・中国、北朝鮮…強まる教会、信徒迫害-米国務省「信教の自由年次報告」で-米朝首脳会談で提起

 米国務省が5月29日、世界各国の信教の自由の現状に関する2017年版報告書を発表、「信教の自由をめぐる世界の状況は、その自由侵害の深さと幅広さで一段と悪化」し、 信徒に対する露骨な暴力的振る舞いが、虐殺、無実の人々の殺害、祈りの場の全面的な破壊など、残虐さを強めており、”通常”の虐待が行われても目立たなくなってしまっている」と悪化が進む現状を具体的な事例を挙げて説明した。

 そして、このような中で「多くの関係者は、思想、良心、宗教の自由に対する権利の侵害に麻痺してしまっている」とし、米国はじめ世界各国、国際機関などの真剣な取り組みを強く訴えている。

北朝鮮の苛酷な宗教迫害

 報告書は、信教の自由を著しく侵害している「特定懸念国」として10か国を挙げているが、その中には、アジアで中国、北朝鮮、ミャンマーが含まれており、北朝鮮に関する記述では「宗教活動に携わった人が処刑や拷問の対象になるなど『苛酷な状態』に置かれており、約8万~12万人に上る人々が、政治活動や宗教活動で政治犯収容所に拘束されているとみられる」と指摘している。同日の報告発表で記者会見したブラウンバック「国際信教の自由」担当大使は「トランプ大統領が信教の自由の問題で行動を取る」と述べ、米朝首脳会談が開かれれば、大統領がこの問題を「取り上げる」と言明。ポンペオ国務長官も記者会見で「世界における信教の自由の尊重はトランプ政権の優先課題」と強調した。

習近平主席の下で急速に強まる宗教規制

 報告書は中国についても、習近平国家主席への権力集中が進んだ昨年10月の党大会前から宗教活動への締め付けが強まり、現在も一層の規制が進んでいる、と指摘した。国別報告の中では、中国の最近の動きとして「中国は2016年に、同国の宗教者と信徒にとって暗黒の日々だった文化大革命から50周年を迎えたが、50年経った今、習近平主席の下で、中国政府は宗教あるいは信仰の自由を含む人権を脅かすような圧迫を強め続けている」と述べ、具体例として、宗教活動に対する権利の制限を定めた宗教関係規制を改定、強化し、政府による宗教教育や聖職者に対する規制・管理の強化、”不法”と判断されるいかなる宗教活動に対する罰金の多額化のほか、”国家の安全”を害する宗教を公式に禁止する語句も加えられたことを挙げている。

 また中国には2億5000万人の仏教徒、7000万人のカトリック教徒とプロテスタント、2500万人のイスラム教徒のほか、道教、ヒンズー教、ユダヤ教などの信者もいるが、このうち仏教、道教、カトリック、プロテスタント、イスラム教の五つについては限定的な宗教活動を国家管理の「愛国協会」のもとで行うこととされている。報告は、これら主要宗教のおかれた現状についても個別に記述している。

【中国におけるプロテスタントとカトリックの現状】(全文)

 2016年現在、中国政府は教会の十字架撤去、聖堂破壊の行為を継続した。2014年から2年間に浙江省だけで、当局による十字架撤去、聖堂破壊は1500か所以上にのぼっている。政府はまた、こうした行為に反対する個人にも狙いをつけている。2016年2月に、浙江省出身のプロテスタントの夫婦が、十字架撤去に抵抗したのを理由に、14年から16年の刑を言い渡された。十字架撤去や聖堂破壊は中国国内で広範になされている。

 特にひどい例は、2016年4月に、河南省で教会兼自宅が政府命令によりブルドーザーで潰されるのを防ごうととした、その教会指導者の妻が(破壊された瓦礫に埋められ)窒息死させられた、というのがある。同年3月には、政府の教会破壊行為に被害者や教会を支援する人権弁護士が秘密裏に逮捕、テレビで”罪を自白” させられた後、釈放されたが、12月にふたたび警察当局に逮捕され、2日間拘束された。

 2016年12月にはまた、警察当局が、自宅に十字架を置き、宗教関係の文書を印刷した複数のキリスト教徒を逮捕し、親たちが子供を教会に連れて行かないように脅し、ある種の宗教活動を行うのを妨げた。これより前、8月には、中国のある裁判所が、地下教会のリーダーと信教の自由の運動家に、破壊活動罪で7年半の懲役、12年半の政治的な権利はく奪の判決を下した。さらに、2017年1月に、別の裁判所が遼寧省錦州の牧師に未登録の教会で活動したとして懲役2年半の有罪判決を出した。彼は2015年12月に逮捕されていた。浙江省 崇義にある大規模の教会の前牧師が横領の疑いで逮捕され、二か月以上拘置された後、2016年3月に釈放されたものの、 崇義の教会と地方政府公認のキリスト教協議会の地位をはく奪された。省に登録されている南乐のキリスト教会の牧師は、公共の秩序を乱すために群衆を集めた、として懲役12年の刑を受け、現在も刑務所に囚われている。

 2016年に、バチカンと中国政府は、国内のカトリック司教の任命について合意しようとした。政府が任命し、バチカンが同意した司教はすでに何人かいるが、中国政府は教皇の権威に敬意を払うのを拒否しており、教皇に忠誠を誓う司教たちも投獄あるいは他の迫害を受ける危険にさらされている。合意を図ろうとする者たちは、それを70年近くにわたるバチカンと中国政府の対立関係を修復し、中国全土にわたるカトリック教会(の政府公認教会と地下教会の分立)を一本化する手段、と見ている。しかし、こうした動きに批判的な関係者たちは「バチカンは、中国政府と連携することで、(教皇に忠誠を誓ってきた)地下教会の聖職者たちと、司教を任命する教皇の権威に忠誠を誓う人々を、裏切る危険を冒している」と懸念している。

 中国政府が管理・運営するカトリック愛国協会の2017年12月の会合で、政府当局代表が、”sinicization(中国化)”、社会主義、そして外国の影響からの独立、の必要を強調した。これは、バチカンとの合意を目指す政府の試みと矛盾することのようである。合意の見通しが、2016年11月に教皇から破門されていた司教をバチカンと中国政府が認めた司祭叙階式に参加したことで、切迫しているようだからだ。

【法輪功の現状】(抜粋)・・性的暴力、拷問…臓器摘出はキリスト教徒など他宗教の人々にも狙い

 法輪功の中国における活動は、中国政府が同団体を「悪のカルト集団」と決めつけ、1999年にすでに禁止されており、活動を続けようとする人々は厳しく弾圧されている。強制収容所や刑務所に入れられ、あるいは行方不明になっている。逮捕された人々は精神科を含む医療の実験などに使われたり、性的暴力、拷問、そして臓器摘出などの対象にされている。2016年6月にNGO「中国における臓器略奪を止めさせる国際連携」が発表したところによると、中国では毎年、6万件から10万件の臓器移植がされている。臓器摘出は、しばしば本人の同意無しで行われており、特に法輪功関係者で処刑された者、収監されている者がその対象となっているが、ウイグル人イスラム教徒、チベット仏教徒、キリスト教徒の個人も狙われている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年6月2日