・「カトリック教会は「金属疲労の旅客機」‐前アイルランド大統領が猛省促す(Tablet)

Mary McAleese pictured in London  Photo:Ruth Gledhill/The Tablet

( 2018 .7.11 Tablet| by Joanna Moorhead

  カトリック教会は「金属疲労を起こし離陸を許可されない旅客機」のようなもの。乗客を安全に運ぼうとするなら、しっかりとした修理が必要-カトリック国アイルランドの前大統領で、現在の教会の最も厳しい批判者として知られるメアリー・マカリース女史が11日、訪問先のロンドンでTabletのインタビューに応じた。

 女史はその中で、「教会は長時間飛行を続け、人々を安全に送り届け、よい仕事をしています。しかし今、点検されず、対処されもしない数多くの細かなひび割れが生じ、その拡大を勇気を奮って抑えようとせず、空から落ちるにまかせている」と警告。「カトリック教会は、まず、どの部品を交換する必要があ るのか見極めることに、全力を尽くす必要が あります」と訴えた。

 さらに、教会が抱える最も深刻な問題は、統治の形態が当の昔に時代遅れになっている現在、いまだに”帝国”として運営されていることであり、その問題の核心は、「少数の男性のみのお仲間」が「教理の御用達業者」であり、「立法者、裁判官、そして裁判員」として振る舞っていることにある、と指摘した。

 主要な問題は、”上にいる男性たち”が”下にいる人々”に、見下すような態度で語るような仕組みにあるが、そのような伝達のやり方は、カトリック教会の指導者たちにとって深刻な問題になっている。なぜなら、最近アイルランドで行われた人工妊娠中絶を禁じる憲法条項の撤廃の是非を問う国民投票のように、下にいる人々が声を上げはじめ、枢機卿や司教たちがそれを抑えられないからだ。

 マカリース女史はアイルランドの大統領を1997年から2011年にかけて務め、その後、ローマで教会法について学んできたが、1960年代の第二バチカン会議で始まったとされる教会改革の取り組みについて、「公会議に集まった司教たちは、いくつかのとてもいいアイデアをもち、新しい考えを生みましたが、公会議の強い熱意を持って改革を推進する仕組みを残さず、関係した2000人の司教たちすべてが後戻りし、古いやり方に引きずられる状態が続いたのです」と述べた。

 教皇フランシスコ自身については、「人をまごつかせています… ある日、あることを言いながら、別の日には、それと反対のことをおっしゃいます」と評しながら、評価するのは、「教会内部での議論を奨励していること、見解の相違が起きるのを恐れないこと」。「彼は議論好きの教皇で、反論されるのが好き」で、それは、前任のベネディクト16世、ヨハネ・パウロ2世のいずれとも全く違っている、と言う。

 だが、女性の教会における地位向上について、教皇フランシスコの実績は不十分だ、と見る-一握りの女性たちをバチカンの責任ある地位につけて見せたが、発言権を高めてはいない。女性の司祭叙階問題を地位向上の一環として扱うことはしていない。「女性叙階を否定する教会法上の根拠は”希薄”であるにもかかわらず、です」と彼女は語る。主たる問題は、「女性が”公民権”を奪われている時、教会はどのようにして女性の権利を代表させようと考えるのか」であり、「全世界の教会の6億人にのぼる女性信徒が、これまでのやり方では不可能な、教理、教理の解釈、規範、教会の教えに意味のある貢献をどうしたらできるのか、考えがあるなら教えてもらいたい」と訴えた。

 女性助祭について検討したバチカンの委員会の報告が、まだ発表されていないが、彼女によると、報告はまとまったが、さらなる作業が必要だとして、委員会に差し戻されているのだ、という。「でも、人々にはどういうことが話し合われているのか、知る権利がある… なぜ説明してもらえないのか、なぜ最新の状況を教えてもらえないのか、なぜ公表が保留されているのか?」。

 カトリック教会について、彼女が悲しく思うのは、「取り組みの最初の段階では変革のチャンピオンのように見えることがよくあるが、時間が経つにつれて、静かになり、逆戻りになること」。「教会は子供たちの人権保護のチャンピオンとされていましたが、過去25年ほどの間に起きたことは、子どもの権利と国連人権宣言を守る約束を反故にする、まさに失態だった」と嘆いた。

 しかし、このようなことすべて、そして、アイルランドのカトリック教会の最近の歴史の第一線で起きたかずかずのスキャンダルにもかかわらず、「私は、世界的に大きな影響をもつ教会の一員としての立場を続けます」と言明、「教会が将来、真の変革-若い女性たちと同性愛者たちのような人々の暮らしを改善するような変革-を実行すべく自らを奮い立たせる存在となること」に期待をかける。

 「カトリック教会は、ものすごい力、この世界で”良い意味でのツナミ”のような湧き上がる力になることができる。そうすれば、五つの大陸にわたって、神の愛を新たに感じられるような素晴らしい影響力を及ぼすことになるでしょう」。そのために、まず必要なのは、自己反省と自己批判-長い間、優先してこなかった特質を新たにすることなのだ。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

2018年7月17日

・チリ性的虐待事件のカギ握るサンチャゴ大司教区事務総長逮捕(CRUX)

(2018.7.13 Crux Vatican Correspondent Inés San Martín)

 チリのカトリック教会が聖職者による性的虐待による危機に置かれ続ける中で、同国の司法当局が、首都サンチャゴの前・大司教区事務総長、オスカル・ムニョス・トレド神父を幼児虐待容疑で逮捕、大司教区事務所の二度目の家宅捜査を実施し、対応に行き詰まりを見せる教会当局に代わって、真相解明に乗り出した。性的虐待で揺れるチリの教会は一層困難な事態に追い込まれている。

 この一月、警察はサンチャゴの教会裁判所とランカグア司教区事務所からの性的虐待に関係する書類を押収し、さらに、5月からムニョス容疑者に関する捜査を続けていた。事務総長としての彼の職務の中に、聖職者による性的虐待の被害者の証言を集めて管理することがあったが、今回の逮捕容疑には、彼自身が自分の甥5人を含む少なくとも7人に対して性的虐待をしたことが含まれている。性的虐待は2000年以降に行われたとされており、同国刑法上の時効にはまだなっていないため、13日からの裁判で有罪となれば、刑務所入りとなる。

 ムニョスの逮捕はエミリアノ・アリアス検察官の指示で行われたが、検察官は、幼児性的虐待と買春を含む不適切な性的行為のネットワークに参加していた容疑でランカグア教区の14人の司祭についても捜査している。ムニョス容疑者は1月に、自身の犯した性的虐待一件を教会に報告しているが、検察側はさらに多くの被害者がいる可能性を否定していない。またサンチャゴ大司教区内に彼の共犯者がいた可能性についても調べを進めている、という。

 ムニョス容疑者が訴えを聴取した被害者の中には、2011年にバチカンの裁判所から「一生の痛悔と祈り」の刑を言い渡されたチリで最悪の幼児性愛者であるフェルナンド・カラディマ神父の犠牲になった男性たちも含まれている。被害者の1人、ホアン・カルロス・クルス氏はツイッターで、「性的虐待をされたとの訴えの聴取担当の神父が、自分自身でも性的虐待を繰り返していたことに、強い失望と怒りを覚えます」と訴えた。

 こうしたチリの教会における深刻な不祥事に関して、教皇は1月のチリ訪問まで、司教団を擁護する側に立っていたが、現地訪問で被害者の声を聴いたのを契機に、厳正に裁く姿勢に大きく変化、チリ司教団全員をバチカンに呼んで、性的虐待とその隠蔽について、事情を聴取。責任を取って辞表を出した現役司教全員30人以上のうち、教皇は先月、若い神学生複数に性的虐待をした1人を含む5人の辞任を認める形で事実上、更迭している。

 ムニョスは、サンチャゴの名誉大司教で教皇の枢機卿顧問団のメンバーでもあるフランシスコ・ハビエル・エラズリス枢機卿によってサンチャゴ教区の副事務総長に任命され、2011年に後任大司教のリカルド・エザッチ枢機卿の下で事務総長に昇進した。この二人の枢機卿も、カラディマ神父の犯罪を隠ぺいしたとして、被害者たちから訴えられている。

【ニュース解説】前事務総長の逮捕がチリの聖職者性的虐待の全体像解明に光を当てる

(2018.7.15 Crux Editor John L. Allen Jr.)

 聖職者による幼児性的虐待によるカトリック教会の一国を巻き込む大きな危機は、2002年に表面化した米国から、2009年からのアイルランドと続き、さらに南米チリで広がり続けているが、首都サンチャゴの前・大司教区事務総長の逮捕で新たな局面を迎えた。前事務総長の逮捕容疑は2002年から今年にかけての聖職者による7件の性的虐待、強姦を知っていながら、警察当局に通報しなかった、というもので、被害者は、自分の5人の甥を含む11歳から17歳の少年とされている。

 前事務総長の逮捕は、警察当局による大司教区事務局の強制捜査とともに行われたが、強制捜査は、教会幹部たちが被害者からの性的虐待などの訴えを知っていながら、警察当局への通報しなかったことを立証するためのものだった。極めて皮肉なことに、逮捕された前事務総長のオスカル・ムニョス・トレド神父が被害者から性的虐待の証言を聴取する責任者の立場にあったこと、そればかりか、本人自身が容疑の内の一件の性的虐待を行っていた。

 被害者の1人で現在哲学者となっているホセ・アンドレス・ムリリョ氏は、14日、地元紙のインタビューに応じ、「これは極めて深刻な問題なので、(警察当局の動きとは別に)法的な措置を取ろうと検討しています」と語っている。そして、教皇が5月にチリの司教団をバチカンに召喚した際、彼らを厳しく批判し、彼らのうち何人かは重大な判断の誤り、証拠隠滅のような犯罪をおかしている、と述べたことに言及。ムニョス容疑者の案件は「司教団に対して極めて厳しい態度を込めた教皇の言葉はいまも生きていることを示しています。政府はこの問題に、もっと早く関与すべきでした。教会は自分から動こうとしなかった。”隠ぺいの文化”は、少なくとも性的虐待のような重大犯罪について、いまも”健在”なのです」と指摘した。

 チリの”ドラマ”の上演が続けられるに従って、四つの大局的な結論が見えてきた。

 一つは、チリが例外で、世界の他の地域で同じような醜聞が噴出することはない、と信じる理由は少しもない、ということだ。世界の事情に詳しい専門家は、ポーランド、フィリピン、そしてイタリアのような主要カトリック国で、”ダム”が決壊寸前ではない、としたら驚きだ。つまり、危機が間もなく起ころうとしている可能性がある、ということだ。

 現在のところまだスキャンダルに巻き込まれていない所にいる前向きな考えを持つ教会幹部は、司法当局や警察の捜査を待つくらいなら、犯罪にあたりそうな記録を自分で見つけ出すことに懸命になるかもしれない。

 二つめに、カトリック官僚の多くが最近の何年か売り込んできた話は、性的虐待のスキャンダルは酷いことだが、その多くは過去のこと、というものだ。何十年も前の多少の性的虐待と隠ぺいは、現在の教会が採用している強力な新たな取り決めのもとでは起こりえない、と彼らは主張する。だが、ムニョス容疑者の件が明らかにしているように、それを実行しようとする意志があって初めて効力を発揮するのだ。過去の話、と言い逃れができないのは、教会幹部が警察に通報しなかったことと合わせて、彼の虐待容疑は現在にまで及んでいるからだ。

 米国や多くの欧州諸国も含めて、世界の多くの地域で、カトリック教会は峠を越しているのは間違いない-これらの地域では、児童保護の専門家が教会を先導者であり同盟者とみるようになってきている。だが、その一方で、他の多くの地域は、峠を越すには程遠い状態にあり、教会がしばしば、峠があることすら認識していないように見える。

 三つめに、教皇フランシスコが、チリ問題への自身の対応がどのように認識されているかという点で、第三段階に入っているようだ。教皇のこの問題への対応の第一段階は、2015年から今年1月まで。この期間、教皇はホアン・バロス司教を強く擁護し続けた-チリで最も悪名高い幼児性愛者の司祭による犯罪を隠ぺいしたとして訴えられていたこの司教を、オルソノ教区長への任命していた。教皇は、この危機を乗り越えられるとの希望を抱いているように見えた。

 今年1月にチリを訪問した後、教皇は急旋回を演じた-性的虐待の調査団を現地に派遣し、被害者と面談させ、それをもとにチリの司教団をバチカンに呼んで、厳しく叱責した。そして、これまでに5人の司教の辞表を受理し、他の司教についても更迭の意向を示して、被害者と改革派の全面的な支持を得た。

 だが、注目点は今、バロス(の更迭)のような容易に得られるものから、大物-具体的に言えば、1998年から2010年まで首都サンチャゴの大司教として権勢をふるったフランシスコ・シャビエル・エラズリス枢機卿とリカルド・エザッチ現サンチャゴ大司教の処遇を、教皇がどう判断するか、に移っている。2人は、少なくとも、ムリリョ氏が指摘するような”隠ぺいの文化”を容認してきたことで、最悪の場合は、それを助長するような行為をしたことの罪を、問われようとしている。

 教皇は、これまでのところ、この2人についてまだ措置をとっていない。関係筋が理解できないとしているのは、エラズリス枢機卿への対応だ。教皇にとって、少なくとも、かれがその一員である枢機卿顧問団から外すことは簡単だと思われるからだ。もしも、チリの危機が今、幕を下ろすとすれば、教皇は時間をかけすぎて最後まで行きつけないから、と言うことになるが、教皇は結局は正しいことをしようとされる。もしも、エラズリスとエザッチのような人物に対して何もしないなら、教皇の役割に不吉な影を投げかけるだろう。

 そして最後に四つめは、エラズリスとエザッチがおそらく懸念すべき審判を下すのは、教皇フランシスコではなく、ムニョスを逮捕しサンチャゴ大司教区の文書保管所を捜索したチリのエミリアノ・アリアス検察官であろう、ということだ。チリの一連の汚職事件の摘発を主導してきたことで名の高い猪突猛進型の改革派、死の恐怖と直面した経験をもつアリアス検察官は、性的虐待そのものではなく、それを隠ぺいしたことに関心を持っている、としている。

 教皇が性的虐待の報告を隠した教会指導者たちを特定し、処罰することを期待するのは確かに正当なことである一方、現実の世界の見地からは、教皇が何をしようと、しまいと、大した問題ではない。エラズリスとエザッチのような強い権力を持っていた高位聖職者たちは、メディアと世論と言う法廷ですでに面目を失っており、さらに、法的な裁きに直面している。言い方を変えれば、もし、あなたが、21世紀初めのカトリックの指導者で、バチカンの反応についてどのように気にかけようとも、性的虐待を隠ぺいするように仕向けられたとしたら、ある意味で、教皇は、あなたが抱えた悩みのためのうち、最も小さいものであるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

2018年7月15日

・女子の教育機会の欠如は、国に巨額の損失をもたらす -世銀報告

 (2018.7.13 世界銀行東京事務所プレスリリース)世界銀行は国連が定めた7月12日の「マララ・デー」に先駆けて11日、「失われた機会:女子の教育機会の欠如が招く巨額の損失」と題する報告書を発表した。

 報告書は「女子の教育機会の欠如や中等教育(12年間)の修了が妨げられることによる生涯生産性と生涯所得の損失は、15兆ドル~30兆ドルに上る」と指摘。

 特に低所得国では、初等教育を修了する女子は3分の2に満たず、前期中等教育に至ってはわずか3人に1人。平均すると、中等教育を受けた女性は、全く教育を受けていない女性と比べ、職に就く可能性が高く、収入も約2倍に上っており、「女子が中等教育を受けることで、教育を受ける本人、そしてその子供やコミュニティに様々な社会的・経済的恩恵がもたらされる。たとえば、児童婚はほぼ根絶され、人口の伸びが著しい国で出生率が3分の1低下し、子供の死亡率・栄養不良が改善する」としている。

 世界銀行のクリスタリーナ・ゲオルギエヴァCEOは「ジェンダーの不平等がグローバルな進歩を阻むことを、これ以上、見過ごすわけにはいきません」とし、「教育の不平等は世界的に何兆ドルにも上る損害を与えていますが、これは解決可能な問題です。今こそ、教育に見られるジェンダー格差を改め、男女にかかわらず、平等に成功の機会が与えられるようにすべきです。それが世界の全員の幸せにつながるのです」と強調した。

 過去20年間で、多くの国が初等教育の完全普及を実現し、途上国における女子の初等教育就学率は男子と肩を並べるようになった。しかし、これだけでは不十分である。報告書の分析が示すように、中等教育を修了することにより、はるかに大きな教育の恩恵がもたらされる可能性が高い。

 「教育を受けられないという理由で、1億3,000万人に及ぶ女子が技術者やジャーナリスト、CEOになれない、という事実は、グローバル経済、公衆衛生、そして社会の安定に活用できるはずの何兆ドルという資金を失っているのと同じことです」とマララ基金の共同設立者でノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイは語る。「世界のリーダーがより良い世界の構築に真剣に取り組むのであれば、女子の中等教育への投資に真剣に向き合う必要があります。この報告書は、女子への投資を、これ以上先延ばしにできない事を示す新たな証拠を突き付けているのです」。

 今日の世界では、6歳から17歳の女子の約1億3,200万人(うち75%が10代)が学校に通えずにいる。教育の恩恵を最大限に享受するには、全ての女子が学ぶ機会を得られるよう、教育へのアクセスと質の双方を高める必要がある。こうした投資は、前期中等教育を修了する女子の割合が平均わずか40%にとどまっているサブサハラ・アフリカをはじめとする一部の地域では特に重要だ。教育を受けた労働力の増加に伴い、こうした人々の雇用を創出するような健全な経済成長を支える政策も、必要となる。

 中等教育を受けた女性はまた、自らの健康も含め、家庭においてより優れた判断力を発揮する。こうした女性は、近親者から暴力を受ける可能性も低く、精神的幸福感も高い。さらにその子供も栄養不良に陥る可能性が少ないなど健康状態が良く、学校に通い学習する傾向が強い。より良い教育を提供することで、女性は社会に参画し、コミュニティの主体的な一員となり得る。

 女子教育とジェンダーの平等は、世界銀行が行うより広範で包括的な取組みの一環。資金支援や分析を通じて、女子の就学を妨げている資金面の問題の解決、児童婚の防止、性と生殖に関する保健サービスへのアクセス改善、10代の女子や若い女性のスキルと雇用機会向上などを行っている。2016年以降、世界銀行は、10代の女子を対象とした教育プロジェクトに32億ドル以上を投資してきた。

 本報告書は、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団、教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)、及びマララ基金の支援を受け作成された。

 なお、報告書の詳細はwww.worldbank.org/education を参照されたい。

(「カトリック・あい」が編集)

2018年7月13日

・風俗産業オーナーが米ネバダ州予備選で躍進、保守的キリスト教有権者も支持(CJC)

(2018.6.22 CJC通信)米国で最も有名な「ピンプ」(売春婦の元締め)を自認し、ストリップクラブのほか、売春宿を数軒経営するデニス・ホフ氏(71)が、保守的なキリスト教有権者から多くの支持を受け、11月の中間選挙でネバダ州議会に共和党議員として議席を獲得する見通し。

 ホフ氏の政治的躍進は、「トランプ時代」において有権者の意識が根本的に変化し、共和党がかき回されただけでなく、米国政治がひっくり返されたことを示している、とロイター通信。

 「これがまさにトランプ運動だ」──。ネバダ州北部のカーソンシティ近郊にある、自身が経営する売春宿「ムーンライト・バニーランチ」でインタビューに応じたホフ氏は語った。

 6月12日、州議会下院選に向けた共和党候補を指名する予備選で、ホフ氏が勝ったとのニュースを聞いた時、福音主義者を自認するビクトル・フェンテス牧師は、目を閉じて祈ったと話す。

 キリスト教系グループは、同州の合法な売春産業に長年抗議していたが、その産業でのし上がったホフ氏の経歴に目をつぶる決意をしていた同牧師は、パーハンプの自宅で彼の勝利を神に感謝した。

 パーハンプは人口3万6000人、自治体が設置されていない「非法人地域」にあるこの町は、ホフ氏が11月の州議会選の最有力候補と目されている選挙区における最大のコミュニティー。

 近年、保守的なキリスト教徒の多くが、共和党のエスタブリッシュメントに対する信頼を失っている。現代米国で脅かされている価値を守るために戦っていない、という。

 彼らにとってトランプ大統領は、長年の政治的規範を打ち破ることも辞さない、新たな種類の政治家だ。その点は、実際に有する、または指摘されているどんな倫理的な欠点にも勝る資質だと、彼らは言う。

 「福音派の有権者には、理想化された、白人キリスト教徒的な、保守的なアメリカのためにトランプ大統領が戦っていることの方が重要なのだ」と、宗教と文化、公共政策の関連についての研究を行う超党派組織『公共宗教研究所』のダン・コックス研究ディレクターは指摘する。□

2018年7月5日

・ナイジェリアの司教、キリスト教徒大虐殺回避を国際社会に訴え(Tablet)

Nigeria bishop warns of genocide against Christians

 Catholic faithful attend a requiem Mass for the victims of Benue State herdsmen attack at St Leo Catholic Church, Nigeria on May 21, 2018 before staging a peaceful protest to condemn the killings in Benue State, North Central of Nigeria urPhoto/SIPA USA/PA Images

(2018.6.29 Tablet  Rose Gamble , John Pontifex)

 「介入する前に大量虐殺が起きるのを待たないでください… お願いです。ルワンダで起きた大虐殺と同じ過ちをしないように」。

 ナイジェリアの司教が、同国中部ベルト地帯で「民族浄化」を旗印にしたフラニ武装勢力による活動が激しさを増し、キリスト教徒に対する大虐殺の可能性が高まっていると警告した。

 グボコ教区のウイリアム・アベンヤ司教が、迫害されるキリスト教徒に対するカトリックの支援団体「 Aid to the Church in Need(ACN)」に語ったところによると、司教が管轄し、キリスト教徒が多数を占めるベヌエ州で、今年、すでに492人が殺され、不安が高まっている。

 国際社会への訴えで、司教はACNに「介入前に大虐殺が起こるのを待たないでください‥. お願いです。ルワンダで起きた大虐殺と同じ過ちをしないでください。ルワンダでは、それが私たちの鼻先で起きたのに、誰も止めようとしませんでした。今、私たちはそれがどのような結果をもたらしたのか、良く知っています」と語った。

 6月27日の現地報告では、ジョスの町の近くにあるキリスト教徒が多く住む10の集落で、暴徒たちが「200人以上を殺害した」という。現地の警察は死者は86人だとしているが。

 アベンヤ司教はACNに、フラニ武装勢力はイスラム教徒が多数を占める地域は襲っておらず、「現在起きているのは、キリスト教徒の抹殺だ、と言えます」と強調。この地域の他の教会指導者は、フラニ武装勢力の狙いは「ナイジェリアの中部ベルト地帯のイスラム化」だ、と述べている。

 別のNGO「Christian persecution charity Open Doors」の調べでは、2016年5月から2017年9月の間に、中部ベルト地帯の南部カドゥナ地域-キリスト教徒が全人口の98パーセントを占める-で725人が殺されている。

 フラニ武装勢力は、彼らの攻撃の対象は「家畜だけ」で、「動機は(攻撃を受けたことに対する)報復にある」とスポークスマンは言明し、キリスト教徒殺害を認めようとしない。

 同国のムハンマド・ブハリ大統領は、一連の攻撃は「きわめて不幸な出来事」とするものの、具体的な対応は生半可なものにとどまっている、と見られてきた。これまでの、政府の軍事作戦は治安回復に少しも役立っておらず、「大統領自身がフラニなので、直視するのを避けている」と疑う声も出ている。

 アベンヤ司教は西側諸国に、自国の人々の命を救ってくれるよう訴え、「私たちの信者たちは、暴力を振るわれて殺されるか、難民として生きざるを得なくなっています。そして、西側諸国は、フラニ問題を単なる国内問題だという見方を取り続けている」と西側諸国の無関心を強く批判した。司教の発言に先立って、ナイジェリアのカトリック司教協議会は声明を発表し、「我が国が大量の虐殺場と墓場になりつつある」のに何もしない責任を取って辞任を考えるように、とブハリ大統領に要求した。

 司教はまた、フラニ武装勢力が使っている武器の供給元についても言及し、「羊飼いたちは、一時、棒切れだけで”武装”していたことがある。だが、今は、彼らはAK47カラシニコフ自動小銃で武装している-彼らがとても自分では買うことのできない高価な武器です。ということは、彼らにそれを与えているのは誰なのでしょう?」と問いかけた。そして、こう付け加えている。「しかも、この地域には、2キロごとに検問所が設けられています。武装した男たちが家畜の群れに後を追われて見えなくなることが出来るのでしょうか」と。

 今年初めから、ナイジェリア全土で合わせて1000人以上が殺害されている。この国の”家畜戦争”は、北部のボコハラム武装勢力によるイスラム蜂起よりも、もっと恐ろしいものになりつつあるのだ。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

 

 

 

2018年7月4日

・米国務省・人身売買報告書2018発表、北朝鮮、中国など最低評価

Date: 06/2018 Description: Report Cover: Trafficking in Persons Report 2018. - State Dept Image

 (2018.6.28 米国務省発表をもとに「カトリック・あい」が編集)米国務省は28日、世界各国の人身売買の実態をまとめた2018年版年次報告書を発表した。

 4段階評価のうち最低評価とされたのは、アジアでは北朝鮮、中国、ミャンマー、ラオス、パプアニューギニアなど。

 とくに北朝鮮については「人身売買撲滅に向けた最低限の水準を満たしておらず、取り組みもしていない」と指摘、ポンペオ国務長官は28日の記者会見で、「無数の北朝鮮国民が北朝鮮政府により、海外で強制労働に服せられている」と批判した。

 中国については「国営の薬物依存症患者の治療施設で強制労働が行われている」と報じられていることなどを指摘し、昨年に続いて最低評価。人身売買に関する統計データの不備も指摘した。

 ミャンマーについて、少年兵の利用などを理由に、最低ランクに引き下げ、イスラム系少数民族ロヒンギャ迫害にも懸念を示した。

 日本については、13年連続で上から2番目だった評価を最高評価に引き上げたが、これは、日本政府が、女子高生らによる接客をうたう「JKビジネス」の省庁横断の対策会議発足するなど、取り締まりを強化したことや、国際組織犯罪防止条約を締結したことなどを評価したため。ただ、国務省高官は「人身売買に対する量刑が軽く、しばしば執行猶予になる」点を問題視した。

 報告書でポンぺオ国務長官は「現代の奴隷制は世界のどこにも居場所はない。私は、この地球的な脅威に対する戦いで、米政府が外交努力と行動強化を通して、指導力を発揮することを確認したい」と言明している。

 報告書全文はhttps://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2018/index.htmに

2018年7月1日

・未成年者への性的虐待で米マカリック枢機卿に聖職行使停止

(2018.6.25 CJC通信)バチカン(ローマ教皇庁)は、米ワシントン大司教区の元責任者セオドア・マカリック枢機卿(87)の45年前の未成年者への性的虐待容疑に対し「信頼できるもので、実証に基づいた容疑」と判断し、今後の一切の聖職行使の停止を言い渡した。ニューヨーク大司教のティモシー・ドラン枢機卿が6月20日、公式声明で発表した。

マカリック枢機卿への容疑は同枢機卿がニューヨーク大司教区の司祭時代のことだ。ドラン枢機卿によると、教会の規約に基づき、バチカンに通達された。バチカンの「ナンバー2」、ピエトロ・パロリン国務長官は教皇フランシスコの指令を受け、マカリック枢機卿に今回、聖職禁止を言い渡した。

それに対し、マカリック枢機卿は「バチカンの決定には忠実に従い、今後聖職を行使しない」と語る一方、容疑については否定した。

ドラン枢機卿は、「ワシントン大司教区の関係者はバチカンの決定に対し、悲しみ、ショックを受けている」と述べる一方、教区の代表として性的虐待の全ての犠牲者に対し謝罪を表明した。□

2018年7月1日

・性的虐待の被害者が声をあげる-教会”文化”が変わってきた-弱者保護の大司教(CRUX)

McCarrick case points to shift in culture, child protection experts say

Archbishop Mark Coleridge of Brisbane, president of the Australian Catholic Bishops’ Conference, at the press conference for the 15th annual Anglophone Safeguarding Conference at the Gregorian University in Rome, June 21, 2018. (Credit: Claire Giangravè.)

(2018.6.22 CRUX  

ローマ発―米国の枢機卿が性的虐待で訴えられたとの信頼に足るニュースは、こうした噂が何年も出回っているバチカン関係者の小さな集団には大したショックを与えなかったようだが、多くの信徒にとっては、教会の信仰に対するさらなる打撃となった。

 教会で児童保護の最前線にいる専門家たちによれば、ニューヨーク大司教区が、セオドア・マカリック枢機卿のような、かつては際立った存在を、性的虐待の訴えを受けて追い回す事態は、カトリック教会におけるカルチャーの重要な変化を示している、という。それは、権力を持つ者に責任を課すことをおそれない、という変化だ。

 「それは、(性的被害を告発する)”MeToo”運動と異なるものではありません。文化の中で起きつつあるもの、この文化的な変化のしるしの一つは『人々は声を上げることができる』ということです」とオーストラリア司教協議会議長のマーク・クラリッジ大司教は21日のローマでの、幼児性的虐待など弱者保護のために会議を終えた記者会見で語った。

 この前日、20日には、問題のマカリック枢機卿が司祭として働いていたニューヨーク、ワシントン両大司教区が声明を発表し、同枢機卿に関する50年以上前の「信頼でき、具体的な」性的虐待の訴えを受け、枢機卿の司祭としての活動を禁止したことを明らかにした。訴えた人の中には、ニューヨークの司教座聖堂、聖パトリック・カテドラルで典礼奉仕をしていたかつての少年も含まれている。

 当のマカリック枢機卿は「報告されている虐待行為については全く記憶になく、自分は無実だと信じているが、告発した人の痛み、告発が私たちの信徒に与えた困惑を申し訳なく思う」と語っている。

 一方、クラリッジ大司教は、「大きな変化」の重要な側面は、虐待の被害者たちが進んで話すようになったこと、さらに重要なのは、彼らが信用された、ということ、と指摘し、「誰も説明責任を逃れることはできなくなった」と述べ、これまでは1人の司教の裁量によるものだったが、今、大司教区は(司教の裁量によらずに)この問題を扱うことができるようになった、と付け加えた。「マカリック枢機卿に関して起きたことは、司教の説明責任に焦点を当てており、カトリック教会にとって焦眉の急の問題です」。

児童保護センター(CCP)の所長、ドイツイエズス会ののハンス・ゾルナー師は、マカリックに関する教会の対応は「物事が厳しく扱われるようになりつつあり、対応の徹底が最も高いレベルに達しつつあることを示している」との見方を示し、ニューヨーク大司教区の理事会は「信頼できる、実質的な内容のある申し立てに対応し、教会法の通常の手続きに従って判断ができるようになった。教会の歩みは一歩、一歩、極めて遅いが、次第に一貫したものになり、規定に従って行動するようになってきています」と語った。

  クラリッジ大司教のお膝下のオーストラリアでは、世界のカトリック教会の支配層で最も力のある人々の1人であるジョージ・ペル枢機卿の性的虐待スキャンダルとその裁判で大騒ぎになっているが、フィリップ・ウイルソン大司教も、性的虐待事件の隠蔽で有罪になっている。また、「司祭が告解で聴聞した中身の公開禁止を、児童の性的虐待に関係する告解の内容に限って解除するよう、司祭に求める事ができる」とする法律の制定も検討され、全国で議論になっているが、「提案された法律案は、一言で言えば貧しい公共政策」で、それによって子供たちが一層安全になることがないだけでなく、信教の自由の権利を損なうものだ、と指摘した。大司教によれば、「教会の血を渇望する」動きがあり、「カトリック教会を罰したい、有罪なのはカトリック教会だと見せたい欲求がある」が、それでも、告解の内容の秘匿義務を破ることが現在の問題の答えにならず、「問題を作り出し、誰の助けにもならない」との見方を示した。

 性的虐待が明るみ出て教会に対して怒りが突き付けられているのは、オーストラリアに限ったことではない。世界中の多くの地域でも、チリや、アイルランドを含めて、起きている。教皇フランシスコは8月に、世界家庭集会に出席のためアイルランドを訪問するが、同国では、憲法から堕胎禁止の条項を除くことが国民投票で決まったばかりだ。

 「カトリック教会は、深い不信の中にいる」とするゾルナー所長は「可能な限り首尾一貫した、可能な限り公明正大な対応をする以外に、さらなる性的虐待を避ける道はない」と語る。

 だが、幼児性愛者のフェルナンド・カラディマ神父などの数多くの性的虐待を多くの司教ぐるみで20年にわたって隠蔽し続けてきたあげくに、全司教が教皇に辞任を申し出たチリの場合は違う、とクラリッジ大司教は言う。「適切な対応がずっと遅れていた」。だが、力のない人々に発言の場を提供することは、事態を前に進めるために欠かすことができない、とも大司教は語る。「子供たち、か弱い者たち、神学校でも、修道院でも、声を上げ、それが聞き入れられるようにすることが、極めて重要だ」と。

(「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

2018年6月24日

・日本の寄付がはぐくむ果実-タジキスタン、収穫が学校給食に

Photo: WFP/Dilbar Ruzadorova

 木には色とりどりの果物が実り、子どもたちは果実で一杯になったかごを抱えています。これから取った果物をみんなで食べるのでしょうか、女の子たちの楽しそうな笑顔が印象的です。タジキスタンの小学生、オミナイ・アスリディンが描きました。

 これらの果物の木々は、日本の国連WFP協会に対する寄付を使って植えられました。 「給食のおかげで勉強できる」 タジキスタンは、決して豊かな国ではありません。 国内の9割は山岳地帯で産業は乏しく、多くの家庭がロシアなどへの出稼ぎで生計を立てています。食料自給率は5割程度で、5歳未満の子どもの3割弱が慢性の、1割が急性の栄養不良に悩まされています。 国連WFPは食料事情の悪い地域を中心に、学校全体の約半分に当たる2000校、約40万人に学校給食支援を実施しています。

 国連WFPタジキスタン事務所の川端真理子副代表によると、貧しい地域では、パンなど主食以外のものを食べる機会が学校給食だけ、という生徒も多いといいます。

 孫を学校に通わせているサフィエブ・シリンフジャさんは「国連WFPと支援者の方には深く感謝しています。暖かく栄養のある学校給食のおかげで、2人の孫が勉強に集中できるのです」と話しました。

 学校緑化プロジェクト 国連WFPは2011~15年、日本の国連WFP協会からの資金を活用し、学校内やその周辺にピスタチオやさくらんぼ、りんごなどの苗木を植えました。地元の生徒や保護者、近隣の農家などが丹念に手入れをした結果、苗木は立派に育って実をつけ、給食に彩りを添えるようになりました。 川端副代表は「植えた苗の9割はしっかりと根付きました。立派に育った果樹園は緑が美しく、こちらも支援が形になったと嬉しくなります」と話します。 収穫物は給食に使われるだけでなく、地元の市場で売られ、その収入で文房具や本など学校の備品を買う場合もあります。

 立派に育った果樹園 Photo: WFP/Murodali Nurov

 上級生にとって果樹の収穫は、健康に良い食べ物やバランスの取れた食生活、果物の貯蔵や加工の方法を勉強する場でもあります。「毎年夏になると、私たちのクラスはリンゴやあんず、桃などを収穫して、学校の貯蔵庫に入れ、ジャムやコンポート、ドライフルーツを作ります」絵を描いたオミナは、そう説明します。

生徒4万人の食生活が改善

 タジキスタンでは給食に割く政府予算が十分でなく、給食を続けるには保護者の協力が欠かせません。小麦と塩、豆、油を国連WFPが、燃料費の一部を政府がそれぞれ提供していますが、野菜など主食以外の食材は保護者が持ち寄っています。貧しい地域では「果樹園があるおかげで、給食に果物が並ぶのはありがたい、という声を先生たちから聞いています」(川端副代表)。

Photo: WFP/Dilbar Ruzadorova

 果物が給食に取り入れられたことで、これまでに4万人以上の生徒の食生活が改善しました。国連WFP協会が昨年送った寄付金27万米ドル(約3000万円)を使って、新たに80校への植樹が行われる予定です。 タジキスタンは1991年の独立後、92~97年まで内戦が続きました。国連WFPは内戦中、主に緊急性の高い食糧支援をしていたことから、今も困っている人へ食べ物を届ける、というイメージを持たれがちです。

 しかし川端副代表は、世の中が落ち着いた今、支援も変わる必要があると話します。「今最も求められているのは、果樹園や灌漑施設、給食制度、食料安全保障を担う人材など、長く残るものを作るお手伝いです。その結果、支援の必要がなくなることこそ、究極的なゴールなのです」国連WFPは世界各国で、小規模農家から作物を買い入れて食材に活用するなど、学校給食を通じて住民の自立を促す活動を進めています。⇒国連WFPの事業に、ご支援をお願いします

2018年6月21日

・核削減遅く、近代化進む-中国増強、北朝鮮は10∼20発-国際平和研報告

(2018.6.18 「カトリック・あい」)スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が18日発表した2018年版「世界の核軍備に関する年次報告」によると、世界の核保有国は米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9か国で、2018年年初現在の保有核弾頭の合計は推定1万4465発に上っている。

 弾頭数自体は、一年前の1万4935発よりも総数では米ロ中心にわずかに減っているが、各国とも核兵器の近代化を進め、中国は弾頭数も前年より10発多い280発に増やし、北朝鮮も10∼20発保有、米本土を狙う大陸間弾道弾(ICBM)の開発に合わせて、これに搭載する核弾頭の小型化も進めている。

 SIPRI発表の英語版概要は以下の通り。

世界の​​​​​​核戦力:削減のテンポは遅く、近代化は進む

 At the start of 2018 nine states—the United States, Russia, the United Kingdom, France, China, India, Pakistan, Israel and the Democratic People’s Republic of Korea (North Korea)—possessed approximately 14 465 nuclear weapons. This marked a decrease from the approximately 14 935 nuclear weapons that SIPRI estimated these states possessed at the beginning of 2017.

 The decrease in the overall number of nuclear weapons in the world is due mainly to Russia and the USA—which together still account for nearly 92 per cent of all nuclear weapons—further reducing their strategic nuclear forces pursuant to the implementation of the 2010 Treaty on Measures for the Further Reduction and Limitation of Strategic Offensive Arms (New START).

 Despite making limited reductions to their nuclear forces, both Russia and the USA have long-term programmes under way to replace and modernize their nuclear warheads, missile and aircraft delivery systems, and nuclear weapon production facilities. The USA’s most recent Nuclear Posture Review (NPR), published in February 2018, reaffirmed the modernization programmes and approved the development of new nuclear weapons. The NPR also emphasized expanding nuclear options to deter and, if necessary, defeat both nuclear and ‘non-nuclear strategic attacks’.

 ‘The renewed focus on the strategic importance of nuclear deterrence and capacity is a very worrying trend,’ says Ambassador Jan Eliasson, Chair of the SIPRI Governing Board. ‘The world needs a clear commitment from the nuclear weapon states to an effective, legally binding process towards nuclear disarmament.’

 The nuclear arsenals of the other nuclear-armed states are considerably smaller, but all are either developing or deploying new nuclear weapon systems or have announced their intention to do so. India and Pakistan are both expanding their nuclear weapon stockpiles as well as developing new land-, sea- and air-based missile delivery systems. China continues to modernize its nuclear weapon delivery systems and is slowly increasing the size of its nuclear arsenal.

In 2017 North Korea continued to make technical progress in developing its nuclear weapon capabilities, including the test of—what was claimed to be—a thermonuclear weapon, in September. North Korea also demonstrated unexpected rapid progress in the testing of two new types of long-range ballistic missile delivery systems.

‘Despite the clear international interest in nuclear disarmament reflected in the conclusion in 2017 of the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, the modernization programmes under way in the nuclear weapon-possessing states indicate that genuine progress towards nuclear disarmament will remain a distant goal,’ says Shannon Kile, Senior Researcher with the SIPRI Disarmament, Arms Control and Non-proliferation Programme.

World nuclear forces, January 2018

Country Deployed Warheads* Other warheads** Total 2018 Total 2017
USA 1 750 4 700 6 450 6 800
Russia 1 600 5 250 6 850 7 000
UK 120 95 215 215
France 280 20 300 300
China 280 280 270
India 130-140 130-140 120-130
Pakistan 140-150 140-150 130-140
Israel 80 80 80
North Korea .. .. (10-20) (10-20)
Total 3 750 10 715 14 465 14 935

Source: SIPRI Yearbook 2018

* ‘Deployed warheads’ refers to warheads placed on missiles or located on bases with operational forces. ** ‘Other warheads’ refers to stored or reserve warheads and retired warheads awaiting dismantlement.

Total figures include the highest estimate when a range is given. Figures for North Korea are uncertain and are not included in total figures. All estimates are approximate.

平和維持軍の需要は増えているが、人員は減っている

 There were 63 multilateral peace operations active during 2017 (one more than in 2016): 25 operations were deployed in Africa, 18 in Europe, 9 in the Middle East, 6 in Asia and Oceania, and 5 in the Americas.

 The total number of personnel deployed in multilateral peace operations decreased by 4.5 per cent during 2017, from 152 822 to 145 911. Nearly three-quarters of all personnel were based in Africa. The decrease in the number of personnel is explained by the fall, by 7.6 per cent, in deployments by the United Nations, whereas the number of personnel in non-UN operations increased by 2.3 per cent to 47 557.

 Although the UN clearly remains the principal actor in peace operations, African actors are claiming an increasing role in African peace and security matters. This is reflected in the establishment in February 2017 of the Group of Five for the Sahel (G5 Sahel) Joint Force (Force Conjointe des Etats du G5 Sahel, FC-G5S).

 UN peacekeeping reform remained high on the international agenda in 2017. However, these discussions were overshadowed by two other significant developments during the year: the greater insecurity of personnel deployed in UN peace operations; and the efforts—particularly by the US administration—to drastically reduce the UN peacekeeping budget.

 In 2017, UN missions witnessed a dramatic escalation in fatalities linked to hostile acts—in both absolute terms (from 34 in 2016 to 61 in 2017) and as a ratio of the number of uniformed personnel deployed (from 0.31 to 0.61 per 1000 uniformed personnel). Whereas in preceding years most fatalities occurred in the UN mission in Mali, in 2017 the UN operations in the Central African Republic and the Democratic Republic of the Congo also faced substantial losses.

 ‘An independent review into the security of peacekeepers released in 2017 (2017 Cruz Report), suggested that UN peacekeeping operations should adopt a more robust and less risk-averse force posture,’ says Timo Smit, Researcher with the SIPRI Peace Operations and Conflict Management Programme.‘However, this raises the question, which was not addressed by the Cruz Report, as to how the UN should generate sufficient forces that are both willing and capable of adopting such a posture.’

 In 2017, UN peace operations—like African peace operations—could no longer be certain of predictable and sustainable funding. The budget cuts and related troop reductions meant that the UN had to rethink its strategy in many operations. ‘Is it realistic to expect the UN to continue to do more with less, and is it worth taking the risk?’ says Dr Jair van der Lijn, Director of SIPRI’s Peace Operations and Conflict Management Programme.

 ‘A number of finance-contributing countries hoped that budget cuts might be used pragmatically to strengthen peacekeeping reform. However, the actual effects of resource reduction on some operations might put peacekeepers at further risk and leave populations more vulnerable,’ says Van der Lijn.

2018年6月18日