・アマゾン地域シノドス最終文書発表-既婚者の司祭叙階を提言、女性の終身助祭も検討を

(2019.10.27 バチカン放送)

 「アマゾン周辺地域のための特別シノドス」が26日午後開いた最後の全体会議で、最終文書を採択した。会議後発表された最終文書は序章、5章からなる本文、終わりの言葉から成り、章立てと主な内容は以下の通り。

*本文の章立て

第1章「アマゾン:傾聴から統合的回心へ」
第2章「司牧的回心の新たな歩み」
第3章「文化的回心の新たな歩み」
第4章「エコロジー的回心の新たな歩み」
第5章「シノドス的回心の新たな歩み」

*本文の主な内容

第1章「アマゾン:傾聴から統合的回心へ」

・アッシジの聖フランシスコの生き方に倣う、率直で簡素な生活を通した「真の統合的回心」によって、神が創造された「共通の家」との調和を持った関係を築くよう促し、こうした回心は「アマゾンのすべての人々の心の中に入るための、外に向かう教会をもたらすだろう」としている。

・同時に、アマゾンの調和をゆがめ、生活を脅かす、多くの苦しみに触れ、具体的に、天然資源の私有化、搾取的な生産モデル、全域の約17%に及ぶ森林破壊、産業公害、気候変動、麻薬売買、人身取引、不法な武力集団、そして強制移住や難民も含む広範な現象としての移民問題などが挙げている。

・移民問題に関しては、国から国へ人の移動、あるいは森林地域から都会への人の移動のいずれの場合にも、「移民たちに対する教会の司牧の強化」を期待した。

第2章「司牧的回心の新たな歩み」

・教会の福音宣教のあり方を取り上げ、「サマリア人」のように「すべての人々との出会いへ向かう教会」、「マグダラのマリア」のように「愛され、和解し、キリストの復活を喜びをもって告げる教会」、マリアのように「子らを信仰に導き、生み出し、人々の文化の中で奉仕する教会」を希望した。

・アマゾン地域における福音宣教のために命を捧げた多くの宣教師たちの犠牲を想起する一方で、福音宣教がしばしば時代の権力と共存しながら行われた過去を振り返り、現代の教会が「新しい植民地主義的な権力と距離を置き、アマゾンの人々の声に耳を傾け、透明性を持った活動を進める」必要を指摘した。

・さらに、他のキリスト教会との間、あるいは異宗教との間での対話の重要性を指摘し、原住民の人々、青年、移民、家庭を対象とした司牧を、緊急に取り組むべき課題とした。

第3章「文化的回心の新たな歩み」

教会が人々と出会い、相手から学ぶためには、非キリスト教文化の受容が重要、とし、「アマゾン地域の人々の思いやり、連帯、共同体精神、被造物に対する見方などから、他大陸の人々は多くを学ぶことができる」と述べた。

・「土地を守ることは、生活を守ること」であり、命、人権の保護は福音に根差した原則である。教会は、司牧活動を通し、また各国政府への人権保護の働きかけを通して、アマゾン地域の人々を守るよう呼びかけた。

・原住民の人々の独自性や文化を尊重した宣教や神学のあり方、アマゾン地域の教会メディア網の形成なども提案した。

第4章「エコロジー的回心の新たな歩み」

・アマゾン地域の前例を見ない社会・環境危機に対し、すべての要因を関連付けて考察する「統合的なエコロジー」の視点を持つことを、同地域の未来を救うための唯一の道として提示。

・教会は「神の御業を保護するために、アマゾンの共同体と同盟し共に歩むべきである」とし、「共通の家」である地球を守るための役割、役務を定めること、「エコロジー的な罪」を、神と隣人、共同体と環境に対する一つの「怠り」として定義すること、などが提言されている。

・さらに、アマゾンにおける「エコロジー的負債」を補填するための国際基金の創設などのアイデアも記された。

第5章「シノドス的回心の新たな歩み」

・全ての教会関係者に、「聖職者至上主義や押し付け的な態度を超え、対話と傾聴、霊的な識別の文化を強化することで、司牧問題の挑戦に応える」ように促し、シノドス性、すなわち「皆で共に歩む」態度を、第2バチカン公会議の精神を受け継ぎ、特に男女の信徒の参加、共同責任性、皆が負う任務などに、以下のように言及している。

【信徒の役割と奉献生活】

・教会生活と福音宣教に関する事柄をめぐり、信徒の参加は、男女平等の役割に留意し、業務の担当を特定の人物が独占することのないように、「持ち回り制」にすることを勧めている。

・「司教は、司祭不在において、共同体のメンバーの中から、司祭的性格を伴うことのない一人の人物を、司牧的な世話を行うために、期間を限定して委任することができる」よう提案しており、この場合、責任は司祭が負うことを明記している。

・同時に、原住民の人々の修道者への召命推進、奉献生活についても、貧しい人々や疎外された人々のもとを巡回するなど、アマゾンに密接したあり方を提唱している。

【女性の積極的貢献】

・教会における女性の存在の重要性を強調。アマゾン地域の古くからの叡智は、大地を「母」なるものとして表現し、先住民族の社会では、女性を「人間性の推進において生き生きとした責任ある存在」としている、と指摘。「女性の声に耳を傾け、助言を求め、女性が様々な決定に参加し、教会の司牧や管理上の必要に応じた指導的役割を果たしすことで、教会のシノドス的歩みに女性が貢献することを希望した。

・「女性のための終身助祭」の制定も、今回のシノドスで多く議論され、シノドスに参加した司教たちは、教皇フランシスコが2016年に設立された「女性助祭をめぐる研究委員会」における検討に期待を表明した。

【終身助祭】

・終身助祭の育成と役割の推進は、シノドスで緊急の課題として取り上げられた。

・助祭は「司教の権限のもとに共同体に奉仕し、特に今日、統合的エコロジー、人間の発展、社会司牧、貧しく弱い立場の人々の支援を促進する」ように求められており、そのためにも助祭には、学究と司牧経験を積んだ生涯養成が必要とされ、そこに助祭候補の妻と子も参加することも考えられる。

・助祭の養成課程には、教会一致に向けた対話および諸宗教との対話、異文化受容、アマゾンの教会史、愛情と性、先住民の宇宙観、統合的エコロジーが、テーマとして取り入れられる必要がある、とした。

司祭養成】

・助祭の養成と同様に、司祭養成においても、福音を生き、教会法の知識を持つ、イエスの憐みに倣う司牧者の育成と並行し、そこに、統合的エコロジー、創造の神学、先住民の神学、エコロジー的霊性、アマゾンの教会史、アマゾンの人間学・文化学の課程を取り入れることが推奨された。

【ミサへの参加と司祭叙階】

・ミサへの参加は、キリスト教共同体にとって中心的な活動だ。だが、アマゾン地域の教会共同体は、信徒たちがミサに与るために極めて大きな困難を抱えており、司祭がミサを司式、あるいは赦しの秘跡、塗油の秘跡を授けるために、一つの共同体を訪れるのは、数カ月や数年に一度という地域もある。

・こうした事態に対して、教会共同体への奉仕にすべてを捧げる司祭の独身性を神の賜物として高い価値を持つことを確認し、独身性を生きる司祭たちの召し出しを願う一方で、司祭の独身性は「司祭自体の本質からは要求されていない」もの、と指摘。アマゾン地域の広大さと聖職者の少なさを考慮し、「終身助祭としての豊かな経験を持ち、司祭になるための相応の養成を受けた者が、正当に形成された安定した家庭を保ちつつ、アマゾンの最も遠隔な地域において、御言葉を伝え、秘跡を行うことを通して、キリスト教共同体の生活を維持することができるよう、共同体で認められたふさわしい男性を司祭に叙階するための規則と処置を、担当当局が制定すること」を提言している。

・なお、この提言については、シノドスに出席した複数の司教から、この課題は「特定地域に限定されない、普遍的なテーマである」との意見が出された、と付記した。

【シノドス後の地域教会組織とアマゾン地域の大学】

・アマゾン地域の各教区の広大な管轄領域の縮小・見直し、同一地域の教会のグループ化、遠隔地の宣教を支える基金の創設、新たな地域教会組織を創設することを提案した。

・原住民の人々の伝統の尊重し、聖書に基づき、異文化受容や異文化対話について研究する「アマゾン地域のカトリック大学の創立」の考えも示された。

【アマゾンの典礼】

・アマゾン地域の人々の世界観、伝統やシンボル、原始典礼などの要素に配慮した典礼を求める声に応え、アマゾン地域のための典礼を研究する委員会の設立、そうした典礼を、現在23の様式があるカトリックの典礼に加えることが提案された。

・キリスト教信仰の異文化受容を促進するために、聖書や典礼書をいくつかの地域の言語に翻訳するための委員会の設立や、音楽や歌を通して典礼を豊かにすることが提言された。

・最後に、アマゾンにおいて様々な名のもとに崇敬されている、アマゾンの母、おとめマリアの保護を祈っている。

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2019年10月28日