・バチカン・中国の司教任命に関する暫定合意から一年-合意内容は堅持(La Croix)

Two Chinese bishops, including Bishop Giuseppe Guo Jincai of Hebei, attend their first synod meeting at the Vatican, Oct. 6, 2018. (Photo by Alessia Giuliani/CPP/Ciric)

 

(2019.9.20 La Croix Nicolas Senèze)

 彼らは小さなカテドラルの前で誇らしげにカメラに向かってポーズをとる、赤いカズラが白衣に映える、百人の赤いストラを掛けた司祭と修道服のシスターたち、白のカソックの下に赤色を着た侍者たち、そして5人の司教たち… 全員が微笑みを浮かべている…。

 記念写真の中央に立つのは、8月26日に教皇の同意を得て叙階されたヤオ・シュン司教、山東省の済寧教区長だ。就任式で読まれた書簡によると、彼の新しいポストは「特別の緊張のない」ポストだ。

 そして二日後に、シュウ・ホンウェイ司教が陝西省の漢中市で叙階された。ここでもまた、「当該司教候補は教皇の同意を得た」ことを、叙階式で読まれた書簡が確認し、9月22日で一周年を迎えるバチカンと中国の司教任命に関する暫 定合意が完全に実行されたことが強調された。

 二人の新司教のそれぞれの教区は、不法移民と当局の間の争いがそれほど明確でなく、長い間、教皇の同意があり、今回の歴史的な司教叙階には大きな問題がなかったのだ。

*「これは革命的なことだが」

  「今後の中国での叙階すべてが同じ程度のものになる、ということにはならないでしょう。とくに、もっと複雑な事情を抱え、教会内部でさえも争いが激しいことろでは」と語るのは、中国事情に詳しいジャーナリストのジョアンニ・バレンテ氏だ。だが、それにもかかわらず、二人の司教が暫定合意後に新に叙階されたことは、この一年の間に環境が劇的に変わったことを示している、と言える。「司教の選択について、教皇が最終判断を得たということが、中国における司教任命の枠組みが変えた。この70年間、実際上の問題が続いていた中国で、です」と強調した。

*中国当局は、教会の問題には少しの関心もない

 これまでの暗黒の年月の間、不法移民に対する懸念は、全ての犠牲を払って教皇とつながりを持ち続けた。それはストレスを感じさせる状況であり、時にはそれは高くつき、何人かの司教たちが当局への登録(現在はそうすることが要求される)に難色を示していることを説明していた。「私たちは、彼らの精神状態を理解せねばなりません… 50年にわたって、政府への登録はカトリック教会に対する国家による管理、と受け取られてきました」とバレンテ氏は語る。

 「例えば最も秘密な活動をしているカトリック信徒さえも、暫定合意を拒むことがないとしても、そのうちの何人かが持つ疑いを、理解することはできます」-それは、中央政府・共産党の厳しい政策が続けられている最中に存在する疑問だ。バレンテ氏は「実際のところ、中国当局の関心は、公共の秩序を保ち、カトリック共同体がそれを妨げないのを確実にすることだけにあるのです。純粋に教会に関わる問題には少しの興味持っていません」と言う。

 その一方で、バチカンは中国における司教の当局への登録について注意を払い続けている。中央政府・党の宗教規制の強化はこのように福音宣教に狙いを定めたものだーたとえ地方政府が、借りを返したい人々と共に、カトリック教会共同体に対して、それを使うことができるとしても… 。

 現在の変革期の状況を考慮に入れて、バチカンの福音宣教省が6月に出した指針は、当局への登録は教会の教えに反するものではないが、良心の自由に反することはできない、と確認している。これは、対話を定期的に行っている当局への対応について、間接的に言及したものだ。中国人のメンタリティーの基本的な点は互いに話すことが公式合意よりも重要であり、そうした取り決めは、環境に応じて容易に”進化”する、ということを知っておく必要がある。

*「中国の教会が置かれた現実は…」

 しかしながら、中国国外では、明確な合意内容の不在は、あらゆる種類の憶測を招く。数多くの情報-イデオロギー的な動機から合意に反対する人々によって、しばしば操作された情報ーが飛びかう。彼らの信念の中には、古い中国像とカトリック教会の置かれた状況に基づいたものもある。だが、真実は、この国の中で社会的、経済的な激動が、全速力で進んでいる、ということだ。

 バレンテ氏は「私たちは、中国の教会の現実を見なければなりません。見下さないように注意すべきです」と警告。そして、中国の多くの司教たちは信仰心をもった強い人であり、自分たちの教会共同体を守るために時として、困難な決断を求められている、と指摘する。そうした司教たちの関心は、完全に中国人のものとなった教会に声明をもたらすことなのだ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。)

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2019年9月22日