・性的虐待問題、女性軽視など失言のチリ首都補佐司教が正式叙階前に辞任(Crux)

(2019.6.14 Crux  Rome Bureau Chief Inés San Martín)

 ローマ発ー教皇フランシスコは14日、性的虐待問題や教会における女性の役割、ユダヤ人社会について失言を繰り返していたチリの首都サンチャゴのCarlos Eugenio Irarrázaval Errazuriz被選司教の辞表を受理した。予定されたいた司教叙階もなくなった。

 チリの司教団が声明で明らかにしたもので、「辞表の受理は、教皇が同司祭の信仰と謙遜の心を尊重し、チリにおける旅する教会の一致と善のために判断された」と説明している。

 チリの首都サンチャゴは、二人の前大司教が聖職者による性的虐待を隠蔽したとして訴えられ、現地の検察当局から召喚されるなど、性的虐待スキャンダルで深刻な打撃の最中にある。Irarrázavalは指導者が空白となったサンチャゴ教区の空白を埋めるべく、5月下旬に被選司教に選ばれたが、その直後に、性的虐待問題で騒ぎ続けるのは何の益にもならない、という意味の無責任な発言をして内外から批判を浴びた。

 失言はそれにとどまらず、翌日にはCNNチリで「キリストの最後の晩餐の席に女性はいなかった」-カトリック教会には女性が果たすべき役割はない、という意味で語って、女性たちの顰蹙を買い、さらに、「ユダヤの文化は、今日でも狂信的な(男性)優越主義ではありません。ユダヤ人が町を歩く場合、女性は男性の十歩後を付いていきますが、キリストはこのような慣習を破ります」などと、ユダヤ人社会を傷つけるような言葉を発していた。

 度重なる失言に非難が高まる中で、当人は、「(性的虐待問題で)私が言おうとしたのは、過去から学び、傷をいやすのを助けねばならないか可哀そうな犠牲者たちのケアをするために、前を向こう、ということだった」と釈明し、女性軽視と受け取られたことには謝罪し、「私は教会の交わりのために働き、協同する中で私たちは皆、女性も男性も、多様な豊かさをもつ建設者であることを知っている。そうすることで、教会はさらに人々を喜びをもって受け入れ、全てを包含するものとなる」と書いていた。

 司教叙階はされなくなったが、Irarrázavalは司祭職には留まる。また教皇が二人目のサンチャゴの補佐司教として任命していたイタリア生まれのアルベルト・ロレンゼリは今月下旬に司教に叙階される予定だ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年6月15日