・中国当局、教員に「党の教育理念への忠誠」求め、宗教を信じる教員、学生に懲罰(BW)

 宗教の教えに従うか、または、中国共産党に忠誠を誓うかの二者択一を迫られ、宗教を選んだ者には停職、除籍、生涯にわたる弾圧等の重い代償が与えられている。

中国のある大学中国のある大学(写真:インターネットより)

 中国では大学を含む教育機関の教員に「社会主義の後継者」を育てる使命が与えられており、軍、共産党党員、公務員のように「党の教育理念に忠誠を誓う」ことが求められている。当然、宗教の信仰も禁じられている。一方、学生も退学をちらつかされ、棄教を迫られている

*大学の教員に停職処分が下る

 北部の山西  のある大学で教鞭を執り、博士号を持つ人物が、信仰を理由として降格処分を受け、その後、停職処分を受けた。

 2019年4月、この教員が宗教の集会に参加している、という報告を受けた大学は「法律に違反している疑いがある」として教員を停職処分に処した。

 停職処分を言い渡す前、大学は教員に繰り返し棄教を求め、公務員として宗教の集会に参加することはできない点、「違法な場所」から距離を取る必要がある点を伝えた。調査中、大学は教員が逮捕された場合は、給与の支払いを止め、停職処分を下すと脅していた。

 大学の管理部門が教員を問題視したのは今回が初めてではなかった。2年前、中央政府の検査班の圧力を受け、大学は「違法な布教活動を実施」したとして勤務評価を下げていた。その直後、降格処分を受け、教職を解かれて基本給のみが支払われることになった。

 教員は2ヶ月の停職期間を経て職場に復帰したものの、単調な仕事ばかりを与えられている。さらに「政治的にデリケートな人物」と見なされ、毎月大学に思想に関する報告書の提出を義務づけられている。

 この教員はBitter Winterに対し「宗教の信仰に危機が訪れています」と述べ、いつ解雇されてもいいように準備をしていると加えた。

 2017年11月、山西省のある大学の准教授が、信仰が理由で停職処分及び1年間に渡る減点処分を受けた。懲罰期間は終了したものの、教職への復帰は認められていない。

*士官学校の生徒が退学処分を受ける

 中国では良心に従い、宗教の教えを守ることを選択した者は、報いを受けることが多い。

 国防技術を専門に学ぶ士官学校の22歳の学生は、キリスト教の棄教を拒んだために退学処分を言い渡された。7月に実行された学生の信教に関する徹底した調査の後、学生に退学処分が下った。この調査は、2019年の始めに中央軍事委員会から与えられた命令を受けて行われたものであった。

士官学校が宗教の信仰を理由として学生に退学処分を与えた。士官学校が宗教の信仰を理由として学生に退学処分を与えた。

 情報筋によると、学校側は、この学生が入学する前に宗教をもっていることを把握していたが、成績が優秀であったために入学を許可した。学校は、キリスト教徒を受け入れていないこと、そして、兵士は宗教をもつことができないと明確に伝えるため、「思想教育」を用いて、キリスト教を信仰するこの学生に棄教を求めた。そして、学校を辞めるか、もしくは、棄教するかの選択を迫った。

 この学生は率直に「キリスト教の教えは人生よりも大切なものです。教えがない人生は人生とは呼べません」と語った。

 中国東部、山東省煙台  在住の25歳のキリスト教徒も同様の経験をしていた。軍隊に入ったものの、信仰が理由で2017年に除隊処分を科されていた。

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2019年9月28日