・ガーナの司教、中国の影響力増大を批判(CRUX)

(2018.8.9 Crux Staff)

 ヤウンデ(カメルーン)発―ガーナの司教が、中国はガーナの国民を「自分の土地を占拠される」事態に直面させている、と批判した。

 ガーナ国中に放映されたビデオ説教の中で、同国西部ウィアウソのジョセフ・フランシス・クウェク・エシエン司教は「我々の国における中国企業の活動拡大が、国民の仕事を奪っている」と前置きし、「私たちは、囚われの身になっている。私たちを愛する国、金、ダイアモンド、マンガン、ボーキサイトを産出する国、木材があり、ココアを大量に生産する国…。そして、今、原油の商業生産もできるようになっているこの国の中で。これだけ豊かなのに、病院-全部ではないが大半の病院-に行くと、何が起きているが分かります。妊娠した女性が床に横たわっているのです!囚われ人でないなら、難民ではないのですか?私たちは!」と豊かであるはずのガーナの国民にとって悲惨な現状を訴えた。

 中国人のガーナへの移住は、1940年代から始まった。ガーナと香港は当時、ともに英国の植民地にされていた、という関係にあった。最近は、中国がガーナへの多額の投資-特に鉱山業への投資-を始めるにつれて、もうけを挙げるために中国から多くの人間が入ってくるようになった。中国国籍の幾人もが、違法な金の採掘で逮捕されている。国内にいる中国人の正確な数は分からないが、専門家の推定によると70万人近くに達している、という。

彼らの多くは、ガーナに短期滞在し、金もうけをして帰国する。そうした中国人には、商取引や労働に関するガーナの法律を無視する者も多く、被害を受けたガーナ人が彼らを司法当局に訴える一方で、中国人側は脅迫や人種差別を受けたと反訴するなど、緊張が絶えない。

そうした中で、司教は、ガーナ西部の都市、ワッサ・アクロポンは「中国人に荒らされている」「中国人たちは、料理用バナナを焼き、サトウキビを売っている。彼らはガーナの人々を利用している」と批判し、違法行為を取り締まろうとしない政府当局も非難した。「州議会議員、国会議員…責任者たち。まるで、この問題を話すことにできる人がいないようだ。この結果、私たちが何を得られるのかは、神のみぞ知る、です。

 ガーナのカトリック司教協議会は昨年、違法な金採掘を批判する声明を発表し、その中で、政府はそのために、年間20億ドルの損失を出している、と指摘している。

 同国議会は2013年に外国人が国内の小規模商業に参入することを禁じる法律を成立させた。これは、中国人のこの分野での活動を規制するのが狙いとされ、ガーナ商業者連盟のアリ・モハメッド・アーマド会長は「中国人たちはガーナの小売業を侵食している。私たちの商売だったバナナ焼き、袋入りの水を売っているのです」とこの法律を歓迎している。政府保証の印が押された清浄水のパックの販売は、上水道の整備が遅れているガーナの代表的な小売産業だ。

 会長はさらに、「我が国の若者たち、兄弟たち、子供たちが学校を卒業しても、働くところがないなら、どうなるでしょうか?働き口がなくなったら、どうやって暮らしていけばいいのでしょうか?犯罪が唯一の答えだが、そうなりたくありません」と(”中国支配”の)先行きを心配し、「外国の人々がガーナに来て、投資したいなら、卸売り業や製造業に投資すべきです。新法では、彼らは、20万ドルから100万ドルを持って来なければならない。投資家として、投資に来るのですから」と付け加えた。

 中国は、ガーナにとって最大の貿易相手国であり、主要な直接投資国で、両国の輸出入の総額は60憶ドルを超える。新任の駐ガーナ・中国大使は、両国が協力して発展の新たな一章を書こう、と呼び掛けた。中国政府は、ガーナ向け投資を増やすことで、国民の反中国感情を鎮めようとしている。中国外務省のスポークスマンは2014年、英紙ガーディアンに、こう述べていた。「若干の中国人の違法な行為」が、アジアの大国としてのアフリカにおける中国のイメージを損なっているが、「これは、中国・アフリカ協力の主たる問題ではない。協力の業績に影を落とすことはありえない」と。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年8月13日