・「主の実存」を信じている米国のカトリック信徒は全信徒の3分の1(Crux)

New survey: Only one-third of Catholics believe in Real Presence

Boston Cardinal Sean P. O’Malley carries a monstrance during eucharistic adoration at the 2017 convocation of U.S. Catholic leaders in Orlando, Florida. (Credit: Bob Roller/CNS.)

(2019.8.9 Crux Managing Editor Charles Collins)

 カトリックの神学者の誰かに、キリスト教徒の生活で何が一番重要か、と尋ねたら、「ご聖体だ」と答えるだろう。 それが、有力世論調査機関Pew Research Centerが発表した最新の調査結果に、米国の司教たちが”ダブル・パンチ”を受けた理由だ。

 先月23日にPewが「米国人は宗教について何を知っているか」に関する報告書を発表した。それによると、米国のカトリック信徒の半分が、カトリック教会がご聖体はイエス・キリストの実際の体と血であると教えているのを知らない、ことが明らかになった。

 知っていると答えた半分のうちの大部分は、ご聖体はキリストの体のシンボルだ、と考えており、「教会の教えに確信がもてない」と答えたのが4パーセント。これが最初のパンチだった。

 そして今週、Pewは報告書の第二部を発表し、ご聖体が実際のイエス・キリストの体と血だ、と信じている信徒は3分の1しかいない、との世論調査結果を明らかにしたのだ。 これが何を意味するのかを理解するのに数学の学位は不要だが、Pewは「カトリック信徒の5分の1(22パーセント)が教会の聖変化(祭壇上でパンとぶどう酒がキリストの体と血に変わること)の教えは知っているが、受け入れていない」ことも明らかにした。

 (筆者は、司教たちが、この調査結果が『カトリック信徒の3パーセントが、聖変化についての教会の教えを知らずに、ご聖体の中にキリストが実存されている、という信仰を告白している』としたことに勇気づけられた、とは思わないが)

 このことは、20世紀中期の米国の作家フラナリー・オコナーの言葉を思い起こさせるー「うーん。それがシンボルなら、うんざりだ」 オコナーの言葉は、ご聖体についてカトリック信徒でない人と対話する手紙の中で語られたもので、彼女の友人は、オコナーはご聖体を「とてもいい』シンボルだ、と考えていた、と証言している。

 もちろん、このことをカトリック信徒を自認する人々による一般的な無知のせいにするのは、容易だろう。だが、 Pew Research Centerは、”現役”のカトリック信徒は、教会の教えを信じる傾向が強いものの、少なくとも週に一度はミサに出ているまじめなカリック信徒の「63パーセントは、聖変化についての教会の教えを受け入れているが、37パーセントはミサで捧げられるパンととぶどう酒は象徴的なもので、実際に、イエスの体と血になるわけではない、と確信している」と説明している。

 だが、ほかのことでは、教会の教えは生きているようだ-カトリック信徒の70パーセント以上は、死者の魂は、天国に入る前に、清めを受ける「煉獄」に行くことを知っている。

 もっとも、今回の調査はイエスかノーかの択一式ではなく、複数の選択肢から選んで答える形をとり、告解、自己究明でなされる魂の浄化、永遠の罰をうける魂が向かう場所、などの選択肢が用意されていた。言い換えれば、多くのカトリック信徒は、煉獄についての教会が教えていることを、ご聖体について教会が教えていることーキリスト信徒の生活の源であり至上なもの、という教えーよりもよく知っているのだ。

 それはなぜか? 多分、「煉獄」が明確に「カトリック的」だからだろうー「煉獄」に対しては他のキリスト教宗派から多くの別の見方が出されている。

 米国の大部分のカトリック信徒は、主の晩餐の記念(注:カトリック教会の場合のミサ)を行っているプロテスタント(大部分がそれを全くのシンボルだと考えている)とは友好関係にある。

 米国ではまた、名目上のカトリック信徒の間で、主の実存への信仰を強める文化的活動もわずかだがされている。カトリック信徒が多数を占める国々で主のご聖体の祝日を祝い、街中で聖体行列が行われていることも、地元の教会の聖堂に入るのを避けている人々にとって、ご聖体の教会の教えを思い起こすきっかけになりうる。

 このことは、筆者が「Rex Mottram シンドローム」と呼ぶ現象によって混ぜ合わされるかもしれない。Rex Mottramは、英国の作家イーヴリン・ウォーの小説「Brideshead Revisited(ブライヅヘッドふたたび)」(注:ウォーがカトリックに改宗して初めて書いた作品で、1920〜1930年代のイギリスのカトリック貴族一家の姿が友人の目を通して描かれている)の登場人物の名前だ。結婚のためにカトリックに改宗しようとするMottramが司祭に(要約すれば)こう言って狼狽させるー「カトリックになるために必要なことを教えてください。そのとおりにします」。

 Pewは教会の教えを知っていて、それを拒否する信徒の数を示したが、ご聖体についての教会の教えを正確には知らないが、教会と一致するために見方を変える信徒の数は明らかでない。 いかなる出来事でも、以上のような警告は米国の教会指導者たちに少しの慰めにもならないだろう。結局のところ、「他の秘跡、そして聖職者の全ての職務、使徒職の働きは聖体と結ばれ、聖体に向けられています」という教会の教えに行きつく。

 米国の司教協議会は11月に秋の定例総会を開く。そして、話し合うべき重要な課題がある。

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(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年8月10日