・15日から「信教の自由」国際会議―米国の担当大使が「バチカン・中国暫定合意」公表を要求(Crux)

(2019.7.12 Crux Senior Correspodent Elise Hrris)

 ローマ発-米国の信教の自由担当特任大使のサム・ブラウンバック氏は12日の電話による記者会見で、昨年9月にバチカンと中国の間でなされた中国国内での司教任命に関する暫定合意について言及。合意内容を評価するためにも公表される必要がある、と述べた。

 大使はインタビューで「暫定合意が公表されることは皆のためだ、と考える。公表すれば、その内容を評価し、白日の下にさらし、限界を知ることができる」と語った。暫定合意は、中国当局と教皇の双方に司教指名に対して発言権を認めたもの、とされているが、その内容の詳細は10か月を経た今も公表されておらず、各方面から批判されている。

 大使は3月に香港を訪問した際、この暫定合意について、「チベット仏教や他のキリスト教諸派を含めた他の宗教団体、信徒に対する政府関与の悪例となるものだ」と批判していた。今回、Cruxの質問に答えた大使は「中国国内での宗教迫害が、暫定合意でひどくなったとは言えない」ものの、「中国共産党が2017年に宗教活動規制の権限を手にして以来、国内のあらゆる宗教に対する攻撃が激しくなっている」と指摘。暫定合意が「事態を悪化させたかどうかは分からないが、内容を公表するのが正しいやり方だ、と信じている」と述べた。

 米政府が主宰する信教の自由に関する第二回国際会議が15日から18日にかけてワシントンで開かれるが、中国政府がこの会議に招かれていない。これについて、大使は「我々は、信教の自由について同じ考え方を持つ、あるいは自国内で信教の自由をさらに進めることに意欲を持つ国を招いている」と説明。「残念ながら、中国のこの分野での成績は思わしくない」とし、具体例として、民族的、宗教的少数者が多く住む新彊ウイグル自治区でのチベット仏教徒への迫害など数々の人権侵害、教皇に忠誠を誓い中国当局への登録を拒否している、いわゆるカトリックの”地下教会”を含めたキリスト教徒たちへの迫害、などをあげた。

 このような理由から中国政府は会議に招かれず、同様の理由でイランと北朝鮮も招請国のリストから外された、という。イランについては「宗教的な迫害や脅迫が行われている世界最悪の国の一つ」であり、「宗教的な自由を認める国となることに何の関心も持っていない」と批判し、そのような国になろうと努力することを希望しているが、「今のところ、そのような兆候は見られない」と言明した。

 昨年の第一回会合は、世界的な宗教迫害の激化を受けて、信教の自由に関する過去最大規模の会合となった。第二回の今回は、前半の二日間は世界の宗教指導者たちと市民活動家が信教の自由に関する現在の世界の状況について意見を交換し、後半の二日間は招待された世界115か国の政府代表が、今後、信教の自由に関してどのように行動していくべきかについて話し合う予定だ。

 今回会合には、さまざまな宗教から実際に迫害を受けた人々も20人以上が議論に参加するが、米サンディエゴで今年4月27日に発生した虐殺事件の当事者であるユダヤ教のラビや、スリランカでイースター当日に発生した連続爆破テロの犠牲者たちと仕事をしていたキリスト教徒、ニュージーランドのクライストチャーチで3月15日にモスクで襲撃を受けたイスラム教徒も出席する。また、2014年8月にイラクでヤズィーディー教徒スィンジャールの虐殺事件で、自身も拉致、監禁、強姦され他悲惨な経験を持つヤズィーディー教徒人権活動家ナディア・ムラド女史や、2016年にトルコで逮捕、監禁された米国の福音派教会のアンドリュー・ブランソン牧師も出席を予定している。

 今回の会合は、15日からワシントンの米国務省で閣僚級会合が行われるが、ホロコースト博物館で被害者との会合があり、最終日の18日はアフリカ系アメリカ人博物館で大規模な閉幕レセプションが開かれることになっている。また、若者による討議の場や活動団体が主宰する関連の集会も予定され、参加者が多数に上ると予測されることから、ジョージ・ワシントン大学に第二会場を設ける。

 ブラウンバック大使は「我々の努力が、活発な動きの刺激剤になっているようだ。信教の自由をめぐる地球的な、草の根運動が実現し、様々な宗教を信じる人たちが、ある地域で多数派でも他の地域では少数派である人たちが、互いの信教の自由のために連帯して立ち上がることを期待している」と語る一方、会議の狙いについて「”共通の神学”に到達することではないし、議題にも入っていない。目的とするのは『共通の人権』の確保に向けて働くこと。人権は、自分たちの信仰を安心して、恐れることなく実践するために、一人一人に与えられているものだからだ」と強調した。

 また閣僚会合に対して大使は、世界の地域と特定の文脈の中で信仰の自由の実態を評価する”円卓会議”が設けられることを希望しており、「少数派が傷つけられないようなテキストの再版のような具体的な措置もとられるだろう」と述べた。

 参加各国が来年に向けて計画する具体的な活動については、最終日の18日に発表される予定だが、大使は、今回の会合が、近年、世界中で発生し、増加している迫害に対する「重要な外交的イニシアチブ」を発揮することを期待し、「現在のこうした事態に対抗し、流れを逆にする運動を始めるようにしたい。地球的な、草の根運動を開始することを心から希望している」と強調した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年7月13日