・全国カトリック学校・校長、理事長、総長、管区長の集い「直面する課題とより良い選択」記録

(2019.7.1 カトリック中央協議会) 第32回「校長・理事長・総長管区長の集い」が4月28、29両日、「直面する課題と向き合うカトリック学校―より良き選択(識別)をするために」をテーマに、東京・千代田区の都市センターホテルで開かれた。

*講演内容は、カトリック中央協議会ホームページから以下の項目で視聴できます。

*分科会の報告は以下の通り。

直面する課題と向き合うカトリック学校―より良き選択(識別)をするために・分科会記録

話し合いのテーマ
〔管区長・地区長グループ〕…「学校経営から修道会が撤退するかどうか」
〔理事長グループ〕 …「次期理事長を誰にするか」
〔校長グループ〕 …①「不登校の受験生を受け入れるか」
…②「進学実績を上げるため、朝の祈りの時間を小テストの時間に切り替えるか」
…③「女子校であるが、近い将来、共学にするか」

A グループ
・理事長は、寄付行為によって理事会の議長となる。議事運営の進め方により、法人の方向性が決まるので、理事長選びは(特に理事互選の場合)非常に大切。
・ カトリック学校として存続する為には、①「建学の精神の堅持」と②「経営力」の両方が必要。①のため、理事の過半数が必要。②経営能力は必要だが、企業と学校は異なるので、企業マインドでは困る。理事メンバーのバランスを見る必要。
・ 理事長・校長・事務長が、非信徒で構成されると、10 年すると、ミサなどがあっても、宗教色が薄れ、カトリック学校??という実例がある。
・ カトリック学校に相応しい理事(信徒)確保のため、法人間で助け合えないか。(兼務とか、契約締結して地方へ派遣とか)
・ 危機に直面している学校が、「学校法人特別委員会」などの支援で、大きく法人化され、カトリック学校存続可能な状態ができるとありがたい。
・ 識別・・”理事研修“が必要。どのように??
・・神の望みと我等の望みを重ねて、喜びの内にできる事を見つけ実行する。採決の前に沈黙の時をもつ等。
・・神の光栄の為に責任を引き受け、社会的責任を取るとしても、日々神を意識して行い、最終責任を神に信頼して転嫁できる。

B グループ
各学校の様子を交えながら自己紹介をする中で、参加者の関心が高かった話題は次の 2 点であった。
1 つ目は建学の精神をいかに後継者に引き継いでいくか、2 つ目は女子校、男子校を共学にすることの是非についてであった。

1 つ目については、学園内で司祭、修道者、信者の教職員が年々少なくなっていく
中で、カトリックの精神を浸透させるためには、やはり責任者(校長・理事長)を誰にするかが重要であるということだった。ある参加者のお話では、新任教員に対して 1 年間(毎週木曜日)に講座を実施していたとのこと。校長は立場上、生徒、保護者、教員、また対外的にも直接影響力のある役目を担っているので、相応しい人を育てていくことがとても大切というお話だった。

2 つ目の共学化に関する話題では、共学化を検討して実際に共学になった学校と一度検討したが女子校のままにしたという学校があり、その両校ともその選択に納得されている様子だった。女子校、共学校のいい点、悪い点はあるが、それぞれの性の特性や女性が社会に出た時に男性にはない選択を多くしないといけない状況を考えると女子だけで教育する意味もあるのでは、というお話しもあがった。
話し合いのテーマ①管区長・地区長グループ〕…「学校経営から修道会が撤退するかどうか」 ②理事長グループ〕 …「次期理事長を誰にするか」③〔校長グループ〕 …「不登校の受験生を受け入れるか」…「進学実績を上げるため、朝の祈りの時間を小テストの時間に切り替えるか」「女子校であるが、近い将来、共学にするか」

C グループ
グループのテーマに縛られず、現実の問題を共有し、重要な論点をそれらから抽出できたと思う。以下、いくつかについて箇条書きで述べる。
・ 統廃合を検討している学校、法人の統合には至っていないが複数法人の理事長を兼務され経営に当たっている先生、いずれも複数が存在した。経営上の課題と、修道会の霊性や建学の精神を統合していく難しさの両側面からの話が出た。
・ カトリック校としての存続か、学校自体の存続かという選択を迫られたとき、後者を優先するという学校関係者が多く存在するのは当然であり、理事会としてもそれを選ぶことも一つ判断としてありうるという意見が出た。
・ カトリック学校は修道会が経営するというビジネスモデルのものが多く、修道会が去ってしまうと色々な問題が起こるのはある意味当然であり、そうなる前に次のモデルを立てることが重要である、という指摘があった。
・ これらの、統廃合等を含めた問題を考えるとき、理事会の理事の構成、監事の人選が重要であり、十分に配慮しておかなければならないという指摘があった。
・ ミッションについて検討する会議をトップの会議として置くことも重要な方策として考えられる、という意見があった。

D グループ
大切と思われた点
1. 理事長などの後継者を選ぶためには、本当の意味での共同識別が必要である。規約に、その選定の基準を文字化しておいたことが、よりよい選びの助けになったという体験が分かち合われた。経営母体の学校に関わる会員の共同識別も必要である。
2. 後継者の養成には、キリスト教の価値観のみならず、創立者が大切にし、継続されている独自の伝統を含めた建学の精神を伝え、カリスマの豊かさを大切にしたい。理事の方々との黙想会も有益だとの報告もあった。

E グループ
・ 地域の人々との協働が存在を知ってもらうために役立つ。
・ 小教区とのかかわりを大切にすること、協働。
・ 建学・創立の精神を深め、教員と共有することが大切。それに戻っていくこと。それを自分の言葉で語れるようにすること。
・ リーダーの養成(信徒が次世代の人を養成できるように)。
・ 経営の面があるとしても、学校は福音宣教の場であるということをはっきりとつかんでおくこと。(それが明確になったことは良かった。)
・ 状況によっては、教区長である司教様との相談も必要である。
・ 喜びをもって自分が生きる、宣教しているという生き方をすること。
(様々なものがあり、内容としてまとめておりません。)

F グループ
基調講演で印象に残った言葉
・リフレクション・反省ではなく客観的に見る・愛が豊かになる方向・自分の内的な動きやパターンを知ることが大切・よりよいもの(マジス)へ心は開かれているか・耳を傾ける(ディスカッションしない)

・荒みのときに決めない・リーダーシップとは望みを引き出すこと

不登校生徒等の受け入れや支援に対する各校の現状
・受け入れないことを選択するのは難しい・みんなで面倒を見ていこうという教員は多い

・一部の教員に負担がかかる現状がある・受け入れ態勢ができていないというのはただの理由付けに過ぎない

・受け入れ態勢を作るのが先か、受け入れるのが先か・足らないものは学校にも多くあるので保護者との連携が必要・「特別支援学校化」を選択していいのか

共同識別について
・よりよい選択といわれると分かりやすい・誰でもいつもよりよい選択をしようとしている・それが本当によりよい選択になっているかをステップを踏みながら判断する必要がある・客観的に納得して選ばな
ければならない

・決断を下すのは実際には荒みの状態のときが多い

・自分の偏りや傾向はある

・自分な
りの結論が先にあり、後からよりよい理由を考えていることがよくある

G グループ
午前「識別体験」
1.「不登校の受験生を受け入れるか」
・ 受験生のこれまでの不登校の理由および家庭的背景が不明であるが、カトリック学校としては、受験の機会を与え、受け入れる方向で考えていくのがよい。
・ 一方で、高等学校の場合、入学後は単位取得の問題がある。入学後の十分な関わりが大切である。
2.学校のルールやきまりについて・・・ 生徒指導的な問題が発生した時、それをどこまで徹底、遵守していくのか、その判断に戸惑う現状がある。
・ ルール、きまりは生徒をよりよく生かそうとするものでなければいけない。ペナルティーであってはいけない。
・ キリスト教は、ルールが先にあるのではない。ペナルティーを科して生徒をよりよくするのではない。

午後「分科会」…午前の識別体験もふまえ、2 日間の学びについて
・ より良い方向を目指すために、識別の基準を学べたことは大きな習得であった。
・ 識別において、他車の意見を自分から出向いて聞くことの大切さを感じた。
・ 自分の考え方や感じ方の特徴を知ることができた。
・ 「知る力」「見抜く力」をしっかりと身につけた上での「識別」でなければいけない。
・ 何かをした時に、時間を経て分かることもある。「言い過ぎた」などと感じた時、それこそが、神様からの照らし(反射)なのだろう。
・ 大切にしていきたいもの、こだわりはそれぞれにある。絶対的な答えはない。したがって、悩んでいく、考えていくことは仕方がない。一度、反対の立場に立ち、もう少し丁寧に、「識別」していく必要
があることを感じた。

H グループ
・ 特別支援コーディネーターを置いて、受け入れ態勢を整えている。一人でも多く、卒業させたいが、現場と対立することもある。
・ 中学から不登校生徒の受け入れについて打診があると、中学へ行って様子を聞き、保護者面接を経て入学という流れになっている。教育相談チームが年に 3 回程、不登校の親の会を開いている。
・ 不登校の生徒は、県内の学校支援センターに通えば出席扱いとなる。欠課は数えず、欠席日数のみをカウントし、診断書があれば出席すべき日数の 1/2 まで欠席を認める。
・ 不登校という理由で不合格にはしない。入学後欠席が続く場合には、通信制を勧める。
・ 募集要項に、どういう生徒を求めているか、合格は総合判断によるということを明記しているので、不登校の生徒を不合格にすることもある。
・ 通学型の学校なのでと説明し、欠席日数の多い生徒は受け入れていない。
・ 支援センターに専属教員を置き、別室で時間割通り教科からの課題や試験を行うようにしている。

J グループ
まず、「進学実績を上げることがカトリック学校の一番の目的か?」について問われた。
→ それに対して、
・進学実績を上げるのは目的ではなく、生徒募集のための手段である。・一番の目的はキリスト教的な価値観を伝えること。・・が確認された。
そこで、「小テストは朝の祈りの時間でなければできないか?」が問われた。
→ 帰りのホームルーム、授業の冒頭などでもできる。朝にこだわる必要なし。

【結論】朝の祈りを優先させる。小テストは別の時間に実施。
次に、もっと複雑な問題が提示された。
:「主要教科の時間数確保のために、宗教の授業を削るか?」という問題である。

(*現代は「何のために学ぶのか」という説明責任が求められる時代である。どう説明するか、どういう選択をするのが生徒にとって「マジス」なのか、という点が話し合われた。)
・ 宗教の授業は受験、検定、資格には直接つながらないが、人生を生きる上で意味があるのもの。
・ 聖書は世界で最も多く読まれているものであり、それを知っていることは意味がある。
・ 生きる指針を与えられるのではないか。
・ 自己肯定感や、人の生命を大切にする態度を教えたい。
・ 人間の表面ではなく、目に見えない背後にあるものを読み取る力がつく。
・ 宗教の授業が意味のあるものだと生徒が感じれば、それが教員にも伝わり、宗教の授業は残る。
・ 宗教の時間が3時間あるなら、2 時間まで減らすことは考慮の余地あり。
・ 修道者の姿が学校現場から消えつつある現在、宗教の授業までなくなってしまっては、カトリック学校のアイデンティティをどこに見いだすか。 ↓
結論は出なかったが、カトリック学校である以上「目に見える数値や結果」を基準に判断したくはない、
という方向で話し合いが終わった。

K グループ
分科会で出されたご意見などいくつか報告させていただきます。
・ 「識別」についてどう共有していくかが今後の課題。「識別」というものがどういうものなのか教職員間にある程度の共通認識(理解)がなければ「共同識別」は困難なのでは? 職場内での研修会を考
えてみたいが、実践例などあれば教えていただきたい。六甲学院などイエズス会系の学校はお持ちでは?
・ 「望ましいコンセンサスは必ずしも立場のコンセンサスではなく、価値のコンセンサスである」という言葉を、複数の先生が話題にされていた。
・ 職員会議の前に「ニーバーの祈り(ラインホールド・ニーバー/大木英夫 訳)」を唱えておられるとの報告があった(会議室に掲げられている?)。「識別する知恵を与えたまえ」と祈っていたことにあ
らためて気づかされたので紹介されたとのこと。また、職員会議の前に静かに黙想してから始めるという学校もあり、祈りや黙想の意義を再確認した。
ニーバーの祈り(原題 The Serenity Prayer)
「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ」

L グループ
・ テーマについて、個人識別、共同識別を体験した。
・ 生徒が集まらないことだけを理由に共学化に進むことは違うのではないか、一方、女子校に留まるなら女子教育を続ける意義を明確にすべき(伝統を守るためとかではなく)という点で一致することができた。
・ また、この識別に当たって、男女の在り方の時代的変化も視野入れる必要があるのではないかとの意見も全体で受け入れることができた。

М グループ
1.参加者各校の現状 分かち合い
・男子校 1 校、女子校 7 校(内、小学校まで共学が 3 校)
・共学化に関して前向きに検討している学校は、ほとんど無し。
・地域によっては「女子校ブランド」のイメージが強い。(京都)
・女子校としてのメリットを打ち出していきたいが、このままで良いのかという葛藤を抱える学校も複数。
2.個人としての識別 振り返り(15 分ほど)
3.識別の共有 分かち合い
<自分の偏りとは>
・「現実の生徒募集が厳しいから」という焦り。
・「うちの学校はもう決まっている」という、伝統や歴史に対するこだわり。
・逆に、「共学化したから大丈夫?継続性は?」という不安感。 など
<共同識別のための分かち合い>
・(小学校まで共学)中学校から男子はバラバラになるのがわかっていても、入学を希望してくる男子の声をよく聞くこと。
・創立者の精神や行動を踏まえると、女子教育にこだわる必要はない。
・「私たちがやりたいこと」よりも、子どもたちにとって「今、必要なこと」を選び取ることが大切。
・共学や別学の話の前に、カトリック校としての使命は何かが大切。
・AI の時代だからこそ、カトリックの教え(愛・平和の精神)が、より必要。
その他、多数の意見

N グループ
全体のテーマ
校長・理事長・総長菅地区長の集いに参加させていただき、誠にありがとうございました。日本の人口全体、特に子供の人口が減っている、信者でない管理職や理事が増えている中、直面する課題と向き合うために、識別に基づく考え方、精神、判断がよいとのことです。カトリック学校の経営アプローチとして、この研修テーマと学ばせていただいたコンテンツはとてもよかったと思います。学校の日常管理にできる限り活かせていきたい。

校長グループ③ (女子校であるが、共学にするか)
21 世紀の 5 分の 1 が終わるところ、日本の保護者はカトリック学校の 21 世紀中期・後期の次のステップを期待していると思います。神様のための学校教育、日本の社会の積極的な活躍のため、我々はどう共通進行をすればよいか、もう少し話すメニューにあればよいかと思います。状況が厳しければ、厳しいほど、さらによくする、さらに強くなる検討は大事です。校長グループセッションは生徒募集中心の話となりました。互いに状況の厳しさ共有が多めでした。でも、生徒募集課題は原因でもなく、解決でもありません。共学にするかどうかは学校の総合発展戦略の一部として考えればよいでしょう。グループ名未記入
これまでの長い歴史の中で培ってきた女子校の伝統を引き継ぎながら共学化にも生かしていくことが大切である。心の教育を男子にも行っていく。
・ 共学化を男女と考えるか(性差はなし)、男子と女子と考えるのか 各校で考えることも大切。女子と男子は違ってよい、ということを伝え女子、男子のそれぞれの良さをお互いに認め合っていけ
るようにしていく。
・ 共学化するにあたってはいろいろな問題点が出てくるが女子校であろうと共学であろうと、「自分は愛されている」と生徒が感じられる運営をしていくことが大切である。そのために教師は愛を持って、
カトリック精神を忘れずそして余裕をもって接していくことが大切である。
・ 女子校を存続するべきという考えはとても大切だし、これまでの女子教育を尊重しながら、なんのために共学化するのかという根底をしっかりとさせ、話し合いを進めていく必要がある。また、ミッシ
ョンスクールに関わる教員として建学の精神や教員の研修などを行っていく。特に話し合いの中では、教員同士の信頼関係が大切。対話の雰囲気をよくしていく中でしっかりと一人一人の意見を聞くこと
が大切である。それぞれの先生の特性を生かしたりしながら話し合っていく。

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2019年7月2日