・使徒的勧告「Christus vivit」テーマに、神学者と若者たちの初の全米会合(Crux)

(2019.7.30 Crux   Christopher White)

 ニューヨーク発-教皇フランシスコが今春出された使徒的勧告 「Christus vivit(キリストは生きておられる)」をテーマにした神学者と若者たち100人以上による初の全米会合が、31日からオハイオ州のフランシスコ会のスチューベンビル大学で開かれる。

 全米司教協議会で若者司牧を担当するポール・ジャルゼンボウスキーは、「National Dialogue(全米対話)」とされるこの活動が教皇フランシスコの歩みに付き従い、「一致と若者たちとのつながりを深める方向に全米のカトリック教会を突き動かす機会」となることを期待している。

 会合を前に、Cruxのインタビューに応じたジャルゼンボウスキーは、今回の会合が、(注:使徒的勧告のもとになった)昨秋の若者シノドス(世界代表司教会議)を基礎に置き、聖職者による性的虐待スキャンダルが影を落とす中にあっても、米国の教会が(注:シノドスと使徒的勧告が提示している)課題について前向きに進むことを、いかに確信しているかについて、次のように語った。

・・・・・・・・・・・・・・

Crux: まず初めに、「National Dialogue 」の発足とこれまでの経過についてお願いします。

ポール:「National Dialogue」は、今の社会、教会、そしてとくに若者たちの中にある分裂、解離、そして無関心の風潮に対処するために始まりました。具体的には、近隣社会と教会で起きている現実を憂慮する信徒と教会のリーダーたちの問題意識が基になっています。数年前になって、彼らの声が国レベルの教会のリーダーの耳に届き、この運動が始まりました。

 そして、若者たちの問題を担当する全国組織がこれを取り上げ、全米司教協議会(USCCB)が賛同し、さらに、教皇フランシスコが、同様の問題意識から昨年秋に若者シノドス(世界代表司教会議)を招集され、この運動も世界的な関心をもたれるようになりました。「National Dialogue」が若者シノドス、USCCBのスペイン系米国人の会議とも理想を共有でき、聖霊の働きを実感しています。

 「National Dialogue」は現在、三つの分野で運動を展開しています。教皇フランシスコが使徒的勧告” Evangelii Gaudium(福音の喜び)”で示された一致、連携、動員の分野で現実に対応していこうとしています。このプロジェクトは、2017年7月のUSCCBのカトリック指導者会議で開始され、ネットワークによる情報収集、各地ごとの対話、聴き取り、それをもとにした実施計画の提示を進めています。プロジェクトは来年まで続けられることになっていますが、具体的な運動はそれ以前から始まることになるでしょう。

 最終的な狙いは、各地のカトリック教会共同体にインパクトを与えること-協力体制を育て、若者たちの現実にもっと意識して目を向け、触れ合い、そして声を聴くこと、そして、若者たち、学生たち、あらゆる文化的背景を持つ家族をもつ全ての青年たちの共同体を作り、司牧し、宣教意識を高めることに投資することです。それが現場の小教区と使徒職の会で進められるようになれば、運動は成功したことになるでしょう。

C: 今回の会議で若者たちと神学者たちの対話をどのように進め、その成果を今後の運動につなげていこうと考えていますか?

ポ:今回の” Voice + Vision会議”は、司牧指導者、神学者、そして若者たちの対話の機会を提供します。基調報告や意見交換もいくつか予定していますが、最終的な狙いは、行動計画の策定を始めることにあります。会議が終わった後、神学者と学者たちは指導者たちが司牧をもっと効果的に行えるような訓練の方法についてさらに突っ込んだ検討をすることになるでしょう。一方で、司牧者たちと若者たちは、計画の実行とあらゆるレベルの教会指導者たちを動かすことに力を注ぐことになります。National Dialogueのコア・チームは両方のグループを一貫して支援していきます。

 教皇フランシスコは、今春出された若者に関する使徒的勧告”Christus Vivit(キリストは生きておられる)”でこのように言われました。「これまで到達しなかったところに着くためには、それを待つ忍耐が必要です(229項)」と。言葉を換えれば、理想を現実にするには、時間、努力、そして協力が要る、一晩では出来ない、ということ。だが、共通の目標をもって共に働くことで、大きな前進が得られるのです。

C: ”Christus Vivit”とそのもとになった昨年秋の若者シノドスに、聖職者による性的虐待スキャンダルが暗い影を投げかけました。どのようにこの問題を乗り越え、この使徒的勧告と教皇の若者と共に歩もう、という呼びかけに実際に応えようと考えていますか?

ポ:教会は、若者たちと出会い、共に歩き、集うための、従来以上に前向きで、安全、かつ健全な模範となるよう求められています。従来以上に、癒しと説明責任を果たすことが求められています。National Dialogueは、私たちが直面している現実を無視して動くことは考えていない、若者たちともっと一致し、つながるように教会を動かそうとしているのです。

 私たちは、傷を治し、健全、安全、そして革新的な場ー若者たちがキリストと教会共同体を出会い、癒され、刷新され、福音に光の下で世界を変容させる使命を帯びた使徒となれる場ーを作ることに気を配る必要があります。それが、” Evangelii Gaudium ”and ”Christus Vivit”の二つの使徒的勧告が強く求めていることです。そのために、私たちは、世代、文化、聖職者の違いを超えた協力と支援をする必要があります。

C: あなたは6月にローマで開かれた若者フォーラムに米国の若者代表を連れて参加されました。フォーラムは昨秋の若者シノドスを受けたものでもありましたが、このフォーラムの狙いとあなたにとっての成果はどのようなものでしたか。

ポ:教皇は” Christus Vivit ”で、若者たちに一歩前進し、宣教の使徒となるように説かれました。そして、今回のフォーラムは、 Christus Vivit ”をどのように受け止め、若者たちと若者の心を持った者たちが共に、第一歩を踏み出すか、を問いかける機会でした。また、 synodal process(協働のプロセス)を成し遂げる機会でもありました。世界規模の synodality(協働性)ーシノドスは事前に準備協議をし、事後にそれを検討する会議を持ちましたーに範をとったものです。

 昨秋の若者シノドスは”山の頂上”での会議でしたが、その成果は”谷”、つまり世界中の現地の教会共同体で、実行される必要があります。

 若者シノドスの重要な収穫の一つは、教会が地球的で、多文化にわたるものだある、ということであり、私自身、アフリカ、アジア、欧州、オセアニア、ラテン・アメリカの生きた現実についての話を聴いて驚くことが多かったのです。そして、米国では、多文化の面で、移民が集まった国家として、”世界の”小宇宙”版を体験しているのだ、と感じました。

 6月の若者フォーラムや世界青年の日を含むその他の” Christus Vivit”と関連した国際的な集まりには、参加者たちの中に平和、愛、共感がありました。それらは、分担された現代社会でしばしば失われている者です。このような精神を、私たちは自分の属する地元のカトリック教会共同体だけでなく、近隣の共同体、そして日々の生活に、生かすことができるでしょうか?おそらく、これが、若者に焦点を当てたシノドスと全国対話の叡智ですー私たちが互いの相違を超え、互いの中にあるキリストを見るのを、若者たちが助けることができる、ということです。

 もう一つのシノドスの収穫は、若者たち、とくに成人した若者たちが担うように求められている指導力と提唱力の重要性の認識です。若者たちは、主役の座を将来受け継ぐ”次の世代”であるだけでなく、教皇が言っておられるように、「神の今」である、まさに今、私たちの教会で指導的な役割に足を踏み入れることができる存在なのです。そして、”若者たち”は成人を含むことを覚えておくことも重要です。バチカンがローマに集めた若者たちは18歳から30歳でした。つまり、若い成人ー学生、社会人、軍人であり、独身者、既婚者、聖職者になろうとする者です。米国の多くの教会では、こうした若い成人にわずかばかりの役割しか与えていないことがよくあります。これは変えていく必要がある。私たちの運動が先導することを願っています。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年7月31日