・アマゾン・シノドス3日目:「麻薬取引汚染」「環境的回心」はじめ幅広い議論

(2019.10.10 VaticanNews )

 アマゾン地域シノドスは9日午後、教皇臨席の下に6回目の全体会議を開き、この地域の深刻な問題になっている麻薬取引汚染などを中心に議論した。

 この地域のある一帯では、コカインの原料であるコカの栽培面積が1万2000ヘクタールから2万3000ヘクタールに増え、犯罪の多発と森林地帯の砂漠化をもたらし、公に認めた野焼きと水力発電所建設工事が何百万ヘクタールもの森林を破壊し、いくつかの地域の環境に深刻な影響を及ぼし、生態系を変えている。

 会議では、このような現状から、「環境的な回心」を訴える必要が改めて確認され、教会は、国際的な諸機関が取り組むべき課題として、生態系の保護をとりあげるよう、預言を持って語られねばならない、との意見が出された。

*文化受容と福音宣教

 会議に出席した司教たちからは、また、イエスのなさったことに倣い、現地文化の受容と福音宣教の均衡を図る必要が提起された。そして、ご自身の愛を顕現するために、み言葉は人の形をとられたことから、Incarnation (注:神がイエスとなってこの世に来られたこと)そのものが”文化受容”のもっとも偉大なしるしであり、宣教師たちがアマゾン地域でしたように、教会は、人々の日々の暮らしの中に、自らを顕現するように求められている、との意見があった。

*宣教の協働性

 またある司教は、アマゾン地域はこの地域に住む人々のために、また教会のために、永続的な宣教の協働性の実習場となるべきだ、と述べ、また、我々の共通の家を世話するために、異文化理解、諸文化と原住民の人々の高揚を強調する意見も出た。

*司祭召命の問題と既婚男性叙階の可能性

 福音宣教のテーマはこの会議でも取り上げられ、司祭と修道者の召命の問題が議論された。複数の司教たちは”viri probati”(注:直訳は”ふさわしい男性”、つまり既婚男性の司祭叙階の意味)の可能性について言及。この問題について「叙階の可能性が、別の大陸に、あるいは別の教区に宣教に行こうとする司祭たちの意欲をそぐかもしれない」、あるいは、「司祭は、『特定の共同体』ではなく、『教会』に属し、『いかなる共同体』に奉仕することもできる」「必要とされる司祭はそれほど多くない。必要なのは一般信徒の助祭だ」との指摘もあった。

 また、司祭育成を改善する必要性と、一般信徒の責任について重きを置くことが求められている、ことも強調された。

*民衆信仰

 さらに福音宣教の無理できない側面として、民衆信心があり、民衆信心はアマゾン地域の人々の基本的な特徴の一つ、イエス・キリストを映す宝として大切にされる必要がある、との指摘がされ、「民衆信心の明示は、教会で受け入れられ、推奨され、強められる傾向にある」との見方も示された。

*創造の神学

人類に向けた神の言葉が住まわれる「創造神学」についても討議された。この神学を基礎に、司教たちは、創造を忘れることは創造者を忘れることを意味することから、創造神学と実証科学の代表者たちの間の対話の重要性に言及した。また、アマゾン地域の原住民の人々の権利を守ることの重要性も指摘され、彼らとの対話は、価値ある話し相手、自己決定能力を備えた価値ある対話者として大切にする助けになる、との見方が示された。

*教会と社会における女性の役割

 この全体会議には司教たち以外に、監査人、司教以外の代表者、そして特別招待者も出席した。彼らが特に指摘したのは、女性の役割の推進、家庭、社会、教会における女性の指導的役割に価値を置くことの重要性だった。

 女性たちは、日々の生活の守護者、宣教者、希望を作る人、神の心地よいそよ風、教会の持つ母の顔-女性たちのアマゾン地域での福音の言明の仕方ー静かだが深くこの地域の社会に浸透するーを認識することの重要性も指摘された。ジェンダーの協働性が教会で強化されている、との見方も出た。

*諸宗教間対話とキリスト教一致のための対話

 信頼醸成目的とし、互いの違いを機会とみなす、諸宗教間対話の重要性も議題となり、それは、「宗教的植民地化」とは全く異なるもので、相手の意見を熱心に聴き、違いを認識すること、が指摘された。

 キリスト教会一致のための対話については、しばしば暴力の犠牲になっている原住民の人々の権利を守ること、略奪的な鉱物採掘や有毒な植物栽培で破壊されるアマゾンの人々の土地を守ること、を目的とする共通の対応の重要性が強調された。

 また、福音を共同で証しすることは、そうした犯罪行為との戦う手法となり得る、キリスト教徒は、アマゾン地域とそこに住む人々が体験している暴力と不正を目の前にして、沈黙しているべきではない、この地域の最も辺境のちで、神を愛を表明することは、創造の素晴らしさに対するあらゆる形の圧迫を弾劾することを意味する、との意見も出された。

*アマゾン地域は、誰にとっても”本物”の場所

 アマゾン地域は、現在の私たち全員が影響する地球的課題の多くが提起されている”本物”の場所だ、との指摘も出た。アマゾン地域の人々の苦しみは、人の命が単なる商品とされ、不平等を拡大させる”帝国主義的”なライフスタイルから生まれている、だが、物事が相互につながっており、地球規模の協力は可能だし、緊急に進めねばならない、ということを私たちが理解するのを、原住民の人々が助けてくれることができる、との発言もあった。

*教皇の模範

会議参加者の意見表面に先立って、教皇フランシスコは、今回のこれまでの議論でご自分が最も感銘したことについて語られた。教皇は、この日が「Yom Kippurの日(注:贖罪の日、レビ記16章に規定されるユダヤ教の祭日でユダヤ教における最大の休日の1つ)であることから、一日の業の初めに「ユダヤ教徒の兄弟たち」のために祈られ、一日の終わりに、ドイツ東部ザクセン=アンハルト州ハレで9日起きたシシノガーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃事件で犠牲となった人々のために祈りを捧げられた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2019年10月12日