・米大司教区、性的虐待被害者450人に2億1000万ドル賠償で和解

 (2018.6.6 カトリック・あい)USA Tdodayなど複数の米報道機関が伝えたところによると、米ミネソタ州のセントポール・ミネアポリス大司教区は、聖職者による性的虐待被害者450人に対して、総額2億1000万ドルの賠償金支払いで和解することに合意した。聖職者による性的虐待と隠ぺい問題は今世紀に入って欧米を中心に世界中に拡大、表面化し続けているが、一つの教区でこれほど多額の賠償金の支払いが明らかになったことはなかった。

 和解、賠償金支払いは、被害者から出されていた訴訟を担当する判事によって承認される見通し。これによって、訴訟は決着し、同大司教区の財政破綻・再建策は進展を見ることになる。大司教区事務局によると、賠償金のうち約4000万ドルは大司教区が負担し、残りの1億7000万ドルは大司教区の保険金を充てる見通しだ。

 和解発表の会見をした同大司教区の責任者、バーナード・ヘダ大司教は「この性的虐待が、あなた方から多くのもの-幼年期、潔白、安全、信じる力、そして多くの件での信仰-を奪ったことを、確かに認めます。家族と友人たちとの関係、あなた方が所属する小教区、共同体社会での関係が損なわれ、人生が変えられてしまいました。教会はあなた方を倒してしまった。心からお詫びします」と被害者たちに陳謝した。

 一方で、自分たちが信じていた司祭たちに性的虐待を受けたと告白した被害者のうち会見に応じた人たちは、和解を歓迎するものの、性的虐待のトラウマは生涯、消すことはできない、と語った。12歳の時に被害に遭った女性は、何回も虐待を受けたことで、母である喜びを妨げられた、と悲しみを訴えている。

 被害者代表の弁護人によると、性的虐待を行ったと確認できた司祭は91人にのぼる。

 聖職者による幼児などへの性的虐待は欧米を中心に数十年にわたって続いていたが、教会上層部の隠蔽もあって明るみにされなかった。米ボストン・グローブ紙が2002年1月に、ボストン大司教区の司祭が過去30年にわたって六つの教会で延べ130人の児童に性的虐待を行って訴訟を起こされたこと、教会は本人を他の教会へ異動させただけで、何らの対策もとらず、事態を悪化させてきたと、を特報し、これをきっかけに一挙に世界中で表面化、アイルランド、メキシコなどカトリック国をはじめ、イギリス、ドイツ、オランダ、スイスなど欧州全域、さらにオーストラリアなどでも被害の訴えや、教会を相手取った訴訟が相次ぎ、米国やアイルランドなどで司教が引責辞任に追い込まれる事態になっている。

 教皇フランシスコは2013年3月の就任以来、全力を挙げて、実態の解明と責任の明確化、再発防止策などに取り組んでいるが、教皇の肝いりで設置した対策委員会で性的被害者代表の委員が一部のバチカン官僚の非協力に抗議して辞任したり、ごく最近では、チリの教会が聖職者の性的虐待問題で大揺れとなり、司教団31人全員が教皇に辞表を提出するなど、教会の信頼回復には程遠い状態だ。

 

 

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2018年6月6日