・「新型ウイルスの危機克服に、世界中の争いを止めて」-教皇と国連事務総長の訴えに動き

  新型コロナウイルスの危機に世界が直面する中で、世界中の争いの停止を求める国連のグチエレス事務総長と教皇フランシスコの呼びかけに、いくつかの武装グループが早速、前向きの反応をした。

*教皇フランシスコの訴え

 教皇フランシスコはかねがね世界中で続いている紛争を「分散型の第三次世界大戦」とされているが、29日の正午の祈りの中で、先日の国連事務総長の訴えに呼応する形で、世界が新型ウイルスと必死に取り組んでいる中で、世界で続いている争いの即時停止を呼びかけた。「いかなる形の敵対行動も停止し、新型ウイルスの世界的大感染に”結束して戦う”ように」と語られ、新型ウイルスという”共通の敵”に対する一致した努力が、諸国の指導者たちと集合体の間の敵対を克服する、新たな決意を奮い立たせますように。利害対立は戦争によって解決されません」と祈られた。

*国連事務総長の訴え

 教皇の訴えの6日前、23日に国連事務総長のアントニオ・グチエレス氏は、世界中の争いに関わっている集団に対して、新型ウイルスに対するもっと大きな闘いを支援するために「武器を置くように」と強く求めた。「新型ウイルスの猛威は、戦争の愚かさを際立たせています… 武力闘争を完全封鎖し、私たちの命を賭けた真の戦いへ力を合わせることに集中しよう」と。

*訴えに、数か国で前向きの反応

 国連事務総長の訴えに応えて、カメルーン、フィリピン、イエメン、シリアのいくつかの武装グループが、武力行使を抑制する最初の措置をとり始めた。イエメンでの5年間にわたる内戦は、世界で最悪の人道危機の1つを引き起こし、シリアでは、新型ウイルス大伝染の潜在的な危機が、9年間の紛争の影響に苦しむ国内650万人の難民に極度の恐怖をもたらしている。そうした中で、このような反応は希望を与える。

*だが、”忘れられた戦争”は続いている

 だが、その一方で、アフガニスタン、マリ、リビア、ソマリア、イラク、ガザ地区など、他の多くの地域では緊張が続いている。メキシコでは麻薬密売人たちが麻薬取引の統制に反対して争い、北朝鮮は最近、周辺国の脅威となりうる弾道ミサイル二発を発射した。

 現在、世界中の約70の国が何らかの形で紛争に巻き込まれている。そのほとんどの国が、アフリカとアジアにある。そして、これらの多くは、世界の人々から”忘れられた戦争”だ。たとえば、クルドとトルコの紛争は1984年から、ソマリアの内戦は1991年から続いている。

*最も弱い人々が”壊滅的な被害”を受けないように

 停戦によって、新型ウイルスの感染拡大に最も脆弱な人々に対する人道支援を行うことが可能になる。教皇は29日の正午の祈りの説教の中で、「人道援助のルートを作り、外交努力への道を開き、深刻な打撃を受けやすい状態に陥っている人々に注意を傾ける」ように、世界の関係者たちに強く求めた。

 グチエレス事務総長は、「女性と子供、障害のある人々、取り残された人々、避難民、そして難民が、紛争の中で、最も高い代償を払わされます。そして、彼らにとって、新型コロナウイルスによる”壊滅的な被害”を被るリスクが最も高いものになっているのです」と強調。「”戦争の病い”を終りにし、私たちの世界を荒廃させる、この感染病と戦ってください… これは、全ての戦闘を停止することから始まるのです」と訴えている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2020年3月30日