*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
米副大統領、中国のウイグル族拘束、キリスト教徒など弾圧を非難
(2019.7.19 日本経済新聞)
米国のペンス副大統領とポンペオ米国務長官は18日、米国務省で開いた信教の自由に関する閣僚級会合で相次いで演説した。中国政府による新疆ウイグル自治区でのウイグル族の大量拘束、イラン政府による「信仰の自由」の妨害などを批判した。両氏の主な発言は以下の通り。
■ペンス副大統領
米副大統領として、米国の建国に生命を与えた信教の自由を支持する。トランプ大統領の指導力でこの政権は米国内外の自由を守る行動をとってきた。昨年来進展はあったが、まだやるべきことは多い。驚くことに世界の人口の83%がその自由を脅かされ、あるいは禁じられている。
この西半球でも、ニカラグアのオルテガ(大統領)らは信仰や人権への攻撃を続けている。ベネズエラでは独裁者のマドゥロ(大統領)が反体制派のカトリックの聖職者を起訴する法律を使っている。
イランでの宗教的少数派の迫害も批判しよう。イランの国民はあったとしてもほとんど宗教の自由がない。キリスト教徒やユダヤ教徒、イスラム教スンニ派らは、多数であるイスラム教シーア派が享受している最も基本的な権利を認められていない。もちろん、イランの指導層は自国民を迫害することだけで満足していない。隣のイラクを含めて地域一帯に暴力やテロリズムを定期的に持ち出している。米国は何もせず手をこまぬくことはない。私たちはイランの政権に立ち向かっている。
私たちはミャンマーで迫害を受けているイスラム系少数民族ロヒンギャのためにも戦っている。好戦的な仏教徒による少数派のムスリムやキリスト教徒への抑圧を座視することはできない。米国は迫害に関わった人たちに責任をとらせるようミャンマー政府に求めてきた。このような大規模な残虐行為は2度と起きてはならない。
米国はまた、中国での宗教弾圧にも声を上げてきた。きょうも再びそうする。中国によるチベット仏教とへの弾圧は数十年にわたる。1995年、中国当局は(ダライ・ラマに次ぐ高位の「活仏」とされる)パンチェン・ラマを捕らえた。この24年間、家族ともども消息が伝えられていない。
新疆ウイグル自治区では、共産党は100万人以上のウイグル族を含むイスラム教徒を強制収容施設に投獄している。そこで彼らは24時間体制での洗脳に耐えている。収容所の生存者によると、北京は意図的にウイグル文化を抹殺し、イスラムの信仰を根絶しようとしている。
キリスト教徒の信仰も標的だ。ただ、最も大いなる皮肉なのだが、この2000年のうち今の中国共産党の体制下でその信仰は最も急速に広がっているのだ。たった70年前に共産党が権力を手に入れたとき、キリスト教徒は50万人にも満たなかった。今や2世代を経て1億3000万人にも達しようとしている。信仰が中国全土に広がっているのだ。それは香港でもそうだ。民主活動家のジミー・ライ氏は今月初め、こう語ってくれた。若者が抗議の行進で警官と向きあうとき、彼らはしばしば賛美歌を歌うというのだ。
中国当局は聖書の販売を禁止しているかもしれないが、地球上のどの国よりも多い発行を止めることはできていない。教会の建設も禁じているかもしれないが、中国ではどの国よりも多くの教会が作られている。米国は現在、中国との貿易交渉に臨んでいる。それは続くだろう。しかし、その交渉がどうなっても、米国民は中国で信仰に生きる人とともにあると保証する。迫害される恐れなく自由に信仰できるよう願う。
北朝鮮での信仰の扱いはもっとひどい。国連人権委員会はこう報告している。「北朝鮮での人権侵害は人間性への犯罪であり、その重大性や規模、そして本質は現代世界で比肩するものはない」と。北朝鮮の政権は公式に政府当局者にこう求めている。いわく、キリスト教の反動主義者の分子を一掃せよと。聖書を持っていれば死刑になる。トランプ大統領は北朝鮮の非核化と恒久的な平和を追求し続ける。米国は朝鮮半島の全ての人々の信仰のために戦う。
米国は宗教上の理由で迫害を受けた全ての犠牲者とともにある。それは北朝鮮であれ、中国であれ、ミャンマーであれ、イランであれ、世界中の全ての人と心と祈りをともにする。
■ポンペオ米国務長官
宗教の自由に関する今年の国際会議に前回よりも参加者が大きく増えたことを強調したい。キリスト教やユダヤ教、イスラム教などにかかわらず宗教の自由が数十億人に関わる課題と位置づけられているからだ。我々は宗教の自由に向けて結束し主張を強めるがこれは始まりにすぎない。
イラン当局は少数民族が宗教に関する本を所持することを妨害し、少数民族に教育の機会を与えない。ミャンマーでは(少数民族の)ロヒンギャがひどい扱いを受けて迫害されている。その大部分はイスラム教徒だ。米国はミャンマー軍高官に対して(経済制裁という)公の行動を初めて起こした。
中国共産党は中国国民の生活や心情を支配しようとしている。中国政府はこの会合に他国が参加することを妨げようとした。これが中国の憲法に明記された信仰の自由の保障と整合的だといえるのだろうか。現代における最悪の人権危機の一つが中国で起きている。これはまさに今世紀の汚点だ。
我々は信仰の自由を守り推進するために今ここに集まった。米国務省は迫害を受ける犠牲者に迅速な支援を講じるために多国間の基金を立ち上げた。我々は同盟国と手を携えて多国間での対応を活発化させていく。
信仰の自由に対する侵害を我々は継続的に非難しなければならない。米国は国連やその他の多国間枠組みで信仰の自由が最優先課題であると訴えていく。そのためには市民社会の支援が必要だ。草の根の運動家たちに感謝している。(ワシントン支局)