・ワシントンで「宗教の自由促進の閣僚会議」開くー米副大統領も中国の宗教弾圧批判

中国のウイグル族やキリスト教などの信徒への残虐行為支える欧米、日韓の企業を非難

 米国務省主催の第二回「宗教の自由を促進するための閣僚会議」が15日から3日間、ワシントンで開かれ、100ヵ国の政府と500のNGO団体及び宗教団体が、マイク・ポンペオ国務長官と「国際信教の自由」担当のサム・ブラウンバック担当大使の呼びかけに応じ、信教の自由に向けて協力することを誓った。

 信教の自由を求める会議としては世界で最大の規模を誇る。この閣僚会議では、代表団を対象とした非公開のプログラムや複数の付随するイベントも行われた。中国で弾圧を受けている団体によって結成された「中国での信教の自由を促進するための同盟」は15日に「シリコンバレーと中国: テクノロジーを介した宗教弾圧」と題するセミナーを開き、複数の専門的なNGOが共同で「臓器のために政治犯を必要に応じて殺害する中国の取り組みの最新情報」に関するイベントを行った。

弾圧を支えるテクノロジー

 閣僚会議では「中国の監視システムの部品など高度のテクノロジー製品を供給している欧米や日韓のハイテク企業の行為はモラルに反しており、違法とすべきだ」との意見が出された。

 ウイグル族 やその他の少数民族、家庭教会 に属するキリスト教徒、法輪功 の学習者、全能神教会 のキリスト教徒、中国天主教愛国会 への参加を良心に従って拒否するカトリック教徒、チベット仏教徒 及びその他の宗教団体の信者は、動物のように追い回され、逮捕され、長年勾留され、拷問を受け、暗殺されることもある。だが、これらの犯罪行為を、国外から供給されるテクノロジーが支えていることはあまり知られてこなかった。

 宗教を信仰する者やその他の反体制派を逮捕し、セキュリティ対策が施された 「教育による改心」のための強制収容所 に拘束するという、中国当局の行為を支えているのは、”容疑者”の追跡、監視のグローバルなシステムだ。北米、欧州、日本及び韓国の企業が中国に輸出している部品がなければ、中国共産党 はこのシステムを実行に移せなかった。欧米、日韓の企業は莫大な利益を得る一方で、製品が何に使用されるか確認しようとしない。

 弾圧を受けている人々を犠牲で利益を得る自由主義世界の企業の行為は絶対に受け入れられないものだ。「中国での信教の自由を促進するための同盟」の代表者は、ワシントンのダークセン上院ビルの一室に詰めかけた大勢の人々に対して、「この行為を中止すべきだ」と訴えた。同盟は中国とのこの取引を行う主要なハイテク企業のCEOに書簡を送る計画を立てている。充分な成果が得られない場合は、関係国政府の介入を要請するという。

拷問に耐えたウイグル人のミリグル・トゥルスンさんが付随するイベントで講演を行った。拷問に耐えたウイグル人のミリグル・トゥルスンさんが付随するイベントで講演を行った。

拷問の証言

 ナショナル・プレスクラブで行われたイベントでは、ウイグル人女性のミリグル・トゥルスン(30)さんが自己の拷問の経験を語った。トゥルスンさんは中国当局に逮捕され、収容所に拘留されている間に、生まれて間もない息子のモハメド君を亡くしていた。新疆ウイグル自治区 の病院で適切な治療を受けられなかったためだ。彼女は「海外への渡航歴がある」という理由だけで勾留された、という。

 また、鄒徳美(ゾウ・ドゥメイ)さんは、欧米の企業が提供した部品によって作られた衛星及び携帯電話の追跡/盗聴機器によって、14年にわたって追跡され、特定され、逮捕された。彼女と同じ修道名を用いていた別の全能神教会の信者も拷問され、さらに鄒さんの問題が国際的な注目を集めている間に、当局は、高齢の両親を逮捕するために同様の機器を使った、と説明した。鄒さんの母は5日間の勾留、拷問の末に死亡した。海外にいる鄒さんも、強制送還の恐れがあったが、「国際信教の自由円卓会議」とBitter Winterの支援で回避された、と述べた。

宗教の自由を促進するための閣僚会議

馬永田(マ・ヨンティアン)さんも不当な弾圧について語った。事業家の馬さんは、遠隔の省から北京を訪れ、贈賄犯罪に対する適正な措置を請願したところ、仲間と共に逆に罰せられ、弾圧された。

 法輪功の学習者による声明も朗読され、当局が宗教関係の反体制派を追跡し、逮捕し、拷問にかけるために、テクノロジーがどのように用いられているかに関して詳しい説明が行われた。

ハイテク弾圧、臓器摘出に対して活動家が団結

 イベントの後半では、様々な国々の活動家が声を上げ、中国共産党に監視技術を流出させる行為を今すぐにやめるよう求めた。

 チャイナ・エイド(China Aid)を設立し理事を務めるボブ・フー氏は「正しい行いをしなくても、少なくとも悪事を働くべきではありません」と述べた。

 ウイグル人権 プロジェクトの渉外担当理事を務めるルイサ・グレベ氏は、拷問者に技術的な支援を行う行為を米国内で違法にする法案を提出するための取り組みを簡潔に説明した。

 台湾人の弁護士であり、法輪功の学習者である童文薰氏は、現在も中国で行われている恐ろしい臓器摘出を非難した。

台湾人の弁護士であり、法輪功の学習者である童文薰氏。台湾人の弁護士であり、法輪功の学習者である童文薰氏。

 このイベントを開催したのは、中国臓器収奪リサーチセンター(COHRC)中国での臓器移植濫用停止 ETAC国際ネットワーク(ETAC)、人権法律基金(Human Rights Law Foundation)及び公民力量。ルイサ・グレベ氏が議長を務め、国際的な専門家を招いて行われた。中国臓器収奪リサーチセンターは2019年度の報告書と映像作品『メディカル・ジェノサイド: 中国の臓器移植産業の隠れた大量虐殺(Medical Genocide: Hidden Mass Murder in China’s Organ Transplant Industry)』の発表を行った。

臓器摘出に関する討論会。臓器摘出に関する討論会。

 中国共産党は学者や支持者に大金を支払い、政治犯(法輪功の学習者、ウイグル族及び全能神教会を含むその他の弾圧を受けている団体に属する人々)をターゲットにした臓器摘出が今も行われていることを否定する「学術的」な作品を作らせているが、中国民衆法廷やその他の国際的な調査機関の調査により、この主張は否定されている。

 アン F. コーソン博士は、親中国共産党のメディアのネットワークはこのような調査の報道を頑なに拒否し、「この行為を既に中止した」と主張する中国の虚偽報道を繰り返しているだけだと伝えていた。

残念ながら、臓器摘出は中国で今も活発に行われている。そして、最も恥ずべき取引において臓器が必要とされる際に政治犯は殺害されている。

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

米副大統領、中国のウイグル族拘束、キリスト教徒など弾圧を非難 

(2019.7.19 日本経済新聞)

 米国のペンス副大統領とポンペオ米国務長官は18日、米国務省で開いた信教の自由に関する閣僚級会合で相次いで演説した。中国政府による新疆ウイグル自治区でのウイグル族の大量拘束、イラン政府による「信仰の自由」の妨害などを批判した。両氏の主な発言は以下の通り。

■ペンス副大統領

 米副大統領として、米国の建国に生命を与えた信教の自由を支持する。トランプ大統領の指導力でこの政権は米国内外の自由を守る行動をとってきた。昨年来進展はあったが、まだやるべきことは多い。驚くことに世界の人口の83%がその自由を脅かされ、あるいは禁じられている。

 この西半球でも、ニカラグアのオルテガ(大統領)らは信仰や人権への攻撃を続けている。ベネズエラでは独裁者のマドゥロ(大統領)が反体制派のカトリックの聖職者を起訴する法律を使っている。

 イランでの宗教的少数派の迫害も批判しよう。イランの国民はあったとしてもほとんど宗教の自由がない。キリスト教徒やユダヤ教徒、イスラム教スンニ派らは、多数であるイスラム教シーア派が享受している最も基本的な権利を認められていない。もちろん、イランの指導層は自国民を迫害することだけで満足していない。隣のイラクを含めて地域一帯に暴力やテロリズムを定期的に持ち出している。米国は何もせず手をこまぬくことはない。私たちはイランの政権に立ち向かっている。

 私たちはミャンマーで迫害を受けているイスラム系少数民族ロヒンギャのためにも戦っている。好戦的な仏教徒による少数派のムスリムやキリスト教徒への抑圧を座視することはできない。米国は迫害に関わった人たちに責任をとらせるようミャンマー政府に求めてきた。このような大規模な残虐行為は2度と起きてはならない。

 米国はまた、中国での宗教弾圧にも声を上げてきた。きょうも再びそうする。中国によるチベット仏教とへの弾圧は数十年にわたる。1995年、中国当局は(ダライ・ラマに次ぐ高位の「活仏」とされる)パンチェン・ラマを捕らえた。この24年間、家族ともども消息が伝えられていない。

 新疆ウイグル自治区では、共産党は100万人以上のウイグル族を含むイスラム教徒を強制収容施設に投獄している。そこで彼らは24時間体制での洗脳に耐えている。収容所の生存者によると、北京は意図的にウイグル文化を抹殺し、イスラムの信仰を根絶しようとしている。

 キリスト教徒の信仰も標的だ。ただ、最も大いなる皮肉なのだが、この2000年のうち今の中国共産党の体制下でその信仰は最も急速に広がっているのだ。たった70年前に共産党が権力を手に入れたとき、キリスト教徒は50万人にも満たなかった。今や2世代を経て1億3000万人にも達しようとしている。信仰が中国全土に広がっているのだ。それは香港でもそうだ。民主活動家のジミー・ライ氏は今月初め、こう語ってくれた。若者が抗議の行進で警官と向きあうとき、彼らはしばしば賛美歌を歌うというのだ。

 中国当局は聖書の販売を禁止しているかもしれないが、地球上のどの国よりも多い発行を止めることはできていない。教会の建設も禁じているかもしれないが、中国ではどの国よりも多くの教会が作られている。米国は現在、中国との貿易交渉に臨んでいる。それは続くだろう。しかし、その交渉がどうなっても、米国民は中国で信仰に生きる人とともにあると保証する。迫害される恐れなく自由に信仰できるよう願う。

 北朝鮮での信仰の扱いはもっとひどい。国連人権委員会はこう報告している。「北朝鮮での人権侵害は人間性への犯罪であり、その重大性や規模、そして本質は現代世界で比肩するものはない」と。北朝鮮の政権は公式に政府当局者にこう求めている。いわく、キリスト教の反動主義者の分子を一掃せよと。聖書を持っていれば死刑になる。トランプ大統領は北朝鮮の非核化と恒久的な平和を追求し続ける。米国は朝鮮半島の全ての人々の信仰のために戦う。

 米国は宗教上の理由で迫害を受けた全ての犠牲者とともにある。それは北朝鮮であれ、中国であれ、ミャンマーであれ、イランであれ、世界中の全ての人と心と祈りをともにする。

■ポンペオ米国務長官

 宗教の自由に関する今年の国際会議に前回よりも参加者が大きく増えたことを強調したい。キリスト教やユダヤ教、イスラム教などにかかわらず宗教の自由が数十億人に関わる課題と位置づけられているからだ。我々は宗教の自由に向けて結束し主張を強めるがこれは始まりにすぎない。

 イラン当局は少数民族が宗教に関する本を所持することを妨害し、少数民族に教育の機会を与えない。ミャンマーでは(少数民族の)ロヒンギャがひどい扱いを受けて迫害されている。その大部分はイスラム教徒だ。米国はミャンマー軍高官に対して(経済制裁という)公の行動を初めて起こした。

 中国共産党は中国国民の生活や心情を支配しようとしている。中国政府はこの会合に他国が参加することを妨げようとした。これが中国の憲法に明記された信仰の自由の保障と整合的だといえるのだろうか。現代における最悪の人権危機の一つが中国で起きている。これはまさに今世紀の汚点だ。

 我々は信仰の自由を守り推進するために今ここに集まった。米国務省は迫害を受ける犠牲者に迅速な支援を講じるために多国間の基金を立ち上げた。我々は同盟国と手を携えて多国間での対応を活発化させていく。

 信仰の自由に対する侵害を我々は継続的に非難しなければならない。米国は国連やその他の多国間枠組みで信仰の自由が最優先課題であると訴えていく。そのためには市民社会の支援が必要だ。草の根の運動家たちに感謝している。(ワシントン支局)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年7月19日