【教皇 リスボン訪問3日目】WYD大会参加の若者たちと昼食懇談

ワールドユースデー大会の参加者たちと昼食を共にする教皇フランシスコ 2023年8月4日 リスボン、駐ポルトガル・バチカン大使館ワールドユースデー大会の参加者たちと昼食を共にする教皇フランシスコ 2023年8月4日 リスボン、駐ポルトガル・バチカン大使館  (Vatican Media)

(2023.8.4  バチカン放送)

 ポルトガル訪問3日目の4日昼、教皇フランシスコは、リスボン市内のバチカン大使館で世界青年の日(WYD)大会に参加する若者たちと昼食を共にされた。

 WYD国際大会では、参加者を代表する世界各国の若者たちと教皇が昼食を共にすることが、一つの「伝統」となっており、今回は、ポルトガルから3人、ペルー、フィリッピン、赤道ギニア、米国、パレスチナ、コロンビア、ブラジルからそれぞれ1人の若者たちが出席し、リスボン総大司教、補佐司教と共に、教皇と歓談した。

 教皇と若者たちの対話の中では、「平和」や「命の保護」「新しい世代の挑戦」などがテーマとなったという。

2023年8月5日

【教皇、ポルトガル訪問】教皇、「世界青年の日(WYD)」大会出席などポルトガル訪問開始

2日、リスボンの空軍基地で歓迎の子どもたちに祝福を与える教皇フランシスコ

 教皇フランシスコが2日朝、リスボンでのWYD大会出席などのため、ローマを発ち、現地時間午前10時に同市のフィゴ・マドゥーロ空軍基地に到着された。海外司牧訪問(イタリアを除く)は今回で42回目。WYD大会は1日から6日まで開かれるが、教皇は開催地のリスボンを始め、カスカイス、ファティマでも若者たちとの出会いを予定しておられる。

 訪問初日の2日、教皇はリスボン到着後、市内の大統領公邸・ベレン宮殿に向かわれ、正門前での歓迎式の後、公邸の芳名帳に署名と共に「ポルトガルにおける希望の巡礼者として、心若きこの国が兄弟愛の水平線に漕ぎ出し、出会いの都市リスボンがヨーロッパと世界の重要な問題に共に立ち向かうための方法に霊感を与えることを、祈り、望みます」と記帳された。

 公邸にマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領を表敬訪問された後、騎馬隊に先導され、ポルトガル各界要人や外交団との会見が行われるベレン文化センターへ車で移動された。沿道には、ワールドユースデー大会に参加する若者たちや市民が詰めかけ、教皇を熱心に歓迎した。

 続いてバチカン大使館でアントニオ・コスタ首相と会見した後、ジェロニモス修道院で司教、司祭、助祭、修道者、神学生たちと夕の祈りを捧げられる。

 

 3日木曜日は、午前に、リスボン市内のポルトガル・カトリック大学で学生たちと、続いてカスカイスのスコラス・オクレンティス本部で若者たちとお会いになる。夕には、リスボン市内のエドゥアルド7世公園での歓迎式に臨まれる。

 4日金曜日は朝、市内のプラサドインペーリオ庭園 で若者代表たちと赦しの秘跡をなさった後、セラフィナ地区にあるセントビンセントデポールの社会教区センターを訪問され、代表たちをお会いになる。バチカン大使館で若者代表たちを昼食を取られ、夕方には、エドゥアルド7世公園で若者たちと十字架の道行きをされる予定。

 5日土曜日は、ヘリコプターでファティマに向かわれ、聖母大聖堂で病気の若者たちとロザリオの祈りを捧げられた後、リスボンに戻られ、夕方にブリットの聖ヨハネ学園でイエズス会士たちと私的な会合を持たれ、夜、市内のテージョ公園で若者たちと夕の祈りをされる。

 最終日の6日日曜日は「主の変容」の祝日。テージョ公園でWYD大会のミサを大会参加者たちと捧げられ、正午の祈りをされる。午後は「海のプロムナード」でWYD大会のボランティアたちと集いを持たれ、フィゴ・マドゥーロ空軍基地で歓送会の後、午後6時過ぎに同基地から空路、ローマへの帰途に就かれる。ローマ着は現地時間午後10時過ぎの予定だ。

 

 なお、教皇フランシスコがポルトガルを訪問されるのは2回目。前回の2017年5月には、コヴァ・ダ・イリアにおける聖母出現から100年を記念するとともに、「ファティマの牧童」フランシスコ・マルトとジャシンタ・マルト兄妹の列聖式をとり行うためにファティマを巡礼されている。

2023年8月2日

・「世界青年の日(WYD)リスボン大会が、野外ミサで開幕

  世界青年の日(WYD)第 37 回大会が1日、ポルトガルの首都リスボンのエドワード7世公園で、リスボン大司教、 マヌエル・クレメンテ枢機卿の司式によるミサで始まり、世界中からり数千人の若者が参加した。

 ミサは、若者たちが祈り、笑い、音楽で団結し、この素晴らしいイベントに参加するために世界中を旅するそれぞれの思いを共有する感動的な機会となった。

 クレメンテ枢機卿は、bemvindos(ようこそ、いらっしゃい)!」という温かい歓迎の言葉でミサを始め、今大会のテーマ “Mary arose and went with haste”を中心に説教を行った。枢機卿は、参加者たちに対して、「皆さんは、長い道のり、様々な交通機関を乗り継ぎ、多大な出費をして、たいへんだったでしょう」と労ったうえで、「そのような数々の困難を越えてきたこの旅は、あなたがたの人生の旅と同じように、日々、新たな経験を重ねる重要な意味を持っています」と強調。「リスボンはあなたがたを心から歓迎しています。これまでの旅で訪れた、あるいはこれから訪れるポルトガルの他の地域もそうです」と述べた。

  大会に参加したくても、時間や費用などの問題で参加できなかった若者も世界中に数多くいる。ナイジェリアから参加したある若者は、「ナイジェリアは遠いし、旅費も高額でした。希望しても参加できなかった人も少なくありませんが、彼らも大会に霊として参加している、と信じています」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月2日

・死傷者多数、リヴィウ市民に卑劣極まるミサイル攻撃に現地の大司教が哀悼と速やかな和平実現を祈る

Burnt-out cars line a street in Lviv after Russia’s recent rocket attack  (ANSA)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年7月7日

・ドイツのカトリック信者数が昨年一年で過去最大、52万人も減少―背景に性的虐待による信頼危機

(2023.6.30 カトリック・あい)

  ドイツ司教協議会(DBK)が6月28日発表した年次統計によると、2022年一年で同国の52万2821人のカトリック信者が教会に背を向けた。これは2021年の35万9338人を大きく上回り、過去最大の教会離れを記録したことになる。

 背景には、聖職者による性的虐待とそれを隠ぺいしようとする高位聖職者の対応による教会に対する信頼の危機があるとされており、ゲオルグ・ベツィングDBK会長は、この数字を深刻に受け止めるとともに、カトリック信者に対し、落胆することなく、被害者対策や教会改革に努めるよう呼びかけた。

 カトリック教会の信者数は、キリスト教各派の中で最大の2090万人に上るが、2010年にドイツで聖職者の性的虐待危機が深刻化して以来、10年余りの間に約370万人が教会を去っている。聖職者による未成年者性的虐待の被害者は1946年から2014年までに3677人に上るとの調査結果があるが、すべての聖職者にアクセスできていないことから、実際の被害者数はさらに多いと見られている。

 DBKはこの問題について公式に謝罪した後、被害者に対する補償制度などの整備に取り組んできたが、依然として不十分との声も被害者の間にある。また、ドイツ最大のケルン教区では、大司教のヴェルキ枢機卿が、教区司祭などの性的虐待を隠ぺいしたとして司法当局の調べを受けている。教会に対する信者の信頼回復するための教会改革も、司祭の独身制の再考や女性の教会における役割の引き上げなどは、内部の保守勢力やバチカンから抵抗を受けており思うように進んでおらず、教会離れは止まりそうにない。

(さらなる情報はLa Croix の記事を参照:https://international.la-croix.com/news/religion/more-than-half-a-million-germans-left-the-catholic-church-in-2022/18051)

 

2023年6月30日

・ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

(2023.6.14 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom

ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

約700人のキリスト教徒を殺害したする報告書を明らかにした。

行使したとして告発されていたが、<詰める>「ナイジェリアのイスラム過激派指導者

 ヤウンデ(カメルーン)発 – ナイジェリアの有力人権団体が12日、イスラム教徒のフラニ族の遊牧民を主体とした過激派が5月29日に退任した同国のブハリ前大統領への「退任祝い」として約700人のキリスト教徒を殺害したとする報告書を明らかにした。

 「国際自由人権協会」と「法の支配協会」がCruxに送った報告書によると、ブハリ前大統領は 2015年からの任期中に、反キリスト教、親イスラムの政策を推進するために大統領としての権力を行使したとして告発されていたが、「ナイジェリアのイスラム過激派指導者(である大統領)が政権を去る機会を狙って、フラニ族過激派が 700 人以上の無防備なキリスト教徒を虐殺した」としている。州ごとの殺害された内訳は、ナイジェリア中東部のプラトー州で350人、ベヌエ州で190人、中北部のカドゥナ州で100人、中部のナサラワ州で62人、タラバ州で40人、ボルノ、ヨベ両州で40人、同国と隣接するニジェールで50人という。

 フラニ族は、北西はモーリタニアから東は中央アフリカまで西アフリカの多くの国に分布する民族遊牧民を起源とし、現在でも牧畜を営む者が多いが、 2000年代以降、ナイジェリアのカドゥナ州で農耕民のキリスト教徒との間で土地利用をめぐる衝突が始まり、しばしば暴力事件に発展し、双方に多数の死者が発生している。 国際キリスト教人権監視機構の調査では、フラニ族の過激派は「過去数年間でボコ・ハラムよりも多くのキリスト教徒を殺害し、キリスト教徒の農民を追い出している」と報告されている

 12日に出された「国際自由人権協会」と「法の支配協会」の報告書は、「2023年4月12日から6月12日までの60日間では、1100人以上の無防備なキリスト教徒がナイジェリア政府の支援するイスラム過激派によって殺害され、2023年1月1日から6月12日までの160日間では2150人のキリスト教徒が殺害され、1400人以上が拉致されそのうち140人が、 生きて家族の元に帰れなくなる恐れがある」。さらに、「4月12日から6月12日までの60日間に100の教会がイスラム過激派によって破壊され、聖職者20人が襲われている」としている。

 この報告書の前、4月10日に、ナイジェリアで2009年の”イスラム蜂起”以来、1万8100の教会と2200の学校が理不尽に焼き払われ、少なくとも5万3350人のキリスト教徒が殺害された、という報告書が出されており、それによると、フラニ族過激派による暴力行為の多くが集中したカドゥナ州では、ナシル・エル・ルファイ前知事統治下の8年間で、少なくとも3万1350人のキリスト教徒が切り殺され、200人以上の聖職者が襲われた襲撃された。また、イスラム教徒穏健派も同期間に約3万4000人が殺害された、という。

 また、報告書は、主にナイジェリア北部に住む5000万人以上のキリスト教徒が「キリスト教徒であるという理由でイスラム過激派による深刻な脅威」にさらされ、「1400万人が家を追われ、800万人が殺害を避けるために家からの避難を強いられている… 約500万人が避難民となり、ナイジェリア国内の国内避難民(IDP)キャンプや地域や隣接する準地域の国境にある難民キャンプに強制収容されている」と説明している。

 そして、「キリスト教徒とキリスト教会に対する迫害の責任は、ブハリ前大統領とカドゥナ州エル・ルファイ前知事の「過激なイスラム主義」にあると糾弾。エル・ルファイの最近の言動が容疑を裏付けるものとして引用されている。入手されたビデオ録画で、カドゥナ州前知事は「2015 年以来、カドゥナ州における完全なイスラム支配を再現することに成功し、ナイジェリアをイスラム国に変貌させることに成功した」と誇っており、最終的にはイスラム教徒によるイスラム教徒のための大統領の誕生に至った」と報告書は述べている。

 さらに、カドゥナ州を含むナイジェリアの中部地域でのキリスト教徒の大量殺害は「慎重に計画され、組織的に実行され、十分な資金が提供された”国家聖戦プロジェクト”であり、 バシル前大統領の残虐な治世(1989~2019年)のもとで行われた」と報告書は述べ、「大量虐殺と人道に対する罪を犯した」としてエル・ルファイ前知事とブハリ前大統領らの処罰を主張、「英国政府は、1998年国際刑事裁判所規程の当事国として、エル・ルファイ、ブハリ、ブラタイ、ムサ・ダウラ、アラセ、アルカリ・ババ、およびその他の現役及び退任したナイジェリアの治安に責任を持つ政府高官らの処罰が確実にすべきである」と元宗主国である英国に要求。「英国政府は… 『民主的で人権尊重する国家』として世界に誇る以上、陰惨で卑劣な人権侵害の加害者たちを容認する国と見なされることはできないはずだ」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年6月14日

・「核軍縮と核兵器廃絶に向け具体的な合意形成を」G7首脳たちに日米の4司教が要望-問われる主催国日本の司教団の姿勢

(2023.5.20 カトリック・あい)

 19日から21日まで開かれる広島G7サミットに向けて、被爆地の広島、長崎、そして米国のサンタフェ、シアトルの4人の司教がG7首脳たちあてに、「世界の平和、とくに核軍縮と核兵器廃絶に向けて具体的な合意形成が図られること」を願う共同宣言文を出した。

 疑問に思われるのは、共同宣言を出したという発表、宣言の内容の公表は20日現在、日本ではカトリック広島、長崎両教区のホームページでしかなされていないことだ。日本のカトリック中央協議会のホームページには皆無。しかも、司教の教区司祭、信徒に対するメッセージを共同宣言と合わせて載せているのは広島の白浜司教のみ。長崎教区は「米日の4つの教区が共同宣言文を発表しましたのでお知らせします」という教区事務局長の他人事のような”前文”が共同宣言の前に載せられているだけだ。

 被爆地広島で初めて開かれた民主主義の価値を共有する世界の主要7か国と欧州連合の代表が参加したG7、ロシアや中国、北朝鮮による核の脅威が高まる中でのG7へのメッセージであれば、常識的に言って、広島G7の主催国・日本の代表である岸田首相に対するのは日本司教協議会会長である菊地・大司教であり、今回の宣言文の代表者も菊地・大司教であるのが筋であり、適切であったと思われる。

 日本の司教団としてではなく、被爆地の二つの教区長のみの署名にとどまり、しかも長崎教区は司教のメッセージさえもない、という腰の引けた日本の司教団の姿勢は、内外の司祭、信徒たちの目にどのように映るのだろうか。

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 サミット開催地広島の白浜司教の教区の司祭、信徒あてのメッセージと、共同宣言の全文以下の通り。

広島教区の兄弟姉妹の皆さん

 いよいよ5月19日から21日まで、広島でG7サミットが開催されます。広島でかつ保有国を含むG7サミットが開かれるこの機会に合わせて、世界の平和、とくに核軍縮と核兵器廃絶に向けて具体的な合意形成が図られることを願い、米国で核兵器の開発製造が行われている研究所が所在する地域を管轄するサンタフェ大司教、米国で最も戦略核兵器を配備している地域を管轄するシアトル大司教、そして戦争被爆地を含む地域を管轄する長崎大司教と共同で、カトリックの霊的指導者として、G7広島サミットの首脳宛に共同宣言文を出しました。その英文と日本語訳を共有したいと思います。
なお、サンタフェのウェスター大司教、シアトルのエチエンヌ大司教が、8月4日から7日に広島その後、8月7日から9日に長崎を訪問され、平和行事に参加してくださる予定です。
教区内では、5月13日~31日までを、「世界の平和とシノドスのための祈りの期間」に設定して、キリストの「平和の使徒」となる使命のために、皆さんの霊的なご支援を、どうかよろしくお願いいたします。

2023年5月18日 広島教区 司教 アレキシオ 白浜 満


2023年5月 15日

米国大統領  ジョー・バイデン  日本国内閣総理大臣  岸田文雄  フランス大統領  エマニュエル・マクロン  イタリア首相 ジョルジャ・メローニ  ドイツ首相 オラフ・ショルツ  英国首相  リシ・スナク  カナダ首相 ジャスティン・トルドー

 G7首脳の皆様へ

  私たちカトリック教会の霊的指導者は、来る主要7カ国首脳会議(G7)を機会に、地球規模の検証可能な核軍縮に向けた具体的な措置を講じることを強く求めます。

  岸田文雄首相が、核戦争の最初の被災地である広島市をサミットの開催地に選んだことを私たちは高く評価します。それだけで強力なメッセージとなるでしょう。私たちは、核戦争の長期にわたる惨禍を認識するための一歩として、G7首脳と広島・長崎の原爆被爆者との会談を熱烈に歓迎します。

  私たちは、米国で核兵器に最も資金を費やしている教区であるサンタフェ、米国で最も戦略核兵器を配備している教区であるシアトル、そして世界で唯一の戦争被爆教区である広島と長崎のカトリックの霊的指導者として、摂理によって突き動かされて声を上げます。

  岸田首相は、今回のサミットは、「核兵器のない世界の実現に向けた強いメッセージを発信するために議論を深め」、また、「核兵器による威嚇やその使用を絶対に拒否するという確固たる決意を示す」またとない機会となると述べられました。

  私たちはこの意見に強く同意します。私たちは、サミットを通じて、G7首脳である皆様が、核軍縮・管理の重要性に国際的な関心を向け、核不拡散の努力に対する世界的なコミットメントを示すことを強く求めます。ウクライナ戦争を核軍縮の実質的な進展のための圧倒的な障害とみなすのではなく、核軍縮の絶対的な必要性を明確に示すものとしてとらえます。

  具体的には、G7首脳に以下のことを要請します。

  • 広島と長崎の原爆投下が被爆者に与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

  • 世界中で行われた核実験がその風下の住民たちに与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

  • 核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない戦争であることを繰り返し強調し、また、2022年11月にG20が合意したように、核兵器の使用や使用の威嚇は 「許されない 」ことを強調すること。

  • 核兵器のない未来の世界を作るという目標を再確認すること。

  • 新たな軍拡競争を防止し、核兵器の使用を警戒し、核軍縮を進めるための具体的な措置を発表し、約束すること。

  • 新戦略兵器削減条約の完全実施と後続条約の交渉のために、米国とロシアの間で真剣な協議を再開すべきであることを改めて表明すること。

  • 最後に、今から半世紀以上前、1970年の核不拡散条約で約束された、核軍縮につながる真剣な多国間交渉に入るという国際的な使命を尊重すること。

 長年にわたり、世界の指導者たちは、核兵器の脅威を取り除き、新たな核軍拡競争を防止し、文明を終わらせる可能性のある核戦争という究極の破局を回避する必要性について語ってきました。ミハイル・ゴルバチョフ、ロナルド・レーガン、そして私たちの教皇フランシスコなど、多くの著名な指導者たちによって、このような呼びかけがなされてきました。しかし、今こそ、言葉を実際の行動に移す時です。

 複数の核保有国が存在し、新しいサイバー兵器や極超音速兵器、人工知能が出現している今日、新たな核軍拡競争は最初の軍拡競争よりも危険であると私たちは考えています。ロバート・マクナマラ米国防長官は、人類がキューバ危機を乗り越えたのは運が良かったからにすぎないと断言しました。人類の継続的な生存を保証するためには、運だけでは十分ではありません。

 私たちは、G7サミットで世界の指導者たちが、核兵器国と非核兵器国の両方と協力し、核戦争の恐怖に苦しむ国や都市が二度とないようにする準備ができており、その意思があり、またその能力があることを示すことを強く求めます。

 地球上の恒久的な平和の願いとともに。

サンタフェ大司教 ジョン・C・ウェスター  シアトル大司教 ポール・エチエンヌ  長崎大司教 ペトロ中村倫明  広島司教 アレキシオ白浜満


May 15, 2023

President of the United States Joe Biden
Prime Minister of Japan Fumio Kishida
Prime Minister of France Emmanuel Macron
Prime Minister of Italy Giorgia Meloni
Chancellor of Germany Olaf Scholz
Prime Minister of the United Kingdom Rishi Sunak
Prime Minister of Canada Justin Trudeau

 Dear G7 Leaders,

 We, the undersigned spiritual leaders of the Roman Catholic Church, urge you to use the upcoming summit of the International Group of Seven to undertake concrete steps toward global, verifiable nuclear disarmament.

We commend Prime Minister Fumio Kishida for choosing the City of Hiroshima, the first victim of nuclear war, as the summit venue. That alone is a powerful message. We enthusiastically welcome the meeting between G7 leaders and the hibakusha – the survivors of the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki – as a step toward recognizing the long-lasting horrors of nuclear warfare.

As the Roman Catholic spiritual leaders of the diocese with the most spending on nuclear weapons in the United States (Santa Fe), the diocese with the most deployed strategic nuclear weapons in the United States (Seattle), and the only two dioceses in the world to have suffered atomic attacks (Hiroshima and Nagasaki), we are compelled by providence to speak out.

As Prime Minister Kishida observed, the summit presents a unique opportunity “to deepen discussions so that we can release a strong message toward realizing a world free of nuclear weapons” and to “demonstrate a firm commitment to absolutely reject the threat or use of nuclear weapons.”

We strongly agree. We therefore urge you to use the summit to center international attention on the importance of nuclear arms control and disarmament and to demonstrate a global commitment to nonproliferation efforts. Rather than viewing the war in Ukraine as an overwhelming impediment toward making substantial progress, we view it instead as clear demonstration of the absolute need to do so.

Specifically, we encourage G7 leaders to:

  • Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering that the Hiroshima and Nagasaki atomic bombings inflicted upon the hibakusha;
  • Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering that nuclear weapons testing caused to downwinders around the world;
  • Reiterate that a nuclear war cannot be won and must never be fought, as well as emphasize that, as the G-20 agreed to in November 2022, the use and the threat of use of nuclear weapons are “inadmissible;”
  • Reaffirm the goal of a future world free of nuclear weapons;
  • Announce and commit to concrete steps to prevent a new arms race, guard against nuclear weapons use, and advance nuclear disarmament;
  • Reiterate that serious talks should be restored between the United States and Russia to renew full implementation of the New Strategic Arms Reduction Treaty and to negotiate a follow-on treaty; and finally
  • Honor the international mandate to enter into serious multilateral negotiations leading to nuclear disarmament, pledged to more than a half-century ago in the 1970 NonProliferation Treaty.

Throughout the years, world leaders have spoken about the need to eliminate the threat of nuclear weapons, prevent a new nuclear arms race, and avoid the ultimate catastrophe, that is potentially civilization-ending nuclear war. These calls have long been echoed by many notable world leaders, such as Mikhail Gorbachev, Ronald Reagan and our own Pope Francis. But it is now time to actually translate rhetoric into action.

We believe that today’s new nuclear arms race is more dangerous than the first arms race, given multiple nuclear actors and the advent of new cyber and hypersonic weapons and artificial intelligence. U.S. Defense Secretary Robert McNamara asserted that humanity survived the Cuban Missile Crisis only by luck. Luck is not sufficient to ensure the continuing survival of the human race.

We strongly urge world leaders at the G7 summit to show by example how international leadership is ready, willing and able to work with both nuclear weapons and non-nuclear weapons states to ensure that no country or city suffers the horrors of nuclear war ever again.

Yours in the hopes of humanity for lasting peace on earth,

The Most Reverend John C. Wester Archbishop of Santa Fe

The Most Reverend Paul Etienne Archbishop of Seattle

The Most Reverend Peter Michiaki Nakamura Archbishop of Nagasaki

The Most Reverend Alexis Mitsuru Shirahama Bishop of Hiroshima

2023年5月20日

・国連WFPがスーダン支援再開、日本でも緊急募金8日から開始

(2023.5.10 WFPニュース)

 アフリカ東部スーダンで起きている内戦で、国民が大きな被害を受け、チャドに3万人、エジプトに4万人、南スーダンに3万人以上が移動を余儀なくされ、隣国でもそれぞれ大きな危機に直面している。国連WFP(世界食糧計画)の職員3名が命を落とし、2名が重傷を負いました。スーダンにおける治安情勢の悪化により、国連WFPは4月16日、現地での支援活動を一時的に停止。命を救うための食料・現金支援、子どもたちへの学校給食の提供、栄養不良の予防や治療といった支援の一時中断を余儀なくされたが、5月1日に、全ての職員とパートナーの安全確保に最大限の注意を払いながら、支援再開を決定した。

 これを受けて、認定NPO法人国連WFP協会(神奈川県横浜市)は、8日からスーダン緊急支援募金を開始している。スーダンの内戦で被災した難民、難民を支えるホストコミュニティー、国内避難民の緊急のニーズに応えるものだ。

 4月5日に新たに国連WFP事務局長に就任したシンディ・マケインは「必要とされている人道支援者とスーダンの人びとを守る最善の方法は、戦闘を止めることです。スーダンでは、戦闘勃発前から1500万人以上の人びとが深刻な食料不安に直面していました。この数は、戦闘が続けば続くほど、大幅に増加すると予想されています。このような時こそ、国連WFPとパートナーが最も必要とされています」と訴えている。

 また日本の国連WFP協会 青木 創 事務局長も「スーダンではこの戦闘前より370万人の国内避難民に加え、110万人以上の難民を受け入れており、1,500万人以上が深刻な食料不安に直面していました。約40huaxiang1.png0万人の幼児と妊娠中・ 授乳中の女性が急性栄養不良に陥っており、現在の危機の継続によってさらに増加することが予想されています。また、重要な港湾都市であるポートスーダンでは8,000トンの食料を確保しています。しかし、国内にある物資のかなりの部分(約17,000トン)が武装勢力の攻撃を受け略奪されたと報告を受けており、皆さまからのご支援がなければ、困っている方々に支援を届けることができない重大な危機に直面しています。日本の皆さまからの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします」と協力を要請している。

■寄付受付および最新情報:寄付ページ:https://www.jawfp.org/oneshot?btn=LPNR2022sudan 電話:0120-496-819(年始を除く年中無休)最新情報:https://ja.wfp.org/

■国連WFPとは:飢餓をゼロにすることを使命に活動する、国連唯一の食料支援機関です。災害や紛争時の緊急支援、栄養状態の改善、学校給食の提供などを活動の柱に、123の国と地域で活動している。2020年にはノーベル平和賞を受賞した。認定NPO法人 国連WFP協会は、国連WFPを支援する認定NPO法人で日本における国連WFPの公式支援窓口です。募金活動のほか、企業・団体との連携、広報を通じて、日本における支援の輪を広げている。

2023年5月10日

・ナイジェリアでは5万人以上のキリスト教徒がイスラム過激派によって殺害されている

Burnt church in Maiduguri, Nigeriaナイジェリア北東部、ボルノ州の州都マイドゥグリで過激派の焼き討ちに遭った教会(Copyright: Aid to the Church in Need)

 スーダンで、国の実権をめぐる国軍と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の激しい衝突が勃発し、民間人の死者が100人近くに上っていると伝えられ、教皇フランシスコも強い懸念をもって注視しているが、同じアフリカのナイジェリアでは2009 年の過激派イスラム組織「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来、キリスト教徒に対する激しい迫害が続き、すでに5万人を超える死者が出ている。

 ナイジェリアの自由・人権団体Intersociety が、同国におけるキリスト教徒の現状をまとめた調査報告書を発表した。「Martyred Christians in Nigeria(ナイジェリアで殉教したキリスト教徒たち)」と題するこの報告書によると、2009 年の「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来これまで14年の間に少なくとも 5万2250 人のキリスト教徒がイスラム過激派の手によって残忍に殺害されている。

 うち3万人以上がブハリ前大統領の政権下にあった 8 年間に殺害されており、治安悪化に対して十分な措置を取らなかった、と批判されている。穏健派のイスラム教徒も14年間で約3万4000人が、イスラム過激派によって殺害された。

 またこの14年間に、放火などで破壊された教会は1万8000、キリスト教系学校が2200に上っっている。

 報告書によると、今年2023年に入っても、事態が改善される見通しは立っていない。年初から4カ月足らずで、すでに1000人を超えるキリスト教徒が殺され、少なくとも 707 人が拉致されている。特に酷いのはナイジェリア北部のニジェール州で、 3 月 14 日にアドゥヌ で 100 人を超えるキリスト教徒が拉致された。 被害は、カツィナ、タラバ、エド、オグン、ナサラワ、クワラ、コギ、ボルノ、ヨベ、アダワマ バウチ、エヌグ、イモ、ケビ、ゴンベ、バイエルサ、クロス リバーなどの州に広がっている。

 ナイジェリアのキリスト教徒は、「ボコ ハラム」だけでなく、過激派グループに加わったイスラム教徒の遊牧民フラニ族によっても命を脅かされている。

 このような事態が続く中で、故郷を捨てることを余儀なくされたキリスト教徒は約 500 万人に上り、ナイジェリア国内や国境に設けられた難民 キャンプに収容されているという。

 ナイジェリアがアフリカのキリスト教徒にとって最も危険な国の一つになっていることは、迫害されるキリスト教徒の国際支援組織「Open Doors 」が1月に発表した現状報告の危険国・地域監視リストにも載せられている。報告によると、ナイジェリアは近年、全世界で迫害により命を落としたキリスト教徒総数の 89% を占めている。また教皇庁の支援組織「Aid to the Church in Need (ACN) 」の最新の年次報告によれば、2021 年 1 月から 2022 年 6 月までの1年半の間だけで 7600 人を超えるキリスト教徒が殺害された、としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年4月18日

・「信徒の減少、高齢化、そして文化的多様化が進んでいる」豪司教協議会が報告書

A worshipper at Easter Mass in MelbourneA worshipper at Easter Mass in Melbourne  (ANSA)

 オーストラリアのカトリック司教協議会の司牧研究センターが17日、2021 年の国勢調査結果をもとにした同国のカトリック 信徒の情勢に関する報告書を発表した。

 それによると、信徒数の縮小と高齢化だけでなく、文化的、言語的、儀式的な多様化も進んでいることが明らかになった。

 具体的には、同国の信徒数は2021年現在で 507万5910 人で、総人口に占める割合は 20% で、2016年の22.6%から 5 年間で約 2.5ポイント減っている。

 司教協議会会長のティモシー・コステロ大司教は「我が国における宗教的多様化の傾向を考えると、この数字は驚くべきことではない」と述べつつ、こうした傾向に失望していることを認めた.

 懸念されるのは、この国のカトリック信徒の高齢化がさらに進んでいることで、年齢の中央値は1996 年に 33 歳だったのが、2021年に43歳と、10歳も上がっている。ちなみに、全人口の年齢の中央値は38歳と、カトリック信徒よりも5歳も若い。

 また信徒数の9.7%、49万3225人が一人暮らしで、6.7、34万2034人が助けを必要としている。

 文化的および言語的多様性も顕著になっている。報告書によると、2021年現在で136万9744 人の信徒、総数の 21.4% が英語を話さない国で生まれ、21.5% が自宅で英語以外の言語を話している。 2006 年には、これらの数値はそれぞれ 17.9% と 19.2% だった。

 また英語を母国語としない信徒の主な出身国は、フィリピン、イタリア、インド、ベトナム、クロアチア (旧ユーゴスラビアの他の国と合わせて数えた) だ。この傾向は、同国の国民全体の傾向ともほぼ一致している。

 同国では、1996年以降、カトリック信徒のうち東方カトリックの信徒は別にカウントしているが、現在のカトリック信徒総数の1.5%、 7万7393 人 が東方カトリック教会に属し、うち4万7003 人がマロン人、3091 人がメルカイト人、2886 人がウクライナ人、1万4108 人がカルデア人、1万305 人がシロマラバール人となっている。

 ただし、東方カトリック信徒の実際の数はおそらくこれよりも多いと見られている。 報告書によると、同国のカトリック信徒総数の 3% 強が、伝統的に東方教会に関連する言語を家庭で話している、からだ。また家庭で話されている言語は他に、 7万7727 人がアラビア語、3万4237 人がアッシリア/カルデア語、3万8288 人がマラヤーラム語、2967 人がウクライナ語と、多様化を印象付けている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年4月18日

・「復活されたキリストは、苦難にある私たちの希望だ」ウクライナのギリシャ・カトリック教会指導者

Pope Francis with His Beatitudine Sviatoslav ShevchukPope Francis with His Beatitudine Sviatoslav Shevchuk 

 一問一答は次の通り。

***

問:ウクライナの復活祭では、信者たちが「キリストが復活された。本当に復活された」と挨拶を交わします。1 年以上続いているロシアの軍事侵略の中で、この挨拶はどのような意味を持つのでしょうか?

総大主教:私たちにとって、この挨拶は単純な挨拶ではなく、信仰宣言であり、キリスト教徒としての私たちの存在を表明するものでもあるのです。 ウクライナがソビエト連邦に組み入れられていた時代、私が子供の頃は、この挨拶の意味を知らずに、共産党の代表に向けて挨拶していたことを覚えています。 私がその代表に「キリストが復活された」と挨拶すると、「はい、ありがとう。 私はとっくに知らされているよ」という言葉が返ってきました。 しかし、「知らされている」と「『本当に復活されたのだ』と宣言する権利を持っている」ことでは、意味が違います。私たちは今、悲劇的な状況を共有しています。 キリストは確かに復活され、私たちと共におられます。キリストは、私たちの回復力の源であり、私たちの希望、未来への希望、いつの日かこの戦争が終結するという希望の源であり、平和、命、そして復活が、私たちの歴史の中で、最後の言葉となるでしょう。

 

問:教皇は、ウクライナとそこで苦しんでいる人々を助けるために、限りない訴えをなさってきました。 これはあなたにとってどのような意味があり、どのような価値がありましたか?

総大主教:大きな苦しみの中にあって、見捨てられないこと、一人ではないと確信することは、私たちにとって非常に重要です。 そして教皇は、ウクライナの人々に対してだけでなく、ウクライナ人を代表して世界に語りかけてくださいます。教皇がウクライナで起きている悲劇を世界に向けて発表されるたびに、その言葉は、私たちにとって生き生きとしたものに感じます。 世界的な連帯のおかげで、私たちはこの軍事侵攻がもたらしている苦しみに耐えることができます。 神の、そして教皇のおかげで、戦争によって引き起こされたこの人道的危機、人道的悲劇は破滅をもたらすに至っていない。 ウクライナで、飢え、渇き、寒さで亡くなった人はいません。 ロシアの侵略の犠牲者に援助することもできています。教皇が世界に向けて祈るたびに、私たちのために祈るたびに、それは命を与えるメッセージとなっています。

問:教皇は、戦争の平和的解決策を見つけるように訴えておられます。 武器や暴力よりも調停や平和構築の努力に重点を置いた平和への道を、あなたは思い描いていますか? そうだとすれば、それはどのようなものですか?

総大主教:私たちは平和を祈ります。 平和のために闘います。 もちろん、今のような状況の中では、「平和」の実現は、奇跡のように、あるいはそれが起きるように聞こえますが、いつ起こるか私たちには分かりません。即時停戦が実現すると見る人は誰もいない。それでも、私たちは奇跡が起きると信じています。 いつの日か、ウクライナの地で、私たちは平和を享受できるでしょう。

問:教皇は、10年前に着座されて以来、核兵器の危険性について常に警告してきました。 現時点で、教皇のメッセージが特に重みをもっているのはなぜでしょう?

総大主教:世界は今、再び核戦争の瀬戸際に立っているからです。 国際法が機能しなくなったとき、世界の誰も安心できません。 そして、今日、世界の安全のカギを握っているのは核保有国だけ。 核保有国間の軍事的緊張の高まりを私たちは目撃している。それは非常に悲しいことです。 そして教皇は「やめてください。交渉の道具にに使わないでください。核兵器による恫喝や使用は、全世界に破壊をもたらします」と警告を繰り返されているのです。

問:復活されたキリストは、最初に女性たちに出現なさいました。 ウクライナの女性たちは、この困難な時期に、特に教会内で、どのような役割を果たしていますか?

総大主教:ウクライナの女性たちは、私たちの社会の礎石です。 「ウクライナの文化は母系」とよく言われます。 ウクライナの母親、女性は、ほとんどがキリスト教の信仰を表明しています。そして、復活節第二主日を、復活されたキリストに最初に出会った女性たちに捧げます。

 今日のウクライナで、教会が福音宣教の使命を果たす上で、女性の役割は極めて重要です。 私たちの教会共同体のカテキスタの 99% は女性。聖職者もほとんどが既婚者です。 非常に多くの場合、とくに女性にとってデリケートな問題がある場合、信徒たちはまず、司祭の妻に話し、それから次に司祭に話します。「 母親」は、今日のウクライナのイメージです。 母なる教会は、極めて重要であり、特に、今日のウクライナの人々に対して雄弁です。 母なる教会-母であり教師、母であり保護者-は、今日の私たちの教会の象徴です。

問:ロシアの軍事侵攻が続く中で、国の至る所に苦しみと死がある今、信仰を伝えることはとても難しい、と思います。 そうした中で、どのように希望と信仰のメッセージを伝えることができるでしょう?

総大主教:今、私たちは、キリスト教のメッセージは「観念ではなく、生気を受ける経験だ」ということを実感しています。 メッセージを共にすることで、経験を共有します。希望の源、回復力の源を共有しています。 ですから、人々は、私たちの言うことに耳を傾け、私たちに目を向けます。 今日、ウクライナの私たちは、非常に多くの人々がキリスト教に回心するのを目の当たりにしています。それは、ウクライナの人々が、自分の周りで起きている極めて困難な状況の深い意味を探し求めているからです。「自分は何をすべきか?」「自分たちがしていることは正しいのか?」… そして非常に多くの場合、それらの問いに答えることができるのは、神の言葉に耳を傾けることによって、そして私たちが伝える「よい便り」を実践する教会共同体の一員であることによってだからです。

問:改めて、世界の人々へのメッセージは?

総大主教:私たちは心の底から、ウクライナから、ウクライナの首都キエフから、キリスト復活のメッセージが真実であることを伝えたいと思います。主は 確かに復活されました!キリストは私たちと共におられます。 私たちは主の復活に参加しているので、希望があります。 「キリストは復活された」というメッセージは、キリストについてだけでなく、私たちについてでもあり、今日のキリスト教徒の希望の宣言なのです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年4月16日

・ロシアによるウクライナ攻撃続行が正教会の復活祭に大きな影

Rescuers search for survivors in a partially destroyed residential building, after a shelling in Sloviansk, on April 14, 2023Rescuers search for survivors in a partially destroyed residential building, after a shelling in Sloviansk, on April 14, 2023  (AFP or licensors)

 ロシア当局は現在、米経済紙Wall Street Journalの記者をスパイ容疑で逮捕、拘束しているが、他にもこの悪名高い刑務所には多くの人が収容されており、その扱いが懸念されている。

 ウクライナの人々は、正教会の復活祭を迎える中で、攻撃がすぐにも停止し、心身が傷ついた人々が癒されるように祈っている。しかし、スロビアンスクのような事態が繰り返されることを懸念する治安当局は、復活祭を祝おうとする人々に、大規模な祝祭行事への参加を控えるように、聖堂に「不必要に」長くとどまらないように、と警告している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年4月16日

*暴力の連鎖深刻化する聖地のキリスト教会指導者たち復活祭を前に和平訴え(Crux)

ナタニヤフ政権の司法制度改革に抗議する行列(4月1日、首都テルアビブで (Credit: AP Photo/Ohad Zwigenberg.)

Christian leaders in Holy Land make Easter appeal for peace amid spiral of violence

(2023.4.3  Crux  Senior CorrespondentElise Ann Allen) 

 ローマ発 – イースター休暇が近づくにつれてイスラエルの緊張が高まる中、同国のキリスト教会指導者たちが3月31日に声明を発表、暴力の激化に強い懸念を示すとともに、国の指導者たちに対して、協力し、差別に終止符を打つよう訴えている。

 声明は、イエス・キリストの復活を通して「私たちを新たに生まれさせ、生ける希望を与えてくださった」と聖ペトロが語る第一の手紙(1章3節)を引用し、「この希望は、使徒たちと初期のキリスト教徒に、喜び、尊厳、そして恩寵をもって、多くの試練と苦難に耐える力を与え、彼らを支えたのです」と述べた。

 そして、「このような喜びの中で、たとえほんのしばらく様々な試練を受けるとしても、私たちの信仰の真正さが…イエス・キリストが真の姿を現される時、賛美と栄光、栄誉の中に見出されるでしょう。そして、私たち自身の信仰が試され続けている今の激動の時代に、私たちを励まし、力づけてくれます」と強調している。

 また、ここ数か月の間に「聖地をのみ込んだ暴力のエスカレーション」を取り上げ、特に現地のキリスト教徒は「聖ペトロが書いているような逆境に、ますます苦しめられています」とし、「この 1 年間、私たちの教会、葬儀の行列、公共の集まりの場所のいくつかが、攻撃の標的になりました。 私たちの聖地や墓地のいくつかは冒とくされ、枝の主日の行列や聖なる火の儀式など、私たちの伝統的な典礼のいくつかは、何千人もの信徒の参加が排除されています」と訴えた。

 さらに、国際社会と地元住民に対し、「聖地のキリスト教共同体と、世界から聖地を訪れる何百万人もの巡礼者の安全、移動、信教の自由を確保するために、イスラエル政府に要請するのに協力して欲しい」と求めた。

 過去数か月、イスラエル人とパレスチナ人の間で武力衝突が増えており、昨秋にネタニヤフ首相が率いる極右民族主義連合が形成されたことで、多くのキリスト教徒やその他の少数派の間で、宗教的な差別が強化される不安が強まっている。とくに最近数週間では、いくつかの死傷者が出るような小競り合いに加えて、政府の司法制度改革を、クーデターと民主主義の抑圧が狙いとするものとして批判する反ネタニヤフ政権派の人々で騒動が起き、2日、政府がベン・グビル国家安全保障相が指揮する国家警備隊の設立を決めたことで、緊張はさらに高まっている。

 ベン・グビルは、極右政党「オツマ・イェフディット(ユダヤ人の力)」党首で、過去にキリスト教徒に対する暴力を主導し、「キリスト教徒を全員、国外追放すべきだ」と主張したと言われる急進的な反同化勢力「レハバ」のリーダー、ベンツィ・ゴプスタインを擁護している。また、2015 年にガリラヤ湖の北西岸沿い、タブハにあるカトリック教会の「パンと魚」の聖堂に放火し、有罪判決を受けた男の弁護も引き受けた。

 そのベン・グビルが率いる国家警備隊にどのような権限を与えるかは、政府機関の専門家たちで構成する委員会によって決定される予定だが、国家警備隊の新設が警察や総保安庁、さらには国防軍の権力を弱体化させ、これら治安に関する機関が競合する事態となるのを懸念する声もある。

 またネタニヤフ首相は、先に国家警備隊の新設だけでなく、最高裁判所の権限を縮小し、裁判官の選任に政治家が関与することなどを盛り込んだ司法改革案を国会に提出しており、これらを「イスラエルの民主主義の危機」ととらえて反対する国民の抗議活動が3カ月以上にわたって続いている。米国政府筋からの指摘も受け、首相が、法案成立に向けた動きを一時停止している。

 イスラエルのメディアによると、これまでに 17 万人以上が首都テルアビブでの反政府抗議行動に参加し、全国で 45 万人以上がデモに参加したといわれるが、2日に国家警備隊の創設が決まったことで、緊張はさらに高まっている。

 警察幹部OBを含む一部の反対派は、「ベン・グビルがクーデターを起こすために国家警備隊を利用する恐れがある」と警告。多くの公民権団体や野党政治家も、警察活動を政治化し、法における平等の原則を弱体化させる可能性がある、とし、国家警備隊をベン・グビル国家安全保障相の指揮に任せることに反対している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible. 

 

2023年4月3日

・「世界青年の日」の「閉幕ミサ用の祭壇・周辺設備に7億円」に現地リスボンで批判の声(CRUX)

$5.4 million altar for World Youth Day generates controversy in Portugal

((2023.1.30  Crux Staff

ローマ発 – 8月にポルトガルの首都リスボンで開かれるカトリックの「世界青年の日」で教皇フランシスコの司式が期待されている(まだ正式には確認されていない)閉幕ミサに使用される祭壇とその周辺の設備建設費をめぐって、現地リスボンで論争が起きている。

 リスボン市当局は1月下旬、5万4000平方フィートの巨大な祭壇とその周辺施設の詳細を発表、その際、この建設に要する費用が540万ユーロ(約7億5600万円)にのぼることを明らかにした。建設を受注したのは同国最大の建設会社Mota-Engil 。

 これに対して、地元のマスコミや野党政治家が強く批判、リスボン市長に、この案件について議会で質問に答えるよう要求した。

 野党ブロック党のモエダス・フィゲイレド議員はツイッターで、「市営住宅建設に、世界青年の日の祭壇の費用に充てられたなら、住宅危機はすでに克服されているだろう。問題は、公的支出の優先順位だ」と主張。ロイター通信が伝えるところでは、ツイッターユーザーのマヌエル・バルボサ氏は、「カトリック教徒として、信仰者として、このような困難な時期に不必要な贅沢ではないか」と批判している。

 市当局によると、祭壇・舞台は、教皇と随行者、約1000人の司教と 300 人の共同司式者、200 人の合唱団、30 人の手話通訳者、90 人のオーケストラ、そしてゲストを含め、最大 2,000 人が使用できるように設計されており、舞台部分はミサ後も残して、野外コンサートや集会などのイベントに活用する、という。

 わずか数時間の祭壇と周辺設備建設に多額の資金が当てられることへの批判に応えて、リスボン大司教区のアメリコ・アギア補佐司教は、リスボン市議会、およびプロジェクトを担当する都市リハビリテーション協会との間で会議を開き、建設費削減の可能性について話し合う、と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年2月12日

・トルコのカリタス、教皇の呼びかけに応え、他教会と連帯して被災者支援

The Cathedral of Iskanderun lies in ruins as outreach continuesThe Cathedral of Iskanderun lies in ruins as outreach continues 

(2023.2.9 Vatican News  Devin Watkins) 

   トルコ、シリアを襲った大震災で多くの住民に死傷者が出ていることに心を痛められた教皇フランシスコが、8日の一般謁見、そして9日のツイートなどで繰り返し、両国や世界の国々、国際機関が連帯して救援、危機克服に努めるよう呼びかけられている。

 この呼びかけに応えて、カトリック教会のいくつもの人道支援団体が、救援に動き出している。この地域を担当するカリタス・アナトリアも被災した何千人もの人々への支援物資の提供などを始めた。

 

*効率的かつ公平な支援

 シリアとの国境に近いトルコ南部のイスカンデルン市で支援活動に当たっているAntuan Ilgit神父はVatican News の電話取材に、「カリタスは地元住民に分け隔てなく温かい食事を提供しています。トルコのカトリック教会は強い連帯で支援に当たっている。 現時点で最も機能している機関の1つであると断言できます」と語った。神父はアナトリア使徒代理区の司教代理でイエズス会士だ。

 今回の大地震で、イスカンデルン市の大聖堂は、激しい揺れで完全に崩壊した。「それでも、教会は、被災し、困窮した人たちを受け入れるために、扉を開きました。教会には広い中庭があるので、宗派を問わず、助けを求める約100人が避難所できるようにしました」と神父は説明した。

A woman huddles under blankets in nearby Syria シリア側で被災し、家を失った女性

 

*危機の中でキリスト教一致が証しされている

 

 アナトリア使徒代理区の管轄地域はトルコ全土の約半分を占めており、その大部分が大地震の影響を受けた。そうした中で、カトリックの人道支援組織、カリタス・アナトリアの責任者でもある神父は、「遠隔地の多くには、支援の手がまだ及んでいない。私たちはそうした地域にも、支援の手を差し伸べようとしています」と述べた。また、「援助の実施に当たっては、公平を心がけています。このような緊急事態の中で、必要以上の援助物資をため込もうとする人もいるからです」とも語った。

 トルコ南東部にあるこのカトリック教会は、アルメニア正教会の司祭たちを含む他のキリスト教会の人々とも力を合わせ、この悲劇に対処している。「ほんの数日前に、私たちは彼らとキリスト教一致のための徹夜の祈りを下ばかりでした。 そして今、私たちはこの緊急事態に一致して対応しています。 アルメニア正教会の信者たちは、総主教庁からの援助物資を私たちと分かち合い、私たちはイスタンブールの使徒代理区からの援助物資を彼らと分かち合っている」と教会一致の成果を強調している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年2月10日