パレスチナ 「蜂起」遠く…エルサレム「首都」半月 生活優先 デモ参加激減(読売新聞)

 

(2017年12月24日 読売新聞朝刊)【エルサレム=金子靖志】トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認めると宣言してから約半月が過ぎた。宣言に反発したイスラム主義組織の指導者などはインティファーダ(反イスラエル蜂起)を呼びかけているものの、パレスチナ自治政府に対する不信感やイスラエル経済への依存の高まりから、パレスチナの人々の抗議運動は広がりを欠いている。

 イスラム教の金曜礼拝日だった22日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムでは、パレスチナ人とイスラエル治安部隊との大規模衝突が予想されていた。ベツレヘムは自治区の中でも衝突が激しい地域だが、抗議デモに集まったのは約50人と2週間前の1割ほど。数人が治安部隊に投石したが、催涙ガス弾を撃ち込まれ、すぐに退散した。

 デモに参加した会社員イサ・ズブーンさん(48)は「皆、闘争に疲れてきている。インティファーダが起きたときの雰囲気はない」と肩を落とした。

 インティファーダは1987年(第1次)と2000年(第2次)の2回起き、第2次蜂起ではパレスチナ側の死者が3500人以上に上った。

 トランプ氏による「首都認定」は、エルサレム旧市街にあるユダヤ、イスラム両教の聖地「神殿の丘」を含む東エルサレムを将来の首都として独立国家を目指すパレスチナにとって死活問題だ。今月6日にトランプ氏が宣言後、イスラエル治安部隊との衝突でパレスチナ側は10人が死亡、負傷者は4000人以上に上った。自治区ガザを支配するイスラム主義組織ハマスがインティファーダを呼び掛け、蜂起の可能性も高まっているとみられていた。

 しかし、テルアビブ大学安全保障問題研究所のコビ・ミハイル上席研究員は、「パレスチナは過去2回のインティファーダで大きな代償を払ったにもかかわらず、何も得るものがなかった。自治政府に対する不満は強く、自らの生活を投げ出してまで蜂起しようという人は少ないはずだ」と指摘する。同研究所の調べでは、3分の2のパレスチナ人が自治政府に対して不信感を抱いているという。

 実際、トランプ氏が宣言を行った週の金曜礼拝の日も、多くの人は礼拝後、デモに参加せず帰宅した。イスラエルの飲食店で働くパレスチナ人の男性(50)は、「インティファーダを始めたら仕事を失い、借金も返済できず、人生が崩壊する。自治政府のために戦おうと思えない」と打ち明けた。

 自治政府などによると、自治区の失業率は26%に上る。イスラエルはパレスチナに比べ賃金水準が2倍以上高いとあって、イスラエルへ働きに出るパレスチナ人は現在約14万人と、過去5年で2倍近くに増えた。

 自治区は社会基盤が十分に整わず、通貨はイスラエルのシェケルを使い、電力供給も同国に頼る。経済的な自立につながる産業は育たず、自治区外への農産物販売もイスラエルを経由する形でしか行えない。

 ミハイル氏は、「経済的にイスラエルに依存するパレスチナ人は年々増えており、インティファーダに踏み切ろうとする人は少なくなってきている」と話した。

  ◆インティファーダ =イスラエルの占領支配に抵抗する運動で、アラビア語で「蜂起」の意味。2000年9月に始まった第2次では、パレスチナ人の自爆テロなど暴力の応酬に発展。イスラエルは「テロ防止」を目的に、ヨルダン川西岸との境界に02年から分離壁建設を進めた。

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2017年12月24日