・栄光学園校長が語る「カトリック学校の現状とこれから」

   栄光同窓カトリックの会第17回総会が10月28日開かれ、講師の栄光学園中学・高等学校校長の望月伸一郎氏から、司祭、信徒が減少する日本におけるカトリック校、同学園の現状と問題、今後に向けた対応についてお話を伺った。講演の内容は次の通り。

 まず本学園の近況についてお話しします。今日は実は、来週火曜日の歩く大会の開催が可能かどうか、台風の近づく中気をもんでいるところです。歩く大会も中間体操も大切にしている伝統の一つで、これをいかに今日化しつつ未来につなげるか、宗教活動についても今日化しつつ、これをいかに未来につなげるかが課題です。

 そこでまず、学園生徒の信者数の現状をご理解いただきたい。今年は180人が入学しましたが、71期入学者のうちカトリック信者は1人、昨年は2人でした。信者の親は4人ですが、子供が受洗していないケースも多いのです。信徒の父兄が分かるのは、入学者説明会の時に信徒の親には受洗教会、受洗の年など記入してもらうので分かります。在学中の受洗者の数はどうかというと、昨年は高校3年生が2人受洗しましたが、前年もゼロですし、今年も受洗準備中の生徒はいません。

 では学校での宗教活動はどうやっているのか。学校では宗教活動委員会があって、7人の信徒教員が中心になって活動の企画・立案をしています。また、金曜日放課後は部活動は無し、としているので、学年ごとに23人の教員が聖堂下の聖書研究室で聖書研究会を開いています。私は36期聖書研究会から担当しましたが、当時は信徒のクラスは別で、司祭が担当していました。

 今はほとんど未信者の聖書研究会ですが、いろいろな企画を立てています。学年別の人数は中1の時が比較的多くて学年末で20名位。それが高3までの各学年の聖書研究会では 10人位になります。ミサは、始業式、終業式、入学式、卒業式、聖土曜日(復活祭)、クリスマスに行いますが、参加者のほとんどが聖体拝領なし、祝別を受けるだけの生徒です。

 宗教活動委員会の企画としては、①聖園子供の家児童への学習支援、②ハンセン病施設へのボランティア訪問、③大阪釜ヶ崎訪問 1日または一泊、二泊(学年によって異なる)の黙想会などがあります。

 栄光では、「宗教活動は自由参加」という原則が貫かれており、教室には十字架を掛けておらず、「倫理」という授業はあるが「宗教」という授業はありません。以前、「ミサを講堂で行って全員参加にしては」という意見もありましたが、自由参加の原則を続けています。「倫理」の授業ではキリスト教について話すので、私の授業(「コチョリン」)では新約聖書を全員に配布し、聖堂へ連れて行って静かにする(長めの瞑目の) 時間を取っています。また、始業式や終業式など年6回の校長講話の際には、テーマに関連した聖書の話をするようにしています。

 信徒の教員は、全専任教員60人中14人、講師3人で、イエズス会士司祭はゼロです。イエズス会からは「今後、イエズス会士の教員は派遣しない」と言われているので、チャプレンの派遣をお願いし、現在、萱場神父に学園でのミサ、黙想会指導、教員や生徒への指導をお願いしています。

 このような状況の中で、カトリック校としてこれからどうするか。配布資料〈JCAP =Jesuit Conference of Asia Pacific=イエズス会アジア太平洋協議会)の統計にあるように 、2016年のアジアの中等教育機関38校の平信徒教員数は4463人に対してイエズス会士は98人、(日本は平信徒教員数226人に対しイエズス会士4人)という状況で、栄光学園の直面している問題はアジア共通であることが分かります。(特にオーストラリアやフィリピンは深刻)。日本のイエズス会では2016年4月にイエズス会校5校の理事会を統合する大きな決断をしました。この背景はイエズス会が毎年発行している年報 39号で李神父が「イエズス会教育の継承と深化」と題して書かれておられる通りです。

 栄光学園として、これから具体的に何をしていくのか。何を考えているのかということをお話ししますと、第一は、大切にされている伝統と文化を守ること、 学園の聖堂を維持していくことが挙げられます。何をもって「カトリック学校」というのかというと、「学校の中心にご聖体がある」「キリスト教に触れ合う場がある」ことです。

 そのための条件の第一に、聖堂でミサを捧げる、具体的には夏休み、冬休みを除く毎月1回、年10回のミサを捧げること。信徒でない教員も祈りをする学校がありますが、栄光でも、信徒でない教員も聖書研究会に参加しており、祈りの場としての聖堂の維持が第一です。

 第二に、グローバル教育の重視ということです。卒業生インタビューで隈研吾氏が「栄光には外国人神父が沢山いて、栄光に通っていることがグローバル教育になっていた。それが自分の現在の建築設計の仕事にもプラスになっている」と答えていました。世界のイエズス会教育機関のネットワークを活用してグローバル教育を進めようとしています。

 2000年からフィリピンのカトリック校との短期交換プログラムは実施していますし、ボストンカレッジが米国の高校生向けに開催している自己啓発セミナーに毎年30名の生徒を派遣することにしました。生徒は5日間の合宿でディスカッションなどを通じて、「自分がいかに大切にされているか」「神は何を望まれるか」など、いろいろな刺激を受け、視野を広げるプログラムに参加するのです。来年の夏休みには、JCAPの会員校の高校生を招いて秦野の上智短大で60人規模の英語でのセミナーを開くことを計画しています。

 イエズス会教育推進センターを中心に、研究、学校連携、教員養成など様々なテーマで新しい展開を模索中で、学校としても同窓カトリックの会とのつながりを大切にし、卒業生信徒との連携が深まることを望んでいます。学校には受洗者名簿はありますが、生徒の信徒名簿はないので、特に20期以降の信徒OBへも栄光同窓カトリックの会から情報を提供していただき、 つながりが出来ることを期待します。

(文責:栄光同窓カトリックの会事務局長・花川泰雄)

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2017年12月10日