクリスマスを祝っている

Ukrainian serviceman decorates a Christmas tree, in BakhmutUkrainian serviceman decorates a Christmas tree, in Bakhmut  (REUTERS)

 ロシアの軍事侵略でこれまでに少なくとも数万人が命を落とし、さらに多くの人が負傷し、数百万人が家を追われている。そうした欧州で第二次世界大戦以後、最大規模の軍事侵略の恐怖からのひと時の心の安らぎを、クリスマスが提供している。

 だが、軍事侵攻開始から10か月を経ても、「クリスマス休戦」は実現していない。ウクライナ当局によると、ロシア軍は23日から24日にかけても、戦車、迫撃砲、大砲、ロケット砲を使って、ウクライナ東部、ドネツク州の都市バフムート郊外の新開地を攻撃した。

 ドネツク州の都市は、ウクライナ軍にとって東部地域の支配権を回復するために欠かせない場所であり、ロシア軍も譲る気配がない。ウクライナのゼレンスキー大統領は今週、最前線のこれらの都市を訪れ、市民や兵士たちを激励した。

 クリスマスの祝いが終わると、夫が、このウクライナを守る戦いの最前線にすぐに戻らねばならないことをレイシャは覚悟している。「このままでは、私たちの将来の計画を立てることができない。私たちは平和を願っています。 しかし、単なる平和ではありません。 (ロシアの軍事侵略との戦いに)勝利しての平和を望んでいます。私たちウクライナ国民を団結させるのは、このたった一つの願いなのです」。

 これは、ウクライナの、平和を祈るキリスト教徒を含め、何百万人もの人々が共有するクリスマスの願いだ。多くの人たちが、ロシアの容赦ない攻撃によって、発電所など生活に欠かせないインフラの多くが破壊される中で、極寒に直面している…。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2022年12月25日

・大司教の性的虐待隠ぺいがもたらした教会の信頼危機、ケルンの信徒たちの動揺深刻(Crux)

Crisis of confidence over cardinal shakes Cologne Catholics

(2022.12.10 Crux   Associated Press

ケルン、ドイツ — 前例のない信頼危機が、ドイツのカトリックの歴史的中心、ケルン大司教区を揺るがしている。 多くのカトリック信者は、彼らと深く断絶した大司教、ライナー・ヴェルキ枢機卿に、聖職者の性的虐待を隠蔽した可能性をめぐって抗議し、教会離れが続出している。

 

*ドイツ最大の歴史ある大司教区の危機は、ドイツ教会の縮図

 枢機卿の出処進退は教皇フランシスコの手に委ねられているが、ケルン大司教区が約180万人の信徒を抱える同国で最大の教区であり、司教座聖堂のケルン大聖堂は欧州でも有数の古い歴史を持ち、最も重要な巡礼地の 1 つであることもあって、波紋は国内を越えて広がっている。

 そして、すでに何千人ものカトリック信者が教会を離れている”ケルンの危機”は、ある意味で、聖職者による性的虐待に対する信者の強い批判に端を発し、大きな物議を醸している改革プロセスの中で起きているドイツのカトリック教会全体の問題の縮図ともいえるようだ。

 

*「モラルの衰退に耐え切れない信徒も」

 

 教会は卓越した道徳の模範であることが期待されており、「社会のあらゆる種類の人々のための最高の道徳基準を設定している。だが、もはや司教には当てはまらないのだろうか?」とケルン大司教区の評議会議長、ティム・クルツバッハ氏はAP通信と問いかけた。大司教区にあるゾーリンゲン市長でもあるクルツバッハ氏は、ケルン大司教区の「モラルの衰退に耐えきれずに教会を去る信徒を何人か知っている」とも語った。

 ケルン大司教区の信頼の危機は 2020 年に始まった。ヴェルキ枢機卿は、聖職者が性的虐待で訴えを受けた際、それぞれの小教区関係者がどのように対応したかに関する報告書を、自身が依頼したものであるにもかかわらず、法的な問題になることを懸念して公表せず、秘密にしていた。 そのことで、多くの信徒たちの反発を買い、信頼を大きく損なった。

 そして、2021 年 3 月に公表された新たな報告書では、高位聖職者が、適正な対応を怠った事例が 75 件明らかになり、ケルン大司教区のトップであるヴェルキ枢機卿が、性的虐待の被害者に関する法的な義務を怠ったことも明白になった。枢機卿は、その後、聖職者の性的虐待の訴えなどに関する扱いで過去に間違いを犯したことを認める一方、辞任によって責任を取ることを拒否し、さらに信徒たちの反発を大きくした。

*枢機卿の出した辞表を教皇はいまだ受理せず

 

 数か月後、2 人の教皇特使がケルンに派遣され、高位聖職者による対応の過ちの可能性について取り調べを行い、その結果の報告を受けた教皇フランシスコは、ヴェルキ枢機卿に重大な意思疎通を図る上での過ちがあった、と判断され、枢機卿に対し、数か月の”精神的なタイムアウト”を申し渡した。タイムアウトの期間を終えた後、枢機卿は教皇に辞意を申し出たが、これまでのところ教皇はそれを受理していない。

 クルツバッハ議長は、「ケルン教区の信徒たちがどれほど苦しんでいるのか、バチカンにそれが伝わっている、とか思わない。枢機卿の問題に関するバチカンの決定がなければ、私たちは危機から抜け出すことができない。 問題は最終的な解決を見る必要があります」と述べた。

 この問題は、ドイツの司教団が11月にバチカンを訪問し、教皇と会見した際に、取り上げられた。 ドイツ司教協議会会長のゲオルク・ベッツィング司教は記者会見で、「ヴェルキ枢機卿にとっても、ケルン大司教区の状況がますます耐え難いものになっていることが、非常に明確になった。 教皇の決定を待つことは、ドイツのカトリック信者にとっても重荷になっている」と述べた。

 

*昨年一年で、ケルン大司教区で4万人超、ドイツの教会全体で36万人弱が教会を離れた

 

 このようにしている間にも、ケルン大司教区では、記録的な数の信徒たちが教会を離れている。ドイツの教会統計によると、ケルン大司教区で教会を離れる信徒の数は、2020 年の 1万7281 人から 2021 年には 4万4772 人に上っている。

 信徒の教会離れは、ケルン大司教区ばかりではない。ドイツ全体で見ても、教会を去るカトリック信徒の数が劇的に増加している。 2020 年に 22万1390 人だったのが、2021 年には 35万9338 人。

 ドイツの総人口8400万人に対してカトリック信徒数は2160万人と、カトリック教会が依然としてドイツ最大の宗教団体であることに変わりはない、とも言えるが、「困難な状況であることは明らかです」と、ケルン大司教区のスポークスマン、ユルゲン・クライカンプ氏は先週、AP通信に語った。

 その一方で、「ヴェルキ枢機卿は、出来る知る限りのことを尽くし、献身的に仕事をしておられます。一部のカトリック教徒は怒って、自分たちの教会関係者と言い争っているが、司教が来ると拍手して歓迎する人もいる」とも述べたが、ケルン大司教区の多くのカトリック教徒は、枢機卿が辞任したとしても、危機がすぐに簡単に解決できる、とは考えていない。

 

*「枢機卿1人がやめて解決する問題ではない、根本的改革が必要」

 ケルン大司教区の司牧支援専門家協会のスポーク・ウーマンのレジーナ・オディガー・スピンラス氏は、今の状態を「信頼と信用の絶対的危機」と呼び、「危機はケルン大司教区の状況を超えている」と考えている。「教会には、女性と LGBTQ の人々の平等を促進するなど、根本的な変化が必要です。教会の指導体制も考え直す必要があります。カトリック教会は今も完全な位階制社会で、『トップダウンで権威主義的だ』と言う人もいる。多くの信徒は、もはやそれに賛成したくない、と考えていると思います」と語った。

 彼女の主張は、世界の教会に先んじてドイツの教会が進めている”Synodal Path(シノドスの道)”における改革プロセスに沿ったものだ。ドイツの教会は、2018年に聖職者による性的虐待に関する調査報告書で1946 年から 2014 年の間に少なくとも 3677 人が聖職者によって虐待されたことが明らかになったのを受けて、有力信徒による カトリック中央委員会と共同で、この問題への具体的対応を中心に、教会改革のための取り組みを続けている。

 ドイツ版”シノドスの道”では、いくつかの取り組みの場で、同性カップルの祝福、既婚司祭や、女性助祭の叙階を認める働きかけをすることを決めているが、バチカンやドイツ教会などの保守的な聖職者から激しい反対も引き起こしている。だが、オディガー・スピンラス氏は「改革実現のために戦う用意があります」と述べている。

 しかし、保守勢力の圧力と遅々として進まない改革に耐え切れなくなった信徒も出てきている。

 「私は教会を去ります」と語るのは、デュッセルドルフの聖マルガレータ教会の信徒、ペーター・バーゼル氏だ。ヴェルキ枢機卿がデュッセルドルフを訪問した際、抗議運動を組織した。何十年にもわたって活発な教会活動を続けてきたバーゼルは、聖マルガレータ教会で司牧したことのある司祭2人に対する性的虐待の訴えに、注意を喚起しようと努めたが、 結局、あきらめた。「教会を去るとき、恋しく思わないことはない。キリスト教の信仰は、他の人々と分かち合うものだからです。しかし、私はもはや今のような教会制度を支援できない」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2022年12月11日

・ウクライナの大司教、ロシア軍占領地で不当逮捕、拷問されている司祭2人の早期釈放を訴える

Archbishop Sviatoslav Shevchuk, head of the Ukrainian Greek Catholic ChurchArchbishop Sviatoslav Shevchuk, head of the Ukrainian Greek Catholic Church 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年12月3日

・「ロシアの軍事侵略に対する闘いは、『人の尊厳』を守る闘い」とウクライナの大司教

Archeparch Borys Gudziak, Archbishop of Philadelphia and Metropolitan for Ukrainian Catholics of the United States, in the studio at Vatican RadioArcheparch Borys Gudziak, Archbishop of Philadelphia and Metropolitan for Ukrainian Catholics of the United States, in the studio at Vatican Radio 

 さらに、そのためにインターネットなど新しいテクノロジーの活用を進めることへの認識を示しつつ、「聖職者と一般信徒説教者の最大の課題は、自分たちが語ることを自分の生活の中で証しすることです」と述べ、「教会内で起きている(聖職者の性的虐待など)スキャンダルが、教会の信頼性とコミュニケーション能力を危うくしている」と指摘した。

 また、いまだに続いているロシアによるウクライナ軍事侵攻について問われた大司教は、「知ってもらいたいのは、ウクライナの人々が(ロシアの)植民地となることを受け入れるか、そしてウクライナ人が(ロシアに)服従する用意があるか、ということ」とし、「今、世界が目の当たりにし、ウクライナの人々が言っているー自分たちの命を究極の犠牲にして訴えているのは、『ノー!』です」と強調。

 「ウクライナの人々は、『カトリック教会の社会教説』の4つの主要原則、つまり『人の尊厳』『連帯』『補完性』そして『共通善』を守るために、結集しているのです」と述べ、次のように語った。 「ウクライナ人の尊厳を守るための闘いであることは、お分かりになるでしょう。素晴らしい連帯が発揮されています。国を守る中で人道的な努力がなされているのを耳にするでしょう。人々は、草の根のレベルで働いています。『補完性』とは、末端のレベルで物事を決定することを意味し、それによって、全手の人に権限と責任感が与えられます。そして、闘い、努力、働き、事業は、共通善の為であらねばなりません。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年11月16日

・11月の全米司教協議会総会にオハイオ州の教区統合が諮られるー日本の教会は?(Crux)

Noting decline in numbers, Steubenville bishop seeks merger with Diocese of Columbus(2022.10.12 Crux  National Correspondent John Lavenburg)

 ニューヨーク 発= 米国でジェフリー・モンフォートン司教が2012年にスチューベンビル教区長に着任した時、住民の人口とカトリック信者数が減っているオハイオ州南東部の実情が教区にどのような影響を与えるか尋ねたことがある。それから10年、彼は、隣のコロンバス教区との統合に動いている。

 

 

*教区民はすでに4万人を割り、さらなる減少が避けられない

 

 モンフォートン司教は「私たちはこのままの状況を続けていくことができない。教区を維持するとしても、信者数はこれから10年先まで減り続けます」と述べ、 「教区事務所の職員や支援スタッフを減らせねばならず、それが福音宣教と人々に手を差し伸べる力を損なわざるを得ない時に、(今の教区をそのまま維持することは)神の民に対して公正なことでしょうか」と訴えている。

 スチューベンビル教区はオハイオ州の南東部13郡を管轄しているが、信者は4万人を割っており、教区の統合再編は緊急の課題だ。だが、教区の合併は容易ではない。

 司教によると、これまでに、教区の全信者に調査票を送り、この問題について認識してもらい、意見を述べる機会を作ってきた。そして、来月予定する全米司教協議会の総会で、その結果を説明する。全米の司教たちは投票によって、オハイオ、スチューベンビル両教区の統合の是非を判断し、合併が支持を得られれば、その結果を教皇フランシスコに送り、最終決定を求めることになる。

 モンフォートン司教が合併を考え始めたのは約1年半前、バチカンがスチューベンビル教区での信者の減少に懸念を示した時のこと。具体的な対応が必要であり、コロンバス教区の統合が最良の選択肢と思われる、との見方で、バチカンと見解が一致した。その半年後に、オハイオ州の司教たちが会議を開き、両教区の統合が最善の道との判断に全員が賛成した。

 だが、統合に賛成票を投じたコロンバス教区長のロバート・ブレナン司教が昨年11月にブルックリン教区長に異動となり、後任のコロンバス教区長として今年5月に就任したアール・フェルナンデス司教が「11月の全米司教協議会の総会で結論が出るのを待ちたい」と言明したため、統合の動きは一時棚上げとなっている。

 

 

*司祭は高齢化、信徒は30年で半分近くに減った

 

 モンフォートン司教が「統合が必要」と判断した最大の理由は、教区の司祭と信徒の”少子高齢化”だ。教区司祭は70歳以上が6人、60代が12人、50台が5人、40代が4人、30代が7人、20代に至ってはわずか2人。つまり、50歳以上の司祭が23人なのに対して、50歳未満は13人のみ、というわけだ。

 教区の信徒数について司教は、「現在の4万人弱から、今後10年以内に2万5000人を割るまで減るだろう」とみる。通常の日曜ミサの出席者数は1990 年に 2万5000人弱だったのが、2019 年には 1万3702 人と半分近くに減っている。

 統合相手とモンフォートン司教が考えているコロンバス教区は、20以上の郡を管轄し、信徒数は27万5000人。「スチューベンビル教区はもともとコロンバス教区から分かれてできた。だから、統合して元の形に戻るのは理に適っています」と司教は主張する。

 「統合の利点は、人的、物的資源の効果的活用が可能になること」であり、「コロンバス教区は私たちの教区よりも多くの人的、物的資源を持っており、統合によって、経済などの影響を吸収する力も強くなる」と、統合への期待を強める。

*「米国での教区統合は過去64年に2件、だが今後は頻繁になる」

 

 米国における教区の統合はこれまで、まれだった。2020 年に、アラスカ州ジュノー教区がアンカレッジ大司教区に統合され、アンカレッジ ・ジュノー大司教区となったが、それ以前の統合は1956 年のカンザスシティ教区とセント ジョセフ教区までさかのぼる。

  だが、モンフォートン司教は、「教区の統合はこれから頻繁になると思います。米国では、中西部と北東部で人口減少、信徒減少が顕著で、今後もその傾向は続くでしょうは多くの衰退が見られ、それは続く」 と予想する。

 統合相手のコロンバス教区長のフェルナンデス司教も、統合によって大きな教区の司教になることに理解を示しているというが、最終的な決定は教皇の判断だ。統合後の新教区の名前、小教区の統廃合などはまだ議論されていない。

 「11月の全米司教協議会総会の後の日程はまだ決まっていません。総会で統合に賛成を得られでも、成否はすべて教皇の手に委ねられているのです。それまで、私はここスチューベンビル教区の司教であり続けます。救いのために全身全霊を捧げます」と語っている。

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*日本の教会は‥16教区中、4万人割れが12教区、うち1万人割れが6教区も

 米国と単純な比較はできないが、日本の教会の現状は、カトリック中央協議会がまとめた「カトリック教会現勢2021」によれば、全国16教区のうち、信者が4万人を超えているのは東京、横浜、大阪、長崎の4教区にすぎない。札幌、仙台、新潟、さいたま、名古屋、京都、広島、高松、福岡、大分、鹿児島、那覇の12教区で4万人を割っており、うち1万人にも達していたいのは仙台、新潟、高松、大分、鹿児島、那覇の6教区。最も信者数が少ない高松教区は4332人と、東京教区などの大きな小教区一つの信者数にも満たない。このままの状態を放置し続けていいものだろうか。大いに疑問がある。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2022年10月14日

・ウクライナのカリタス、ミサイル攻撃受けても支援活動続ける(VN)

People shelter at Kyiv metro station as Russian shelling hit the Ukrainian capitalロシアのミサイル攻撃から身を守ろうと首都キーウの地下鉄駅に避難する人たち  (ANSA)

 

2022年10月11日

・「プーチン大統領の核使用発言は”冗談”にあらず、キューバ危機以来の脅威になり得る」と米大統領

(2022.10.7 カトリック・あい)

 ロイター通信など世界のニュースメディアが6日付けで報じたところによると、米国のバイデン大統領が民主党支持者らとの会合で、ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性を示唆していることについて、「キューバ危機以来の核使用の脅威になり得る」と警告。米政府が、プーチン大統領にとっての危機脱出の出口戦略を解明しようとしていることを明らかにした。

 バイデン大統領は、最近のプーチン大統領の言動について「ウクライナの前線で敗退を喫した後に、戦術核兵器を使用すると語った時、プーチン氏は冗談を言っているわけではなかった。本気で戦術核兵器や生物・化学兵器を使用する可能性について語っている。ロシア軍が著しく劣勢となっているからだ」と指摘し、「彼が戦術核兵器を使用してもアルマゲドン(世界最終戦争)を回避できる簡単な方法があるとは思わない」と述べた。

 そのうえで、「(プーチン大統領が)面目だけでなく、ロシアにおける相当の権力を失わない形で危機から脱する出口戦略」をどのように考えているか、米政府として解明しようとしている、と語った。

2022年10月7日

・「(ロシアを批判する)”こけおどしの連中”は、過酷なシベリアの鉱山に来るべきだ」キリル総主教、強硬姿勢改めず(BW)

キリル総主教がノリリスクの鉱山を訪ねる。テレグラムから。

(左の写真は、シベリア・ノリリスクの鉱山を視察するキリル総主教=Telegram)

   先日カザフスタンで開かれた世界伝統宗教者会議を欠席し、教皇フランシスコの会見の希望にも応じなかったロシア正教の指導者、キリル総主教に、ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する姿勢を変える兆しはないようだ。

 総主教は17、18の両日、北極線よりさらに300km北に位置する世界最北の都市、シベリアのノリリスクを訪問。郊外にある鉱山を訪れる一方、18日に鉱山労働者の守護聖人である聖バルバラを称える新しい教会を祝福した。

 鉱山は世界有数のニッケルとパラジウムの産出量を誇り、ロシアにとっても戦略的に重要な鉱山だが、そこに働く8万人の労働者が困難で危険な環境にあることでも知られている。

 総主教は、教会でのミサ中の説教で、前日17日に鉱山を訪問した時の経験を振り返り、「2000メートルの深さまで降り、鉱山労働者の作業の実態を見た。本当に英雄的な仕事だ。地球内部の熱にさらされ、酸素不足を感じ、非常に厳しい環境の中で働いていることが分かった」と述べた。

 また、ロシア軍に従軍し、ウクライナで戦っている兵士たちを思い起こし、「祖国に仕える義務、そして最も重要なロシア正教の信仰を堅持する義務を果たしている者たち」を称えた。

ノリリスクの新しい聖バーバラ教会の奉献中のキリル総主教。テレグラムから。
(右の写真は、ノリリスクの新しい聖バルバラ教会を祝別するキリル総主教=Telegram)

 過酷な環境で働く人々を教会指導者が慰めることは、珍しいことではないし、軍隊の宗教的精神を称賛することはロシア正教会でも珍しいことではない。

 だが、キリル総主教は、それを超えて、次のような国際社会への脅迫めいた言葉まで発したのだ。

 「シベリアの鉱山を見て、国際関係の中で起きている私たちの国を脅す試みがいかに無駄であるかが分かった。”scarecrows(こけおどしの連中)”をここに連れてきて、鉱山労働者が働いている現場を体験させるべきだ… ロシア人を怒らせる価値があるかどうか考え直させるために」。

 このような総主教の発言に対して批判の声が上がったのに対して、ロシア教会の総主教庁は、「総主教の言葉は『ロシアを批判する人々はノリリスクに行き、ロシアの鉱山労働者の鉄の意志を見るべきだ』という意味だ」と説明した。

 だが、総主教の言葉が脅迫のように聞こえたのは確かだし、ウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、総主教が示してきた姿勢と一貫するものだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2022年9月23日

・「より良い世界に向けて共に働こう」世界伝統宗教代表者会議が宣言を採択して閉幕

Participants at the VII Congress of Leaders of World and Traditional Religions

   (Vatican Media)

 カザフスタンの首都、ヌルスルタンで開かれていた第7回世界伝統宗教指導者会議は15日、2日間の日程を終え、宗教の名のもとに暴力を非難し、より良い世界に向けて働くことへの共通の願いを表明する宣言を採択して閉幕した。

 教皇フランシスコをはじめ、約60カ国から100人以上の代表が参加した会議を締めくくる宣言では、すべての関心のある国々における政治的決定、立法規範、教育プログラム、およびマスメディアの在り方について、地域および国のレベルで保持すべき原則が宣べられている。

*より良い世界の実現に取り組むことを誓う

 この宣言は、第77回国連総会に公式文書として提出を予定し、宗教間対話の促進、文明間協力の促進のための努力を強調している。宣言では、会議参加者たちが、公正、平和、安全かつ繁栄が確保された世界への共通の願いを表明し、人類の精神的および社会的発展における共通の価値の重要性を確認している。

 また、宗教的迫害や人の命と尊厳の損なう過激主義、急進主義、テロリズムとともに、人種的、宗教的、文化的な差異をもとにした不寛容、外国人への嫌悪、差別、紛争、そしてテロに対抗し、打ち勝つことの必要性についても確認した。

 加えて、人道支援が必要な移民・難民が世界的に増加していることに懸念を表明し、新型コロナの世界的大感染が終息した後の世界で、気候変動、飢餓、貧困などの地球規模の課題に対処する重要についても強く認識。世界の精神的、政治的なリーダーたちが、こうした地球規模の課題に立ち向かう努力を緊急に求められていることも強調している。

 

*紛争や戦争を拒絶する

   前文と35項からなる宣言で、会議参加者はさらに、「世界の文化、文明の間の平和と対話のための作業を継続すること」を確認した。

 そして、緊張と対立を引き起こし、国際関係を損なう軍事紛争を放置することに反対し、あらゆる形態の暴力と戦争は、その目的が何であれ、「真の宗教とは何の関係もなく、可能な限り強い言葉で拒絶されなければならない」と言明。世界の指導者たちに、「世界の不安定化につながる攻撃的で破壊的なレトリックをすべて放棄し、紛争と流血をやめる」ことを求め、「友情、連帯、平和共存の名の下に対話を発展させる」よう促した。

 また、憐れみと思いやりの行為を奨励し、紛争、自然災害、人為的災害の影響を受けた地域への支援を呼びかけた。

 

 

*”メッカ宣言”の価値と重要性を認識

 宣言はさらに、教皇フランシスコとアル・アズハルのグランド・イマーム、アフマド・アル・タイエブが2019年2月に署名した「人間の友愛に関する文書」、2019年5月にメッカで署名した「共通の利益のために信者間の平和、対話、相互理解、相互尊重」を呼びかけるメッカ宣言の重要性と価値を認識した。

 

*多元主義は神の意志と知恵の表現、特定の宗教、協議の押しつけは容認せず

 また、「神が、人種、宗教、民族、社会的地位に関係なく、すべての人を平等に創造された」という事実から、「すべての宗教的教えを支える寛容、尊敬、相互理解の価値を支持する」とし、「多元主義と宗教、肌の色、性別、人種、言語の違いは、創造における神の意志と知恵の表現」であり、「特定の宗教と宗教的教義を強制するようなことは、容認できない」と言明。「すべての人々の社会正義と連帯を構築するために、宗教、宗派間の対話を推進するイニシアチブ」を支援するよう求めている。

 宣言ではこのほか、家族制度を強化し、女性の権利と尊厳を保護することの重要性なども強調している。

 宣言は最後に、今回の会議の開催地となったカザフスタン共和国の「文明間、宗教間、宗教間対話の権威あるグローバルな中心地」としての役割を確認するとともに、2025年の第8回大会を、今回と同じ首都ヌルスルタンで開するとの願望を示している。」

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2022年9月15日

・「私たちにとっても、平和への『光と希望』」ーロシアからの巡礼団、カザフスタン教皇ミサに参加(VN)

Faithful gathered for the Holy Mass presided by Pope Francis at the EXPO Grounds in Nur-Sultan

 

   (Vatican Media)

 ドゥビニン補佐司教はVatican Newsとのインタビューで、ロシアの巡礼団がカザフスタンを訪れ、教皇に出会うことの重要性を強調。「私たちは長年にわたり、教皇のロシア訪問を祈ってきました。今も、訪問が実現するのを心待ちにしています。残念ながらまだ実現していませんが、希望を失ってはいません」と語り、また、「旧ソ連邦の一国として、困難な時期に私たちロシアの教会と運命を共にした隣国、カザフスタンへの訪問は、私たちにとって特別な意味をもちます」と説明。

 さらに、「今回の巡礼に参加できたのは少数の信徒だけですが、ロシア全土の多くのカトリック教徒が、14日の『十字架称賛』の祝日にカザフスタンでミサを捧げられる教皇フランシスコの旅に霊的に参加しているのです」と強調した。

 このロシアからの巡礼団が、様々な国から集まっ他信徒たちと、14日の教皇ミサに参加したことの意義は、ロシア・シベリアのノボシビルスクで文化センターの責任者を務めるイエズス会士、Janez Sever神父も強調している。

 神父はVatican News とのインタビューで、「ウクライナ、そして世界の他の多くの地域で戦乱の狂気が続く中で、教皇フランシスコが今、カザフスタンにおられることは、ロシアのカトリック教徒にとっても、『平和への光と希望』をもたらしてくれます」と語った。

 「世界平和への渇望」と「民族間の調和と友愛を築く上での宗教の重要な役割」は、教皇が、ヌルスルタンで行った二つの演説のポイントであり、「カザフスタンを異なる信仰、文化、国籍の人々間の平和的共存の模範」とされている。

2022年9月15日

・長崎原爆投下77年の日に、原爆開発・製造した国立研究所二つを持つ米ニューメキシコの大司教が謝罪

(2022.8.12 カトリック・あい)

 ミサは、ロスアラモス国立研究所に飛行機で20分ほどの距離にあるアルバカーキ市のアッシジの聖フランシスコ大聖堂で捧げられ、ウェスター大司教は説教の中で、「日本政府が第二次大戦中に悲しむべき死、破壊、苦しみをもたらしたのと同じように、私たちも(注:広島、長崎への原爆投下による)死、破壊、苦しみをもたらしました。このような核兵器の使用が二度となされないように、世界の国々が決意を固める必要があります」と訴えた。

 大司教は今年1月に出した司牧書簡で、核兵器廃絶のための対話を同州から始め、世界的な規模に広げようとしており、このミサ後にも、キリスト教各派を始め主要宗教の代表たちによる対話集会を開催し、今後の具体的な取り組みについて意見を出し合った。

 記事の全文はArchbishop Wester apologizes for harms caused by nuclear weapons industry – Catholic News Serviceに。

 

2022年8月12日

・猛著に”海中ミサ”を捧げるのは犯罪か?イタリア・当局介入で議論(Crux)

(2022.8.2 Crux  Editor   John L. Allen Jr.)

‎ ローマ – 教皇フランシスコはこれまで信徒たちに、福音宣教をするのに教会の建物の中で人が来るのを待たず、”人々がいる場所”に出かけるように、と常々言われている。

 では、猛暑の中でボランティア活動をしてきた若者たちのために、海水浴場の浅瀬でミサを捧げるのは、どうなのか。イタリアでは、単なる是非論でなく、司法の問題になっている。

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 イタリア南部カラブリア地方の海水浴場の浅瀬で、浮きマットを祭壇にしてミサを捧げた神父が、現地の警察当局から「信仰告白に対する犯罪」の容疑で取り調べを受けている。この神父、36歳のマッティア・ベルナスコーニ神父が有罪とされた場合、米ドルにして2000ドルから6000ドルの罰金を科せられる可能性がある、という。

 ベルナスコーニ神父は、ミラノ大司教区に所属し、若者たちに対する意欲的な福音宣教活動で知られ、有力なサッカー選手、ピアノとエレキ・ギターを演奏するロックグループの共同創設者でもある。

 その神父が7月、ミラノ教区の若い信徒たち約20人のグループを率いて、カラブリア地方で反マフィアのボランティア活動に参加した。(注:カラブリアは、世界中に根を広げるイタリア4大マフィアのひとつ「ンドランゲタ」の本拠)ベルナスコーニ神父は、活動の最終日、24日に近くの浜辺でミサを捧げる、と若者たちに約束していた。

 ところが、当日、浜辺の日陰のある場所は別のグループが既に使用しており、そばの森も同様だった。この浜辺、アルフィエーリ・デル・クロトーネーゼは気温が40度を超えており、砂は熱く燃えるようで、神父は、このような砂の上でミサはできない…。折よく近くにいたカップルから「”海中”でミサをなさりたいなら、祭壇のために浮きマットをお貸ししましょうか」と申し出があり、それを受けた神父は、グループの若者たちに腰の高さまで水に入るように勧め、近くにいて参加を希望した若者数人も加えてミサを捧げた。

 この模様は、近くで”見物”していた何人かがスマホを使って動画を撮影、YouTubeやInstagramなどのソーシャルメディアチャンネルに投稿したため、たちまち大騒ぎに。‎このことを知ったカラブリアのクロトーネ教区とサンタセヴェリーナ教区はすぐに声明を出し、「こうした形のミサを捧げるためには、事前に地元の教会当局と相談しなければならない。ミサには、最低限の装飾と、ミサ聖祭に求められる象徴性が保たれねばならない」と‎神父を批判した。

 ‎地方検察官のジュゼッペ・カポッチャは、「ベルナスコーニ神父が宗教的信条についての法律の定めに違反した疑いで取り調べる」と言明した後、信じられないことに、捜査を”イタリア版CIA”、Digosの名で知られる諜報機関に渡した。‎

 ”事件発覚”を受けて、ベルナスコーニ神父はミラノ教区のサン・ルイジ・ゴンザーガ教会のウェブサイトに謝罪文を投稿。

 ‎‎「ミサ聖祭を陳腐化したり、他のメッセージに利用したりする意図はまったくありませんでした。単に、一週間にわたって(反マフィア)のボランティアに参加し、共に働いた若者たちと、最後にミサを捧げたのです。このミサの単純素朴さからみて、聖祭の神聖さを保つために十分だと判断しました」とする一方、‎「ミサにおいて、シンボルが重要であることは事実であり、それに値する配慮をしなかったのは、私の至らなさによるものです。私の善意を理解していただき、赦しを求める私の心からの願いを受け入れていただきたいと思います」と釈明した。‎

 ‎地元メディアによると、ベルナスコーニ神父の”海中ミサ”について、ミラノ教区の信徒たちの評価は分かれている。多くの信徒は、善意から出た彼の行為をたたえ、「ミサを捧げる場所が川であろうと山であろうとかまわない。重要なのは場所の設定ではなく、ミサに対する思いだ」としているが、一方で、「ベルナスコーニ神父は”スター”になりたいのだ。自分自身を撮影して喜んでいる… そういう彼のことをよく知っている」と個人攻撃めいた批判する声もある。‎

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 この”事件”で、第一に考えさせられるのは、性的虐待から金銭の不正流用まで数々の刑法違反を犯したカトリックの司祭たちが有罪判決を受ける今の時代に、ミサの捧げ方を”犯罪事件”として取り調べることが、国家情報機関にとって本当に価値があることなのか、ということだ。さらに、礼拝が適切に祝われたかどうかの判断を当局がするのは、信教の自由の見地から問題があるのではないだろうか。‎

 ‎第二に、仮に”海中ミサ”をした神父の判断の甘さに問題があるとしても、信仰の実践に若者を巻き込みたいという誠実な願望を持っている若い司祭の意欲を削ぐべきなのだろうか。‎

‎ これらの問いに答えることは、神学者でも司牧者でもない私の能力を超えている。しかし、ジャーナリストとして、少なくとも当局や教会の関係者に問うことはできると思う。‎

2022年8月3日

・米ワシントン首都教区、教皇の自発教令に従い小教区のラテン語ミサ禁止ー「信徒の半分失う」と反対の声も(Crux)

(2022.7.25 Crux National Correspondent  John Lavenburg)

 ニューヨーク発-シルベスター・ジュスティーノ氏は、ワシントンン大司教区で開かれた教区シノドスの聴聞の部で、「神の母・聖マリア教会」のグループが、大司教のウイルトン・グレゴリー枢機卿に「伝統的なラテン語による旧ミサ典礼」を禁止しないよう求めた時のことを覚えている。禁止したら「教区の信徒の半分を失う恐れがある」というのが、その主な理由だった。

 だが、その訴えは聴き入れられることがなかった。聴聞の部は5月に終わり、枢機卿は7月22日、「伝統的なラテン語ミサは、9月21日以降、小教区をもたない三つの教会に限定される」と発表した。

 教皇フランシスコは昨年7月、第二バチカン公会議以前のラテン語による旧ミサ典礼書の使用方法を再定義する自発教令「Traditionis custodes(伝統の守護者)」を発布。

 「第二バチカン公会議以前の旧典礼書の使用に関する判断は、世界の各教区の司教に任される」としたうえで、旧典礼でミサを行うグループは「典礼改革の正当性、第二バチカン公会議文書、教皇たちの教えを否定しないこと」と厳しい条件を課し、新たなグループの創設は認めず、小教区における旧典礼ミサを原則として禁止した。グレゴリー枢機卿は、この自発教令に沿って判断したものだ。

  だが、旧典礼を続けてきた神の母・聖マリア教会の信徒、ジュスティーノ氏は「枢機卿の決定は、私たちの教会にとって、悲しく、不幸なことだ。私たちの教区活動は大きな打撃を受けるだろう」と批判する。

 同教会の財務評議会で委員を務めるパトリック・ラリー氏は「13万ドルの赤字、というのは控えめな数字。これまで私たちは小教区の活性化に努めてきたが、それには20年から30年がひつようでした。私たちは、ワシントンンの繁華街で福音を伝え、多くの若者を引き付けてきた。その活動の原資は主として旧典礼ミサに参加する信徒たちの献金によっていたのです」と説明した。

 22日の枢機卿の決定について、デローザ神父は24日のミサ中の説教で、「信徒たちの間に不安を引き起こしています。枢機卿の発表後に、それぞれの小教区の事情に対応した措置が示されるかもしれませんが、今のところそのようなものはない」とし、教皇が提唱された”シノドスの道”、共に歩むことは素晴らしい。だが、『共に歩む』ことで、信徒にとって大きな変化が起き、教会を去らざるを得ない、としたら、”シノドスの道”で皆が声を上げ、耳を傾け合うこと、”シノドス=共働性”は何なのでしょう。価値があるものなのだろうか」と問いかけた。

 ラリー氏は、「私は、教会の財務評議会での務めを放棄するつもりはありませんが、このような状態では、この教会のミサに行くつもりはありません。それはおかしいことでしょうか」と語っている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月26日

・ハイチでイタリア人修道女殺害ー教皇、深い哀悼の意

ルイーザ・デッロルト修道女ルイーザ・デッロルト修道女 

 ハイチの首都ポルトープランスで25日、イタリア人宣教者、ルイーザ・デッロルト修道女が何者かによって殺害された。65歳の誕生日の2日前のこと。教皇フランシスコは26日の正午の祈りで、深い哀悼の意を捧げられた。

 ミラノ大司教区が得た情報では、シスター・ルイーザは、ポルトープランスの路上で重傷を負って倒れているところを発見され、搬送先の病院で亡くなった。強盗目的で襲われたと見られている。

 シスター・ルイーザは、イタリア北部ロンバルディア州レッコ県出身で、聖シャルル・ド・フーコーの霊性に基づく修道会「福音の小さき姉妹会」の宣教者として、20年にわたってハイチの貧しい子どもたちのために奉仕してきた。ハイチの前には、カメルーンとマダガスカルでも宣教生活を送っていた。

 教皇フランシスコは26日(の正午の祈りで、ルイーザ・デッロルト修道女を悼み、同修道女の遺族と福音の小さき姉妹会の会員たちと悲しみを共にされた。

 教皇は、ルイーザ修道女のハイチでのストリートチルドレンのための長きにわたる献身を思い、「殉教に至るまで自身の人生を他者のための贈り物として与え尽くされた」と讃え、冥福を心から祈られ、また、ハイチ国民のために祈り、特に子どもたちが貧困と暴力のない、平和な未来を得られるよう願われた。

(編集「カトリック・あい」)

2022年6月28日

・ナイジェリアで武装集団が聖霊降臨ミサの教会を襲撃、50人以上殺害ー教皇が哀悼

襲撃されたナイジェリア・オンド州オウォの聖フランシスコ・ザビエル教会 2022年6月6日襲撃されたナイジェリア・オンド州オウォの聖フランシスコ・ザビエル教会 2022年6月6日 

 武装集団の襲撃は、聖霊降臨のミサが行われている最中になされた。当初、司祭を含む数人が拉致されたとの情報があったが、オンド教区は「司祭たちは教会の信者たちと共にいる」と拉致については否定。

 同教区のジュード・アヨデジ・アログンダデ司教は、不安と動揺の中にある信者たちに、「平静を保ち、法を尊重し、共同体と国全体が正常に戻るよう祈ろう」と呼びかけた。

 教皇フランシスコは6日、バチカンの国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿を通し、アログンダデ司教に送った電報で、この恐ろしい事件に深い悲しみを表された。教皇は、この言語道断の暴力に襲われたすべての人々に精神的寄り添いを示すと共に、犠牲者たちの魂を慈しみ深い神に委ね、遺族に神の慰めと、負傷者の回復を祈り求められた。そして、憎しみと暴力に取りつかれた人々が平和と正義の道を歩めるよう、その回心を祈られた。

(編集「カトリック・あい」)

2022年6月7日