・イタリア全土の教会で規制を残しつつ公開ミサなど典礼行事再開(Crux)

(2020.5.20 Crux Senior Correspondent  Elise Ann AllenMasses in Italy are a go, but other sacraments still suffer restrictions

 Father Jose Maria Galvan, wearing a sanitary mask to prevent the spread of COVID-19 opens the door for the morning mass at St. Eugenio Church, in Rome, Monday, May 18, 2020. Italy partially lifted sanitary restrictions Monday after a two-month coronavirus lockdown. (Credit: Alessandra Tarantino/AP.)

 ローマ発ーイタリア全土のカトリック教会では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため2か月にわたって停止していた公開ミサを18日から再開したが、ミサを含めて一般信徒参加の典礼行事には規制が続いている。

 イタリア司教協議会会長のグアルティエロ・バセッティ枢機卿は16日の声明で、信徒たちが強く望んでいた公開ミサの再開は、イタリアの全教会にとって「重要なイベント」であり、「恵みの瞬間」と喜びを表現。

 「それは単に、これまでずっと開かれていた聖なる場所、私たちの教会の再開というだけではありません。私たちの生きた共同体、家族に戻るということです」と述べ、イタリア全土の信徒たちに「生きた神の大きな家族に戻ることができる恵み」を祈るように求めた。

 そして、「たとえ、私たちが、(注:公開ミサが中止されている間に)それぞれの家庭で、小さな家族の間で生きた教会を経験し、互いが密に接することで多くの価値を生かせたとしても… 今は、大きな家族に戻る時です」と強調した。

 だが、信徒たちが18日から開かれた教会でミサに参加できるようにはなったものの、教会の外の社会と同じように、教会での活動が常態に戻るのはまだ先だ。

 多くの教会では、聖堂入り口の聖水は手指消毒剤に置き換えられ、ミサ参加者はマスクを着用、場合によっては手袋をはめ、互いに少なくとも3フィートの間隔を空ける必要がある。聖体拝領は手で受け取るのに限られている。公開ミサ中止中も認められていた洗礼と結婚式も、引き続き厳しい条件つきだ。

 イタリア司教協議会の公式新聞 Avvenireによれば、具体的な対応は個々の教区あるいは小教区によって異なるが、結婚式と洗礼式では、参加者は互いに”社会的距離”を保つなどのルールを守り、マスクや手袋など適切な”保護具”をつけねばならない。洗礼を授ける場合、司教団は、全身を水につけず、額に水を注ぐことを司祭たちに勧めている。また塗油をする際は、使い捨ての手袋を使い、一回ごとに廃棄する必要がある。

 司教あるいは司祭は、必要に応じて他の条件や制限を追加できる。パドヴァ教区では、司祭が、乳幼児や子供たち数人に同時に洗礼を授けないようにしている。アンドリア教区では、週日は洗礼が優先されており、マザーラ・デル・ヴァッロ教区では、司祭が子供の耳と口に触れる儀式が止められている。

 結婚式については、5月18日の公開ミサ再開に伴って若干のルールの手直しがされた。全面封鎖措置がとられている間は、配偶者とその証人だけに式への参加が限られていたが、一般参加者も、”社会的距離”を置くという条件で認められた。アグリジェント大司教区では、式典の最後に新婚夫婦に米を投げるという伝統行事は禁止されている。そして司教団によると、多くの結婚式が新型コロナウイルス感染のために延期されている、という。

 また司祭には、結婚式の前に、式を遅らせた未来の配偶者たちの側に行くことが勧められている。それは一つには、式の延期で心変わりをしなかったかどうか、確かめるためだ。

 葬儀のミサは、家族の住まいの近くで小規模に行う場合を除き、ほとんどが禁じられていたが、14日から15人までなら親族や友人なども参加できるようになった。結婚式と同じように、出席できる人数は、教会のスペースと参加者相互の”社会的距離”によって異なる。いくつかの教区では、通常のミサが予定されていない午後に行うように求めており、また他の教区は、式を祭壇での棺の祝福で終わらせ、出棺に付き添うことはなしとしている。

 また病者の塗油は必要に応じて行われるが、司祭には、マスクと使い捨て手袋の着用が求められる。

 告解については、イタリア全土で共通のルールが適用され、告解室は使用せず、広い空間の中で行うこと、司祭と信徒が適当な距離を保てるようにすることなどが必要だ。

 堅信と初聖体はイタリアでは通常、5月か6月に式が行われているが、保留となり、秋まで延期されることになりそうだ。

 バセッティ枢機卿は声明で、しばらくの間、典礼祭儀でのマスク着用や接触機会を制限することは「熟視することの強さを再発見することへの誘い」と説明。全面封鎖中の日々のミサで、教皇はいつも、参加者に、うなずいたり、他の動作をしたりすることで、平和のあいさつをするように勧められたが、「それは、個々の教会でもできることです」とし、「互いに近寄り、手を差し伸べることで平和のあいさつを交わすを交換することはできませんが、笑顔や優しい視線の交換で、平和、喜び、愛を互いに伝えられます。離れていても、私たちは平和のあいさつをかわせるのです」と強調した。

 また枢機卿は、2か月ぶりの主日の公開ミサとなる24日、主の昇天の祝日のミサで、自分は、伝統的な神への賛歌「テ・デウム」を歌うが、この歌は「私たちの聖なる三位一体への非の打ちどころのない賛美です。全ては神の御心から来るものですから」と述べ、各教会もそれに倣うように勧めている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

 

 

 

2020年5月20日

・ポーランドの大司教が同国司教の児童性的虐待隠蔽でバチカンに調査要請(LaCroix)

(2020.5.18 LaCroix)

 ポーランド司教協議会の児童保護の責任者を務めるヴォイチェフ・ポラック大司教(グニェズノ大司教管区長)が18日までに、バチカンに対して、児童性的虐待を隠蔽した疑いのある同国の司教を調査するよう要請した。

 同国の教会で子供時代に司祭から性的に虐待され、管轄の司教によって隠蔽されたとする兄弟二人が、ドキュメンタリー映画を作成、16日にインターネットを通じて放映されたのを受けたものだ。

 聖職者による児童などへの性的虐待問題が世界に拡大、長期化する中で、教皇フランシスコは昨年、司教と修道会総長による性的虐待の隠ぺい防止のための具体的な措置を定めた自発教令「Vos estis lux mundi (あなたは世の光)」を出され、世界各国の司教団に対し、教会の信用回復のためにも、厳格な対応を求めておられる。

 今回のバチカンへの調査要請は、教令にもとずくポーランドの教会として初の対応となるが、ポラック大司教は「このドキュメンタリー映画で明らかにされた情報をもとに、バチカン大使館を通してバチカン当局に、(注:当該司教が上司への)報告義務を放棄したことに対して、教皇が自発教令で定めた措置に着手するように求めた」と説明している。

 この自発教令への対応では、米国のシンシナティ大司教区で、管理下の司祭の”疑わしい行動”を上司に報告せず、隠ぺいしたとして取り調べを受けていた補佐司教が今月7日、辞任するなど、各国の司教団に厳格な対応の動きが強まっている。

 【調査要請のもととなった、性的虐待被害者兄弟が作成したドキュメンタリー映画 Tell No On.】

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

 

2020年5月19日

・米国で司祭の性的不適切行為について大司教へ報告を怠った担当補佐司教が辞任(Crux)

(2020. 5.7 Crux  SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen

Bishop resigns facing charges of negligence on priest suspended for sexual misconduct

Cincinnati Auxiliary Bishop Joseph R. Binzer is pictured in an April 5, 2011, photo. The Cincinnati Archdiocese announced Aug. 5, 2019, the bishop will no longer oversee priest personnel matters after the mishandling of an abuse allegation against a pastor. (Credit: Colleen Kelley/Catholic Transcript via CNS.)

 ローマ発ーバチカン広報局が7日出した声明によると、教皇フランシスコは同日付けで、米シンシナティ大司教区のジョセフ・ピンツァー補佐司教の辞表を受理した。

 声明では、辞表受理の理由を秋からにしていないが、補佐司教は教会での司牧業務を外された司祭の疑わしい行動について上司に報告しなかった、として、教会関係者から訴えられていた。

 バチカンの情報筋が確認したところによると、教皇フランシスコが昨年出された「Vos estis lux mundi (あなたは世の光)」(司教と修道会総長による性的虐待の隠ぺい防止を目的として、具体的な措置を定めた自発教令)に従って、ビンツァーが取り調べ受けていた。

 7日のバチカン広報局の発表は、昨年7月に米シンシナティ大司教区の聖イグナチオ教会の主任司祭だったジェフ・ドリュー神父が、10代の少年たちに無理に抱きついたり、膝を足でたたいたり、身体や外見について猥褻な言葉をはくなど、不適切な行為をしている、との訴えを受け、司牧業務から外されて、10か月たって行われた。

 大司教区は同日、これについて、問題の司祭が10代の少年たちに不適切な行為を働いたことについては、2013年と2015年に報告を受けており、「一連の報告は、当時、大司教区の司祭人事委員会事務局長だったジョセフ・ビンツァー補佐司教が受け、当事者のドリュー神父と二度面接し、そうした行為は止めるとの確証を得ていた」と弁明。

 また、大司教区の機関紙The Catholic Telegraphに掲載された記事では、これらの件については、大司教区本部事務局に報告された懸念事項が直ちにバトラー郡の検事局と児童サービス局に通報されたが、検事局は犯罪行為とするに足る証拠を見つけることができなかった、としている。

 ビンツァーは昨年、ドリュー神父の問題についてシンシナティ教区を統括し、同教区の司祭人事委員長でもあるデニス・シュナー大司教に対する報告を怠ったとして、司祭人事委員会事務局長のポストから外されていた。また、前米司教協議会の青少年保護委員会の委員でもあったが、昨年8月に辞任している。

 伝えられるところによると、2013年と2015年に以前勤務していた小教区におけるドリューの行動について苦情が寄せられていたにもかかわらず、2018年には担当司祭の空席が生じた聖イグナチオ教会に移ることができた。だがその後、郡の検察局に一通の手紙が届けられ、捜査が行われた結果、ドリューの教会学校への関与を禁じ、定期的に監視担当者と面談するよう指示した。だが、そうした指示にもかかわらず、学校側には知らされることなく、ドリューは教会学校への関係を続けた、という。

 検察局の捜査で、ドリューが(注:刑法上の)いかなる罪も犯していないことが判明したとされている。も、大司教区の顧問法律事務所が雇った業者Strategic HR社とともに、大司教区として調査を行い、犯罪行為はなされていない、との判断を示しつつ、ドリューに昨年6月からカウンセリングを受けさせ、その後、教会の管理運営の仕事から外し、シンシナティ郊外の入院施設で治療を受けるよう命じていた。

 シュナー大司教は、ビンツァー補佐司教の辞任を発表した7日の声明で、彼が今後も、名誉司教として大司教区で奉仕を続けると言明。「今後の司牧については、ビンツァー司教との話し合いの後で、決められるだろう」とし、「この困難で不幸な時期ににおいて、ビンツァー司教と大司教区のすべての人々を守ってくれるように、お祈りください」と大司教区の司祭、信徒たちに求めた。

 一方、ビンツァー司教も声明を出し、「シンシナティ大司教区の人々の信頼と信仰に悪影響を及ぼしたドリュー神父の問題への、私の対応について、深くお詫びします」と謝罪。「昨年夏以来この問題を調査・検討し、先月、聖座から、この結果に同意するとの知らせを受けました。その後、私は祈り、熟考し、シンシナティ大司教区の補佐司教辞任を申し出ました… この判断は、大司教区の為になることと思います」と説明している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2020年5月9日

・イタリア政府と教会が「公開ミサなど典礼祭儀の5月18日再開」で合意

Faithful in a church in Torino, ItalyFaithful in a church in Torino, Italy  (ANSA)

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため公開ミサなどを中止していたイタリアで、18日から一般信徒が参加しての公開ミサ、結婚式、葬式、洗礼などの典礼祭儀が約2か月ぶりに再開されることになった。

 イタリアのカトリック司教協議会のグアルティエロ・バセッティ会長(枢機卿)がジュゼッペ・コンテ首相、ルチアナラ・モルゲーゼ内相が7日合意、議定書の署名したもの。

 一連の典礼祭儀参加者にマスク着用の厳守、聖堂内などで互いに一㍍以上の社会的距離を保つ、手や接触部分の消毒など、公衆衛生上のの測定基準に従うことを、再開の条件としている。

 8日付けのVatican Newsによれば、バセッティ会長は、現在の危機克服への教会の責任を強調し、「議定書は政府と…そして全員が責任ある行動をとる司教協議会の徹底した協力と共同作業の結果だ」と述べた。また、コンテ首相は、署名で司教協議会が明確にした、公開ミサ再開にあたっての感染防止策は「可能な限りの安全を確保する一般信徒参加の典礼祭儀再開を確実にする適切な方法」と支持を表明している。

・・・・・・・・・・・・・・

(解説)

 感染拡大の終息がいまだに確認されないイタリアでは、景気悪化や長期の規制、ミサなど典礼行事への参加を禁じられた国民や教会の保守派関係者などから、規制緩和の圧力が高まっており、感染差の増加ペースの低下を理由に、政府が段階的な緩和策に転じている。

 新型コロナウイルスの大感染国となっているイタリアは世界で米国、スペインに次ぐ21万5858人の感染者、米国、英国に次ぐ2万9958人の死者(いずれも5月8日正午現在)を出している。増加のペースが落ちてきているとはいえ、近隣の英国やロシアでは急激な増加が起きている。感染拡大が遅れて始まった中南米やアフリカでは爆発的感染の懸念が強まり、一日1万人のペースでの増加が始まっているブラジルでは現在感染者が13万人を超え、死者も1万人に達しようとしている。隣国のペルーも感染者が6万人に迫っている。

 このような状況での公開ミサの再開は、よほどの厳密な規制がされない限り、イタリア国内での”第二波”発生の原因になりかねないばかりか、ブラジル、ペルーなど、同じカトリック国の教会への”緩和圧力”になる可能性もある。

 日本でも、こうした西側先進国での規制緩和の動きを背景に、今月中旬以降の段階緩和に進む可能性が強まっているが、日本の政府も教会も、国民、信徒の安全を第一に、こうした世界の動きに流されることなく、的確な情勢分析をもとに、適切な対応をしていくことを、強く希望したい。

 

2020年5月9日

・豪王立委員会が聖職者児童性的虐待に関する報告公表ー”逆転無罪”のペル枢機卿は反論、メルボルン大司教は改めて謝罪

 

Cardinal George Pell arrives at the County Court in Melbourne, AustraliaCardinal George Pell (file photo)  (AAP Image)

(2020.5.7 Vatican News)

 オーストラリアの連邦最高裁判所が4月7日、ジョージ・ペル枢機卿(元メルボルン大司教、前バチカン財務事務局長官)を未成年性的虐待で有罪とした下級審の判決を無効とする判断を下したが、公判中は非公開とされていた同国の王立委員会による豪州議会への最終報告が明らかになった。

 報告によると、1970年代から1980年代にかけ、同国においてカトリック聖職者が犯した悪名高い性的虐待の複数の事件にペルが関与している、とし、ペルを批判しているが、ペル枢機卿は7日、声明を発表し、最終報告に盛られたこれらの内容について、「明確な証拠に基づくものではない。驚いている」と否定した。

 最終報告では、ベルが関与した事件の代表的なものとして、1960年代から30年にもわたって130件以上の児童性的虐待を繰り返したジョージ・リズデール神父を取り上げ、ペルを含めた教区の責任者たちは、同神父を犯行の場となった教会から他の教会に異動させる決定に関与した、としている(注:APによると、リスデールは1994年に34年の実刑判決を受け服役中)。

 そして、特に1977年と1982年に開かれた教区の人事委員会注目したが、ペルは声明で、「リズデールに関する人事を決定した当時、責任者たちには、彼の不法行為が知らされていなかった」と反論した。

 また最終報告では、ペルがメルボルン大司教区の補佐司教をしていた当時起きた、ピーター・サーソン事件についても取り上げている。サーソン神父は1960年代から10年以上にわたって、教区や学校で、児童を性的に虐待したとして被害者などから訴えられた。正式に起訴されることはなかったが、犯行の際に司祭を務めていた教会から転出させるなど、適正な対応をとる立場にあったにもかかわらず、そうしなかった、としている(注:APによると、サーソンは2009年に死亡)。

 これについて、ペルは、声明で「1989年にサーソンが司祭を務めていた教会の代表者たちと会ったが、性的暴行については彼らから言及がなく、サーソンを教会の担当から外すように求められることはなかった」とし、さらに、1996年にメルボルン大司教に指名された直後に、サーソンに休暇を取らせ、その二か月以内にその教会から転出させた、として、自身に手落ちがなかった、と主張している。

・・・・・・

 一方、ペルが教区長を務めていたメルボルンのピーター・コメンソリ大司教とバララットのポール・バード司教も同日、声明を出し、その中でコメンソリ大司教は「幼児性的虐待に対する王立委員会の議会報告の資料が全て公開されたのは結構なことだ」とし、バード司教もそれに同調した。

 そのうえで、大司教は、「カトリックのメルボルン大司教区が、若者たちと傷つきやすい成人たちを責任をもってケアし、保護する責任を果たさなかったこと」について、改めて、全面的に謝罪し、バード司教も「過去における教区の管理運営の失敗によって、教会を安全な場と確信していた極めて多くの子供たちに対して、ひどい性的虐待を許してしまった」「被害者とその家族の方々に悲惨な結果を生んだ」と深い反省と謝罪を表明した。

 

2020年5月8日

・宗教の自由、スーダンは改善、インド急激に悪化-宗教の自由・国際委員会報告

 

Sudanese Christians during one of the protests that led to the fall of general mar al-BashirSudanese Christians during one of the protests that led to the fall of general mar al-Bashir  (AFP or licensors)

 報告は、インドを「Countries of Particular Concern(特別に懸念すべき国)」に格下げしたが、その理由として、現在のインド人民党(BJP)政権の下で、「宗教的自由の最も急で最も憂慮すべき悪化」が引き起こされている、ことを挙げ、昨年のイスラム教徒に対する政策と扱いに言及している。

 一方で、キリスト教徒を迫害し、教会を破壊したとして、これまで懸念国としてきたスーダンについては、迫害を推進してきた独裁者Omar al-Basharが設置していた、いわゆる「教会評議会」が、移行政権によって解散させられたことなどから、評価を引き上げた。宗教団体に自由を与えることを約束したウズベキスタンについても、その履行を評価している。

 

*特別懸念国(CPC)

 報告では、宗教の自由を損なう行為を組織的、継続的に極めて悪質になされることを容認している国を「特別に懸念すべき国」と定義し、米国務省に通報しているが、具体的には、インドの他、ミャンマー、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタン、ナイジェリア、ロシア、シリア、ベトナムの計14か国。

 2020年次報告書には、6つの非国家主体が体系的かつ継続的な宗教の自由の侵害を行なっている、として「特別の懸念事項」に指定している。具体的には、ソマリアのアル・シャバーブ、ナイジェリアのボコ・ハラム、イエメンのフーシス、アフガニスタンのイスラム国家とタリバン、シリアのハイアット・タハリル・アルシャムだ。

 

*特別監視リスト(SWL)

 米国務省は、宗教の自由への深刻な違反について「特別監視リスト」(SWL)に載せている。報告の新しい章では、CPCやSWLに指定されていない国における目立った動きが指摘されており、例として、ブルネイとシンガポールでの新しい「神への冒とく法」の導入、欧州での反ユダヤ主義の興隆、礼拝所や聖所への攻撃の急増などが挙げられている。

 

*米政府への評価と意見

 最後に、報告は、米政府が世界における宗教の自由の実現に向けて努力し、礼拝の場所と宗教的行事のための場を保護するために、多大な資金を投入していることを高く評価する一方、特別懸念国に実施ている制裁措置などを中止し、代わりに、そうした国々に対して、宗教の自由の侵害について説明責任を果たさせるような行動を起こすことを、米政府に求めている。

 

(USCIRF=世界の宗教の自由に対する脅威を監視、分析、報告するために米国議会によって設立された、超党派の独立機関。国際レベルでの宗教や信仰の自由を促進する米政府の取り組みを強化するための勧告を行っている)

(翻訳「カトリック・あい」)

.

 

 

 

2020年5月1日

・イタリアの司教団が公開ミサ再開をめぐってイタリア政府に”脅し”

(2020.4.27 Crux SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen)

Italian bishops threaten break with government over Mass

Cardinal Gualtiero Bassetti, the President of the Episcopal Conference of Italy. (Credit: Associated Press.)

 ローマ発ー新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため外出制限などの措置が続くイタリアで、コンテ首相が26日、来月4日から工場の操業など段階的に制限を緩和する方針を発表したが、イタリアのカトリック司教団は、制限緩和の対象に公開ミサなどが含まれていないことに反発。政府の今後の対応次第では自己判断で対処する-と”脅し”をかけている。

 コンテ首相が発表した5月4日以降の制限緩和は、まず、製品を海外に輸出するメーカーや農業者の生産を再開、市民の移動の制限緩和と、公園や海岸、山などでの活動を解禁し、最後に6月1日からレストラン、バー、美容院などの営業を再開することで、制限をなくす、というもの。

 政府は司教団ともこの問題について話し合いを重ねており、教会内部では、公開ミサなど教会での一般信徒を対象とした典礼行事の禁止解除も対象になるとの期待が高まっていたが、26日の会見で、首相は「教会側は公開ミサの再開を認めるよう求めていたが、現在の時点での無条件再開はあまりにも危険、というのが専門家たちの判断だった」と説明。

 そして、教会での典礼で認められるのは葬儀のみ、マスクを着用し、適切な距離を保って、近親者が15人以下であることを条件に認める、としたが、公開ミサや教会での結婚式、洗礼式などの秘跡の再開を認める時期については明らかにしなかった。

 これに対して、イタリアのカトリック司教協議会(CEI)は声明を出し、「教会はこれまで、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための政府による活動制限を尊重してきた。司教団は制限の緩和の可能性について、首相や内務省と継続的な話し合いをもち、典礼行事の再開についていくつかの提案をし、政府が国民の活動制限を緩和する際には、教会の司牧的な活動も再開できるようにすることを求めてきた」とするとともに、今回の首相の決定は、「教会がミサを人々と祝う可能性を恣意的に排除している」と批判。

 CEIは声明で、首相と政府の技術科学委員会に対し、「あなた方の主要な任務は”衛生面での適正な指示を出すこと」としたうえで、「教会には、示された措置に適合しつつ、完全な自主性をもって、キリスト教共同体の活動をまとめていくことが求められている… イタリアの司教団は信仰の自由を行使するうえで妥協を受け入れることはできない…すべての人に明確にすべきは、現在の緊急事態において特に重要な、貧しい人々への奉仕への献身は、信仰から来るものであり、信仰は日常的に秘跡を受けることで育てられるものだ、ということだ」と政府の方針に反対する立場を明確にした。

 CEIが声明を出したのを受けて、イタリア政府の閣僚会議が声明を出し、司教団の姿勢を確認したうえで、今後しかるべき時点で「最大限の安全確保が可能になり次第、信徒たちが典礼行事に参加を再開できるような手順を検討することになろう」との展望示した。

 CEIの広報担当、イバン・マフェイス神父は、Cruxに対して、首相の発表した規制緩和計画に公開ミサの再開の具体的な期日が明記されていないことに触れ、公開ミサ再開の具体的日時を提示するのは「時期尚早だ」と述べ、今後、政府が公開ミサ再開の時期を遅延し続けた場合、司教団がどのような対応を取るのか、との質問には、「私たちは、誠実で建設的な協力の精神をもって話し合いが続けられる、と信じている」とだけ答えた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

*世界感染死者数が20万人超に(4月26日)

 

 米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計で、日本時間26日早朝、新型コロナウイルスによる世界の死者が20万人を突破した。国別の死者数は米国が約5万3000人で最も多く、イタリアは2万6000人、スペイン、フランスが各2万2000人、英国が2万人超。欧米5カ国だけで死亡者は14万人以上に達し、世界全体の7割を占める。世界の感染者数は288万人で、米国が約92万6000人で最多。

 このような状態ではとても終息のめどがたったといえないのは自明だ。しかも、新型コロナウイルスに決定的な効果を上げることが臨床試験で実証されるようなワクチンもまだ登場せず、他の感染症のように一度感染したら感染しない、という確証も得られていない。

 そうした中で、欧米では、主として経済的な理由から、新規感染者の数がこれまでより減っていることなどを理由に、イタリアを始め、感染拡大防止の強力な規制措置を緩和しようとする動きが目立っているが、イタリアの司教団が、感染源となる可能性の高い、多くの信徒が集まっての公開ミサの再開を強硬に主張することに、首をかしげざるを得ない。(カトリック・あい)

2020年4月28日

・新型コロナウイルス感染で米ミズーリ州が中国政府・共産党などに損害賠償求める訴え(BW)

(2020.4.22 BitteerWinter 

 米ミズーリ州政府は21日、中国政府、中国共産党、中国国家保健委員会などに対して損害賠償を求める訴えを、ミズーリ東部地区連邦地方裁判所に起こした。被告として、他に、湖北省人民政府、武漢市人民政府、武漢ウイルス学研究所、中国科学院も加えている。

 同州政府が出した訴状によると、「新型コロナウイルスの発生、感染拡大に関する中国当局による欺瞞、隠蔽などの不正行為が米国を含む世界的な大流行を引き起こした。感染が始まった最初の重要な期間に、中国当局は一般大衆を欺き、重要な情報を隠蔽し、内部告発者を逮捕し、人から人への感染の事実を否定し、重要な医学研究を妨げ、防ぐことのできた世界的大感染をもたらした」と批判。

 被告は「ミズーリ州民を含む、世界の人々に与えた数多くの死、苦しみ、および経済的損失の責任を負うべきであり、説明責任を果たすべき」であり、その被害額は金額で表せない者を除いても、ミズーリ州だけで数百億ドルにもぼる、として、責任に見合う損害賠償の支払いを命じるよう、裁判所に求めている。

 中国政府と地方政府は、原則として主権国家の免責条項の対象とみなされるが、米国の法令では、例外もある。それは外国主権免責法の商業活動に関する例外規定で、その対象を、米連邦法28条§1605a2に「他の地域での外国の商業活動に関連して米国の領土外の行為があり、その行為が米国に直接的な影響を与えるもの、と規定している。

 ミズーリ州政府は訴状で、中国における保健衛生制度の運用は、中国国民がその対価を支払うことから、「商業活動」であり、フェイク・ニュースをソーシャルメディアを使って流し、マスクや他の感染拡大を防ぐ器具の国際市場を操作するためにエージェントを雇用したことも、「商業活動」であり、免責条項の例外扱いとすべき、と主張している。

 法律の専門家によると、裁判所が主権国家である中国に管轄権を主張するのは困難だが、中国共産党や武漢ウイルス研究所などは主権国家の範疇外との見方が可能だ。ミズーリ州政府はまた訴状で、武漢ウイルス学研究所と同研究所を運営する中国科学院へも損害賠償を求めており、「武漢研究所は2019年11月以降、コロナウイルスに関する研究を行なっており、米国務省は武漢研究所の安全性についてかねてから懸念を表明していた… 米国は現在、武漢研究所を発生源として世界的な大感染をもたらし、経済的に甚大な被害を与えている新型コロナウイルスの感染経路などについて本格的な調査を行っている」としている。

 武漢ウイルス学研究所と中国科学院はこうした見方を否定し、逆に同研究所を発生源とする証拠を示すように米国に要求している。

 一方、ミズーリ州選出のジョシュ・ホーリー共和党上院議員は、中国を主権免除の対象から外し、米国の法人、個人の私的権利を定める連邦法案を議会に提出した。また、 ホーリー上院議員は、今月初め、共和党のトム・コットン上院議員(アーカンソー州)と、ジョン・カーティス(ユタ州)、マイク・ギャラガー(ウィスコンシン州)、テッド・ヨーホー(フロリダ州)、ジム・バンクス(インディアナ州)、リズ・チェイニー(ワイオミング州)の5人の共和党下院議員とともに、公衆衛生に関する地球的責任法( Li Wenliang Global Public Health Accountability Act)案を議会に提出した。

 これは、”武漢コロナウイルス”を含む国際的な公衆衛生の危機に関して情報を抑圧、あるいは歪曲した外国の当局者を制裁する権限を大統領に付与するもの。具体的には、新型ウイルスの米国の被害者が、中国政府を米国内の裁判所に訴え、裁判所が米国内の中国資産を差し押さえることを、大統領命令できるようにする、ということだ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

2020年4月24日

・カリタスが新型ウイルス対策基金設置、苦しむ現地教会を支援-寄付の受け付け開始

(2020.4.16 Vatican News Devin Watkins)

 教皇フランシスコは新型コロナウイルス感染に対処する委員会を設置、感染で苦しむ世界中人々への教会の配慮を表明しているが、世界160か国にネットワークを持つカトリックの国際援助機関、カリタス・インターナショナルが16日、新型ウイルス対応基金「Covid-19 Response Fund」を設立、本格的な支援を開始する、と表明した。

 カリタス・インターナショナルのアロイシウス・ジョン事務局長は同日、VaticanRadioとインタビューに応じ、基金設立の趣旨を「教皇フランシスコは、新型ウイルスの世界的大感染について、非常に懸念しておられ、普遍教会の愛と慈しみの証しとして、感染に苦しむ世界の教会と人々を助けようとしておられます。基金はそれを受けたものです」とし、当面の具体的な用途について「新型ウイルスの感染防止と管理、清潔な水と衛生設備へのアクセス、個人用保護具(マスク、手袋など)の確保など医療サービス提供などの分野で、現地教会が支援活動を進めるための支援」と説明した。

 教皇が設置した委員会は、5つの作業部会で構成され、カリタス・インターナショナルは、世界の教会からの状況の聴き取りと支援を行う作業部会に所属。カリタスは、健康と現地の零細開発支援の分野で多くの経験を持ち、実際の奉仕活動を、世界中のネットワークで、現地教区レベルまで進めていいる。すでに世界の140の司教協議会から得ている調査回答をもとに、上記の当面最重要の支援はもとより、より根本的で効果的な対応を検討中だ。

 支援地域、対象などについて、事務局長は「食糧安全保障はカリタスが最も重視している分野。途上国の貧しい人々には、もともと十分な食料が無く、外に探しに出て、自分自身や他の人たちを感染の危険にさらさねばならない。地域としては、戦争や国内紛争で多くの人々を貧困と脆弱な状態に陥っているアフリカと中東について、最も支援が必要と考えている」と述べた。例えば、パレスチナのカリタス・エルサレムは資金不足で緊急に必要な500家族への食品と衛生キットの提供を中止せざるを得ない事態も起きている、といい、こうした地域の教会、地域カリタスに基金の資金支援を重点的に行う予定だ。

【新型ウイルス対応基金「Covid-19 Response Fund」への寄付】

 カリタスの新基金への寄付を、世界のカトリック教会の信徒、善意の人々から募っている。寄付はカリタス・インターナショナルCaritas International のウエブサイトhttps://www.caritas.org/を開き、「DONATE」をクリックする。バチカン銀行(宗教事業所)にも、基金の特別口座が開設されており、IBAN(International Bank Account Number)コード:VA29001000000020179007に海外送金することもできる。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

2020年4月17日

・豪の連邦最高裁判所がペル枢機卿に逆転無罪判決、釈放へ(Crux)

(2020.4.7 Crux Christopher White)

 ニューヨーク発ーオーストラリアの連邦最高裁判所が7日、未成年性的虐待で訴えられ、下級審で有罪判決を受けていたジョージ・ペル枢機卿(元メルボルン大司教、前バチカン財務事務局長官)に対し、有罪判決を無効とする判断を下した。

 ペル枢機卿は一昨年12月に同国の陪審裁判で有罪と判断され、昨年3月に6年の刑を宣告された後、不服として控訴したビクトリア州最高裁判所からも昨年8月に棄却を言い渡され、さらに連邦最高裁判所に上告していた。

 有罪判決を無効とする決定は、スーザン・キーフェル裁判長が、公判を担当した7人の裁判官を代表して、7日朝発表し、「当裁判所は、証拠全体について合理的に対応するはずの陪審員団は、被告が有罪とされたそれぞれの容疑に関する被告の有責性について、疑問を抱くべきであったと判断し、有罪判決は無効」と述べた。

 新型コロナウイルスの世界的感染による影響を受け、判決の言い渡しは、ブリスベンのほとんどだれもいない法廷で行われ、被告のペル枢機卿も、彼の支援者や聖職者による性的虐待被害者たちの姿もなかった。メルボルン近郊のバーウォンの刑務所に収監されているペル枢機卿は、8日には釈放されるとみられる。

 英語圏のカトリック教会で最も強力な教会指導者の1人とされていたペル枢機卿は、最初に有罪判決を受けた後、これまで400日以上を刑務所で過ごしてきた。

 枢機卿は2017年6月、メルボルン教区の大司教だった1996年12月にさかのぼる「歴史的な性的暴行」の罪でオーストラリア警察から起訴された。そして、13歳の聖歌隊をオーラル・セックスで強姦し、聖パトリック大聖堂の聖域内の別の聖歌隊の前で自分の性器をさらした容疑でメルボルン地方裁判所で一昨年12月に陪審員の評決で有罪とされ、さらに控訴審でも有罪とされた。

*「有罪と判断するに足る証拠なしに、無実の人を有罪にした可能性」と最高裁

 だが、公判で、検察側は、現在30代になっている聖歌隊の被害者1人の証言に大きく頼っていた。証人となるべきもう一人の元聖歌隊員は2014年にヘロインの過剰摂取で死亡していた。被告の枢機卿はどの公判でも証言台には立たず、その意向を受けた弁護団は一貫して無罪を主張し続けてきた。

 逆転無罪を言い渡した高等裁判所での公判で主な争点になったのは、日曜のミサ後に枢機卿が大聖堂の聖具室で聖歌隊員二人といた(検察側が主張する)5,6分の間に性的虐待をする余裕があったか否かだった。これについて、弁護団は、枢機卿にはミサ後に信徒たちと挨拶を交わす習慣があり、そのことに時間を割かれるので、虐待する時間があったとは考えられない、そもそも、枢機卿は行動する場合、少なくとも一人の助祭を帯同する、と反論していた。

 豪連邦最高裁判所は7日、逆転無罪判決について、「有罪と判断するに足る証拠がなかったにもかかわらず、無実の人を有罪とした、重大な可能性がある」と説明した。

*逆転無罪のペル枢機卿は「正義は真実にあり」と

 ペル枢機卿の裁判は、過去3年にわたって、オーストラリアと世界のカトリック関係者の大きな関心を集めてきた。彼の支持者たちは「彼は、聖職者による未成年虐待問題のスケープゴートされた」「彼の保守的な道徳観と、重大な性的問題行為の罪を犯した指導者たちを支援してきた組織の代表として彼を批判してきた批評家たちのために罰せられたのだ」と訴えていた。

 枢機卿は2017年からオーストラリアに戻っており、教皇から2014年に任命されていたバチカンの経済事務局のポストを休職扱いとされた。最終的な処遇は、バチカンはオーストラリアの司法制度を尊重しつつ、彼の処遇は、裁判所の最終的な判断を待って、本人に判断させる、との立場を取っていた。

 過去30年、英語圏のカトリック世界で最も著名な、そして時に評価が大きく分かれた人物の1人であるペル枢機卿は、枢機卿団のメンバーであり続けているが、刑務所からの出た後、正式な資格でローマに戻ることは期待されていない。

 枢機卿は、連邦最高裁の判決を受けて簡単な声明を出し、「自分を告発した者に対して悪意は抱いていない。正義の唯一の根拠は真実にあります」とし、「私の裁判はカトリック教会の”国民投票”ではなかったし、オーストラリアの教会の責任者たちが教会での小児性愛の犯罪にどう対処したかに関する”国民投票”でもなかった」と述べたうえで、 「私がこれらのひどい犯罪を犯したかどうかがポイントでしたが、私はそのようなことをしなかった」と強調した。

 

*オーストラリア司教協議会会長は「裁判が終わっても、性的虐待への教会の姿勢は変わらない」

 オーストラリア司教協議会のマーク・コールリッジ会長(大司教)は7日発表した声明で「本日の結果は、これまでずっと枢機卿の無実を信じてきた人を含む、多くの人に歓迎されるでしょう」と述べる一方、「最高裁の判決は、その他の人々にとって手痛いものになるでしょう」と枢機卿の行為を批判してきた性的虐待被害者たちの思いへの配慮を示した。そして、「多くの人は、この裁判の過程で大きな苦しみを味わいました。それが今、終わろうとしています… 今日の結果は、児童の安全にについての、そして児童性的虐待の被害者、犠牲者への正義と思いやりある対応についての、教会の確固とした姿勢を変えるものではありません」と言明した。

 

*ペル枢機卿の後任者、シドニー大司教は「枢機卿の無罪確信は誤りではなかった、司法制度反省を」

 また、ペル枢機卿が13年にわたって教区長を務めたシドニー教区の後任、アンソニー・フィッシャー大司教は同日の声明で、無罪判決を歓迎し、「枢機卿は常に無実を主張してきました。今日の判決は、彼の確信が誤りでなかったことを確認するものです」と述べた。そして、カトリック教会の聖職者の性的虐待への対応における過去の過ちを認め、そうした過ちが教会に対する人々の怒りを助長させたことも認めたが、最高裁の判事たちが事実の「綿密な」審査を行ったことを賞賛し、今回の判決によって、枢機卿に対する追求は終結した、との判断を示した。。

 さらに、「この裁判は、ペル枢機卿に関する裁判であっただけでなく、私たちの国の法制度と文化に関する裁判でもありました」とし、 「本日の枢機卿の汚名を晴らす決定は、私たちの国の司法制度への幅広く反省し、無罪の推定(注:有罪判決が確定するまでは、何人も犯罪者として取り扱われない権利を有すること)を守り、そして注目を浴びる告発者を慎重に扱うよう、人々に求めています」と主張した。

 

*メルボルン大司教は「原告、枢機卿、全ての性的虐待被害者のために祈り、被害者への特別のケアを」

 ペル枢機卿はメルボルン教区長も2001年まで5年間務めたが、現在の教区長のピーター・コメンソリ大司教は、教区の信徒、司祭、修道者にあてた手紙で、枢機卿の裁判期間中、非常に多くの人々が、激しい苦痛に満ちた時を過ごした、としたうえで、「訴訟に個人的に関与した人々だけでなく、性的虐待の傷口が再び開かれ、むき出しにされた人々もです」と強調した。

 そして、裁判で「J」とされた虐待被害者の尊厳と彼が法に訴える権利を、枢機卿と彼がオーストラリアの司法制度のあらゆる定めを活用する権利-それによって無罪となったーとともに尊重すると言明。「この裁判で唯一、審理されたのは、ペル枢機卿が特定された卑劣な犯罪を犯したかどうかであり、彼は今、無罪となりました。これは、教会当局が性的虐待をどのように扱うか、という幅広い問題に関するものではありません」と述べたうえで、「にもかかわらず、カトリック司祭による性的虐待についての象徴的なストーリーを、この裁判で人々が目にしたことについても十分に理解しています… この裁判は、信仰を持っている人々に、強い精神的な疲労をもたらしました」ことを認めた。

 大司教はまた、未成年者の保護と聖職者の性的虐待の被害者の話を聞くことへの取り組みを再確認し、「J」と呼ばれた原告、ペル枢機卿、彼らの家族、すべての性的虐待被害者のためにともに祈り、全ての人への神の愛を中心に置いた教会の建設に取り組み、最も弱く、最も脆弱な、最も傷ついた人々に特別のケアと配慮をするように、教区の人々に求めた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2020年4月7日