・シノドス7日目:協働性の視点から「聖職」を見直す-女性の役割、既婚者叙階、若者司牧、情報伝達…

(2019.10.14 VaticanNews )

 アマゾン地域シノドスは14日開いた10回目の全体会議で、教皇フランシスコ出席のもとに、177人の司教と専門家、招待者などが参加して討議を続けた。

 教会がよりよく神の言葉によって形作られるように、synodality(協働性)の視点から聖職を考え直すことは、アマゾン地域における教会の課題の一つと見なされた。この会議で、何人かがこの点を強調する見方を示した。

*神の言葉

 神の言葉は行動的で、慈しみ深い存在-教育的で預言的、造形的で遂行的。不可欠な生態学の課題を補強し、社会的、経済的、文化的、そして政治的な発展の手段、新たな人間主義となりうる。

 女性も含む「御言葉の新たな聖職者」たちが、現代の諸課題への新たな対応を提供するために必要だ。だから教会は、アマゾン地域のそれぞれの場で福音を宣言する仕方を知るような、よく準備された信徒の育成に、投資せなばならない。約束された信徒に十分な教育を施すことは、原住民の人々の宗教生活と聖職者への召命を進めるための基本だ。

*一般信徒と女性の役割

 このような意見もあったー一般信徒の賜物は、教会でもっとよく表明され、評価される必要がある。そうした信徒のおかげで、教会は「外に向かって動く、世俗主義から距離を置く教会」であることを明らかにしている。

 また、ある出席者から、「 viri probati (既婚者の叙階の意味)」と「女性に聖職者の門戸を開くこと」の是非についての議論は世界の教会全体に影響を与えるため、シノドスの通常総会で扱われるべき、との指摘がある一方、女性を「司祭叙階しない奉仕としての聖職者」に含め、そうすることで、アマゾン地域全域における女性の尊厳と平等を保証する必要性を説く意見も出た。そうした聖職者には、例えば、御言葉の祭儀を行うこと、社会的な慈善の性格を持つ事業を主導することなどができるようにする、との案も示された。

*既婚者の叙階について

 他の発言者からは、既婚者の司祭叙階の前に、既婚者の助祭を考える必要がある、既婚者の司祭叙階は終身助祭から昇格するようにすればいい、あるいは、「終身助祭」は、既婚者を将来、司祭叙階の対象に含める可能性を試すよい「実験室」になる、との指摘もあった。

*小児性愛、幼児誘拐、臓器売買、人身売買

 アマゾン地域の未成年者と弱い立場にある大人への配慮に関しては、小児性愛や他の性的虐待に対して厳しい批判は、教会が注意を怠ることなく、勇気を持って対処するように求めている、との見方が示され、最大の課題は、こうした犯罪行為を断固防ぐことができるように、透明性と責任体制を確保することだ、との指摘があった。

 若者たちが性的に搾取されている問題も、改めて言及された。また出席者の一人は、幼児誘拐の犯罪網が複数存在し、臓器売買の犠牲者を生んでいる、と報告した。ある統計によると、2018年にブラジルだけで6万2000件、アマゾン地域で最多に数えられる性的暴行がされている。

 そして、これらの忌まわしい犯罪の根底には深刻な経済的な格差と中央政府、地方政府当局の対応能力の欠如があり、対応強化を訴える声が司教協議会や修道会からあがっている。

 未成年者と女性を主たる対象とする人身売買に対する戦いは、この会議で注目され、犠牲者たちが世界のほとんどの非人間化した地域で発生していることを思い起こし、バチカンの人間開発に関する部署を通して、世界の大規模な民間組織が人身売買に対する国際的な政策に対応するように求めること、こうした犯罪を扱う特別な司牧委員会を設けることが提案された。

*召命と若者のための司牧

 また他の発言者からは、福音宣教の仕事から除外することのできない召命のための司牧の重要性が指摘された。さらに、すべての福音宣教には、キリストへの個人的な出会いの呼びかけと同時に、キリストとの個人的な出会いを勧める青少年宣教を伴う必要が強調された。会議出席者たちは、キリストに従うことを望む若者は、聖なる献身的な人生の証しを通し、適切な養成によって支えられる必要があることを確認した。このために、司祭たちはアマゾン地域の特定のニーズを完全に理解する必要があり、若者たちの養成は過度に”学術的”に行うのではなく、”宣教師の精神”と”牧者の心”をもって行うことが求められる、ともされた。

*水資源の保護のためにも「生態学的な回心」が必要

 生態学ー特に、主要な資源であり、生命の源である水を大切にし、保護することに関する-の専門知識を持つカテキスタの養成が改めて強調された。この重要性は、司教以外の複数の出席者からも繰り返された。水に関連した疾病で毎日何千人もの子供が死亡するという統計が示され、教皇フランシスコの「次の世界大戦は水と結びついたものとなる」との言葉を引用した。私たちの共通の家を保護する必要性については、世界的に認識されており、人々の”創造と和解”が急務となっている。  「生態学的な回心」は、技術的側面に傾いた現代のライフスタイルを変える倫理的側面に注目することでもある、との指摘もあった。

*情報伝達の課題

 午前中の9回目の全体会議の議題となった情報伝達の問題が、午後の会議でも取り上げられた。アマゾン地域の人々を支援するためには、マスメディアを通じて、あらゆる文化やあらゆる言語でコミュニケーションをとれるようにする必要が確認され、教会が運営するメディアは、原住民の人々の意志疎通の仲立ちとなることで、現地の知見を統合する場所となる必要がある、との意見も出た。

 また多くの司教たちは、教育や社会開発を目的とした他の小さなプロジェクトによっても実行できる原住民の人々を保護、支援する対策についても取り上げた。彼らはしばしば社会から疎外されていることから「無能」と見なされるべきではなく、力を与えられ、耳を傾けられ、理解され、歓迎されなければならない。そのために、正義と平和委員会の間の協力強化と人権を促進も提案された。

*会議の終わりに

 会議の終わりに、教皇フランシスコ教皇は午後の会議に出たさまざまなテーマを振り返り、最も印象に残ったいくつかの事柄を強調された。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年10月15日