・伊南部の新型ウイルス集団感染は「新求道共同体」の黙想会と関係(Crux)

(2020.3.17 Crux Staff)

南イタリアのAtena Lucana。 (クレジット:Anthony Pape / Wikimedia Commons。)

 ローマ発ーイタリアで新型コロナウイルス感染危機が続く中で、南部カンパニア州サレルノ県の4つの小さな町が、カトリックの「新求道共同体の道」(ネオ・カテクメナートス)による黙想会から集団感染が起きたことで封鎖された。

 封鎖されたのはアテ-ナルカ-ナ、カッジャーノ、ポッラ、サラコンシリーナの四つの町。「新求道共同体の道」が2月29日から3月1日までアーテナルカーナのホテルで開いた黙想会には約20人が参加。参加者で、近くの町ベリッジに住む76歳の男性が帰宅後に感染が分かり、10日に死亡、妻も陽性反応が出、隔離された。さらにその後、やはりこの黙想会に参加した人が住んでいるこの町と近隣の3つの町で16人の感染か確認されている。

 いくつかの地元メディアが伝えるところによると、集団感染は、黙想会で参加者たちがミサ中に、同じ聖杯からワインを飲んだことと関係がある。このようなやり方は、「新求道共同体の道」のミサで通常行われており、これがウイルスを伝染させたとみられる、といわれている。

 だが、この地域の教会を管轄するテッジャーーノ・ポリカストロ教区長のアントニオ・デ・ルカ司教はそれを否定。「感染発生直後に、ミサを捧げた司祭と話をしましたが、ミサは私が出した、聖体拝領や『平和のあいさつ』などミサ中に取るべき新型ウイルス防止の対策は全て行った、と言っています」とし、4日に同共同体が開いた黙想会では、ミサはなかった、と説明した。

 「新求道共同体の道」の広報担当者は16日、Cruxの取材に対し、「我々は、教会と州政府が出した対策は完全に守っている」とする一方で、「教区司教と当局の意向に従います」と語った。亡くなった男性以外も、黙想会に参加した司祭3人と会員16人が感染の有無を判定する検査を受け、地元の保健所は「陰性になることを期待している」としている。

 カトリック教会では通常、四旬節の初めに準備のための司祭、信徒による黙想会が行われているが、サレルノ県にある聖三位一体教会の主任司祭、ガブリエル・ペトロチェッリ神父はSNSで、私の判断で、この四旬節の黙想会は取りやめにした、と信徒に連絡している。

 「私の小教区では、『新求道共同体の道』との話し合いはなかった… 彼らは黙想会を開くように求めましたが、私は『新型ウイルス感染の緊急事態宣言をイタリア政府が発し、様々な対策を示していることから、集会は認められない』と担当者に伝えました。だが、残念なことに、彼らは他の場所で黙想会を開いてしまった」と語った。

 地元紙によると、匿名を条件に語った、黙想会参加しは、危険を警告するサインは何も出されなかった、とし、「参加者は約20人いましたが、お年寄りが新型コロナウイスに感染することなど思いもよらなかった… 誰も感染するような疑いを持たなかった。黙想会を終えて自宅に戻ってから、感染者が出たことを知ったのです」と語った。

 このような事態は、死者、感染者が急増を続けるイタリアで厳しい対策がとられる中で、カトリック教会が信徒たちにどのような霊的ケアをしていくべきか、についての議論を呼ぶことになりそうだ。

 同国の教会関係者の間には、今回のような黙想会が新型ウイルスの感染を広げる原因になるとして、政府の規制措置に従う必要を主張する声がある一方で、信徒に対する司牧や秘跡を授ける行為は守らねばならないとする意見もある。教皇フランシスコは、必要な予防措置は守らねばならない、とする一方で、「”聖なる神の民”を新型コロナウイルスの感染危機の中でも、”孤独”のままにしない方法を見つけるように司祭たちに求めている。

*1964年に2人の信徒によってスペインで始まった「新求道共同体の道」は、イタリアや南米などを含む”地中海地域”を中心に、司祭、信徒を巻き込んで拡大を続け、現在では、世界全体で2万を超える活動体、会員は100万人を超えるという。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 ・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

.

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年3月19日