・仏裁判所がリヨン大司教のバーバラン枢機卿に執行猶予付き実刑判決

(2019.3.7 Vatican News)

  フランスのリヨン地方裁判所が7日、リヨン大司教のフィリップ・バルバラン枢機卿(68)に対して、2014年7月から2015年6月にかけて管轄下にある聖職者の性的虐待について報告を怠ったとして、6か月の執行猶予付き実刑判決を出した。

 フランスで司教が性的虐待で有罪判決を受けたのは、2001年のバイユー・リジュー教区長のピエール・ピカン司教(執行猶予3か月)、昨年11月の前オルレアン教区長のアンドレ・フォール司教(同8か月)に次いで3人目。枢機卿の有罪判決は初めてだ。

 バルバラン枢機卿はこの日、刑を言い渡した裁判所には出廷しなかったが、枢機卿の弁護士は控訴するとの方針を明らかにし、「判決理由には納得がいかない。控訴して戦う」とし、裁判所は関係の記録書類とフィルムで不利な立場に置かれている、とも述べた。

 この裁判は1月に結審していたが、検察側は枢機卿にも、彼とともに訴えられていた5人の教会幹部にも罰則を求めていなかったという。

 判決について、リヨン教区事務局は短い声明を出し、バルバラン枢機卿が近く、ローマに行き、教皇に辞表を提出する、と本人が言明したことを明らかにした。フランス司教協議会も声明を発表したが、枢機卿が控訴の権利行使を断念するまで、判決にコメントできないし、辞任の判断についても「個人の良心の問題であり、教皇が適当と考える判断をなさる」としている。

 この裁判に関しては、リヨン教区の司祭、ベルナール・プレイナ神父から性的虐待を受けたとする9人が、枢機卿と教会幹部5人をこの事実を何年間も隠蔽し当局に報告を怠った、として訴えを起こしていたが、幹部5人は提訴期限が切れたとして、訴えが棄却されていた。

 フランスの人権団体“La Parole libérée”のフランソワ・ドゥボー共同代表は、今回の判決を「児童保護にとって大きな勝利」と評価している。

 プレイナ神父の被害者たちは、枢機卿と側近たちがこの問題を裁判に持ち込もうとせず、彼を教会の司牧活動から外す決定を遅らせた、と主張していた。神父は1970年代から1980年代にかけてリヨン郊外でボーイスカウトのチャプレンをしていた時に、公式のボーイスカウト活動をしないグループに所属していた70人以上の少年に性的虐待を行っていた、とされている。この問題が発覚した際には、虐待の規模の大きさからリヨン教区だけでなく、フランスのカトリック教会に大きな衝撃を与えていた。

 被害者たちによれば、教会の幹部たちは1991年には既にこのことを知っていたが、2015年に神父が引退の措置が取られるまで、少年たちに接するのを許していた。神父本人は1970年代から1980年代にかけてボーイスカウトたちを性的に虐待していたことを認めており、今回の裁判とは別に、来年、裁かれる見通しだ。ただし、被害者は85人に上っているとされているが、裁判で対象になるのは、提訴期限の関係で13のケースにとどまるとみられる。

 バルバラン枢機卿は公判中の1月に出した声明で「私は、これらの恐るべき行為を隠そうとしたことは絶対になく、まして隠蔽などしていない」と釈明していた。枢機卿は、プレイナ神父を2015年8月に、教皇の同意を得て、司祭としての職務を解いたが、このことについては「私はローマから求められたことを確実に行った」とする一方で、同神父を2011年にロアンヌ近郊の地域のトップに任命したことについては「軽率だった」ことを認め、「私は、彼に裏にとどまるように言うべきだった」と反省の弁を述べていた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年3月8日