・教皇フランシスコ「未成年者の保護に向けて;反省すべき21箇条のポイント」(全文試訳)

(2019.3.2「カトリック・あい」)

「カトリック・あい」を愛読されている阿部仲麻呂さんから、教皇フランシスコが”性的虐待サミット”直前の2月21日に発表された「未成年者の保護に向けて-反省すべき21箇条のポイント」の全文試訳を解説前文と共にご寄稿いただきました。この内容はまさに、日本の司教団が参考あるいは倣うべき具体的内容が多く含まれています。以下に阿部様への翻訳のご苦労への感謝と共に掲載します。

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 教皇フランシスコは「教会における未成年者の保護」に関する司教会議の作業を支援するために共有したいと願う「反省すべき21箇条のポイント」を木曜日(2019年2月21日)に参加者に対して提示しました。バチカンで開催された「教会における未成年者の保護」に関する司教会議の冒頭部で、教皇は参加者といくつかの「ガイドライン」を共有されましたが、会議参加者の仕事を助けるために。その「ガイドライン」には、様々な委員会や司教会議によってあらかじめ策定されていた反省点が反映されたうえで、 21箇条のポイント に集約されています。

教皇は これらの21箇条を会議の出発点として素直に受け入れたうえで しかも絶えず念頭に置いて、創造的な話し合いを心がけるように」と、参加者に切に求めました。それでは、以下に、「反省すべき21箇条のポイント」を掲げておきましょう。

1 一つの案件が生じた場合に、当局の管理下で、しなければならない事について順序立てて説明する実用的なマニュアルを作成すること。

2 訓練を積んだ有識者や専門家をも含めて構成されたチームを任命し、被害者に対してじゅうぶんに耳を傾け、その案件に関する最初の識別を行う場を設けること。

3 生じた案件に対して司教および修道会の長上がじかに関与するための規範を定めること。

4 訴えられた事柄に関する調査、被害者の保護、被害者と加害者の双方がそれぞれ弁護されるための共通の権利を確保すること。

5 民法と教会法の両者を尊重し、市民社会における当局と教会の責任者の双方に通報すること。

6.あらゆる司牧現場において、未成年者のために安全な環境を保つために、定期的に諸規則を点検すること。その際に、教会の使命において、この案件が教会の基本姿勢に沿うかたちで、あらゆる規範や規則は何よりも正義と慈愛の原則にもとづいて統合されていなければならない。

7.司教が告訴された場合に特化した対処の仕方や手続きを整えること。

8 被害者がじゅうぶんにいやされるために必要な、あらゆる支援を提供しつつも彼らに同伴し、彼らの保護および配慮(ケア)を心がけ、彼らのじゅうぶんな回復を目指すこと。

9 司教・修道会の長上・司祭・司牧現場の協働者(信徒)の生涯養成に努めることで、性的虐待の原因および性的虐待がもたらす結果に関しての認識を継続的に深めさせること。

10 被害者が共同体に戻れるような司牧的配慮(ケア)のプロセスを気遣うとともに、加害者の回心と更生のためのプロセスをも整えること。

11 真正なる場合なのか虚偽の場合なのかを峻別し、告訴なのか中傷なのかを適正に区別するために、善意のあるあらゆる人びとやマスメディア関係者との協力を緊密なものとすること。その際に、侮辱や噂や名誉毀損につながるような中傷を避ける必要がある(具体例として、2018年12月21日になされた教皇フランシスコによる教皇庁における訓話を参照すること)。

12 結婚ができるようになる最低年齢を16歳まで引き上げること。

13 性的搾取あるいはパワーハラスメントをめぐる調査や教会裁判上のさまざまな段階においてなされる審議の際に、信徒身分の専門家の参加をも認め、彼らの参加が容易になるようにする規定を設けること。

14 被告人にとっての防御の権利を認めること。つまり、最終的に有罪が立証されるまでのあいだ、自然法および教会法上の無罪を仮定する原則を保つようにすること。それゆえに、告訴されるより以前に、被告人のリストが公になるのを防ぐために留意する必要がある。慎重な予備調査を心がけることによって、被告人が必要以上の非難を受けないように努め、冤罪を生まないようにするべきである。

15 未成年者に対する性的虐待を犯した司祭や司教は、犯した罪に対応するかたちで罰を受けるという伝統上の原則を遵守し、公共の場で聖職者としての職務を遂行させないこと。

16 教区神学生や司祭および修道候補者に対して、人間的・霊的・性心理学的な成熟度を査定すると同時に、それ以上に人間関係の人格的な取り結び方や適切な態度の取り方を深めさせるための初期養成および生涯養成のプログラムを導入すること。

17.司祭候補者や修道候補者に対して、専門家による心理的な鑑定を施すべきこと。

18 教区神学生や修道志願者を、ある神学校から別の神学校へと異動させたり、あるいは司祭や修道者を、ある教区から別の教区や修道院へと異動させる際の規定を公開すること。

19.聖職者・修道者・教会の奉仕者・ボランティアのために、相手との関わりを正常に保つうえでの適切な態度のとりかたの基準を文書化し、適切な人間関係の保ち方に資する許容範囲を説明すること。そして、関係者やボランティアに対して必要な資格要件を明確に示し、彼らの犯罪歴の記録を確認しておくこと。

20 虐待が生じそうな危険性や発生状況に関して、虐待の証拠をどのようにそろえるのかに関して、性的虐待の嫌疑がある場合にどのように見究めて訴えればよいのかに関して、すべての情報やデータを社会的に公開すること。その際に、両親・教員・専門家・市民社会の当局の連携協力が不可欠である。

21.まだ相談窓口が整っていない場合に、虐待をこうむった被害者が実情を訴えやすいように、気軽に連絡しやすい機関を早急に開設すべきであること。つまり、あらゆる犯罪を報告できるような窓口を設けるべきである。そのような機関は、他の機関に従属することのないように独自の自治権を備えておかなければならない。しかも、必要に応じて、それぞれの地域の教区の責任者や専門家(聖職者や信徒)との連携もとらなければならない。さらに、聖職者による不適切な態度によって気分を害した人びとに対して、教会は細心の注意を払って関わらなければならない。

[2019年2月22日(金) 阿部仲麻呂 試訳]

 

 

 

 

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2019年3月2日