・「世界的な人の劣化、その背景と今後の懸念、教会は、信徒は」(9月21日改定)   南條俊二

政、官、産、学とあらゆる分野で劣化が急速、まともな現役リーダーがいなくなっている

 国政では、安部首相に対応できるまともな現役リーダーがいない、野党は沈没・・将来を担える政治家は・・小泉、福田両代議士程度だがリーダーとしては未知数だ。官界では、財務省、文科省の高官のの考えられない行状、道義的にもあまりの程度の低さ。産業界では、日産、三菱マテリアル、マツダ、スズキ、ヤマハの一流と言われる企業に検査偽装は相次いで発覚。9月21日には日本の教育行政の柱たるべき文科省の事務次官が汚職で二代続いて引責辞職した。

 学界・体育界などでも、日大・東京医大・ボクシング連盟、そして日本体育協会・・情けないのは、声を上げるべき学生、教員、そして”大人”がほとんど無力、無反応、無関心。新聞・テレビなど主要マスコミも、ほとんど批判力を失っている。聴き手も劣化して、マスコミに対する的確な批判もできない。*上部構造だけでなく、一般庶民、若者レベルも‥スマホ依存症・・周囲への思いやり、思考能力停止

 インターネット、スマホの普及は経済、社会の活性化に大いに役立つはずが、多くの人はゲーム、漫画、買い物、ファッション情報などに没入。電車の中での10人中7,8人がスマホを握りしめ、ほとんどが無表情、周囲に関心を払うこともなく、ひたすら”眺め続けて”いる。お年寄りや具合の悪そうな人が乗ってきても、お構いなし。出入り口にいても、降りる人に道を開けようとしない。「劣化」を加速する道具に使われている状態に。年齢層が10,20代から30代、40代、50代へ急速に広がっている。

日本だけではない現象・・欧米のリーダー劣化・・トランプの誕生・・英国のEU脱退・・

 象徴的なのが、世界の民主主義国のモデルとして自他ともに認めて来た米国。国際ルールを無視し、一国主義に走るトランプのやりたい放題を放置する米国の政経やマスコミのリーダーたち。

  • このような時に、劣化を食い止め、社会を再生に導く力となるべき既成宗教、とくにカトリック自身も劣化

 欧米を中心に長期にわたって深刻の度を深める聖職者による未成年者などへの性的虐待と高位聖職者などによる隠ぺい、に象徴される劣化から抜け出せずにいる。それ以前に、前教皇を始め、日本の司教の中にも、任期の途中で仕事を投げ出す、という近年ではあり得なかったことが、平然と続いているのも、劣化の流れの中で捉えることが可能だ。

その背景にあるのは

 伝統社会⇒変革期社会⇒超近代社会・・坂の上の雲がなくなった・・伝統的価値観の喪失⇒伝統的価値観の否定⇒1990年代前までは「経済成長」「豊かな暮らし」を伝統的価値観の代わりにしてきたが、頂上から下り坂に。代わりの価値観も、行動原理も見つからないまま、21世紀に入り、それが常態化し、その中で育つ若者たちを中心に、代わりを見つける意欲も喪失する傾向が強まっている。行く先は‥道義無き自己中心・・それが①の現象に表れ始めている。そうした社会状況が、教会にも投影している。

 これまで考えられなかった”子供”たちの凶悪犯罪の続出も、劣化を象徴している・中学2年男子が新聞配達中の女性を刺し殺そうとして逮捕・動機は「ストレスでむしゃくしゃ・・誰でもいいから殺したかった」と。仙台では刃物やモデルガンを持った大学生が、未明に近くの交番を襲い、親切に応対しようとした警察官を刺殺した・・家庭は、学校は、地域社会はどういう育て方をしたのだろうか?

劣化する日本、欧米など民主主義国の懸念は、明確な目標を持った指導者に率いられた専制独裁国家の興隆・

 そうした中で、一党独裁の政治を続け、あらゆる手練手管で権力を固め、任期も取り去った指導者。「・・の夢」を標榜するトップに率いられた某国は・・信教の自由を抑える新たな規制を導入、党の政策に異議を唱える人々を拘束するなど、国内で人権を損なう政策を強める一方、明の時代の鄭和艦隊が目指したアジア全域から中東、アフリカに至る最大版図に支配権を着々と広げつつある。年二ケタ台の伸びを続ける巨額の軍事予算で築きつつある強大な軍事力、量のみならず質の向上が急速。アジアからアフリカに至る海洋支配を目指す空母機動艦隊の四編成体制の構築を着実に進め、空・陸の兵力も近代化・増強、サイバー軍、宇宙軍も。核軍縮が叫ばれる中で、それを無視し核兵器を増強する中国、北朝鮮を、どの国もまともに牽制できない。

*悪夢・”スマホ中毒、マインドコントロール弱者”の日本人を狙った、影無き独裁国のサイバー攻撃

 スマホ中毒で主体性、自律性、現実性を薄れさせているのは10代、20代のみならず、30代、40代にも。⇒ポケモンGo現象・鳥取砂丘に大勢がポケモンを求めて殺到・・駅でも階段でも、握ったまま睡眠・・ハーメルンの笛吹きの物語(ネズミの大量発生に悩んでいた町の人が笛吹きに頼んで、ネズミを退治してもらったが、代金を払わなかったことに腹を立てた笛吹が、町の子供たちに笛で魔法をかけ、全員を連れ去った)を連想。

 マインドコントロールにたけた某隣国のサイバーによるコントロール・・スマホ中毒、一億総劣化で最もマインドコントロールを受けやすい日本の大衆に、ゲームや漫画その他の情報に載せる形で、たとえば安部倒閣、尖閣列島・沖縄は中国に領有権あり・・などを信じ込ませ・・積極的、消極的な行動に移らせる・・単なる悪夢とはいえない。

 *結語*”劣化”する日本のカトリック教会は外部からどう見られているか。

 このような世界と日本の”不都合な現実”から目を背け、「時の声」を聴こうともせず、十年一日のごとく、どこかの国の政党の決まり文句の反政府、反憲法改正、反安保と、教会内部にさえ異論の多い政治的姿勢を、あたかも、全教会員の一致した意見のようにして、自己は安全な場所に身を置きながら叫び続けても、悩み、苦しみ、現状に不安を強め、生きる目標を失った日本の人々の心には全く響かない。社会の現実から浮き上がるばかりだ。日本の社会への前向きな貢献は無きに等しい。これも、”劣化”のなせる業、かも知れない。

 求められているのは、”不都合な現実”も含めて現状を正しく認識し、問題の本質を見分け、向き合い、弱者に寄り添いつつ、自分の家庭、社会、国を守り、再建し、全世界の人々が人間的で自由で、安心して暮らせるようになるために、力を合わせることだ。一人ひとりの自覚、それぞれの立場からの行動が、国民一人ひとり、カトリックの信徒一人ひとりに、その集合体としてのカトリック教会に、強く要請されている。劣化を食い止め、流れを変える道はそれしかない。

(2018年8月20日に東京西北ローターリークラブの例会で卓話としてお話しさせていただいた内容に、その後発生を続けている社会的事件などを追加して織り込み、カトリック教会に関係した部分、結語を加筆しました) 

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2018年8月21日