・「中国は、無実の人間の臓器摘出に加担している」-民間法廷が”有罪判決”(BitterWinter)

https://jp.bitterwinter.org  「中国の政治犯からの強制的な臓器摘出に関する独立人民法廷」が今週、「中国が以前から無実の人間の臓器摘出に加担している点は反論の余地がなく、また、どのような立場にせよ中国と取引を行っている者は『犯罪国家』と取引していることを認識するべきだ」とする最終判決を発表した。

 同法廷は、中国での臓器移植濫用停止(ETAC)国際ネットワークにより、中国の 法輪功 の学習者に対する弾圧及び臓器摘出に関する情報を検証するため、英国内外の識者を集めて開設された。識者には証拠を客観的に精査し、中国が刑事犯罪に及んできたかどうかを判断する役目が与えられ、昨年12月と今年4月に合わせて5日間にわたって審理が行われた。

民衆法廷の判決を言い渡す勅選弁護士のジェフリー・ニース(Geoffrey Nice)卿。民衆法廷の判決を言い渡す勅選弁護士のジェフリー・ニース(Geoffrey Nice)卿。

 判決の発表は、ハーグ国際犯罪法廷で検察官としてユーゴスラビアのミロシェビッチ元大統領を訴追したジェフリー・ニース卿によって、犠牲者、医療及び法律の専門家、市民、通訳、記者、そして、臓器摘出・取引の証人など200人以上を前に行われた。

 会見で、ジェフリー・ニース卿は、この法廷の独立性を強調し、「中国政府が黙秘を貫き、臓器取引における役割に関する抗弁を拒否したものの、判決を下すうえで充分な、言い逃れのできない証拠が存在する、と判断した」などと説明した。

 信頼の置ける証拠

 具体的な証拠とは、中国の医師と病院が希望者への臓器提供までに要する期間が異常に短いこと、政府及び病院が公表する自発的な臓器提供数を臓器移植手術回数が大幅に上回っていること、任意臓器提供プログラム計画が実施される前に「臓器移植手術の施設と医師の大規模なインフラ整備」が行われたこと、など。強制的な臓器摘出が中国全土で数年に渡り大々的に行われてきたこと、も確認されたとしている。

 重要な証人の一人で、存命中の受刑者からの臓器摘出を求められたことがあるエンヴェル・トフティ医師は判決後、「中国及び臓器摘出の取り組み」に明確な有罪判決が下った、とし、この判決を「人権保護活動の勝利」と歓迎した。

 法廷は、中国での臓器摘出の主なターゲットは「法輪功の学習者」だが、 新疆ウイグル自治区 の ウイグル族 の男性、女性、そして、子供のDNAが2017年から集められており、これが”ドナー候補者”のデータベースとなって、「臓器摘出の証拠が今後、現れる可能性がある」とも警告した。現在、中国当局によって、推定300万人のウイグル族が通称 「教育による改心」のための強制収容所 に拘束されている点は、ウイグル族がとりわけ弱い立場にある。

 今回の判決では、「中国の臓器移植産業に関連する大規模なインフラが廃止された証拠はなく、また、『容易に入手可能な臓器の調達先』に関する満足のいく説明がないため、強制的な臓器摘出は現在も行われている」と指摘した。

法輪功に対する取り組み

 法輪功運動を排除する意図を示す明確な証拠が判決の報告書の中で提示されていた。報告書は、法輪功の学習者が「真実、思いやり、そして、忍耐」を追求する無害な活動を行っていると説明していた。中国共産党 の元指導者の江沢民(ジャン・ゼミン)による同団体に対する卑劣な粛清の詳細は衝撃的であり、法輪功の学習者に対する残虐行為の意図を証明していた。

 1998年、李嵐清(リ・ランチン)国務院副総理は、「法輪功の評判を傷つけ、財政的に崩壊させ、肉体的に破壊」することを求めた江沢民主席の指令を公表した。2001年、江沢民主席自身も「撲殺しても問題ない。殴打の末に障碍者になったら自傷行為者として数えること。死亡したら、自殺者と数えること」と述べていた。

 法廷は、法輪功に危害を与える明らかな意図から、「中国は法輪功をいかなる運命にも容易に導くことができる」と断定し、「中国は法輪功の学習者を国内の病院が利用可能なドナーとして活用することは容易で、要望に応じて強制的に臓器を摘出する可能性がある」「強制的な臓器摘出の調達先、恐らくは主要な調達先として法輪功が利用されたことを確信」していると指摘した。

 脳死の公式な立証を行わずに臓器を摘出した証拠、法輪功の受刑者から生存中に臓器を摘出したとする証言、法輪功とウイグル族の受刑者に絞った体系的な医学検査、そして、法輪功の学習者とウイグル族の人々に対する、強姦及び性的暴行を含む所定の「残忍かつ非人道的」な拷問が報告書の中で強調されていた。

 2006年と2018年に移植を必要とする患者を装い、調査目的の電話を病院にかけた結果、多くの病院が受刑者の臓器を移植に用いて

大勢の聴衆が判決を聞くために集まった。

いたことが明らかになった。法輪功の学習者を臓器調達先としていた、またはその可能性があった病院が多数にのぼり、一部の病院は調達先を明かせないことを認めていた。電話をかけた時点で、生存中の人物から臓器が提供されること、そして、急な通知であっても臓器を用意できることは明白であった。また、臓器移植を必要とする患者が中国で新しい腎臓や心臓を2週間で入手できることを示す衝撃的な証拠が民衆法廷に提出されていた。

誤解を生む中国共産党の統計データ

 中国での臓器移植の急激な増加と自発的な臓器ドナーの人数との間には説明しがたい大きな差がある。死刑執行後の受刑者から臓器を摘出する行為は、2014年には公式に中止しているものの、臓器移植は減少するどころか、増加を続けている。

 2013年3月、中国の臓器移植の能力を拡大したフアン・ジエフ氏は『広州日報紙』に対し、「2012年に肝臓移植を500回以上実施した」と自慢。北京大学臓器移植研究所の所長を務める外科医の朱継業(ズ・ジイエ)氏も、ある年に自分が勤める病院では4,000回以上の肝臓及び腎臓移植手術が実施され、政府が認めた1万2,000回の移植の33%を1つの病院で行っていたと報告していた。

 法廷は、中国政府が提供する異常なデータを点検し、政府の公式データが改ざんされていることを確信した。同法廷は、信憑性の高い年間の臓器移植手術の回数として6万回から9万回、そして、2017年の公式の適格なドナーの人数として5,146人を考慮した上で、「不可解な差」があると断定し、「組織型の臓器の別の調達先が単数、または複数存在していたはず」と結論づけている。さらに「中国政府の資料では特定されていない献体者が存在する」ことを明確に推論していた。

ジェノサイドと人類に対する犯罪

 集団殺害(ジェノサイド)の罪を示唆する、臓器摘出に関するスキャンダルの要素が数多く存在するにもかかわらず、法廷はジェノサイドに関する非難は避けていた。定義が法的不適格性を伴うためだ。一部の受刑者は実際に釈放されていることから、法廷のメンバーの間で決意を固めることに疑念が生じていた。それでも、人類に対する犯罪の宣言に関しては全会一致であった。

非難された英国とオーストラリア政府

 英国とオーストラリア政府は、幾度となく自主的に疑惑を検証し、提示された事実を精査する機会があったにも関わらず躊躇したとして、名指しで批判を受けた。

 判決は所見として、「このような疑惑は、死者数ベースで、事実として証明された20世紀を代表する政治的大量虐殺に匹敵しており、国際社会が許容すると思われる緊急且つ政治的な利益のある行動を考慮する価値があると期待される」と指摘、別の立場を取る米国とは異なり「英国とオーストラリアには期待することができないようだ」と述べた。

 今回の判決の発表を受けて、英国医師会(BMA)の医療倫理委員会の議長を務めるジョン・チスホルム(John Chisholm)医師はBMAのウェブサイトにプレスリリースを掲載。「民衆法廷が本日下した判決に大きな懸念を抱いている」とし、「強制的に臓器を摘出する行為は、生存権、そして、一部において拷問や残忍な行為、非人道的または屈辱的な待遇や罰に縛られない権利を含む、奪うことができない一連の基本的人権を著しく、そして、継続的に侵害するものだ」と付け加えた。

 さらに、チスホルム議長は「強制的な臓器摘出に関わった医師は違法及び非道徳的であり、世界医師会(World Medical Association)が定めた職業倫理に違反している。全ての医師の本来の職務は、患者の健康を促進することであり、害を与えることでは絶対にない」と続けた。

 英国医師会は中国政府に対し、「強制的な臓器摘出に関して徹底的な、独立した調査を実施し、医師がこのような行為に関与することがないように医師の主要な義務を守る」ことを求めた。英国政府に対しても、「民衆法廷の判決を考慮し、立場を見直し、そして、国際社会での影響力を用いて、完全且つ適切な調査を行う」ことを要請した。

市民の擁護を求める

 法廷は、政府、個人、活動家及び熱心な政治家に対し、調査結果を前に自分自身で犯罪が行われていたかどうかを判断し、「今回明らかになった、中国で強制的な臓器摘出が行われた、または今も行われていることを示す恐ろしい調査結果に対して、自分にとって義務だと考える行動を起こす」ことを求め、「悲劇的と言えるほど放置されていた行為により、大勢の人々が痛ましくも、落とす必要のない命を落とした。この行為の目的について、未来の中国の指導者は国の幸せと名声を高める上で不要であったと理解することになるだろう」と判決を締めくくった。

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*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えています。いかなる宗教団体や政治団体とも関係をもたず、政治問題について特定の立場を取らない。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届けている。記者たちは逮捕されるなどの危険を顧みず、中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。本誌は、中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究の領域で著名な学者。「カトリック・あい」はBitterWinterから承認を受けて記事を転載します。

 

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2019年6月23日