・内戦の南スーダン、祝祭なき建国7周年(国連WFP)

  「独立、祝えない」夫と故郷も奪われ、涙こらえる妻

 今年7月に独立7周年を迎えた南スーダン。2011年に21年に及んだ南北紛争が終結し、熱狂的な喝采とファンファーレの中、世界で最も新しい国として独立しました。しかし2013年、政治的な衝突をきっかけに再び内戦が勃発。アフリカでは1994年のルワンダ危機以来となる最大規模の難民を生み出し、最も深刻な人道危機に陥っている国の一つです。人々は今、暴力の恐怖の中で暮らしています。奪われた祝祭

 「私は独立記念日を祝いません」。国内避難民の1人で、36歳のニャギッチは言います。「何を祝うことがあるのでしょうか?今の私の状況で?」と、彼女は故郷の言葉であるヌエル語で問いかけました。

 彼女は南スーダン・ワーウ出身ですが、首都ジュバから750kmほど北のジッチに住んでいます。ジッチは陸路の移動手段がなく、ヘリコプターか軽飛行機でしかアクセスできない郊外の開拓地。ここで、3人の子どもを育てています。放火、性暴力、飢え、死…。彼女は生まれ故郷を離れて難民となり、人生を通じてギリギリの困難の中で生きてきました。

 涙をぐっとこらえて、彼女は自分の身に降りかかった恐ろしい体験を話してくれました。ワーウにあった彼女の小屋は3度も焼かれ、生き残るために逃げなければなりませんでした。2015年に空路で故郷から避難した時、彼女の夫は逃げきれずに1週間暴力を受け続けました。それ以来彼女は故郷に戻っていませんが、記憶は生々しく残っています。

(ニャギッチと姉、その子どもたち。ごちそうで独立を祝うことはありません。 Photo: WFP/Gabriela Vivacqua)

 紛争は、彼女から子ども時代も、教育も、夫も、そして独立記念のお祝いまでもを奪いました。でも、南スーダンにより良い未来が来てほしいという願いを、奪うことはできませんでした。

 彼女の3人の子どもたちは、ジッチの家庭に引き取られ、近くの学校に通っています。彼女は紛争によって、子どもたちの教育や明るい未来を否定されることはあってはならないと、固く誓っています。

 「今すぐこの国が、平和になってほしい!」と彼女は強く願います。しかし彼女が、いつ平和な母国を見られるのかは、まだ誰にも分かりません。南スーダン政府は2018年の独立記念日に際し、記念式典などは開催しない、と表明しています。

  停戦協定「今度こそ維持を」願う人々

 約250万人もの人びとが、ウガンダ、ケニア、スーダン、エチオピア、コンゴ、南アフリカで難民となり、さらに200万人は国内避難を余儀なくされています。ただ最近の停戦協定締結によって、明るい兆しも見えています。協定はエチオピアのアディスアベバ、スーダンのハルツーム、そしてウガンダのカンパラで開かれた長期会合の末、締結されました。

(WFPパートナーが契約するポーターが食料配給のシリアルの袋を運んでいます Photo: WFP/Gabriela Vivacqua)

 過去に締結された協定は、一部の州で武力衝突が再発することによってなし崩しに破棄され、状況はさらに悪化しました。

 「これまで停戦協定は破られ続けてきましたが、今度こそ協定が維持され、真の変化が起きることを期待しています」と、国連WFP南スーダン事務所代表のアドナン・ カーンは述べました。「南スーダンの人びとは、家族を養い、生活を再建するために平和が必要です」

 支援届かぬ地域、「飢きん」の一歩手前に

 南スーダンでは持続的な支援がなければ、700万人を超える人びとが深刻な食料不足に陥る恐れがあります。昨年、2州で飢きんが宣言され、国際的な支援のおかげもあって改善しました。しかしいくつかの州は今も危機的状況を脱してはいません。

 「北部のいくつかの州では武力衝突が発生し、大勢の人々が避難を強いられています。家族の暮らしが立ち行かなくなっているのに、人道支援へのアクセスは難しくなり、届けられる支援の量は最小限に減ってしまいました」。カーン氏はこう嘆きます。北部の一部地域では人道支援が長期にわたって届かず、食料安全保障のレベルが最悪の「飢きん」に悪化しかねないとの予測が1月に出されました。支援団体は「紛争が長引くほど状況は悪化する」と警告しています。

  国連WFPの対応

 国連WFPとパートナーは支援規模を拡大し、安全を確保しつつ紛争地帯へもアクセスしようとしています。命をつなぐ緊急食料や学校給食、乳幼児と妊産婦の栄養不良を防ぐ栄養強化食品を、最大480万人に届けることを目指しています。飢餓が深刻化する時期は南スーダンの雨季と重なり、陸路の60%が遮断されてしまいます。このため国連WFPは6月末までに、穀物や植物油、豆類といった食料12万4,000t(1.24億kg)を国中の50の倉庫に配置しました。これは21世紀に入って、最も大規模な備蓄です。 間接的に紛争の影響を受けた地域では、集落に必要な設備を作る対価として食料を配給しています。

 「我々は、あらゆる手段を用いて南スーダンの飢餓をなくす努力を続けます」とカーン氏は言います。「生きのびるため必死の努力を続ける人々へ支援を届けるためには、資金と十分な警備体制、職員の安全確保が必要です。最も大事なのは、南スーダンに平和を取り戻すことです」

 深刻な人道危機にある南スーダンの難民のご支援をお願い致します。

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2018年8月16日