・教皇側近のペル枢機卿、豪州の裁判所が児童性的虐待で有罪判決(VaticanNews)

(2019.2.26 VaticanNews Jean Charles Putzolu and Roberto Piermarini)

 前バチカン財務事務局長官で教皇の枢機卿顧問団のメンバーだったジョージ・ペル枢機卿が、児童性的虐待でオーストラリアのビクトリア郡裁判所から有罪判決を受けた。判決理由は、枢機卿がメルボルン大司教を務めていた1990年代に16歳以下の児童二人に性的暴行を働いたというもの。12人の陪審員全員が有罪、との判断をした。

 判決は昨年12月11日に言い渡されていたが、同裁判所は、枢機卿の「不適切な行為」の別件(証拠不十分で却下)の審理に影響を与えないため、25日まで公表を禁止していた。枢機卿は無罪を主張しており、弁護団は判決を不服として控訴を検討している。

 この判決について、オーストラリア司教協議会のマーク・クラリッジ会長は協議会としての次のような声明を出した。

 「過去の児童性的虐待でペル枢機卿に有罪判決が出されたというニュースは私たち司教はもちろん、全豪、そして全世界の多くの人々に衝撃を与えています。司教団はすべての人が法の下に平等であることに同意し、オーストラリアの司法組織を尊重します。判決を下したのと同じ司法組織が枢機卿の弁護団が検討中の控訴にも対応されることになるでしょう。私たちがいつも願っているのは、このような過程を通じて、正義が行われることです。私たちは虐待を受けたすべての人々、彼らが愛する人々のために祈ります。そして、教会がすべての人々、とくに若者たち、傷つきやすい人々にって安全な場所であることを確実にするため、できることをすべて行うことを誓います」。

 また、バチカン放送イタリア語担当のフェデリコ・ピアナ氏はバチカンの未成年者保護委員会の委員でグレゴリアン大学の児童保護センター長のハンス・ゾルナー神父に次のように語っている。

 「私が遠くから聞いたところによれば、今回の捜査、裁判の経過はとても悩ましいものがあります。オーストラリアの裁判制度は私たち欧州の制度とかなり違います。例えば、枢機卿は何か月も前に有罪だと判断されていたのに、それについて話すことも、理由を知ることもできませんでした。今、私たちは有罪判決を知った。それで、もちろん枢機卿は控訴するでしょうし、その結果を待つことになります。どのような場合にも、どのような役職にあろうと、罪を犯したら、罰せられねばなりません。私は弁護士ではありませんし、オーストラリアの複雑な司法制度もよく分からない。私たちは、司法プロセスの第一段階に今いる。枢機卿が控訴をする、そしてどのような結果が出るか見守る、ということになります。オーストラリアでは、これまでにアデレードのフィリップ・ウイルソン大司教の裁判がありました。彼は聖職者の性的虐待を隠蔽したとして、一審では有罪になりましたが、二審では無罪になっている。今回はどうなるか見守りましょう」。

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 枢機卿は1996年にメルボルン大司教、2001年にシドニー大司教となった後、2年後に枢機卿に叙せられ、教皇フランシスコから枢機卿顧問団のメンバーに招かれ、バチカン改革について助言する役を与えられていた。

 性的虐待について捜査する王立オーストラリア委員会に2014年に召喚され、2015年12月から翌年2月にかけて、1970年代に児童たちを虐待した司祭たちを擁護したとの訴えを受けた。これに対して、枢機卿は2016年2月に、同委員会のビデオでの聴取に応じ、当時いたバララート教区で起きた事案は知らない、と否定していた。さらに同年10月、ローマで、オーストラリアの警察当局から派遣された係官2人から、メルボルン大司教当時の幼児性的虐待の容疑で事情聴取された。

 2017年6月に未成年者性的虐待で正式に起訴され、翌7月に、オーストラリアの裁判所に召喚され、弁護のために、当時務めていたバチカン財務事務局長官の職を離れたが、訴えは根拠がないと強く反論するとともに、性的虐待は「恐ろしい犯罪」との考えも示していた。

 枢機卿は常に未成年者に対してなされた虐待を「不道徳で耐えられないもの」と批判、教皇がバチカンに未成年者保護委員会を設置した時もこれを支持し、オーストラリアの司教時代にも、未成年者保護の要綱をまとめ、被害者に援助を提供していた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

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2019年2月27日