・女性の場は…バチカンにはまだ無い-マグダラの聖マリアの祝日(7月22日)に(LaCroix)

教皇フランシスコは、女性が指導的役割に就くことを奨励する、と言われるが、その実現に難儀されているように思われる

(2019.7.19 LaCroix International Robert Mickens= Rome Vatican City) https://international.la-croix.com

 
Jesus and Mary Magdalene (Image: Pixabay)

*教皇フランシスコが祝日と定めたのはごく最近、2016のこと

  世界のカトリック教会にとって、毎年7月22日は、マグダラの聖マリアの祝日だ。彼女は「主のご復活の最初の証人であり、最初の福音伝道者」だ。

 ただ、「弟子の中の弟子」として知られ、高位の祝日の対象者と位置づけられるこの女性を祝うことになったのは、ごく最近だ。教皇フランシスコが、それまで単なる「記念」とされていたのを、典礼上の記念日をされた2016年からのことである。

 マグダラのマリアは、聖母マリアを除けば、使徒たち、福音宣教者、そしてその他のわずかな人に定められる特定の祝日を持つ唯ひとりの女性だ。これは些細な、重要でないことかもしれない。

 だがカトリック信徒は常にlex orandi lex credendi(祈りの法則は信仰の法則)-私たちの祈りは、私たちが信じることを映す、というルールを大事にする。そしてカトリック教会は、重要さに応じて典礼上の祝いのランク付けをすることで、高く評価するのだ。最上位の祝日は荘厳ミサが捧げられ、次のランクは祝祭のミサ、その次のランクが記念ミサで、多くの場合、任意とされている。

 そうした中で、教皇はマグダラのマリアに対して、高い地位を与えたのだ。少なくとも、それが、2016年に勅令をもってした、教皇の意図だったのだ。

 *教会における女性の地位の向上の現状

 だが、実際にバチカンで女性を重要なポストに就けようとするに至って、教皇フランシスコは、さまざまな意見に遭遇した。口では立派なことをおっしゃっても、批判勢力に実行を阻まれる。

 教皇が2014年9月、女性をバチカンの幹部-コンボーニ宣教女子修道女会のブラジル人シスター、ルイザ・プレミオーリを福音宣教省の正会員ーに任命した時、多くの人々に希望を与えた。それはバチカン初の重要な出来事だ、と思われた。それまでは、福音宣教省の”会員”-一般の企業の役員会のメンバーに匹敵するものとされている-は、常に男性、枢機卿、司教、そして時として男子修道会の指導者が務めていたからだ。

 しかし、それから何年か経つと、彼女の正会員任命は情勢の地位向上の始まりになる、という希望は雲散霧消した。「バチカンの有力官庁で最初の、ただ一人の女性」のままだったのだ。女性の正会員任命は、一回限りのもの、と見なされた。

*ボールを少しづつ転がす

 そして、それからほぼ5年経った今年の6月8日、教皇フランシスコがまたちょっとした騒ぎを起こした。バチカンの奉献・使徒的生活会省の新規正会員23人のうち7人を女性としたのである。うち6人は女子修道会の総長、一人は在俗修道会の指導者だった。

 教皇が突然、またボールを転がし始めたのだが、驚いたことに、これを「教会における政策決定と統治の権限を女性にも与える突破口」と受け止めたのが、普段は自らを改革派、進歩派と言っている人々でなく、”伝統重視のカトリック”だったことである。こうした展開に彼らが不快だと感じている、というなら、それは過小評価というものだ。彼らが抱いたのは、あからさまな警戒心だ。なぜなら、教皇のこの人事が、最終段階を迎えているバチカン改革の使徒憲章の詰めを熟考されている中で発表されたからだ。

 「当時(シスター・ルイザの人事が発表された2014年)は”例外”だったものが、今や”ルール”になりつつある」と、バチカンを長い間、観察してきたイタリア人のサンドロ・マジステルは書いている。「そして、他にも同様の女性の任命人事が大量になされると期待される」。

 大量に?そうなれば、多くの信徒を喜ばすだろう。だが、本当にそのようなことが起きるだろうか?バチカンの改革が決定される前、多くの関係者の気をもませる今の時期に、バチカンから送られるシグナルはせいぜいのところ、多種多様で、矛盾に満ちたものだ。

 

*後退、多種多様なメッセージ

 奉献・使徒的生活会省の新規正会員に7人の女性が任命されてちょうど10日後、バチカンは広報の部署の新報道局長に、マテオ・ブルーニ氏を任命した。42歳の彼は聖エジディオ共同体(1968年、当時高校生だったアンドレア・リッカルディとその仲間たちによってローマで始まった。最初に中心にすえたのは、聖書の『使徒言行禄』とアッシジのフランチェスコの生き方)の会員で、2009年からバチカン報道局勤務。登録担当課のコーディネーター、教皇の海外司牧訪問における、報道関係者のためのオーガナイザーおよび引率責任者、メディア・オペレーションおよび登録担当課責任者を務めてきた。

 同時に広報の部署のアンドレア・トルニエリ・メディア編集局長を補佐する二人の副局長を任命した。一人はこの半年、報道局の暫定局長を務めていたアレッサンドロ・ジソッティ氏(45)、もう一人は1986年からバチカン・ラジオに勤務しているセルジョ・チェントファンティ氏(59)。この新任の三人は全員が男性で、しかもイタリア人だ(ブルーニ氏は英国生まれだが)。

 

*メッセージの策定は男性が担当を続ける

 マグダラのマリア-女性-は、キリストの復活を宣言した最初の人物だろうが、バチカンでは、男性がそのメッセージを支配しているのだ。

 テベレ川の教皇支配地域で起きている出来事を追っている人々は、間もなくブルーニが新局長に任命されることを予想していたが、彼の補佐役(報道局次長)には女性が指名される、と見る向きもあった。だが、1月31日に男性の局長と女性の局次長が突然辞任した後、今も局次長のポストは空いたままだ。

 このポストには、少なくとも三人の女性が就任を打診されたが、うち二人(イタリア人とラテンアメリカ人)は様々な理由から辞退し、もう一人の長年バチカンで働いているブラジル人は就任について国務省の同意を得られなかった。

 バチカンの広報の部署の職員名簿を見れば、もっと悲惨なことになる。この部署の様々な担当のトップのポスト12のうち、現時点で、埋まっているのは11(報道局次長はいない)。11のポストのうち、男性が10のポストを占めている-9人がイタリア人で、1人はアルゼンチン人だ。スロバキア人神学者が女性で唯一の幹部だ。

 この部署のフルタイムのメンバー(あるいは役員会のメンバー)17人を見ると、女性は決して大事にはされていないことが分かる。女性は2人だけ。他の15人は枢機卿と司教が計14人、あとの1人は一般信徒だ。

 バチカンの機関紙、L’Osservatore Romanoは、イタリア語を基本に他の六か国語で、毎週発行されているが、編集長も、次長も男性だ。同紙の様々な部門、室の職員のうち31人が名簿に載っているが、女性は3人に過ぎない。女性問題専門の月刊誌も発行しており、役員も一般職員も全員が女性だが、その人数そのものが少ない。

 このような訳で、すくなくとも広報の部署については、教皇はどこまで女性の役割を向上させようとしているのか、判断に迷ってしまうだろう。

*それでも前に進む

 しかしながら、教皇フランシスコがにわかに、過激な行動に出ることはない、とは言い切れないが、教皇はかねてから、徐々に、しかし後退させることなく、物事を変えていくことを好まれている。時間をかけて慎重に地固めをするのがお好きだ。気の短い人々、正義をせっかちに求める人々にとってはとてもイライラするやり方かも知れない。

 だが、ローマは一日にして成らず、だ。性急に物事を改めようとする教皇たちは、見放され、指示は無視されるか、妨害され、健康を害する危険に遭う!ー教皇フランシスコはそれをご存じだ。だから、”闘い”を慎重に進めている。そして、「バチカンと教会全体において、女性の指導的役割と政策決定における地位を高めていく」と言い続けながら、しばしば、それをどのように実行していくか迷っておられるように見える。

 おそらく、教皇は、ご自身が最も崇敬する女性たちのうちの2人-「マリア、結び目を解く方」とマグダラの聖マリアからより多くの導きと少しばかりの特別なとりなしを得ることを、よすがにしているのだ。それは確かに、害をもたらすことがないだろう。

 「カトリック・あい」注:「マリア、結び目を解く方」は、教皇が30年以上前、アルゼンチンでのイエズス会管区長として管区混乱の責任を問われ、「博士論文の準備」の名目でドイツ・アウグスブルクに”左遷”された不遇の時代に、彼が通った教会に掛けられ、いつもその前で祈っておられた「天使の助けを受けながら、複雑にからまったリボンの結び目を解いている聖母マリア」のこと。17世紀の画家、シュミットナーの作。その経緯は、ポール・バレリー著、南條俊二訳「教皇フランシスコとの挑戦」(春秋社刊)の冒頭の部分で絵の写真とともに詳述されている)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2019年7月20日